ハンバーガーの戦い 〜この異世界のスキルはハンバーガ〜 作:石林留
俺と芳賀はヘタリと倒れ込んだ。カロリーを使い果たしたんだ。もう力が出ない。
「やったな…芳賀」
「ああ、輝夜!」
喜びを分かち合うのもつかの間、
「ぐぅ、痛いな〜顕現したてなのに調子乗っちゃったぁ…」
コートレは体を起こした。
「な!?まだ意識があるというのか!」
コートレは全然余裕そうにしていた。
「さーてと、抹さ
『十五の矢』
天空からなにかが降ってきて、コートレを貫く。
「……あーあ、そういう事。ヤダな〜また戻る羽目になるのは。絶対怒られるじゃん〜」
そうコートレは言うと身体から影のようなものが溢れ出し、それが一つの塊となり天に昇っていった。
俺と輝夜は、その降ってきた何かの異常なカロリーを前に、何もできなかった。
「な、なんだったんだ…?」
「…………。」
そうして、先程までコートレであった肉体からうめき声が聞こえる。
「…私は、何を…」
クリスはもう身体が15箇所、それも急所を貫かれてもう長くはないだろう。
「そうだ…神様の言葉を信じて…出会った人々を始末して………はは、最低じゃないですか」
「それは違う。」
輝夜はそう言ってクリスへと近寄る。
「闇憑きによる影響でおかしくなっていたのだろう。それも始祖のバーガーの。理性は失われていたはずだ、」
「ふふ…そうですか。貴方は、私の恩人の
クリスは動かなくなった。
「…クリスさんは俺達を泊めてくれた時にいつでも殺せたはずだ。心の底では俺達を庇おうとしていたのかもな。」
「ああ、………もう朝だ。クリスさんを埋葬してから組織へと向かうぞ。」
「おい、お前ら。勝手に自己満足しやがって。」
見知らぬ誰かの声が聞こえた。気づいたらそこには金髪のチャラそうな男がクリスさんの死体の側にいた。
「お久しぶりです、ガドさん。」
「おお、輝夜、帰るのが遅いぞ。シャリさんが呆れてたぞ。」
輝夜はその男に敬語で話しかける。この人が輝夜の言っていた「組織」の一員か?
「輝夜、お前が連れてる奴のことは置いておいて、このねーちゃん放置するのはどうかと思うぜ。」
「すみません。私が『闇憑き』のことに気づいていたら、クリスさんを傷付けずにどうにかできたのかもしれません。そうしたら、バーガーの情報を知…
「お前、そういうところだぞ。」
チャラそうな男、ガドはその飄々とした態度を一転させ、輝夜を睨みつける。
「俺が言っているのはお前の行動じゃない、その後の態度だ。何勝手に反省して『じゃあ次に向けよう』とか『もうこんなことは起こさせない』とか思ってんだよ、勝手にお前らはこのねーちゃんを自分の成長の糧にして満足してんだよ。」
輝夜は何も言えずに俯く。
この人の言うとおりだ。
クリスさんに騙されたことでいっぱいで、その背後にいた始祖のバーガーに気づくことなく、その上逃がしてしまった。
「そこのお前、」
ガドさんは俺に視線を向ける。
「……………。はい、」
「お前、まさか力があったら勝てたとか思ってんじゃねぇだろうな。」
「………。」
「始祖のバーガーなんて王国も、組織も何百年かけても倒せていないんだぞ。力がどうとかじゃねぇ。俺はお前たちがこのねーちゃんを見殺しにしようとしてることにキレてんだよ。」
「そんな、だってこんな状態じゃ。」
クリスさんのカロリーを感じられない肉体は、俺には死体にしか見えない。
「馬鹿が。諦めてんじゃねえよ。こんなことになったのを後悔する暇あったら少しは助かる可能性に賭けろ。それが反省ってもんだろ。」
何も言い返せない。
「………、おまえ、見た目からして転移者か、あのな、半バーガーになった過程は知らないがお前は半バーガーになる前に意識不明の人間をみたなら助けたんじゃないのか。それがなんだ、カロリーが見えるようになって、もう助かりようがありませんって、どうしょうもないって、なんで見えないものが見えるようになって希望が見えなくなってんだよ。」
「俺だって、可能性を諦めたくないです、けど!」
「その可能性が俺だよ。お前たちには人殺しの責任は負わせない」
ガドさんは両手を前につき出し、カロリーを放出して、何かを形作っていく。それを作り終えると、何なのかすぐに分かった。
「アボカド?」
両断された、2つのアボカドの種をくり抜いたものそのもののような形であった。
「|母なる抱擁
ガドさんは両手を合わせ、種が収まるはずの部分でクリスさんを包み込んだ。
そうしてそのアボカドは小さくなり、手のひらサイズになったところでガドさんはポケットに入れた。
「ガドさん、………助かるんですか」
輝夜が不安そうに尋ねた。
「…。俺は医者として下手なことは言えない。……どんな結果でも向き合えよ」
俺と輝夜は唾を呑み込み、直面するだろう現実への覚悟を決めた。
「…、いい顔つきになったじゃねえか。」
そうして俺達は、疲れた身体に鞭打って組織へと出発した。
◆◆◆◆
「いやいや〜ごめんて、私以外達。」
黒い霧が形を変え、人のかたちになった。
「キキキキ、顕現して調子に乗ったね。計画のために戻ってきてもらったよコートレくん。」
「フファファァ!!キミツが連れ戻していなかったらヤバかったぞお前!!!!」
そこに二人の人間のようなものが話しかける。
「え〜勝てたと思うけどねぇ。」
「……アノママダトエングンガキテイタ。」
「…よく聞こえないよぉ…
コートレはよく見たら遠くにいる人間のようなものにそう答えた。
「キキキ、まあいいじゃないか、俺の手を煩わせたのはいかがと思うがね。始祖のバーガーとしてのよしみだ。そのくらいはよかろう。」
「ふん!とりあえずこれからどうするんだ!?
「まあ、久しぶりの始祖の集合、楽しもうじゃぁないか。
「フッ!!俺とキミツ、コートレとムルの4人だけだがな!あと3人足りないぞ!」
「はぁ〜そんなのいいじゃんかよぉ。私のこともっと語ってよ〜黄金時代とかいってさ、もう何百年前の話だよ。」
「………『gold age』ガ『old age』クフッ」
「おい〜、くだらないギャグ好きだね本当にぃ。」
「キキキ!!、確かにここではgはないな!」
「ファ?!どういうことだ?意味がわからん!」
「だってさぁ、ここ、月じゃんねぇ。」
月、そこで始祖のバーガーたちの集会は行われる。
「…さてと、これからどうするか話すぜ、
この俺、『月』を冠する『キミツ・ムーンソルト』が同胞のために。
………キキキ、面白くなるぞ!」
キミツは不適な笑みを浮かべた。
◆◆◆◆
ここが組織…
やっとのことで俺と輝夜は組織へとたどり着いた。
「……本当に組織の本拠地?お店じゃなくて?」
見た目はチェーン店でしかない。
「見た目より格段に広いからな。基本地下に施設がある。」
「王国に嫌われてるから堂々と構えられないんだよなぁ。」
ガドさんはため息まじりにぼやいている。
「玄関に人がいるけど、……………え?」
「どうした、芳賀?」
俺は玄関に急いで向かい、その
「あ、貴方はやっぱり…更田先輩!!!」
「…おいおい、お前もここの世界に飛ばされたのかよ…………はぁぁ〜」
更田先輩は明らかなため息を吐き、顔色が悪くなった。
第二章「教会と殺人鬼」 完。
第三章へ続く。