ミドラを発見したライトニング分隊が街中で許可無しのデバイス起動・魔法行使についてだが表向きは不問扱いとなった。六課設立時に非公式で協力してくれた『伝説の三提督』が裏から手を回し関係各所に圧力をかけたことで鎮静化を図った。SNSや動画サイトに投稿されてもアカウントを凍結させるほどの徹底ぶりだ
しかし完全にお咎め無しとはいかない、分隊の隊長を勤めるフェイトは減俸処分となり組織の長である八神はやてには『1』の評価が与えられた。上を目指す局員にとって上層部から最低評価が下された時点で出世の道は極めて困難になる。奇跡が起きない限り改められることはない
「考えなおしてください」
「これはもう覆ることのない決定事項だクロノ・ハラオウン元提督」
限られた局員にしか入室することが許されない部屋で時空管理局元帥から下された処分を耳にしたクロノ・ハラオウンは動揺し詰め寄ろうとするがバインドと重力魔法で固定されてしまった。目の前にいる人物はラルゴ・キールの下で学び、数多く戦場を駆け巡った歴戦の猛者で六課の隊長たちがリミッター解除をして束になって襲い掛かっても座っている椅子から動かすことは不可能である
「小娘の為だと思うが腋が甘かったようだな」
「機動六課の現状を理解してください、高町空尉が動けないのであれば戦力を―――」
「過度な肩入れは成長を妨げる愚かな行いだと母親から習わなかったのか?」
「ですが!」
「もう少し柔軟な思考を持ちたまえハラオウン、提督の肩書きが剝奪された貴官に何が出来ると思う?若い頃の君ならここで答えを導き出していたはずだが」
何かを誘導しようとしている。しかし焦るクロノは苛立ちながら険しい表情をしたままで問答の解を導き出すことが出来なかった
「今の君はフリーの立場になる。追い込まれている若輩者には正しい判断を下す先駆者が必要だと思わないか?」
「まさか」
「茨の道に踏み入れる覚悟があるのなら私は判を押すだけだ」
襲われた翌日にミドラは再びセインを伴ってナンバーズたちのプレゼントを買いに行った。無許可のデバイス使用で処分が下されていると想定したので2日間連続で襲ってくることは無いと踏んだ
「そういえば旦那は何を買ったの?」
「これか?…ワンピースの件でチンクが怒っていただろ」
「お詫びの品って、案外優しいところがあるんだね」
「クアットロが連日ボロボロにされていたから、そろそろ機嫌を直してもらわないと」
ルーテシアが首謀者であるクアットロに指を向けたことでチンクが泣きながら攻撃を加えアジトが若干ボロボロになっている。しかも彼女はミドラを盾にするので巻き添えを食らう
「チンク姉もあんな見た目だけどトーレ姉と同じぐらい稼働が長くて、ゼストのおっちゃん相手にタイマンで勝ったんだよ!」
「負けた本人から聞いたよ」
見た目は天真爛漫で年相応な女の子なのに持っている力は強大で並大抵の魔導士なら白旗を上げる。スカリエッティが何を引き起こすつもりか知らないが自分に迷惑を掛けなければご自由にしてくださいだ
「ねぇねぇ傭兵団ってどんなことしてた?」
「争いが起きている国で殺し殺されのドンパチするのが基本だが遺跡で宝探しもする。稀にボランティアもやったな」
「ボランティアって、旦那が一番嫌いそうなことじゃん」
「気まぐれの人助けだから常に行う慈善団体じゃないさ、寝床や飯を提供してくれた所が困っていたら恩返しをしないと目覚めが悪い」
彼の血液を利用して風土病のワクチンを作り出したこともあれば、女の子供を攫った盗賊相手にスプラッタな蹂躙劇を披露し人質たちを家族の元へ帰した。報酬は盗賊たちが貯め込んでいた財宝だった
「傭兵って割と義理と人情の世界?」
「そこまで高尚なもんじゃない…金払いが滞ったことで壊滅したところもある。欲に目がくらんで仲間を裏切る奴も噂で聞いた」
「ふ~ん、じゃあなんで旦那は辞めたの?」
「これといった理由は無いなコンビニに行くような感覚で抜けちまった」
所属していたところは来る者は拒まず、去る者は追わずの気風なので後腐れなく別れることが出来た。その後もセインと駄弁りながら買い物を続けると花屋で鉢植えの胡蝶蘭を購入し『ゲイリー・ビアッジ』の偽名で高町なのはが眠る病院へ送りつけた
「ごめん…はやて」
「もう謝らんでええよ、シャマルの話だとフリードはしばらく動けんみたいやけど切られた翼は元通りになるみたいやし」
重々しい空気に押しつぶされそうになる機動六課の会議室には処分を受けた2人とシグナムが座っていた。ヴィータは屋外でスターズ分隊の訓練を見守っている
「それで報告書の内容はホンマなんやな?」
「うん、ミドラは10年前の被害者で両親を失っていた」
「主はやて、私たちは―――」
「シグナム今は言い訳を聞く気になれへん、私の質問にさえ答えてくれたらええんや」
弁明の機会を失った彼女から膝の上で拳を強く握り締めて堪えることしか出来なかった。自分たちと敵対する人物が過去の行為で生み出してしまった存在なら喜劇以下の出来事だ
「怨んではないってどういうことや」
「自分の親はそこで死ぬ定めだって、だからシグナムや闇の書事件に関わった人たちを憎むつもりは無いって本人の口から」
「ほならスカリエッティに協力しとんのも」
「多分仕事で請け負っただけだと思う」
その言葉を聞いて彼女は頭を抱えて大きなため息を長く吐き続けた。両親を失って自分たちのことを怨んでいるのであれば謝罪をするつもりだったが死に関してドライに受け止めている
「どないしたらええのフェイトちゃん」
「やっぱり捕まえないと」
「リミッター解除しても勝てん相手やで、しかも丁寧なことに先手を譲ってくれる有様や」
今のところミドラは管理局の魔導士と戦うときは攻撃を受けてから反撃する流れがパターン化している。己の防御に絶対的な自信を持っていることもあるが敵として認識されていないと思われる
「全部この脚が悪いんかな?幸せになっちゃアカンかったのかな」
「それは違うよ、誰だって幸せになる権利―――」
「その幸せを奪って私は生きているんやで今も後遺症で苦しんでおる人もいるのに、なぁやっぱりグレアムおじさんの考えが正しかったんやないのか」
10年前の騒動で『管理局の英雄』と呼ばれたギル・グレアムは彼女を永久に凍結することで闇の書の封印を行おうとしたが、高町なのはを含むアースラの関係者たちの活躍によって別の方法を切り開いたことで可能性を見出した
「はやて…」
「ごめん、ちょっと疲れてしもうて…アカンなこんな不安定な状態じゃアカンよ」
「主、」
「シグナム…なんとかしてミドラを連れてきてほしいんや、拘束したり逮捕すんのは無しで頼む」
「でもそんなこと」
「自己満足かもしれへんが1回ちゃんと謝りたいんや、向こうは『そんなことされても無意味』って思うやろうけど」
なんなら自分たちのことを糾弾した出版社に連絡して住所を教えてもらい10年前の被害者たちに頭を下げることをしなければならない、大局ばかりに目を向けていたせいで大事なことを見落としていたのかもしれない
「ちょっと休ませてくれへんか、また改めて呼び出すさかい」
そう言って彼女は2人に退出を促し、座っていた椅子のリクライニングを倒して目を閉じるが被害者たちの怨嗟の声が心にまで伝わり寝ることが出来なかった
はやてが追い込まれていますが更に落とす予定です
クロノ君はどうなるかな(なお奥さんは双子を連れて実家に帰ってます)
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