『どうしたんだい?君の方から連絡してくるなんて明日は大雪でも降るのかな』
「仕事中に管理局の人間に襲われた」
先日に起きたことを通信相手に伝える。自分を攻撃してきた執務官はジェイル・スカリエッティと言い放っていたのをみると互いの関係が別ルートからバレたという答えが浮かび上がったので確認と称して本人に問いただしてみた
『ああ、そのことか…ドゥーエからの情報だと私の顧客が取り調べでゲロったみたいだ!もちろん既に処分済みにしてある』
「そうか、それで今回の品は買ってくれるのか?」
『もちろんさ!いつも場所で娘に渡してくれれば構わない、ところで君を襲ったのはどんな人物だい?』
「確かフェイトなんとかロッサって、興味も無いし使ってるデバイスも不味かった」
『そうか…彼女に目をつけられるとは災難としか言えないね。しばらく休業でもして私のところに来ないか?好待遇を約束しよう』
「遠慮する。別に困っている訳じゃない!報酬は手渡しで頼む、使ってた口座が銀行ごと無くなって現ナマの方がありがたい」
『トーレに持たせておく、またレリックが手に入ったら知らせてくれ
切られた端末をベッドに投げ捨て大の字になって倒れ込む、両親が与えてくれた大切な名前だが名付けてくれた2人はもうこの世には存在しない
「本当にデバイスを食べたんですか?」
管理局に戻ったフェイトは今回の報告書を提出しコッテリと絞られた後だった。非殺傷設定を解除したことに加えデバイスを破壊されロストロギアであるレリックも奪われてしまった。1時間近くネチネチと怒られ疲弊しているが任務に失敗したのは自身なので反論の余地が無い
「うん…お菓子を食べるような感覚で」
バルディッシュは現在修復中で映像を確認することが出来ないのでシャーリーはフェイトの証言を信じるしかなかった。A級デバイスマイスターの資格を持つ彼女だが金属の塊であるデバイスを食べるなんて歩んできた人生の中で聞いたことが無い
「それにフェイトさんの攻撃を意に介さないなんて、強固な防御魔法を展開していたのでは?」
「それは無いと思う。多分だけど私のことを敵として認識していなかった」
無防備な自分にトドメをさすことが出来る状況だったのにレリックを盗んだ犯人は何もせずに飛んでいった。取り調べをしていた担当官から得た情報でジェイル・スカリエッティの尻尾を掴むために出張ったのに何も得ることが出来なかった
「ここにいたのか」
その空間に一人の青年がやってきた。フェイトたちは振り向いて姿を確認するとそこには1枚のディスクを持った人物がいた
「お義兄ちゃん」
「フェイト。局内ではやめてくれ」
彼の名前はクロノ・ハラオウンでありファミリーネームと彼女の言動から分かるようにフェイトの兄で既婚者で双子のパパである
「それよりそのディスクは?」
「ヴェロッサに頼んでレリックを奪った奴のことを調べあげてもらったデータだ!」
ディスクを挿入しメインモニターに情報が写し出された。盗掘者のフルネームは不明だが関係者から『ミドラ』と呼ばれている。神出鬼没でロストロギアを収集・売買を生業にしているが野生動物の絶滅にも関わっていた
「アルザスのル・ルシエは知っているよな」
「うん…キャロのいたところだよね?」
「これを見てくれ」
ピックアップされた画像にはドラゴンが骨の状態で山積みにされていた。しかも高層ビルを凌駕するほどの大きな骨が近くに転がっている
「稀少古代種でヴォルテールと呼ばれていたみたいだ」
「クロノ提督ちょっと待ってください!これを全部1人で食べたんですか?明らかに体積の許容量を超えています」
そんなことあり得ない、あの巨大な竜を1人で食べきってしまうなんて不可能だ!しかしデバイスを食べてしまうのならあれも…否、それでも無理だ!
「無限書庫にいるユーノがレアスキルの線で調べているが、出てくるかどうか分からない」
「この前に捕まえた人から聞き出すことって出来ないの?」
フェイトの問い掛けにクロノは首を横に振った。その人物は既に獄中で急な心臓発作で自死してしまい貴重な情報源を失ってしまったことを2人に伝えた
「今後も『ミドラ』が現れる可能性がある。今のままじゃキツイと思うからレティ提督に掛け合って人を回してもらった」
パネルを操作するとフェイトたちが知る人物が映し出された
「シグナムが来るんですね」
「本当はもう少し呼びたかったんだが、はやてたちは機動六課の設立で忙しくて」
「ヴィータさんとザフィーラがいてくれたら心強いけど無い物ねだりは出来ませんね。なのはさんは駄目だったんですか?」
「予定日に健康診断を行うことが出来なかったから、今はベッドの上で天井の染みを数えている頃だろう。退院するのはもう少し先になる」
管理局のエースオブエースと呼ばれる地球出身の彼女は過去の任務で大怪我を負ってしまい歩くことすら困難な状態に陥ったが辛いリハビリを耐え抜いて復活したことから『不屈のエースオブエース』と呼称されるようになった
本来なら毎年の健康診断を政府要人並みの設備が整った病院で行わなければならないが、任務が重なった影響でズレ込んでしまい現在入院中で現場に出ることが不可能であった
「ミドラの戦力は未知数だ!油断しないように頼む」
「「はい!」」
当人の知らないところで面倒な局面になろうとしていたが、そして件の彼は…
「不味い…」
文字通り道草を食っていた。最近は野生動物の肉類が多かったので健康を意識して摂取してみたが植物図鑑に載っていなさそうな草をアク抜きせずに食べてしまったので不味いのは当然である。しかし彼の持つ『悪食』のレアスキルは道端の草ですら栄養に変えてしまう
「(あの竜を燻製にしておけば良かったかな)」
少し前にル・ルシエで食べた竜のことを思い出す。仕事で立ち寄った場所で向こうの縄張りに入ってしまったミドラのことを餌と認識し襲ってきたが餌になったのは竜の方だった
最初は生の状態で貪り次は焼いてみた。マヨネーズとの相性も良く少し焦げたぐらいが丁度良かった。最後は巨大な竜を生きたまま齧り足元から骨にしていくと珍味の『ハツ』に歯を立てた瞬間に絶命してしまった
「(管理局ってことは奴等が出てくるのか?)」
昔のことがフラッシュバックして脳裏によみがる。桃髪の剣士と赤髪でハンマーを担いだチビっ子に襲われた忌まわしい記憶で、意識を失って地に伏した両親が魔獣に食べられるのを何も出来ずに見ることしか出来なかった
「(大将は元気かな?)」
今こうして生きていられるのは、そこを偶然に通り掛かった傭兵集団が助けてくれた!彼を生活を支える術の殆どは傭兵たちから学んだことで足を向けて寝ることが出来ない
両親を失ったがミドラの心に復讐の炎が灯ることは無かった。成し遂げる実力を有しているが人を怨んで生きるよりも未来に目を向けて生きることを選択した。仮に復讐を成功させたとしても残るのは虚しさだけなので腹が空いている状態で心まで空っぽにしたくなかった
"ピリリリリリ!"
仕事用の端末に情報屋からのメッセージが送られてきたを知らせる音が鳴る。彼の顧客にはロストロギアをコレクションする道楽者がいて、秘密裏にパーティーを開催して他の金持ちに自慢するのが趣味と豪語している
「また遺跡か」
なんだろう凄く嫌な予感がする。ぶっちゃけるとまた管理局の人間と出くわすのでは?と思ってしまう。レリックの取引きも終わったことだし少しリフレッシュしようと思った彼は今回の仕事を見送ることを決めた
道草を口の中に放り込み今日の晩御飯の献立を考えながら家路につくのであった
・ミドラ
今から10年前に蒐集を行っていた守護騎士たちによって家族が襲われ現場に放置された。彼自身も魔力を抜き取られ身動きが出来ない状況に陥ったが通り掛かった傭兵団が助けたことで生き延びることが出来た。そこでは生きる術を教えてもらい13歳で団から離れると生活資金を稼ぐためにロストロギアの収集と密売を行うようになった。変態博士は傭兵団時代の頃に顔を合わせている
所持スキル
・悪食
何でも取り込むことが出来るスキルでバルディッシュを食べることが出来たのも悪食の効果によるもの、魔力も吸い取ることが可能
・グルメ
常時発動型で食べた物体の能力を得ることが出来る。相手の魔力を取り込んでしまえるので食べれば食べるほど強くなる。また特色を引き継ぎフェイトの攻撃を防いだのも体表が固い生物を取り込んだ結果である(云わばカービィのコピーに近い)
・
どんなに食べても満たされない無限の胃袋で目の前で両親を失ったことで発現してしまった
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