あそこには色んな奴がいた。社会のシステムから溢れ捨てられ平穏を享受出来なくなった玉石混交の集まりだった。金・名誉・ 家族の為に戦場を駆け巡った日々は代えがたい思い出となって心に残る。血の繋がりは無いが家族ように毎日が楽しく暖かい居場所だったのに何故か自分から抜けてしまった
目の前に投影されたモニターの中に映る男性は険しい顔をしていた。傍らに座る姉に介助されて起き上がった高町なのは自身に突き刺さる視線に目を合わせることが出来なかった
「今回のことは美由希から全部聞かせてもらった」
「ごめんなさい」
伏し目のままで謝るが動くのは首から上だけなので会釈するようになってしまう。笑顔が素敵な父親だが道を外れた行為をしたときには閻魔様より怖く、入院中に海鳴市へ帰還したときの言い訳を模索していたが早い再会に困惑する
「病人に説教をするつもりはない、あの事故で魔導士が命を脅かす危険な仕事だと熟知していたのに止めなかった落ち度がある」
「…お父さん」
任務で重症を負って苦しいリハビリをする彼女を見て高町家では『魔導士を辞めさせる』方針に傾いていたが、頑張って歩きだそうとしている姿と決意を受け取って意志を尊重することにした
「お父さん…私は」
「気が早いかもしれないが帰ってきてからのことは母さんたちと決めてある。今は回復することに専念してくれればいい」
「じゃなくて、私はまだ」
「なのは…今から対話や説得を試みる相手に銃や刀を向けることは正しいことなのか?」
美由希はフェイトから見せてもらった映像の内容を父親に伝えていた
「でも相手は犯罪者で」
「しかも会話を断ち切って杖からビームみたいな攻撃で先に仕掛けたそうじゃないか」
「それは魔法には相手を傷つけない非殺傷設定というのがあって、連行するために衝撃で気絶させるからダメージなんて殆ど」
「つまり話し合いは嘘で騙し討ちをする為なんだな!」
事実を淡々と述べられ彼女の勢いは止まってしまう。よくよく考えれば闇の書事件のときにヴィータと話し合おうとしたときも自身はレイジングハートを握り締めていた
「ちっ…違ぁ」
「何をしたかったんだ?対話なのか捕縛なのか」
あれはどっちつかずの対応だった。本人は臨機応変のつもりだったが結果だけを見れば全てを取り逃し魔導士として致命的なダメージを負った
そもそも今回のことは未然に防ぐことが出来た。六課加入前に体から発せられているSOSに耳を傾けることなく素人判断で大丈夫だと信じてしまった。今まで積み重ねてきたことが判断を誤らせて最悪の状況を生み出してしまったのだ
「その怪我は生半可な覚悟で負った報いだ!敵に助けてもらった事実を受け取って養生するんだ」
高町士郎が画面から消えると今回の通信に手を貸してくれた小学生時代からの友人である月村すずかが端から現れた
「なのはちゃん」
「ごめんねこんな状態で再会なんて」
「帰ってきたら覚悟しててね。傷ついた知らせを聞いたときにアリサちゃんが鬼のような顔をして口から火を噴いていたから」
「会うのが怖いな」
「隣にいてもフォローなんてしないから存分に怒られてね」
本気半分冗談半分の言い方だが友達との久しぶりの会話に心が落ち着く、まだ体は殆ど動かず利き手でミミズが這ったような字しか書けないが少しずつ回復の道を歩んでいる。否定はされたが治ったら相棒と一緒に空を―――
「いないか…」
隊舎を離れていたシグナムは彼と出会った広場に訪れていた。未だに眠り続ける主の看病を申し出るつもりだったが荒事で剣を振るうことしか出来ない彼女は最初から戦力外だった
「(私はいったい何をしているのだ?)」
ミドラを見つけたところで何も進展することは無い、だけど何もせずにはいられないモヤモヤが心の中で燻ってしまい動いていないと気が済まない
「(誰でもいい、誰か私のことを)」
悪いのは己であり断頭台に上るのは守護騎士たちで十分だが被害者たちは許してくれないだろう。10年の歳月があったのに何もかもが遅かった。立ち止まって進言するチャンスは幾らでもあったのに楽な方へ流されてしまった
「(機動六課はもう…)」
ミドラとの戦闘で高町なのはが散った。命令無視を続けたヴィータが謹慎中の身でキャロはフリードを失ったことで抜け殻のようになってしまった
そして部隊をまとめる八神はやてが倒れてしまったことで組織の根底そのものが崩れ落ちそうになっている。ギリギリの運営で現場で動ける隊員たちにも疲労の色が浮き出ているのが目に見えてしまう
「(……………………………)」
脳裏に浮かぶのはマイナスの思考であり気分を陰鬱にさせてしまう。窮地に陥ったことは何度もあるが培ってきた経験を活かすことは難しく答えが見つからない
「あの頃に帰りたい」
何もかも捨て去って家族で海鳴の地に戻りたい、何気ない日常と当たり前の日々を過ごし全員で食卓を囲むのが幸せだった。六課設立時は食堂に集まって業務報告や新人の成長を口にしながら箸を進めていたが久しく食事の場で顔を合わせることはなかった
「(そうか…私はこれを奪ってしまったのか)」
魔力を奪われた者たちにも家族がいた。団欒の時間を奪い喪失感を与えて自分たちは幸せになった。被害者が苦しみ加害者が笑っている姿を見れば怒りがこみ上げてくるのは火を見るよりも明らかなことだ
「(受け入れることなんて―――)」
そしてふと思い出す。喫茶店でミドラと言葉を交わしたことを、帰り際に彼は『孤児院』と口にしていた
「(捜してみるか)」
決して話の通じない人物ではない、もしかしたら心のモヤモヤを解消する可能性を見出してくれるかもしれない、そう思ったシグナムは広場から去り虱潰しに捜索を始めるのであった
廃棄区画の自宅や孤児院ではなくスカリエッティのアジトに身を寄せていたミドラは地下に存在する入浴施設の大浴場でくつろいでいた。近接戦を主体にするノーヴェのガンナックルが完成しテストの相手として選ばれ模擬戦を終えたばかりである
湯船に浸かり目を閉じて瞑想するように今までのことを振り返る。自分自身は孤独の中に身を置いていたはずなのに見渡すと周囲には人が溢れていた
「(分かっているのに…俺は)」
善意の手が差し出されているのに握ることをしない、相手は気にかけて心配してくれるのに跳ね除けてしまう
「(らしくねぇ!どうしたんだ)」
今まで光の道に戻る誘いを断っても気にすることはなかったのに嫌な気分で心が支配されてしまい気持ちが悪い、変化が起きようとしているのを無理やり宝箱の中に封じ込めている
「考えすぎか」
「何を考えていたの旦那?」
「俺を取り巻く…おい、なんで湯船にいるんだセイン!」
水面を叩くと飛び散った水飛沫が彼女の顔に命中した
「お姉ちゃんとして旦那みたいに料理をして妹たちを労おうしたんだけど、電子レンジに入れた生卵が爆発しちゃって」
「その瘤はトーレのか」
「ここは掃除しておくから汚れた体を洗って来いって、あのパンチがあれば旦那もイチコロだね」
腕組みをして"うんうん"と頷きながら思い返していた。そしてセインは冷水に浸けていたタオルを風呂桶から取り出して赤く腫れている瘤を冷やす
「それで何を考えていたの?」
「人生の振り返りなんだが、今のお前を見てたら悩むのがアホらしくなってきた」
「ひっど~い、馬鹿扱いしないで!これでもノーヴェやウェンディよりも頭は良いんだよ」
頬を膨らませて顔を真っ赤にして近づいてくるがデコピンで瘤の部分を弾いて進行を食い止めた。彼女は痛む頭を抑えて低い呻き声を浴室内に響き渡らせる
「でも悩めるって良いことだよね」
「どういうことだ?」
「徹夜明けのドクターが言ってたんだけど、『悩んで苦しんで考えるこそ人は新たな境地に至れる』って」
科学者でありながらスカリエッティは効率を求めることはしない、変態だからこそ無駄を楽しむ余裕があり身に振りかかるピンチですら研究と称して口角を上げてしまう
「旦那も悩めるってことは新しい1歩を踏める兆しなんだと思うよ」
「……そうか」
「何に悩んでいるのか知らないけど、笑っていこうよ!怖い顔で名案なんて生まれないよ!」
まさかセインに心配され諭されるとは思わなかったが彼女もミドラのことを見ていて気にかけていた。気苦労を掛けてしまったことに対して頭を下げるとセインは笑顔で返してくれた
月村がミッドチルダとの通信が出来ることに関してですが、ニュータイプかメガミマガジンのポスターで管理局の制服を着たフェイトとはやてが地球にいる月村とアリサに電話をしているのがあって今回採用にしました。
なのはパパも娘のやり方に切れてますが頭ごなしに怒ることはしませんでした
感想ありがとうございます(おまちしてます)
お気に入り登録もありがとうございます
誤字訂正もありがとうございます
高町美由希の戦闘力は?
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ナンバーズに勝てる
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ギリギリ善戦出来る