「イイウマデスネ~」ってされたら二度と手には戻らないからな
夢を語ってくれた友を翌日に弔う。地面に突き刺した墓標に手を合わせ親交の深かった者は涙を零した。砲撃魔法を空に放ち肉体から解放された魂が迷わず天に向かうための道しるべとなり別れの挨拶となる。当たり前のように繰り返したことで受け入れるようになり彼の価値観が形成されてしまった
夢を見ていた。目覚まし時計が鳴る前に目覚めると隣で眠るヴィータを起こさないようにベッドから出て朝食の準備に取り掛かる。冷蔵庫の中身と睨めっこをしながら献立を考え味噌汁に入れる具材を切り分ける
「おはようございます。主」
「もうランニングは終わったんか」
玄関ではなく庭先の窓からジャージ姿のシグナムがザフィーラを伴って現れた。はやては火を止めてリビングに置いていたタオルを渡そうとするが制されてしまう
段々と朝日が差し込み1日が始まろうとしている。物音で目を覚ましたシャマルとヴィータも扉を開けて全員に挨拶を述べると彼女の作った朝食がテーブルに並ぶ
「ほなら食べようか」
手を合わせて"いただきます"と口にした。箸に不慣れなヴィータはスプーンで炊き立てのご飯を食べながら作ってくれた彼女に感謝の言葉を述べる。みんなが笑顔で食卓を囲み両親を失った彼女に幸せを与えてくれた
ホテルや高級料亭のように豪華絢爛で煌びやかな料理なんて必要ない、大切な家族と笑って過ごす何気ない日常こそ贅沢である
見ていた夢が黒く塗りつぶされ一家団欒の光景から変貌する。テーブルの上には同じように料理が置かれているが座っているのはまだ少年と呼べる男の子だけだった
「…………」
それは明らかに1人で食べれる量ではなかった。少年は誰かを待つように椅子を見つめているが皿の前に置かれているのは白黒写真だった
その光景を見て彼女は気付いてしまった。段々と心臓の鼓動が早くなり額から汗が落ちていく、夢から覚めることを願うが何も起こらない、俯瞰すると白骨化した屍の上で自分たちが笑顔で食卓を囲み幸せを享受している
「起きるんや!はやく」
自身の頬を抓るが夢の中なので痛みが無い、涙をこぼしながら何度も繰り返すが現実に戻ることを許してくれない
「謝るから…ちゃんと、謝るさかい」
ー謝ってどうするの?形だけで結局楽になりたいだけでしょー
「受け入れるんや!むっ、向き合って…」
ーやってる感を周りに見せているだけで悦に浸った自分を演出するんでしょー
「違う!夜天の主として―――」
ー被害者たちの幸せを奪って守護騎士たちと家族ごっこ、素敵なお遊びねー
彼女の目の前に見覚えのある魔導書が浮かんでいる。それを震える指で触れると表紙が開かれ白紙のページで止まった。はやては中身を見ようとして顔を近づけると飛び出してきた血だらけの手によって口と鼻を塞がれるように掴まれてしまう
「んん~~~ぶぅ!」
ー返してしよ!お父さんとお母さんを、なんで僕から大切な家族を奪ったの?悪いことなんてしてないよ明日は遊ぶ約束をしていたのに、ナンデ ナンデ ナンデ ナンデ ナンデ ナンデ ナンデ ナンデ ナンデ ナンデ ナンデ ナンデ ナンデ ナンデ ナンデ ナンデ ナンデ ナンデ ナンデ ナンデ ナンデー
「ぐぅぅぅ!んんんんんん」
開かれたページから蒐集の被害者たちが抜け出して迫ってくる。振り払って逃げようとしても足首を掴まれてしまい全く身動きがとれない
ーちゃんと話してくれたら僕の魔力だってー
少年の胸から女性の腕が突き出で露出したリンカーコアから魔力を奪い闇の書に文字が刻まれていく、白目を剥いて倒れた彼を捨て去るように鉄槌の騎士はアイゼンで殴り飛ばした
「(なんてことを…こないなことを)」
いつの間にか被害者たちの手は骨となって拘束を解いていた。しかしここから立ち去る気力が湧かない彼女は小さくて渇いた笑い声が漏れ出るだけだった
「い…たい、」
シミひとつ無い健康そうな脚から鈍く痛みだした。視線を向けると皮膚の下から何かが蠢くように脈を打つ、1つを叩いても別の場所から盛り上がり段々と痛みを倍増させていく
「あぁぁぁ!ひ・・・嫌あああぁぁァァッ!?」
そして皮膚を突き破り現れたのは小さい黒い蟲だった。蟻が巣穴から這い出るように自身の太ももや脛から穴を開けて飛び出してくる。狂気の叫び声が空間を支配し蟲を振り払おうとするが湧き出るのが止まらない
「嫌だ! 嫌だぁ!うあああぁぁぁッ!」」
絶叫するはやてを助ける者は存在しない、冷静さを失い子供のように泣き叫ぶ
「ああ…ああぁぁぁうぁぁ!」
気付いてしまった。これは自身に科せられた『呪い』であることを、受け入れると口にしたことで身に降りかかる報いを全て取り込むことになる。ミドラが口にした犠牲が彼女を押し潰すように圧し掛かった
「くあああああぁぁぁぁぁぁッ!」
こんな脚なんて要らない、返すから奪ったものを返すから誰か私を助けて!
「………っぅはぁ!はぁ!ああぁ、はぁ」
ようやく悪夢から目覚めることが出来た。しかし起きたとしても目の前には現実という地獄が迫ってきている。カリムが示した崩壊の予言を信じて未然に防ぐために機動六課を設立したのに崩れ落ちそうになっているのは自分たちだった
「(なんで、こうなってしもうたんや)」
目論見が甘かったのかもしれない、地上に海の拠点を強引に作ったことで援助を受けることが出来ず隊員たちに大きな負担を与えてしまった。実力を示せば理解してくれると思っていたのに大人の世界で子供の落書きは通用しない
「もう…疲れてしもうた」
近くで椅子に座ったまま寝ているリインを見ながら静かに点滴の針を抜いて幽鬼のように力なく立ち上がると医務室から出て行ってしまった
ミドラを捜すために廃棄区画に踏み入れたシグナムは今まで見向きもしなかった現実を直視していた。朽ち果てた建物は今にも崩れ落ちそうなのに家を持たない者は雨風を防ぐために住み続ける。道はひび割れ隙間から草木が生えていた
「(もう少し奥まで行ってみるか)」
地図なんて存在しない、道端で座る老人に尋ねても耳が聞こえないのか困った顔をしたまま震えていた。彼女は勘と遠くから聞こえてくる子供の声を頼りに歩を進める
「(何を話したらいいんだろうか?)」
出会ったとしても向こうは嫌な顔をするだろう。自分は彼の両親を奪ってしまった悪しき存在で憎まれてもいいのにミドラは復讐に加担しない
「…償うとはなんだろうか」
神に懺悔しても死者は蘇らない、被害者が捨て去られ犯罪に加担した者たちが幸せになる
「どうしたのお姉さん?」
「ん…あぁ、ちょっと道に迷ったのでな」
思案にふけっていると5歳ぐらいの少女が下から覗き込むのように尋ねてきた。現地に住処を置く人物なら孤児院の場所を知っているかもしれないと思い尋ねる
「知ってるよ!だってそこで住んでるもん」
「そうか…つかぬことを聞くがミドラという少年を知っているか?」
「おじさんのこと?」
その言葉に苦笑いを浮かべるシグナムは端末から彼の画像を取り出して少女に見せると『ミドラおじさん』とはしゃぎながら口にしていたので案内を頼んだ
「こっちだよ!ついて来て」
地面の割れ目を動物のように飛び越え走っていく、遊びのつもりなのかパルクールのように瓦礫の上をジャンプしながら見失わないように駆ける
しばらくすると大きくて古びた建物を視界に捉えたシグナムは少女と共に門を潜る。『待ってて!』という言葉で広場に放置された彼女は遊んでいる子供たちに目を向けた
「(輝いているな)」
身に纏っている衣服はボロボロで汚れているが悲壮感は伝わってこない、フィクションだと荒廃した土地に佇む孤児院は現実を悲観し表情を暗くする面々が相場なのにここは全く違う
「(我々より立派に生きているとは)」
圧倒的な弱者なのに自身の足で立ち上がって前に向かっている。力ではなく心が強いと感じたシグナムは今の自分が誰よりも弱く卑しい存在だと思い込んでしまった
「ピンクのお姉さん!ごめんなさい、今日もおじさんは来てないの」
「そうか」
「だからおじさんの友達を連れてきたから」
少女の背後には修道服を模した服を着用した30代後半ぐらいの男性が立っていた。彼は身を屈めると少女と同じ目線になって礼を述べる
「このお姉さんと話があるから向こうで遊んで来なさい」
「分かった!」
そう言って砂場まで走っていく女の子を見送ると、彼は息を吐きながら立ち上がってシグナムの方へ向き直って親指で建物の中に入れという仕草をすると背を向けて歩き出すのであった
孤児院の代表はガンダムWのファザー・マックスウェルをイメージしてます(年齢は違いますが)
今後の展開ですがギル・グレアムを表舞台に出したいと模索しています。1番の現況が地球で猫たちと不自由なく過ごしていることに違和感を抱く
感想ありがとうございます(おまちしてます)
お気に入り登録もありがとうございます
誤字訂正もありがとうございます
明日はセントウルステークス スプリンターズには参戦しないのか?頑張れピューロマジック
高町美由希の戦闘力は?
-
ナンバーズに勝てる
-
ギリギリ善戦出来る