元々はルーテシアを伴って乏しくなった日用品の買い出しをするつもりで予定を組んでいたが彼女は『任せて』と豪語し1人で向かってしまった。護衛にアギトが随伴しているので困ったことが起きたら連絡をするように伝え拠点にしている湖畔で瞑想にふけっていた
「(あとどれぐらい持つのか)」
ミドラの作った料理を食し体調は改善されたが死期そのものを遠ざけることは不可能だった。ロウソクの火は着実に彼の生命を溶かし消失に誘う
「これで全部買った」
「忘れ物は無いよな!」
会計を終えたルーテシアはアギトの問い掛けに頷いた。レシートをゴミ箱の中に入れて点外に出ると眩しい太陽の光が2人を照らす
「アイツ等のアジトへ行くのか?」
「今日は呼ばれないから行かない」
「なぁ、ルールーさっさとXIのレリックを見つけて逃げようぜ!変態野郎と関わるのは―――」
「ミドラのこと嫌い?」
彼女の言葉にアギトは悩むことなく首を横に振った。好意の感情ではなく付き合う上で信用に値する人物として彼のことを捉えている
「ミドラの兄貴は旦那やルールーと同じだ!悪い奴じゃない」
「アギトが燃やしたお金を返さないといけない」
「…バレてた?」
コクリと小さく頷いて肯定した。ユニゾンデバイスである彼女はミドラから無期限・無担保・無利子で借りて現在の返済状況は2割程度である。約30センチの体躯ではアルバイトは不可能なので自販機の下に落ちている小銭やカートリッジシステムから排出された空薬莢をリサイクル業者に渡して換金している
「ゼストも知ってる」
「手を貸すなんて言うなよ!あたしが結んだ約束なんだ、助けなんていらねぇ」
宙に浮かびながら腕組みをして決意表明するが返済完了までに年単位の月日を待つ必要がある。全額を払い終える頃にはミドラが呼称ではなく本当の『おじさん』になっているはずだ
非合法な研究所で顔を合わせてから2年が経つ、その頃のルーテシアは感情表現が乏しく会話も事務的なことしか口にしなかったが多少進歩した。冗談などは口にしないが優しい言葉をかけてくれることもありミドラにも割と懐くようになった
「どうした?」
「あれ」
立ち止まった彼女は人さし指を上に向ける。その先には廃ビルがあってアギトは額に手を当てて目を細めると屋上に誰かが立っているのが見えた
その人影は背中を向けてダイビングのバックロールエントリーのように落ちようとしている
「おい!ルールー」
「ガリュー、お願い」
デバイスを起動し召喚陣が浮かび上がり苦楽を共にする相棒を呼び出した。二足歩行の召喚獣は一気に加速して落下中の人物を掴んで壁走りを披露しながら人目のつかないところへ着地する
「大丈夫?」
「(コクッ、コク)」
「ありがとう」
生命を投げ出そうとしていた女性は気を失っていた。アギトはポケットの中をまさぐり身分証の類を探してみたが何も出てこなかった
「この制服ってことは管理局の人間だよな?」
「アギト」
背中を指で突つかれ振り向くとルーテシアが携帯端末を起動してニュースサイトの画面を開いていた。その1つから画像をタップして拡大すると目の前で寝ている人物と一致している
「機動六課って、あたしたちの敵じゃねえか!」
「何で落ちようとしたの?」
「知るかよそんなこと、置いていこうぜ関わったら碌なことに巻き込まれるって」
当然の反応である。自分たちと敵対する組織のトップが屋上から身投げをした時点で関わらないのが吉だ、アギトはルーテシアの服を引っ張って立ち去ることを提案したが彼女は踏ん張って岩のように動かなかった
「理由を聞きたい」
「ルールー!」
何かが少女の琴線に触れたのか八神に興味を持ってしまった。アギトの意見を遮るように再びガリューを召喚し抱き上げさせた
「あ~もう!どうなっても知らねぇ」
顔を真っ赤にしているが、目を覚まさない八神はやてを覆う布を探し出して被せるあたり非情にはなれないのは優しさである。その場を離れるとゼストのいる湖畔へ戻るのであった
「対応に困って俺に連絡したという訳か」
「お前の知恵を借りたい」
遠くの方ではアギトの『炎熱』で火を起こしてもらったルーテシアが気付け薬を作るために鍋へ様々な薬草や錠剤を投入している。ヤバい刺激臭が漂ってくるが今は放置しておこう
「この少女に隊長の椅子はまだ早かったか」
「色んなものを抱えすぎて耐えれなくなったんだろ、おっさんだって似たようなことは経験したことぐらいあるんじゃないのか?」
「俺は頼れる友や仲間がいたから乗り越えることができた。そして目の前にもいる」
「へいへい」
会話を切り上げると紫色の煙を放出する鍋に近付いて味見をした。レアスキルのおかげで毒に対する耐性を持ち合わせているが想像を絶する味に顔色が真っ青になる
流石にこれを飲ませるのは酷なので液体をハンカチに付着させて八神はやての鼻腔に近づけた
「んんっ…ぐぅっ!」
臭いに反応して険しい顔になると次第に意識が回復し閉じていた目が見開いた。何度か瞬きして目を擦って状況を確認する
「ここ……あんたは!」
「目覚めた直後に悪いが、何で命を絶とうとした八神はやて?」
ここが天国じゃないことを理解した彼女は立ち上がって去ろうとするが背後にはゼストが待ち構えていて左右に顔を振ると鍋を持ったルーテシアとアギトが挟みこむように立っていたのを見て降参の意思表示をする
「そうか聖王教会の予言を信じて部隊を設立したのか」
「地上本部のお偉いさんはカリムのことをペテン師の戯れ言だと思い込んでるみたいで、ちゃんと実績だって残してきとんのに」
「陸としては次元航行部隊と深い繋がりを持つ聖王教会の言葉を諸手をあげて受け入れることは不可能だ、それだけのことを『海』の連中はしてきた」
切り株に腰を降ろして対面になる2人の話をミドラは遠くから眺めていた。話し相手としては自分よりゼストが方が向いているので自主的に戦力外となった
「はっきり言わせてもらうが八神はやて、貴官のやろうとしていることは地上部隊で働く者たちへの侮辱だ!過去の清算すらできない雑兵に未来を語る資格は無い」
本来なら存在しない人生の大先輩からの金言に耳を傾けることが出来るのか?
すいません仕事で疲労困憊で頭が回りません(土日に充電します)
感想ありがとうございます(おまちしてます)
お気に入り登録もありがとうございます
誤字訂正もありがとうございます
高町美由希の戦闘力は?
-
ナンバーズに勝てる
-
ギリギリ善戦出来る