地上本部に勤めるレジアス・ゲイズは業務を終えると時計に目を向けた。時刻は夜の10時を過ぎた頃で2週間ぶりに午前様にならず帰宅することが出来る
「車を用意してくれ」
自身の娘で秘書を務めるオーリスに頼むと霞む目を擦りながら背もたれに体重を預け今後のことを思案していた
「(どうしたものか)」
彼の悩みは自分たちの管轄に割り込んできた機動六課の存在である。最近は任務失敗が多くレリックを奪われ存在意義を問われている
タカ派の彼は同じ志しを持つ者たちから声援を受けて六課を潰す算段を立てているが向こうの背後には非公式ながら伝説の三提督が控えている。下手を打ってしまうと自分たちが今以上に冷や飯食いになってしまう
「私は別件で残りますので、父さんはゆっくりお休みになってください」
「あぁ…分かった。お前も無理はするな」
久々にオーリスから「父さん」と呼ばれた気がする。星空が見える前に玄関で「パパ」と呼ばれた頃を懐かしく思い出し笑みがこぼれる。武勇に優れる友と自分たちの住まう世界を良くしようと誓った日から幾星霜の月日が過ぎ去り自分だけが残されてしまった
「…ゼスト」
ネオンが揺らぎ流れていく街の景色を見ながら友の名前を口にする。しかしその瞬間に違和感に気付いてしまった
「(どこを走っているんだ?)」
自宅に向かっているはずなのに走行ルートが全く違う。工事が行われて迂回するのであればハンドルを握る運転手が道を変更することを口にするはずなのに無言のままだった。引き返すことを命令するとブレーキを踏んで顔を向けてきた
「貴様は!」
「初めましてだなレジアス・ゲイズ中将殿」
運転手に扮していたのはミドラだった。彼はレジアスに新聞と1枚のチケットを投げ渡すと再びアクセルペダルを踏んで車を走らせる
「なんのつもりだ!早く降ろせ!」
「別に危害を加えるつもりはない、ちょいと頼まれごとをしているだけだ」
「…頼まれごとだと?いいから止めろ」
後部座席から運転席の背部を蹴り倒そうとするがシートスライドを後方まで下げられリクライニングも倒されてしまい身動きが取れなくなった
「慌てるな、五体満足で命の保証はしてやる。それに応じてくれればお土産も渡す」
車内を支配され救援を呼ぶことができないレジアスは彼の言葉を信じることしか出来なかった。しばらく車を走らせると湖畔の入り口で止まり、先に出ていたミドラが仰々しい態度でドアを開けて持っていたチケットを受け取りレジアスは外に出る。そこにいたのは…
「久しいなレジアス」
「…………っおお、おま!」
突然のことで頭が混乱し言葉の発し方を忘れてしまった。自分の目の前に立っている人物は8年前の任務で亡くなったはずのゼスト・グランガイツでありレジアスとは理想について語り合った親友の間柄だった
「終わったら教えてくれ、向こうにいるから」
「すまない」
そう言って彼は焚き火で沸かした鍋の中で入浴するアギトを見つめるルーテシアのところへ向かって行った
「……ゼスト…お前は」
「間に合ってよかった。あいにく死神が近くまで迫っている身でな」
「儂も敵が多い、それこそ朝日を拝めることに安堵する」
止まっていた時計が動き出し2人は膝を付き合わせて視線を合わせた。この空間に誰も立ち入ることを許さない空気を作り出して誰も近寄ることができない
「なぁ…兄貴」
「どうした?」
鍋の中へコンビニで買ってきた入浴剤を投入し、中身が混ざりやすいように火力を少しだけ上昇させてスプーンでかき混ぜている
「旦那はあとどれぐらい生きられるんだ?」
「そればっかりは分からねぇな、ドラゴンを材料に使った料理で多少の延命を可能にしたが少なくとも今日明日じゃないだけ確かだ」
「永遠の命や長生きするロストロギアって持ってないのか?」
その言葉に首を横に振った。過去に死者の魂を現世に呼び戻す代物があると耳にして探してみたがガセネタであり駆け出しの頃は大きな損害を受けた
「もっとドラゴンが必要?」
「薬も食べ過ぎたら毒になるから大丈夫だ」
湯煎で溶かしたチョコを無表情で味わうルーテシアにプレーンクッキーを渡すと彼女は浸しながら口の中へ入れる
「長生きしてほしい」
「そうだな、お前が大人になる姿を見せてやらないと」
「あと介護も」
「……介護って、あ〜母親のか?」
ルーテシアの母親はスカリエッティのアジトで保管されている。活動していなければ筋力も低下するので復活した際にはリハビリが必要になる。まさかの介護士扱いに苦笑するがエプロン姿で案外こなしてくれそうな気がする
「バッテンチビたちはどうなるんだ?」
「バッテンチビ?」
聞きなれない言葉に疑問符を浮かべるとアギトは機動六課に所属するユニゾンデバイスのことを説明しルーテシアのデバイスから写真を出した
「もう少しで六課は潰れる」
「なんで言い切れるんだ兄貴?」
「逃れられない運命だからな」
何かを隠している言い方に彼女は追及しようとするが問い詰めたところで求める答えが返ってこないことを理解している。アギトは湖畔の冷水と鍋の湯船を連続で交互に入ってスッキリするのであった
「終わったのか?」
「あぁ…奴の歩む正義を俺の命が尽きるまで見届けるつもりだ!死んだ人間がこれ以上手出しをするのは野暮ってものだ」
「旧友なんだろ、今生の別れになるかもしれないぞ」
「どんなに離れていても、ここで繋がっている」
ゼストは胸を親指で叩き、流れ星を捜している彼女たちのところへ向かおうとしたが踵を返してミドラのところへ戻って来た
「どうした?」
「花屋の場所を教えてくれないか、まだ体が動くうちにクイントの墓前へ供えたい」
「生者にしかできないことだもんな、分かった」
住所を教えると彼はレジアスを乗車させて湖畔から去っていった。流れ星に願いを込めてもいつ叶うのか分からない、だがミドラに頼んだことで心に刺さっていた棘が抜け落ちた気がするゼストはルーテシアたちのところへ向かっていく
「どうでした中将殿」
「夢の中にいる気分だった。叶うのなら醒めてほしくなかった」
「ロマンティックをぶち壊すが世知辛い現実だ」
「奴との思い出は色褪せることなく儂の中で残り続ける。ところで土産を渡すと言ったが?」
「もう渡してある」
レジアスの自宅に到着し彼を車から降ろした。再会の機会を与えてくれたミドラにチップでも渡そうとしたが手で制されてしまい車内に残っていた新聞を渡される
「
そう言い残して走り去りレジアスは車が小さくなるまで見届けた
その2日後のことだった。機動六課の隊舎にオーリスを先頭にした地上本部の監査官が抜き打ちで査察に訪れた。表に立ったクロノは突然の来客に対し『マナー違反』と口にしたが彼女は毅然とした態度で向き直り
「査察とは本来抜き打ちで行うものです!それとも隠しておきたい秘密でもおありですかクロノ・ハラオウン?」
「…いえ、そんなことは」
「では、機動六課代表である八神はやて二等陸佐を呼んでいただけませんか?」
オーリスから発せられた言葉に冷たい汗が背中に流れ落ちる。はやてが入院していることは秘密であり露見してしまえば六課は活動していくのが不可能になってしまう
「季節の変わり目で体調を崩し部屋で―――」
「隊舎にいるのであれば、面会することは可能ですね?」
「とても見せられる顔ではないと、今回の件ですが聖王教会や本局へ通告させてもらいます」
頭の悪い言い方にすれば『お前等のことを上層部に言いつけてやる』だが、今の状況ではこれしか打つ手がなかった。三提督の名前で怯んでくれることを祈るが彼女は眼鏡を光らせると
「問題ありません。我々は真実を見定めに来たのですから」
「真実?」
「見苦しい真似はしない方が得策だと言っておきます」
ミドラが運転手に扮している元ネタですがGガンダムでアレンビーが登場した放送回でドモンがアルゴから情報を聞くために変装していた内容をオマージュしています(もちろん新聞も)
活動報告でハイスクールD×Dへの要望が多かったので今作が終わりましたら取り掛かる予定です
感想ありがとうございます(おまちしてます)
お気に入り登録もありがとうございます
誤字訂正もありがとうございます
高町美由希の戦闘力は?
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ナンバーズに勝てる
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ギリギリ善戦出来る