解散命令の内容が世間に知られる寸前のことだった。オーリスたちの査察が終わりクロノを含む隊員たちは魂が抜け落ちて肉体的・精神的に疲弊し、業務もままならない姿で椅子から動けない日々も相まって空気が重くのしかかる。監査官の質問はどれも自分たちが隠したい事実を露呈させてしまうもので好印象を与えるものは何も無かった
「…誰が……誰のせいなんだ」
しばらくして犯人捜しが始まった。部隊長の八神はやてが入院しているのは限られたメンバーしか知らない事実であり容疑者は必然的に絞られていく、少なくとも彼女の家族である守護騎士たちが漏らすことはあり得ない、ライトニング分隊のエリオとキャロも今回のことを身近に語れる友人が存在しないので除外される
短絡的に考えれば病院の関係者が情報を売った可能性が妥当だが相応の口止め料を渡したのに、わざわざ危険を冒すような行為をするのだろうか?仮にタレコミがあったとしても本局に情報が伝わるはずなので査察そのものを止めることが可能なうえに自分たちのところへ連絡が来るはずだ
「…っふぇ、なんでみんなあたしのことを―――」
消去法で行きついてしまった選択肢はスバルだった。悪意を持って誰かに伝えたのではなく、うっかりミスで誰かに伝わってしまった可能性や彼女の父であるゲンヤ・ナカジマに言ってしまったストーリーが隊員たちの頭の中で構築されてしまう
「待ってください!」
「ギン姉」
「確かにスバルは馬鹿で向こう見ずの無鉄砲ですが、仲間を売るような真似なんてしません」
守っているのか貶しているのか分からない、彼等は安易に疑ってしまったことを謝るが歪みは埋まることはなかった。しばらくするとシグナムがハッとした顔で思い出す
「ミドラだ!」
入院の秘密を知る外部の人間は彼女を助けた彼等だけである。しかしクロノたちは頭の上で疑問符を作って首を傾げるのであった
彼は自分たちと敵対する関係だがミドラ個人がこちらに攻撃を仕掛けたことはなかった。云わば受け身の立ち位置で今回のようなまわりくどい手段を用いるのは変だと感じている。そもそも彼の場合なら物理的に潰しにくる方が自然なのだ
「妥当だが決め手がない」
ミドラが情報を売ったと仮定した場合『誰に伝えたか?』のか分からない、査察を決定した書面には地上本部のレジアス中将の名前と判子が記載されているが2人は繋がっている情報は耳にしたことがない、今回のことは少なくとも将官クラスとのコネがなければ出来ないことだ
「…………」
結局のところ犯人捜しはうやむやになり解散となったが、シグナムの発言以降黙っていたヴィータは彼女が1人になるまで待って私室に籠もったのを確認して突撃する
「どうしたこんな時間に」
「……………」
「主や六課のことが心配なのは分かるが、我々が出来ることは限ら―――」
「…けるな、ふざけるな」
返答の前にヴィータは1枚の写真を投げつけた。それはシグナムが孤児院でミドラたちと談笑しているところを捉えた瞬間だった
「ちがっ…これは」
「裏切り者の
憎しみをぶつけて糾弾し罵る。ガジェットに追い詰められ敵対するナンバーズたちに敗れミドラから見下されているストレスを仲間にぶつける
「待て、ちが―――」
「全部終わったら、てめぇをぶっ飛ばす」
背を向けて部屋から出ていくヴィータを止めようとするが、鉄槌の騎士は回し蹴りをするように右足を軸にして回転しグラーフアイゼンをシグナムの側頭部に叩き込んで吹き飛ばす。非殺傷設定を解除した一撃に意識を失い沈黙してしまった
頭の中ではミドラを犯人と決めつけていた。自身の大切な主を救った男でもあるが今までの怨みが全てを飲み込み暴力的な思考に支配されている。そして彼女は孤児院襲撃の為に裏門から抜け出そうするが外にはエリオとキャロが待ち構えていた。ヴィータはアイゼンで薙ぎ払おうとするが2人は頭を下げて同行することを懇願してくる
「見ていたのか?」
「フリードの仇を討たせてください」
「許さない」
普段の彼女だったら諭すか殴ってでも2人を止めさせるが、死神が逃げ出す程の凶悪的な笑みを浮かべ同行を許すことにした
機動六課の内部は完全に崩壊していた。次の所属先を求めて自己申告書を記入し新しい部署への転属を考える隊員や、今回のことを機に管理局を辞めて民間企業へ転職するために履歴書を買いにいく者もいる。自分たちの今後が大切であり誰かを気にかける余裕なんて微塵もなく時は進み続けてしまうのであった
「何をしてるんだ?」
ミドラは機動六課に向かいながらモニターを操作する代表に言葉を投げかける
「きついお仕置きってところだ、誰に唾を吐きかけたか知らしめないといけない」
「しかし大丈夫か?あいつ等のいる場所に帰るまでが戦争だ」
平静を装っているが彼の体は傷だらけで歩いているだけでも激痛が全身を駆け巡る。痛み止めを服用しているが気休めに過ぎない
「問題無い、それよりも作戦だが」
「やることは1つだろ!誰を敵に回したか教えないといけない、それも骨の髄まで」
「場所は確認した。カメラもダミーの映像に切り替えてある」
実は孤児院の子供には捜索用のGPSバンドが腕に巻かれている。廃棄区画に居を構えているので知らない間にワンパク共が探検と称して外に出て行ってしまうことがあるので全員に装着させたのだ、最初は白一色だったが男の子たちが色ペンで塗ったことで好きなようにデザインをするようになった
「じゃあ。押っ始めるか!」
炎を纏った拳を振い轟音と共に機動六課の正門は破壊された。その音は彼等を終末へ導くゴングとして鳴り響く
「なんてことを……なんてことだ!」
ヴィータたちが孤児院を破壊する映像がミッドチルダ全員に公開されていた。確かに廃棄区画には監視カメラは設置されていないが家屋内に備え付けている者は一定数存在する。動画のコメント欄では彼女たちの行いを糾弾する者や、廃棄区画に住む面々を人間扱いしていないので『ゴミ掃除』と揶揄する言葉が並び、今回のことに対して討論会が勃発している
「…エリオ、キャロどうして」
保護責任者であるフェイトは呼び出した2人に問いかけるが彼等は口を開くことなく、彼女の手を跳ね除けた
「ヴィータ、貴様!」
「……ふん」
彼女は悪びれることもなく頭に包帯を巻いたシグナムを一瞥する。つい最近まで同じ釜の飯を食べて家族として過ごしてきたのに出来上がった溝は深く埋めることは出来ない、クロノはヴィータから犯行理由を聞き出そうと近付くと隊舎内に警告音が鳴り響いた
「…っあ、あく、悪魔だ!」
「逃げるな!我々で食い止めるぞ」
下っ端や警備兵の対応はそれぞれ違っていた。ミドラの姿を見て恐怖し戦意を喪失し命乞いをする者や管理局への忠義を貫き突撃する隊員など様々であった
「邪魔だ」
蟻が巨象に挑むようなもので彼等の攻撃は全く通用せず受けきると、雑兵が持っていた支給品のストレージデバイスを奪って齧りながら隊舎の方へ歩いていった
『対象は中央棟に向けて進行中、繰り返すミドラ―――』
館内通信が雑音と共に途絶えた。エイリアンに襲われる宇宙船のクルーのように迫りくる恐怖に隊員たちの体が震える
「たかだか1人に何をビビっていやがる。全員で潰せば問題ないだろ!」
この事態を引き起こした張本人に賛同する者などいない、しかし考えてみれば彼の破壊力に関しては知らない部分が多く、『実は防御や耐久面だけが優れているだけなのでは?』という思考に流そうになるが
「馬鹿者!」
傷を負っていたシグナムがヴィータを殴り飛ばした。引き攣った顔で睨みつけた彼女は反撃とばかりに押し倒し馬乗りになる
「やめろ!止めるんだ!」
クロノの声が響くが聞き入れられることもなく仲間割れは止まらなかった
「あら?取り込み中だったかな」
まるで散歩ついでに立ち寄ったラフな格好でミドラは自分たちの前に現れた。突き刺さる冷酷な視線は目を合わせただけで石になりそうな威圧感を与えてくる
「そっちの事情はどうでも―――」
「待っ…待ってくれ!孤児院を襲ったことは謝る!攫った人質も返す。だから」
懇願するクロノに彼は部屋に備え付けられたテーブルをフリスビーを投げるような感覚で投げつける
「なんで上から目線なんだ?答えなくていいよ、今ここで全てを終わらせてやるから!」
放出された魔力に戦慄した彼等は歩んできた人生の走馬灯を目に浮かべるのであった
崩壊が始まりました。次は多分今作初めてまともな戦闘になると思います
感想ありがとうございます(おまちしてます)
お気に入り登録もありがとうございます
誤字訂正もありがとうございます
高町美由希の戦闘力は?
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ナンバーズに勝てる
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ギリギリ善戦出来る