かつて英雄と呼ばれたギル・グレアムが久々に表舞台に立ち記者会見を開いた。彼は開口一番に謝罪の言葉を口にして集まった報道陣たちを驚愕させた
「10年前に第97管理外世界で発生した闇の書事件は私が主導しました!」
突然のカミングアウトにシャッター音と共に眩しいフラッシュが老年のグレアムを襲った。彼は事件が解決する11年前も指揮を執っており、自身の部下を犠牲にして暴走した闇の書を無力化させて独自に行方を追っていた
「全ては次元世界の平和のため、私が闇の書を手中に収めることが出来れば次元航行部隊へ予算と優秀な人材が集まり地上を傘下に置くことが可能になると思い報告を隠し、独自で所有者と接触し蒐集を指示しました」
ギル・グレアムの所業に闇の書事件の被害者団体は矛先を所有者である八神はやてから彼に切り替えて訴えることにして改めて裁判を起こす予定となっている。また彼は自身が提督時代に不正に関与していたことを告白し、全ての罪を受け入れると共に賠償に応じると答えている
「スケープゴート…人身御供、なんか違うな」
新たに建てられた孤児院の代表室でミドラは新聞を畳みテレビの音量をミュートにさせた。まだ工事自体は終わってはいないが人が生活するうえでは問題無く過ごすことが出来る
「夜天の主への矛先をグレアムに向けただけだ」
「結局のところ管理局は今までと変わらずじまいってことか」
地位に固執し利権に群がる輩は、誠実とは程遠い存在であり生き残る術は無数に所持している。彼は近くのソファで孤児院に導入する機材のパンフレットを読み込んでいるゼストのカップにコーヒーを注いだ
「やることが多いな、どれもこれもいっぺんに出来たら楽なんだが」
「頼りにしてるよゼスト先生!」
ここで働くことになったゼストはルーテシアからプレゼントされたエプロンを纏っている。強面のおっさんがピンク色のファンシーな代物を装着しているでギャップ萌え状態だ
「メガーヌのリハビリもある。人手不足はどうするつもりだ」
「もう助っ人は頼んである」
人差し指を窓の外に向けるとナンバーズのセインとチンクが子供たちと遊んでいる。おままごとで赤ちゃん役に任命させたチンクはおしゃぶりを咥えながら自分よりも年下の女の子に頭を撫でられヨシヨシされいた
「用意がいいな」
「おかげでバイト代の支払いが増えて大変だよ」
溜息を吐いているが別に困った顔はしていない、ルーテシアの母親であるメガーヌも拘束されていたカプセルから解放され自分たちのところでリハビリに励んでいる。ゆくゆくはここを出て家族で過ごすつもりだ
ナンバーズたちは各々の好きな道へ進んだ、格闘技の大会で前回のチャンピオンを下した者は道場を開いて門下生たちを指導しているみたいで増えていく入会希望者に四苦八苦している
「良い顔になった」
「褒めてもボーナスは出ないぞ」
「余裕が出来たら新規を受け入れるつもりだろ?」
その言葉に彼は曖昧な返事をする。廃棄区画の住人から要望として出されているが前任の代表より上手く立ちまわることの出来ないミドラは今がキャパシティの限界になっている。受け入れが出来なくても炊き出しで腕を振るうことはしている。そしてどこで知ったのかヴィヴィオが教会の友達を引き連れてやって来るのだ
「寄り合いに行ってくる。遅くなるから子供たちの風呂を頼む」
「分かった」
そう言って彼は部屋から出ていくとゼストはテーブルの上に置かれたカップを口に近付けるとミュートにされていた音声を復活させ画面に映るレジアスのことを見つめていた
「(悔しいな)」
自分はもう長くないのに、なんで人生が面白くなってきたのに死ななきゃならないんだ!槍を捨て未来のある子供たちの守護者となって今までとは違う充実感に満ちあふれていたのに、全員を見届けることなく終わってしまうなんて
「(せめてルーテシアが―――)」
成長してウエディングドレスを着た彼女と腕を組んで歩きたい、なんなら子供が産まれて『お爺ちゃん』と呼ばれたいが秒針は止まることを許してくれない、ならせめて生きた証を残すべく今日も彼は全力で子供たちと向き合うのであった
半年が過ぎてメガーヌのリハビリも順調に行われ松葉杖は必要だが屋外でも歩けるようになった。そして逆にゼストの体調が優れない日が続き彼は死期を悟っていたが、彼はミドラに頼んで車を出してもらうと約束を果たすためにクイント・ナカジマの墓へ向かった
「大きくなっただろ!あの時はまだハイハイしか出来なかったルーテシアだ」
「…クイント」
ルーテシアが花を供えて手を合わせて目を閉じる。直接会ったときのことは記憶から薄れているがリボルバーナックルを装着していた手で抱っこされたのは何となく覚えている
「もう…少しだけ死神に対して、抗ってみるつもりだ」
別れの挨拶をして振り返るとそこにはナカジマ家の3人が立っていたが、彼等は目の前にいる人物たちを見て震えだし持っていた花を地面に落としてしまった
「人造魔導士だと?」
「すまなかった。俺が無力だったせいで」
「あいつの好きな花を供えてくれだけでありがたい」
彼女の墓から離れた丘で腰を下ろした2人は語り合い、スバルとギンガは敵対していたルーテシアに言葉にならない感情を向けていたが近くにメガーヌがいることで何もできないモヤモヤが心を支配してしまう。この面々が顔を合わせるのは今日で最後になるだろう。全く違う道にを進みながら誰もが終わりに向けて歩いていくのだ
「忘れ物は無い?」
「…うん」
高町姉妹は故郷である地球に向けて出発する艦船の清掃が終るのを待っていた。行きと同じようにクロノたちの母親であるリンディが手を回し乗客は彼女達だけで貸し切りになっている。なのはの容態も回復し歩けるようになったので一時的に戻って様子を見る形になった
「フェイトちゃんも来れなかったね」
「日程は知らせたんだけど、既読がつかなかったから相当忙しいんでしょ」
この場に機動六課の関係者は誰もいなかった。平日ということもあり勤務中に抜け出して見送りに来るのは難しいことで『海』の緩さを普通だと思っていた彼女は少し寂しい気分である。美由希としては後腐れなく別れることを喜んだが、ミッドチルダを離れる前にもう一度だけミドラと会いたいと思っていたが叶わなかった
「失礼しました!」
艦船に乗り込むと清掃員らしい男性が残っていて最後のチェックをしていた。彼は深く被った帽子で素顔を隠し2人の脇を通り過ぎる
「お姉ちゃん…これって」
「熊のぬいぐるみ?」
自分たちの座る席の近くにプレゼントの箱をもった熊が鎮座していた。美由希はそれをおそるおそる手に取ってリボンで封じられた箱を開けていくと中からあるものが飛び出してきた
【MASTER】
「レッ……レイジングハート!どうして?だって食べられて」
「…まさか!」
窓の外に視線を向けると清掃員の男性が自分たちのことを見ていた。彼は人影に気付くと帽子を捨て去って素顔を晒す
「ミドラ君!」
今すぐ外に出たいがエンジンが点火し微速前進を始めていた。当然のことだが窓は開かないので彼女たちが大声で叫んでいるが彼の耳には届かなかった。ミドラは軽く笑って手を振ると背を向けて煙のように消えていく
『俺は悪い犯罪者だから貴女の依頼を破らせてもらいました。そのデバイスはお返しします』
あの時に食べたのは同じ大きさの飴玉でレイジングハートは外部との通信を遮断する魔法を施して自身のポケットにしまっていた。当初は何かに使えるかもしれないと思っていたがアジトで内部データに記録されていた家族との写真や映像を見たことで持ち主に返すこととなった
彼は美由希に感謝していた。筋を通すならちゃんと顔を合わせて礼の言葉を述べるべきだが後腐れなく別れるのであれば現状のやり方が正解だと思って行動した
10年前に家族を失った少年は孤独のまま成長した。満たさせない日々を過ごし人生の終わりに向けて歩き続ける毎日だったがようやく空腹を忘れることができる目標を得ることが出来た。未だに食欲は衰えることは無いが出会いを経て人生観が変わったのは言うまでもない、犯罪者であることは間違いないがミドラの信念は曲がることなく前に進んでいくのであった
それは孤児院の再建が終わってから数日が過ぎた頃だった。ミドラは自身の私物を孤児院へ運び出すために久々に拠点へ戻ってみると鍵が開いていた。ここ最近は帰ることなく孤児院やスカリエッティのアジトで寝泊まりしていたので泥棒が入ったのかと思った
「(誰かいるな)」
ロストロギア発掘で培ったスキルを用いて探知式のサーチャーを飛ばすと室内に熱反応が2つあることが判明した。足音を立てることなく無音で侵入しベッドしか置かれていないリビングに向かうと―――
「なんでお前等がここにいる。烈火の将」
そこには病院から行方を眩ませていたシグナムと八神はやてがいた。2人とも管理局の制服ではなく量販店で販売されている安い衣類でその身を包んでいたが、夜天の主はミドラを見ても不思議そうな顔をして何も喋らなかった
「待ってくれ、管理局には」
「とりあえずさっさと理由を話せ」
自分たちのへの処分が下る前にクロノの手引きによって病院を抜け出した2人だが行く宛てなんてどこにも無かった。誰かに頼ろうと思ってもミッドチルダの地で彼女を受け入れてくれる知り合いは存在しない、逃亡で利用している車で暮らしていくにも限界はある
「廃棄区画は治外法権だということを思い出して」
「管理局もここを手出しすることは出来ないからな」
ミドラがここに住み着く前に地上本部へ出向していた次元航行部隊の魔導士が、廃棄区画の住人に対して乱暴な行為をしたことで管理局は報復を受けてしまった。住人たちは自身の体をウイルスに感染させて人が多く集まる場所で咳き込むことで飛沫感染を爆発的に広げ経済がストップした事例がある
「なぁ…シグナム、この人誰なんや」
「…?おい、まさか」
「もしかして、いつも手紙をくれるグレアムおじさん?」
顔を合わせて話したこともあるのに今の言葉に違和感を抱いた。彼はシグナムの方に視線を向けると彼女は涙目で俯いたまま震えている
「主は…はやては―――」
「どないしたん?目にゴミでも入ったんか」
彼女は記憶を失っていた。記憶喪失なら何かがきっかけで復活する可能性が残されているが日を追うごとに歩んできた人生の思い出が無くなっていくのであった。昨日まで共に過ごしていた守護騎士たちのことを覚えていたのに
「ヴィータって誰や?お隣さんの犬のこと」
もしかしたら明日になったら目の前にいる自分のことを忘れているのではないかと不安になる。シグナムはミドラに抱き着いて心情を吐露すると彼は背中を摩って落ち着かせた
「すまなかった」
「それでどうするつもりだ」
「もう我々は表の世界で生きていくことは無理だ」
聖王教会に匿ってもらうことも考えたが、カリムに迷惑がかかるうえに教会も一枚岩ではないので通報されてしまう恐れがある
「俺のところで雇いたいが―――」
部屋はあるので住み込みで働くことは問題のないことだが、襲撃を受けた子供たちは当然のように管理局の人間に対して警戒心を持っている。特にシグナムは相談のために何度も訪れていたので顔が知られているのだ
結局のところこの場で答えが浮かぶことはなかった。ミドラとしては拠点を孤児院へ移すのでこの場所を利用することに対して問題無いが治安は良くないのは周辺を見れば分かることである
しばらくは機を見計らって食料の差し入れや衣類を提供していたが、八神はやての退行は止まることはなく毎回のように『初めまして』の自己紹介が始まってしまう。そんな生活が2年ほど続いたが、ある日を境に彼女たちは拠点から姿を消してしまった
机に残された短い書置きを燃やすと彼はその足でゼストが眠る墓へ向かうのであった
これにて最終回になります。ここからはいつものつぶやき・ボヤキ(通称:つぼ焼き)になります
・執筆経緯
今作は以前執筆した『心配性の実力者』のプロットから派生しました。1番最初は守護騎士たちの蒐集によって家族や集落の仲間を失った主人公が復讐をするために自身に呪いを施し、食べた毒物(トリコ世界における毒化したフグ鯨みたいな食材)を八神はやてにダメージを移す作品にするつもりでした。仕事中に妄想を繰り返した結果、ミドラはガッチャンのように何でも食べる設定になりました
・なぜかレジアス中将がまともな人になる
前作でもそうでしたが原作アニメでは悪役ポジだったレジアス中将なのですが、大人になって彼の所業や立場を考えると社会人としての悲哀を感じてしまって肩入れてしてしまいます。結局そのせいで機動六課や次元航行部隊が未熟な存在となってしまうジレンマが
・入れることが出来なかった内容
実は八神はやてに関してですが作中のどころで自身で足を不自由にさせる(方法は読者の方々に任せますが、筆者としては大工道具)シーンを入れるつもりでした。盛り込もうとしたときには終盤に差し掛かっていました。高町お姉ちゃんとナンバーズを戦わせる(アンケートしてますし)予定でしたが出来ませんでした
・はやてたちの最後をあやふやにしたこと
これは読者の方々にお任せします。誰かに拾われた可能性もあれば意を決して聖王教会に身を寄せたかもしれません、自分の作品では彼女を幸せにすることは出来ません
・なのはたちは地球に戻ったら
まずはアリサに怒られてからのガミガミモードで説教ですね(釘宮さんボイスで怒られるなんてご褒美じゃん)昼は翠屋で働いて定時制高校に通って短大を卒業したらパティシエの修行か、もしかしたら彼女を追ってきたユーノと結ばれる未来があるかも。なおレイジングハートは地球では完全にヤバイ代物扱いです
ミドラが地球に訪れて変装し翠屋のケーキを食べているかもしれません
・ラストのぬいぐるみ
知っている人は知っていますね
次回作なのですが活動報告で記した『ハイスクールD×D』になりますが、まだ序盤の展開しか頭にないので投稿が少し遅れます(決して競馬のG1シーズンだからギャンブルメインという訳では…どの口が言うんだ案件ですな)あとは更新が止まっている『推しの子』を終わらせたいというか改めて1から作り直そうか検討中です
元々は20話ぐらいで終わる予定でしたが倍まで増えたことに驚きました。感想を下さった読者のおかげで執筆を続けることが出来ましたので、まずはお礼を申し上げます
感想ありがとうございます(おまちしてます)
お気に入り登録もありがとうございます
誤字訂正もありがとうございます
今日は毎日王冠、この前は同じ7歳のメイショウゲキリンが頑張ったんだ!次は君の番だ頑張れセイウンハーデス
高町美由希の戦闘力は?
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ナンバーズに勝てる
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ギリギリ善戦出来る