機動六課の会議室にはスターズ分隊とライトニング分隊の隊長・副隊長が集まりスクリーンに投映されている人物を見つめていた。再生が終わり部屋が明るくなると組織の長である八神はやてが立ち上がり全員から視線を浴びる
「これが今のところ私たちの悩みのタネや、神出鬼没なうえにフェイトちゃんを圧倒する能力」
モニターに映し出されていたのはミドラでバルディッシュに記録されていた映像を全員と共有していた
「こんな奴アイゼンでぶっ叩けば」
「確実にお前が弾き飛ばされるなヴィータ」
「っんだとコラ!やってみなきゃ分かんねぇだろ」
顔を真っ赤にして椅子から立ち上がった彼女はポニーテールの騎士に食ってかかる。しかし彼女たちにとっては日常風景なので特に諌める必要はないのでスルーした
「主…これ以外に情報はありませんか?」
「この映像とフェイトちゃんの捜査資料しかあらへんのや、アコース君の所でも調査しとるみたいんやがなかなか尻尾出さへんね」
機動六課はロストロギア及びレリック関連と災害・事件が発生した場合の対応を迅速に行うために設立された試験部隊なのだが、ミドラの本業が絶好調であれば相対的に六課の評価が下がる図式である
「はやてちゃん大丈夫なの?」
「大丈夫や私たちの手で―――」
「そうじゃなくて、この前の週刊誌で10年前のことが…」
高町なのはが口にしたのは10年前に自分たちで解決した闇の書事件に関することで、ミッドチルダを含め管理世界にも配信される業界2位の大手出版社から出された週刊誌の記事に『蒐集の被害者たち』という表題で宣伝されていた
中身は前回のことや21年前にクロノ提督の父親であるクライド・ハラオウンが散った時に守護騎士たちから蒐集の被害を受けてしまい日常生活に支障をきたしている方々へのインタビューと保障に応じない管理局の体制を糾弾する内容だった
「終わったことをネチネチと突きやがって」
「でもそれが事実なんや」
闇の書事件による死者は0名と管理局は発表したが負傷者に関してはカウントしていない、蒐集後に適切な治療を受けていれば問題なく回復することが可能だが被害者全員に当てはまることではなかった
魔力を奪われ一晩中放置されたことで夜盗に襲われた。雪が降る寒い夜に倒れてしまい凍傷を患ってしまい指を失った老人もいる。彼女たちの後ろ盾になっている『海』側としては蒸し返されたくない事案であり風化を願っているが、対立する『陸』と呼ばれる地上本部は未だに攻撃の材料にしている
「色んな人に迷惑をかけて私はここにいる。けど罪から逃げるつもりはあらへん!どんなにキツイことを言われても受け入れるつもりや」
「はやてちゃん」
1人で暮らしていた足の不自由な少女は大切な家族を得ることができて幸せを享受したが、反対に誰かが不幸に陥ってしまった。自分のことを支える足も誰かの犠牲の上で存在している
「……………」
「どうしたんやシグナム?黙りこくって」
「いえ、なんでもありません!烈火の将としてミドラの逮捕に全力を尽くします」
「ありがとう。じゃあ明日の警護は任せても大丈夫やな」
ホテルアグスタで骨董品のオークションが行われる。競売品にガジェットたちが反応してホテルを襲撃してくるかもしれない、初出動を終えた新人たちも緊張が解れているので注意散漫となってヘマをやらかす可能性がある。慣れてしまったときが1番心配なのだ
「シャマルもいることですし問題ありません」
「何も起きんのがええけど、用心にこしたことはないで」
会議は終わったが高町だけ呼び止めれられて残された。不安げな表情で身構える彼女に飲み物を勧めるが首を横に振っていた
「どういう意味か分かるよね?」
「私の体のことでしょ、大丈…」
「そんな訳ないやろ!シャマルから聞いてるで」
正直なところ今すぐに隊長職から降ろしたかったが彼女は頑として譲らなかった。もし単独飛行中に症状が悪化してしまったらと思うと心配で落ち着くことが出来ない
「ちゃんと見極めるから、それにティアナたちのことを最後まで見届けたいし」
「そならシャマルの言うことは絶対に聞くんやで、守れなかったら口も聞きひん絶交やから」
そう言って彼女は部屋から出て行ってしまった。残されたエースオブエースは普段とは違う痛みを胸に感じながら涙をこぼし制服の袖で軽く拭った
「おい…あの若造まだ食ってやがる」
「かれこれ2時間以上いるぞ!冷蔵庫の中身が殆ど空だぞ」
ホテルアグスタのレストランにはVIPだけが通される個室が存在する。ミドラは博士から提供された偽造パスで身分を偽り居座っていた
高く積まれた皿を持って給仕係が厨房と何度も往復しながら新しい料理を運んでくる。料理人たちは額に汗を搔きながら鍋やフライパンと格闘し盛り付けていく、終わりのない戦いに身を投じ床には力尽きた料理長が白目を剥いて倒れている
「お客様申し訳ございませんが、材料の方が」
「そうか、長居をしてすまなかった」
手を合わせて胃に収められた食材と作ってくれた方々へ礼の言葉を述べる。そしてミドラは代表を呼ぶと関わってくれた面々にチップを配るように伝えレストランから去っていった。破格な額を受け取った従業員たちは懐を分厚くさせて彼が小さくなるまで頭を下げ続けるのであった
「(部屋でルームサービスでも頼むか)」
彼の持つ『
屋外ではホテルを襲撃してきたガジェットたちを六課の新人と副隊長が食い止めている。ミドラは手を出すつもりもなく見ているだけだった
「(この反応はルーテシアの、ってことはゼストのおっさんも近くにいるってことか)」
どうやらガジェットたちは囮で機動六課のフォワード陣を引き付けている間に競売品を盗む算段のようだ、ローラースケートで戦場を駆け回るハチマキを巻いた女の子の傍で二丁拳銃を構える少女は過剰なカードリッジロードを行っていた
「騎士たちも出張っていたか、ご苦労なことで」
彼女たちが頑張ってくれたから落ち着いて食事をすることが出来た。そのことに対して感謝しつつ自分のことを邪魔するようであれば容赦なく敵対するだけだ
「テスタロッサ…少しいいか」
「どうしたのシグナム?」
オークションが終わり機動六課の隊舎に戻った彼女たちだが、ティアナは無茶なことをしてミスショットしたことを咎められ反省文を提出を済ませると自己鍛錬に励んでいた。フェイトは遠くの物陰から覗いていたが背後に立ったシグナムに声を掛けられる
「ミドラのことについてなんだが」
「早く捕まえたいよね。スカリエッティとの繋がりも気になるし」
「確証は持てないのだが、もしかすると奴は闇の書の被害者なのかもしれない」
「本当なの!それは」
シグナムは再び"確証は持てない"と口にして10年前の出来事をフェイトに伝えた。家族連れの親子を襲い魔力を蒐集したあとに放置して立ち去ったことで、襲われている両親を助けようとして自分たちに刃向かってきた子供がミドラではないのか?と推理していた。あくまで彼女の勘でしかない
「私のせいで…状況を!もしかしたら今の私たちを見て怨んでいるはずじゃ」
「その時は謝ろう。きっとシグナムたちの気持ちは絶対に伝わると思うし、それにまだミドラが被害者って決まった訳じゃないでしょ?」
「テスタロッサ、私は…私は……許されるのか?本当に」
何かに怯える彼女を落ち着かせるために両手で優しく抱き締める。自身の使い魔であるアルフもパニックに陥ったときと同じようなことをして静まってもらった
「今日はもう休んで明日に備えよう。疲れていたらマイナスなことばかり考えちゃうから」
そう言って自主練を続けるティアナを呼んで3人は隊舎内に戻るのであった
そろそろガッツリ関わらせたいですね。色々と曇らせたい人がいるので楽しみにしてください
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