アジトを出てタクシーを拾い適当なところで降りた。ルーテシアの所望するカレーうどんを提供する店は開店に向けて仕込み作業をしている時間なので予約の電話を入れる。もし店内に飛び散りを防ぐ紙ナプキンが存在しなかったら無防備なチンクのワンピースを汚してしてしまうので、デパートに寄って子供用のエプロンを購入した
「XIのレリックは見つかった?」
「Xはあったけど」
「そう…見つかるかな?」
デパートから出て店まで徒歩で向かいながら質問された。スカリエッティに発掘したロストロギアやレリックを売り始めた頃にゼストたちが接触し上記の番号が刻印されたレリックを発見したら譲ってほしいと頼まれた
「向こうに召喚士がいた。たぶん同じくらい」
「キャロ…なんとかって奴か、確かアルザス地方でドラゴンと暮らすル・ルシエの」
「ドラゴン?」
「結構美味いぞ、新鮮な状態なら刺身でも食える」
なにせコイツは生息するドラゴンを食らいつくして絶滅に追い込んだ、そのことで生態系バランスは崩れル・ルシエの民は荒れてしまった土地を放棄した
「じゃあゼストもドラゴンを食べれば治るの?」
「肝とかは滋養強壮の効果もあるし、ちょっとは長生きするな」
「分かった」
「?」
いったい何が分かったのだろうか?とりあえず店に到着ネームプレートにウエスギと書かれた店員に予約していた名前を伝えるとテーブル席に通してもらった
「辛いけど美味しい」
汁に付着しないように、髪の毛を束ねて口の周りを茶色に汚す彼女は表情では分からないが初めてのカレーうどんに満足しているようだ、紙ナプキンはテーブルにあったが全体を覆うには心もとない装備だったのでエプロンを購入して正解だった
「あれも買っていい?」
「お土産用か」
「ゼストやアギトにも食べさせたい」
小さい指が向けられた先には家庭で食べることが出来るレトルト食品が置かれていた。市販品よりも少し値段は高いが帰り際に買っていく客も多数いる。最後に口直しのラッシーが運ばれ飲み干すとルーテシアの顔がニッコリ笑ったように見えたが、すぐにいつもの表情に戻ってしまった
案の定エプロンはカレーの染みで汚れたので廃棄しようとするが、ルーテシアが拒んだのでコインランドリーで洗濯することになった。乾燥が終わるまで1時間ぐらいあるので買い物を済ませたが…
「どうしたの?」
「(だいたい100メートルで付けられてる)」
念話で伝えルーテシアが後ろを振り向こうとするが引き戻す。変装してバレていないつもりだったが彼女が六課の隊員たちと顔を合わせていたので映像から見つかった可能性もある
何も知らない一般人からすれば2人は買い物をする親子のように見える。このまま人混みに紛れてしまえば撒くことも可能だが100%ではない、もしかしたら1人ではなく複数で監視しているかもしれない、ここは万全を期すことにする
コインランドリーでエプロンを受け取って袋の中に詰めると2人は手を繋いで屋外に出た。そして買い物客でごった返す集団に潜り込むように突入すると尾行者が慌てたように駆け寄ってくる。彼等は集団から抜けて細い路地に足を踏み入れると
「いな…!」
追ってきた青年の頸動脈を硬質の糸で一気に絞めて意識を飛ばしマンホールの中に身を隠した。路地に踏み込んだ瞬間に空間転移を可能とする消費型のロストロギアを起動しルーテシアをアジトに送り、自身は壁伝いに上って追手の視界から消えると背後に降り立って首を絞めた
「(ヴェロッサ・アコース…局の査察官か、チョロチョロ動かれると厄介だな)」
命を刈り取るつもりはないが社会的には死んでもらおう。身ぐるみを剥がし全裸にさせると落ちていた避妊具の箱から未使用品を取り出して局部に装着させた。彼が着用していた白のブリーフを頭部に被らせると水の上に浮かべて笹船のように流し、スーツや財布などは燃やしてゴミ収集車へ投げ込んだ
「(臭いのが染みついちまった)」
スカリエッティのアジトに戻る義務は無いが自身の隠れ家に臭いを持ち込みたくなかったので、着換えを購入し公衆浴場で体を洗った
ガジェットが出現すれば機動六課は出動せざるを得ない、そして未だに高町なのはが目を覚まさないので残った面々で運用しなければならない、普通は特定の部隊に偏りが生じないために横の繋がりで出動を分散させるが六課は『海』の組織で、設立時のゴタゴタによって手を差し伸べるところは存在しない
「テスタロッサ、少し休め」
「大丈夫だから…それにシグナムだって昨日から寝てないでしょ?」
流石にスバルたちだけを出動させる訳にはいかない、隊長・副隊長の誰かが引率者として同伴する必要がある。六課の控えの戦力ではナンバーズやミドラに太刀打ちするのは不可能なので負担は彼女たちにのしかかる
「もう少しで聖王教会からシスターシャッハが補充される。それまでは持たせる」
「通信でクロノと話したけど、相当キツそうだった」
現状を見かねて後見人の務めるクロノ・ハラオウン提督は聖王教会のカリム・グラシアと協議を重ねて追加戦力を投入することになったが、スバル・ナカジマの姉であるギンガ・ナカジマを加入させた直後なので各方面から叱責を受けた
これは完全に地上本部からのやっかみである。『陸』で活躍する魔導士が『海』に引き抜かれると本局から人員が補充されるが役に立たない素人で抗議をするが『人数では問題無いはずだ!』と言われてしまう。今回はそのお返しを食らってしまったのだ
クロノは年上の高官に嫌味をネチネチ言われながら頭を下げるとポケットマネーを使って山吹色のお菓子を持参し、夜の接待でも多額の身銭を切ったことでシャッハ・ヌエラの補充を認めてもらったが背広からキスマークのついた名刺が見つかり家庭内が冷え切っている
「はやては?昨日も会議で遅くに帰ってきたんでしょ」
「大丈夫と口にしていたが色々と無理をしておられる。リインが傍にいるから万一の時には私の方へ連絡するように伝えてある」
「みんな疲れているね」
「他の部隊と連携が取れないことで負担が折り重なる。言いにくいことだが主の描いた青写真は机上の空論だったのかもしれない」
八神はやては大きな組織の長として振舞うのは今回が初めてであり、本来であればプロ野球のヘッドコーチのように経験豊富な参謀役を傍に配置するべきだが機動六課にそのような人物は存在しない、故に手探り状態で隊を運営をおこなっているので心労に押しつぶされそうになる。誰かに相談したいが意識不明の重体者と疲れている彼女たちを見てしまうと心に押し込めてしまうのだ
「出動か」
管制室からガジェットたちが海洋側から現れたことを伝えてきた。新型のガジェットは戦闘機型なので対応出来るのは空戦スキルを持つ隊長・副隊長になる
「私とヴィータで向かう」
「でも」
「もしかしたら混乱に乗じてミドラが現れる可能性がある。私より適任だ」
これは剣を振うことしか出来ない不器用な彼女なりの優しさで、彼が出てくるまで待機して休んでいてほしいということだ
「お前の監視役としてエリオたちも置いていく、仮眠ぐらいとっても罰は当たらないだろう」
そう言ってシグナムは現場に向けて駆け出していった。残ったフェイトのやるべきことは彼女から受けた厚意を無碍にすることなく休息に努めることだ、もう少ししたらエリオとキャロがやってくる。2人も任務続きで疲れているはずだから甘いココアとお菓子でもてなすことを考えるのであった
なおチンクのワンピースにカレーうどんの染みは付着しなかったが独特の臭いが残ってしまい、使ったことを後日に怒られる予定です(カレー店では競馬ネタが1つあります)
やっぱり機動六課って参謀役がいないのが変ですよね。実績の残していない八神をサポートするベテラン局員は必要だと思います
感想ありがとうございます(おまちしてます)
お気に入り登録もありがとうございます
誤字訂正もありがとうございます