ダンまちに転生   作:You無

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第一話 ──世界の狭間で

 

「……死んだのか。」

 

最後の記憶は曖昧だった。

 

眩しいライト。

鳴り響くブレーキ。

誰かの悲鳴。

 

そして――何もない。

 

目を開けると、そこは白でも黒でもない、不思議な空間だった。

 

地面はあるようでなく、空もない。

 

星だけが、無数に浮かんでいる。

 

「起きたか。」

 

声が聞こえた。

 

振り返ると、一人の青年が胡坐をかいて座っていた。

 

白いシャツに黒いズボン。

 

神々しい服装でもなければ、翼も後光もない。

 

どこにでもいそうな青年。

 

ただ、その瞳だけが、宇宙そのものだった。

 

「……あなたは?」

 

「いろんな呼ばれ方をする。」

 

青年は小さく笑う。

 

「神、管理者、観測者、世界の案内人。」

 

「好きに呼んでくれて構わない。」

 

ゆうは数秒考えた。

 

「じゃあ……神様で。」

 

「構わない。」

 

神様は立ち上がる。

 

その瞬間、周囲の星々が静かに動き始めた。

 

まるで彼に従うように。

 

「さて、本題に入ろう。」

 

「君は死んだ。」

 

「残念ながら、それは覆らない。」

 

主人公は苦笑した。

 

「やっぱりか。」

 

「でも、君には一つ選択肢がある。」

 

「転生だ。」

 

どこかで聞いたことのある言葉だった。

 

異世界転生。

 

ラノベや漫画では定番だ。

 

「本当にあるんだな。」

 

「ある。」

 

「ただし、物語ほど都合は良くない。」

 

神様は指を鳴らす。

 

無数の光が集まり、一つの世界を映し出した。

 

巨大な街。

 

高くそびえる白い塔。

 

その地下へ続く巨大な穴。

 

冒険者たち。

 

そして、神々。

 

「ここは……」

 

「迷宮都市オラリオ。」

 

主人公の心臓が跳ねた。

 

「ダンまち……?」

 

「君の世界ではそう呼ばれていた作品だ。」

 

「正確には、向こうの世界を君たちが物語として観測していたに過ぎない。」

 

「つまり実在する世界だ。」

 

鳥肌が立つ。

 

本当に存在する世界。

 

ベル・クラネルも。

 

アイズも。

 

ヘスティアも。

 

みんな生きている。

 

「でも待って。」

 

「神様がいる世界じゃないか。」

 

「あなたも神なら……」

 

神様は首を横に振った。

 

「違う。」

 

「私は、あの世界の神ではない。」

 

映像が変わる。

 

無数の世界が浮かんでいた。

 

「世界にはそれぞれ管理者がいる。」

 

「ダンまちの神々は、あの世界の住人だ。」

 

「私は、その外側にいる。」

 

「世界と世界の境界を観測する存在。」

 

主人公は眉をひそめる。

 

「じゃあ、あなたの方が偉いの?」

 

神様は即座に否定した。

 

「違う。」

 

「役割が違うだけだ。」

 

「魚は海を知っている。」

 

「鳥は空を知っている。」

 

「どちらが偉いという話ではない。」

 

その答えは妙に納得できた。

 

「だから私は、あの世界へ自由には干渉できない。」

 

「できるのは、一人送り届けること。」

 

「そして、一つだけ可能性を与えること。」

 

「それが限界だ。」

 

主人公は息を飲む。

 

「能力……?」

 

「ああ。」

 

「ただし。」

 

神様の表情が初めて真剣になる。

 

「最強の能力は与えない。」

 

「与えられない、ではなく、与えない。」

 

「なぜだと思う?」

 

主人公は少し考えた。

 

「……面白くないから?」

 

神様は笑った。

 

「半分正解。」

 

「力だけで得た勝利は、君の物語にならない。」

 

「君が積み重ねた結果こそ価値がある。」

 

静寂が流れる。

 

神様は主人公の前まで歩いてきた。

 

「だから私は”才能”だけを渡す。」

 

「強さではない。」

 

「可能性だ。」

 

主人公は拳を握る。

 

「もし、その世界で死んだら?」

 

「終わりだ。」

 

「もう二度目はない。」

 

「助けにも行けない。」

 

「祈っても届かない。」

 

「それがルールだ。」

 

思っていたよりずっと厳しい。

 

「じゃあ、本当に一人で?」

 

「違う。」

 

神様はオラリオの映像を見つめる。

 

「仲間を作れ。」

 

「家族を作れ。」

 

「君は一人だが、一人で生きる必要はない。」

 

その言葉だけは、不思議と温かかった。

 

神様は右手を差し出す。

 

その掌には、小さな銀色の光が浮かんでいる。

 

「これが君への贈り物。」

 

「まだ名前はない。」

 

「どんな能力になるかも決まっていない。」

 

「君自身の生き方で形を変える。」

 

「才能は与える。」

 

「答えは与えない。」

 

主人公はその光を見つめる。

 

これを掴めば、もう後戻りはできない。

 

元の世界には帰れない。

 

家族にも会えない。

 

それでも。

 

迷いはなかった。

 

「……お願いします。」

 

銀色の光に手を伸ばす。

 

触れた瞬間、全身を優しい熱が包み込んだ。

 

神様は静かに微笑む。

 

「最後に一つだけ。」

 

「向こうの神々には、私のことは分からない。」

 

「そして君も、私の名を思い出せなくなる。」

 

「なぜ?」

 

「その方が、世界は自然だから。」

 

主人公は何か言おうとした。

 

だが、意識が急速に遠ざかっていく。

 

最後に聞こえたのは、神様の穏やかな声だった。

 

「――良い物語を。」

 

世界が光に飲み込まれる。

 

次に目を開けるとき。

 

そこは、神々と冒険者が生きる街――オラリオだった。

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