おばあちゃんは魔法少女をやめない 作:魔法少女(少女とは限らない)
更新遅れてすみません
玲奈ちゃんの才能は凄かった。
まさか、一日目で妖精とコミュニケーションが取れるところまで成長するなんて。
本当に規格外としか言いようがない。
妖精が見えない子の手伝いは何度かやってきたけれど、一日で見えるようになった子はいなかった。
しかも、玲奈ちゃんは彼女たちと違って妖精の声も気配も一切知覚できていなかった。
なのに、その状態から、今まで教えたどの子よりも早く妖精と会話するところまでいっている。
これはもう、正直脱帽するしかない。
「ねえムサシ。あの子、いくらなんでも才能に溢れすぎだと思うのだけど、まさか母親が魔法少女だったりとかしないわよね?」
「おお〜、なかなか鋭いな」
「……えっ、本当に?」
「さあ? どうだろうな。さすがに俺みたいな他人の口から素性を言うわけにはいかないよ」
思い切って、彼女の生い立ちをムサシに聞いてみても、のらりくらりとかわされてしまう。
ただ、母親なのかはともかく、少なくとも玲奈ちゃんの親族の中に一人、元魔法少女がいるはずだ。
昔、私の先輩が母親だという魔法少女に出会ったことがあるのだけれど、その子はこれでもかというほど才能に満ち溢れていた。
戦い方も先輩そっくりで、たまに調子に乗りすぎてしまうところも含めて本当に良い子
そういえば、私が魔法少女と関わらなくなったのは、あの子がいなくなったあたりからか。
今思えば、あの子のことも、私がこんな歳になっても魔法少女を続ける理由の一つなのかもしれない。
「話は変わるけど、玲奈ちゃん、今日だけで妖精が見えるようになったじゃない? 想定は一ヶ月とかだったけど、これから私ってどうすればいいのかしら?
「あー、どうしような。まあ、彼女はお前を気に入っているから、しばらく面倒を見てやってもいいんじゃないか?」
それと、ついでとばかりに、これから私が玲奈ちゃんに手伝えることはあるのかと聞いてみたものの。
なんだか、いまいちよく分からない答えが返ってきた。
面倒を見る、と言っても私が彼女に教えられるようなことはそう多くない気がするのよね。
そもそも、私は才能がめちゃくちゃある、というタイプではない。
今日、模擬戦で圧倒できたのも長年鍛え上げてきた魔法操作のおかげだ。
逆に、こんなに年が離れているのにも関わらず、負けてしまったら、私の精神がやられていた。
少なくとも、玲奈ちゃんも同じ歳だった頃の私だったら、勝つことはできなかった。
「私の持っている技術だったら、喜んで教えてあげるんだけど、今の子って魔法の操作を重要視していたりする?」
「いや、知る限りじゃお前みたいな地味な魔法より、派手だったり威力が高い魔法を好む奴が多いな」
「じゃあ、案外私にも教えられることはあるかしら」
「そもそも、気づいていないかもしれないけど、彼女は結構お前のことを好いているからな。多分何を教えたって喜ぶと思うよ」
ムサシによれば、何を教えたっていいらしいけど、文字通り何でも教えればいいってことはないでしょ。
その気になれば半世紀前の怪人の解説だってできるけれど、そういうのはさすがに退屈じゃない?
でも、これくらいの話だったら、玲奈ちゃんは目を輝かせながら詳しく教えてって言いそうな気もする。
言われてみれば、玲奈ちゃんが文句を言ってくるような未来は全くと言っていいほど浮かんでこない。
ムサシが言うほど気に入られているかどうかは分からないけれど、案外、何とかなる気がしてきた。
「じゃあ、また来週訓練所に来たらいいのね?」
「ああ。彼女の方にもそう伝えておくよ」
どうやって伝えようか悩んでいた予定の伝達は、どうやらムサシが後で彼女に伝えてくれるらしい。
相変わらず、痒いところにも手が届く存在だ。
年月は経ったし、地位も昔からは考えられないほど偉くなったけれど、それでも、こういうところは昔と変わらないらしい。
じゃあ、この後はムサシに任せることとして、私はもう予定もないし、家に帰ることにしよう。
◆◆◆
「そんな険しい顔をしてどうしたのだ?」
「えっ、そんなに?」
「分かりやすいってほどじゃないけど、いつもに比べるとちょっと疲れてそうに感じるのだ」
協会からの帰り道、突然、さっきまで黙り込んでいた私の相棒が声をかけてきた。
私の顔がいつもより険しくなっているらしい。
ただ、そうな顔になっている自覚がどうもない。
とはいえ、相棒が言っているということは、少なくともいつもと比べたら疲れていそうってことだ。
心当たりはほとんどないのだけど、一つ挙げるとしたら、玲奈ちゃんとの特訓……?
喋っていて楽しかったし、間違いなく疲れている自信はないんだけど。
まあ、あの量の若さを目の当たりにするのは久しぶりだったから、強いて言うならそれかもしれない。
「幸子は多分、人と関わることが怖くなっているのだ」
「いやいや、そんなことないわよ。別に新しく知り合いができるのは良いことじゃない」
「分かるのだ。仲良くなりすぎたら、失った時の悲しみが大きくなってしまうと恐れているのが」
だけど相棒は、この前引退を提案してきた時のような真面目な顔をして、私の心の奥底を見透かすように話す。
私が、玲奈ちゃんと親しくなることを怖がっている?
そんなはずはない。
確かに、あの子を失ってから、私はほとんど一人で活動していた。
でも、大規模な怪人討伐の時だって、近くにいた子には必ず話しかけていたし、決して避けていたなんてことはないと思う。
あくまでも私の活動に必要なかっただけで、知り合いを作ろうと思えば、作っていた……はず。
「でも、幸子。怪人討伐の時に話しかけた子たちと、その後連絡を取ったりしたことはあるのだ?」
「……ない、わね」
だけど、必要以上に魔法少女と関わろうとしなかったと言われれば、それを否定することはできない。
最後に、仲良くなった魔法少女と、個人的な用で遊びに行ったのは、それこそ
これは、さすがに認めざるを得ないかもしれない。
私は、仲良くなった魔法少女がいなくなることを恐れている。
そして、そのことが怖くて、魔法少女以外のことで彼女たちと関わることを避けてしまっている。
「いつから、気づいてたの?」
「それはもちろん、ずっと前からなのだ。あんな露骨に連絡先すら交換しなくなったら、誰だって分かるのだ」
「そういえば、私、玲奈ちゃんと連絡先交換してなかったわね」
「まあ、まだガラケーの幸子は、まずスマホを買ってあの子に合わせるところからなのだ」
私の相棒は、私が目を背けてきたこのことに、ずっと前から気づいていたみたいだ。
この前引退を提案してきたのも、これ以上魔法少女たちを避けながら活動することへの限界を感じたからなのかもしれない。
体感では、まだまだ、関わらなくても活動できていた自信があるけれど、あんな急に言い出したってことは、相棒なりに色々考えていたんだろう。
肉体的には大丈夫でも、精神はどうにもならないことだってあるもの。
玲奈ちゃんはもちろん、ムサシと久しぶりに会ったのも意外と大きかったりするのかもしれない。
やっぱり、いつも能天気にその辺を飛び回っているだけじゃないのよね。
たまには、妖精らしいところも見せてくれるじゃない。
「じゃあ、スマホでも今から買いに行く?」
「絶対そういう問題じゃないと思うのだ……」
「次会う時に連絡先を交換できるようにするためよ。どうせスマホの使い方もどこからか分からないけれど仕入れてあるんでしょう?」
「……本当に、仕方がないのだ」
せっかく、長年忘れようとしていたことを気づかせてもらえたのだ。
善は急げと言うし、今のうちに行動しておかなければ損だろう。
私の妖精は、なぜか私と違って時代にちゃんとついていけてる。
この前なんか、一体どこから持ってきたのか、自分用のスマホを手に入れていて、さわっていたし。
現代の電子機器に全くついていけない私でも使えるスマホくらい、何とか用意してくれるだろう。
……と、思っていたら、これまたどこに持っていたのか分からないスマホをいつの間にか取り出していて、最寄りのスマホショップを探し始めている。
いつも思っているのだけど、私たちみたいな指もないのに、どうやってスマホを操作しているのだろう?
こればっかりは、何十年も一緒に生きてきても未だに分かっていない謎だ。
「あ、こことかが悪くないと思うのだ。今からここへ向かうのだ」
「私、スマホなんかを買うのは久しぶりだからちゃんと指示をちょうだいよ?」
「とにかく、案内してくる店員の言葉を全て信じなければ大丈夫なのだ! 口車に乗せられてオプションをつけまくったら大変なことになるのだ」
「え、親切心で対応してくれるんじゃないの?」
そして、私の相棒はお目当てのスマホショップを見つけたみたいなのだけど……。
どうやら、スマホショップというのは私が思っているよりもざっと怖いところらしい。
スマホを買いに行くだけのはずなのに、注意すべきことがどう考えてもスマホに関することじゃないんだけど……?