壊れかけた少女と、元非モテおっさんの大冒険?   作:haou

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予約

『よっしゃ! いよいよお待ちかねの武器購入だぞミリア!』

「うんっ、早く早くっ!」

 

エレベーターで4階に上がるなり、どたどたとミリアが走って商品の陳列棚をぐっと覗き込んだ。

 

こんぼう、どうのつるぎ、はがねのつるぎ、おおかなづち……色々な武器がいっぱいだ。

 

「ねえねえ、これなんかどうかな!?」

 

「あ、あっちもいいよね!」

 

「うーん。そっちのもよさそう! 多すぎて迷っちゃうよぉ」

 

おおはしゃぎのミリアがてつのオノやバトルアックスを手に持ってきてニコニコする。

 

『お、おい……?』

 

影夫としては店員を呼んでさっさと買い物を済まそうと思っていたが、玩具売り場にいる子供みたいに歳相応の姿を見せるミリアを見て考え直す。

 

(ショッピングに付き合うつもりでじっくりと買い物をするか~)

 

「ねえ、お兄ちゃんはどれがいいと思う?」

 

くさりがま、のこぎりがたな までもを抱えてミリアは実に楽しそうだ。

 

『なんでチョイスがどれもちょっと物騒なんだよ』

「え? カッコいいよね?」

 

『……カ、カッコいいかはともかく、攻撃力が落ちるものはダメだぞ。あとバトルアックスは大きすぎて扱えないだろう。身長的に』

「えーーー?」

 

『だーめ。要らないものは買わないからね。もどしてきなさい』

「はぁ~い」

 

しぶしぶミリアは武器を棚に戻す。聞き分けのない子ならヤダヤダって暴れるだろうに実にミリアは良い子である。

ちなみに影夫は駄々をこねて泣きべそをかいていたクソガキだったので、聞き分けのいい子をみると、偉いなぁと感動しておこづかいをあげたくなってしまう。

 

ちなみにどうでもいいが、ミリアの身長は130センチくらいなのに、大人用の武器をいくつも抱きかかえて走り回れる怪力と体力は凄い。

さすがおおばさみを使いこなすだけはある。

 

両親が戦士か武闘家の血を引いていたのか、はたまた暗黒闘気による影響なのか。

実に不思議な光景だ。周囲の客や店員も目を丸くしている。

 

「でもどうしよっかぁ、色々武器はあるけど……おおばさみより強くて使えそうなのはあまりないよ?」

『ううーん。さっき抱えてたバトルアックスは重さ的に使えそうなのか?』

 

「え? 片手だと重いけど両手だと大丈夫だよ。あ、でも振り回したりしたら身体が浮いちゃうかも……そうなるとちょっと使いにくいかなぁ」

『つ、使えないこともないのか。ミリア……おそろしい子ッ!』

「えっへん」

 

『まぁーとりあえずバトルアックスは保留だな。他の武器を探そうぜ』

「はーい! うんしょうんしょ……」

 

とたとたとフロアを走りまわり、ごそごそとミリアが次々に武器を漁り探す。

投売りの中古武器コーナーから、飾りに使う武器模型まで、手当たりしだい漁っていく。

 

「これはどう?」

『うお!? こりゃふぶきのつるぎ!? ってなんだこりゃレプリカかよ!』

 

「こっちは?」

『おおかなづちかあ。悪くはないよな。モコッチ! ってかんじでいいな』

「それはちょっと嫌かなぁ……」

 

「きゃっ!? なにこれ、ピリピリするよ……もうっ!」

『そりゃホーリーランスだ。糞、こいつも俺達を拒むのか。ったく!』

 

「いたぁっ! これもビリってきたー!」

『おのれゾンビキラーめ、こいつまで俺らを拒むのか! ふざけやがって!』

 

それから小一時間ほどフロア中を探し回ったが、良さそうな武器が見つからなかった。

どうにか使えそうなのはおおかなづちやバトルアックスだが……正直両手持ちの武器だと動きが制限されてしまうし、劇的な攻撃力アップも望めない。微妙であろう。

 

『いっそ特注オリジナル武器のほうがいいかもな』

「とくちゅ~って? 特別な武器なの?」

『つまり、僕が考えたカッコイイオリジナル武器! を作ってもらうってことだ』

「おおおっ、おもしろそうだね!」

 

キラキラと瞳を輝かせるミリア。

ノリがいいミリアの様子に影夫もテンションがあがってヒートアップしていく。

 

『例えば……りりょくの剣とか、光魔の剣とかがあったら強くてカッコよくね?』

「ギロチンアクスとか肉斬り包丁なんかもおもしろそうだよ!」

 

『ミリアはそういう系好きだなあ。いっそのこと魔法玉で動力を仕込んでチェーンソーにしてもらおうか? 真空呪文で動かした鎖状の刃でぐちゃぐちゃー!ってミンチにする凶悪武器!』

「欲しい欲しい! 絶対使いたい!」

『よぉーし。今度職人を探して頼んでみるかな』

「やったー!」

 

ぼくのかんがえたかっこいい武器を発表しあって盛り上がるミリアと影夫。

傍から見ると見ると少女が独り言言いながら大はしゃぎという変な光景だが、怪力ぶりを目撃されているからは、特に声を掛けられたり、からかわれたりといったこともなかった。

 

『ああそうだ。デパートじゃなくって闇市で探すのもありかもな。わけありの一品があるかもしれないし、もしかしたら呪い装備もあるかも』

「のろいの武器……かっこよさそうだね。どんなの?」

『そうだな……はかいのつるぎ、もろはのつるぎ、まじんのオノ、みなごろしのけん! どうだ強そうだろう!』

「わぁわぁわぁ! 絶対買おう!」

『まぁ呪いの反動とかも試す必要もあるから、入手できてもすぐに使うのは無理だけど』

 

 

ミリアが喜ぶので影夫はついつい話し込んでしまったが、ろくに良さそうな武器を見つけられていなかった。

つよくてかっこいい武器の話は楽しいけれど、買うに値するものはないかちゃんと調べないと買い物にならない。と影夫が思いなおす。

 

『とりあえず俺らの知らない情報があるかもしれないから店員に聞くぞ? お買い物はもう楽しんだだろ?』

「うん! いいよ」

 

ご満悦のミリアから、身体の主導権をもらい店員を呼ぶ。

 

「すみませーん! 強い武器を見せてもらえませんか!」

 

「いらっしゃいませお嬢さま。こちらの聖なるナイフなどはいかがでしょうか。力の弱いお子様や女性でも扱い易く、護身用として大変人気の……」

 

「あ。大丈夫です。私力あるので。ほら、今使ってるのこれです。ふふふ。これより強い武器をみせてくださいね?」

 

店員が嫌いな武器を薦めてくるので、影夫はムスっとしつつ、袋にいれて背中に背負っているおおばさみを見せた。

おおばさみは、おどろおどろしい見た目なだけに街中で装備したまま歩くわけにいかないからこういう収納をしている。刃だしっぱなしだとあぶないし。

 

「も、もうしわけありませんお嬢さま……!」

 

魔物の血をすって、鈍い光を放っているおおばさみの刃は実に剣呑とした雰囲気だ。

もっと使い続けたらの呪われるのではないだろうか。

 

「そ、そうなりますと、こちらのおおかなづち、バトルアックス、ゾンビキラーがございます」

 

店員が盛大に顔を引き攣らせながらも、軽妙なセールストークをしてくる。

さすがにプロだと影夫は妙な感心をしてしまった。

 

「ドラゴンキラーはないんですか?」

「申し訳ございませんが品切れとなっております。入荷予定もございません。といいますのも魔王が倒されてから、ドラゴンは人里には出てこなくなりましたので必要とするお客様がおられず……」

 

「売れない武器を仕入れても意味はないと?」

「かなり割高なものですから。どうしてもというお客様のご注文も受け付けておりますが……オーダーメイドの形ですのでどうしてお値段の方は30000Gほどは掛かってしまうかと思います」

 

「わかりましたドラゴンキラーは諦めます。何か特別な逸品とかはないんですか? ほら、これ……私はこういうものなんですが」

 

ふところから、賓客証明書を出して見せる。ついでにガーナの街の紹介状もだ。

 

「少々お待ちください……」

 

書類を見ると神妙な顔で一度引っ込んだ店員だがすぐに戻ってきて笑顔で話し始めた。

 

「特別なお客様のために、数量限定販売のゆうわくの剣がございます」

「ゆうわくの剣……たしか特殊効果があるんですよね? 値段も教えてください」

 

ゆうわくの剣。ゲームでは非売品なので期待はしていなかったが、入荷するのか。特殊効果もあるし片手で扱えるであろうし、これは悪くない選択だ。

 

また剣であることも意味が大きい。これなら剣技を習得すれば使えそうだ。アバン流の技なんか覚えた時にはいいかもしれない。

おおばさみじゃあ、大地斬や海波斬は無理だろうからな。

 

「お客様は博識でございますねその通りです。『惑え』の言葉でメダパニの呪文の効果を発揮します。それだけではなく、斬りつけた相手を一定の確率で混乱させることもございます」

「それはすごい!」

 

なんとびっくりDQ3の道具効果とDQ5での攻撃時の効果が両方ついているらしい。

 

「今回の品はベンガーナ王宮随一と名高いかの有名な鍛冶屋、ジャンクの作であり、しかも……厳選された一級品の魔法玉とパプニカ産の魔法金属を贅沢に使っているというまさに逸品になっております。お値段は17000Gでございます」

 

(ミリアいいよな?)

(えーでも、チェーンソーやオリジナル武器はー? それにおおばさみはお気に入りなんだけどなぁ)

(じゃあこの剣で稼いで買おうぜ。おおばさみは鍛えなおしや強化をしてみるという手もあるぞ)

(しょーがないなあ)

 

心の中でミリアに話しかけて相談。物騒な武器を欲しがるミリアをどうにかなだめて、影夫は賛成してもらえた。

 

「ただ……何分見た目にも美しく華麗な逸品であるため、購入を望まれるお客様は多く……現在予約待ちの状態でして。申し訳ございませんが半年ほどお時間をいただくことになります」

「買います。予約をしておいてください」

 

多少割高だし半年も待つ必要があるがその価値はある。

 

「ありがとうございます。」

「あ、あと。今度おおばさみの強化についての相談もお願いしたいのですがいいですか?」

「はい、かしこまりました。いつでもお越しくださいませ」

 

大きな買い物であったが戦力の増強に成功した。ゆうわくの剣はしばらく待つ必要があるがそれまではおおばさみでいいだろう。

 

 

『さて。5階は服鎧だが……ミリアはどうしたい?』

「このドレスのままがいいけど……強いのに変えた方がいいよねやっぱり。ここで買っていいの?」

『もちろん。となるとどれを買えばいいか……』

「軽く動きやすいのがいいと思うよ。鎧とかじゃ動きにくくなっちゃうもん」

 

たしかにミリアのスタイルは小柄な体を生かしてすばやく動きまわし、暗黒闘気をこめた強烈な一撃を加えていくものだから動きが鈍ると攻防ともにまずいだろう。

 

『だなあ。いくら頑丈な鎧を装備しても、それ以上の力で砕かれたらおしまいだし、そもそもミリアは受け止めて耐えるには体重も体格もないからな。基本的に回避ゲーになると思うから……みかわしの服かな?』

 

俺とミリアは5階で頭を悩ませていた。ミリアの思い入れもあるし、防具を変えるとなると何を選ぶかも決めなくてはいけない。

 

「みかわしの服だね、どこかなぁ~」

『服はこっちみたいだな……えーとそこのつきあたりらへん』

「あれ? お兄ちゃんあれなぁに? すごく高いけど」

 

きょろきょろと周囲を見渡しながら歩いていたミリアがエロティックにディスプレイされたあやしげなソレをみつけて声を上げた。

 

『んー? って!? あ、あぶない水着……あれはだめだ。ミリアには関係ないからな。さ、早く行こう』

「えー? 何それぇ……ってわわ、これすごい……! かげきだね……」

 

単なる紐のようなソレが着衣だと理解してミリアは頬を染めた。

 

「でも、ちょっと着てみたいかも……お兄ちゃん喜んでくれる?」

『よ、よろこばねえよ! お、大人の女性が着るものだからミリアはダメだって! それに守備力だってないんだからな……』

 

展示品の側に解説パネルがあり、力強い文字であぶない水着のすばらしさが力説されていた。

 

【このあぶない水着は、当店専属の腕利き職人が腕によりをかけて製作した究極の防具というべき逸品です。

 防御力こそないものの、どんなに激しく動こうが一切ズレず脱げず、切れたり破れたり燃えたりも致しません。

 ギリギリでありつつも一線は決して越えることはないのです。限りなくあぶなく、なのにセーフティ。

 あなたに極上のあぶない体験をお約束いたします】

 

そのギリギリを極めるためだけにパプニカの超高級魔法布を使用し、高価な魔宝石の欠片をふんだんに使用して、一流の術師による法術とルーンをも駆使しているらしい。

 

目玉が飛び出るほどお高いのは、それゆえの値段なのだとか。

 

(なんだその無駄な情熱は。そして使い道はなんなんだ。プレイ? 何かのプレイなのか)

 

決してこれはミリアに着せるわけにはいかない。教育上よくないのはもちろんだが、ミリアが戦場のロリ痴女になってしまう。

 

その上にマントでも羽織ったりしたらどう見てもこども変質者が爆誕だ。ロリ痴女勇者とか、あぶないこども勇者とか呼ばれてしまいそうである。

 

しかもそれを着させたのは自分の仕業だと思われてしまうだろう。一体どんな風に思われるかわかったものではない。

 

そう、例えば……リースから向けられる冷たい軽蔑の視線を想像した影夫は、恐ろしすぎて震え上がった。

 

「わたし、これがいいっ!」

『ダメ! 絶対にダメ!』

「むぅーーーーっ!」

 

『あっ、そうだ! 形見のドレスを装備に仕立ててもらうことは出来ないかな?』

「え?そんなことできるの?」

「よし。できるか聞いてみようぜ! 店員さーん」

 

むくれるミリアをよそに影夫は慌てて話を逸らし、身体の主導権をもらって店員のもとへと駆け寄る。

 

「はい。何をお求めででしょうか」

「えっと、このドレスを防具に仕立て直してもらうことはできますか?」

「そうでございますね……当店の方から職人に依頼をしてオーダーメイドの形でお願いすることはできるかと思います。既製品よりも少々お値段は張ると思いますが大丈夫でしょうか?」

 

金は問題ない。まだ2万ゴールドくらい余裕がある。

 

「それじゃあこのドレスをみかわしの服の効果をつける形で防具に仕立てることはできますか?」

「みかわしの服は特殊な法術とルーンによって身体の反射神経を高め、回避力を高めていますので問題はないと思います。そちらのドレスの布地は……パプニカ布のようですね。これならば素材的にも問題ありません」

 

ミリアの提案に少し考え込んだ店員だったが、テキパキと対応してくれる。

 

「あと、できれば頑丈にできませんか? 防御力を高めるというよりは耐久性を高めて長く使えるようにお願いしたいのですが。追加料金が発生してもかまいません」

「……できるだけ善処いたします。職人に要望はお伝えしておきます。後日に結果をお知らせしますのでお手数ですがご来店のお願いします。また、それ以後も何度かご相談をしながら制作していくことになりますがよろしいでしょうか?」

 

「それで大丈夫です。よろしくお願いします」

「ありがとうございます。それではこちらの書類への記入と前金につきまして……」

 

その後発注書を書いたり、前金を支払ったり、賓客証明書を見せて手続きをしていった。

 

 

 

「買った買った!」

「いっぱい買ったね~、ありがとうお兄ちゃん!」

 

デパートから出てきたときにはあたりはすっかり闇に染まっていた。

くるくるとミリアがその場でまわってひらひらと白いワンピースを靡かせる。

 

これはドレスを仕立て直すために脱いで渡さなければいけなかったので、急遽ミリアに買ってプレゼントした服だ。

着替えのことは店員に言われるまで考えてなかったからちょっと恥ずかしかったが、ミリアが喜んでくれてなによりだ。

 

「いつもミリアは頑張ってくれてるし、良い子だからね。地下で飯食ってくか~」

「うん!」

 

ちなみに宿の飯は、別料金だ。

専用コックによるフルコースディナーも味わえるが、ミリアも影夫もテーブルマナーやらはろくにしらない。

一発で令嬢の嘘がばれるので頼んでいない。宿側も、お忍びの令嬢であることだし市井のものを食べたいのだと解釈してくれたようだ。

 

「商品は後日馬車へ積み込んでもらえるから、飯食ったら後は帰るだけだな」

 

大金が動く契約をいくつか交わしたからだろうか、店から宿までサービスで送迎馬車まで出してくれるのだ。

 

その後、地下の飯屋でも盛大に飯を食い、デパートをさらに潤わせたふたりだった。

 

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