時は2020年、中国中部から端を発した新型のウイルスは制御不能に拡大を続けていた。
制御不能のパンデミックは世界の金融市場を焼き尽くし、一切の差別も区別もなく命を狩り取っていった。石油覇権を確立するサウード家の長ですらその例外ではなかった。
サウジアラビアの首長の死はサウジアラビア内戦を呼び、サウジアラビアでの内戦は世界の石油供給バランスを破壊し、石油危機を引き起こした。
この時点で起きた二つの危機はアメリカ国内の分断を決定的なものとし、2020年大統領選挙での民主党陣営の勝利によって政治的不信感が頂点に達し爆発。アメリカ政府は民主党が支配するワシントンと共和党が支配するデンバーに分かれ、さらには愛国戦線を自称するファシスト集団、西海岸で放棄した共産主義勢力、核による世界の浄化を訴える精神異常集団、その他多数に分裂しアメリカは現代において最も悲惨な紛争状態、二度目の兄弟対決を始めた。
アメリカの二度目の内戦はパクスアメリカーナの終わりを意味し、世界は二次大戦以降人類の経験してこなかった最大の混乱の時代に投げ出された。
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アメリカの崩壊により日本は否応なく岐路に立たされた。
現状の安全保障体制は意味をなさず、アメリカ崩壊によって発生した世界恐慌は日本市民の生活にも直撃。
2021年衆議院選挙で日本国民が示した答えは反自民、そして国民救済を掲げる野党連合である市民連合の勝利であった。
その後の市民連合内での勢力争いにより共産党や社会党のような社会主義派閥が離脱。日本は右派改革路線へと進むことになる。
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アメリカ崩壊の後、西太平洋にある西側諸国、日本、台湾、オーストラリアにより太平洋防衛条約機構(PDTO)を構築し強大な中国へ対抗する姿勢を見せた。
この時、中国ではパンデミックに石油危機、世界恐慌により現体制に対する不満が噴出しており、国民の怒りの逃げ場を求めていた。これを台湾に向けない余地はなく、台湾進攻は起こるべくして起きたのだ。
アメリカ崩壊後世界最大の国家となった中国、その軍事力は強大であり、初戦で金門島や先島諸島を失陥、台北や那覇でも市街地戦が発生した。
帰る家を失い自衛隊に組み込まれたアメリカ太平洋艦隊があるとはいえ、戦力が劣勢であるPDTO軍は、遅滞戦を展開し人民解放軍に対し多大な出血と時間の浪費を強要。
長引く戦争と悪化の一途を辿る経済状況は中国を着実に蝕み、遂に講和の席へとつかせた。
台湾進攻の事実上の失敗は共産党指導部の権威を大いに傷つけ軍部のクーデターを誘発した。クーデター政府は後に国家の全権を人工知能である長征《Loji》に預け、対日復讐に憑りつかれた完全監視、完全管理のAI
一方の日本は対中融和を訴える中道左派勢力が壊滅、市民連合政権は国民民主党、日本維新の会、参政党、旧自民及び立憲民主党の右派によって再構築され、急進右派自由改革連合の体を露わにし、憲法9条の全面改訂、市場自由主義的経済改革、道州制の導入へと繋がっていく。
また、台湾を守り切り戦争に勝利したことで、アメリカ内戦で行き場を無くしたアメリカ資本や、急激に変化する国際情勢を危惧し安全な通貨に逃げたい外国資本が日本に流入、ミャンマーとパキスタンを除いた太平洋インド地域にPDTOが拡大し、広がり抱え込んだ市場により日本はバブルを超える空前絶後の好景気に突入した。繁栄の特級列車に乗った日本は後に大国の枠組みを超えた国家へと変貌をしていく。
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2030年、10年前のあの頃からは想像もできない変化が世界を覆った。
欧州では3年前に発生したヨーロッパ戦争によりEU及びNATOはその領域をさらに東に拡大、ヨーロッパ的グローバリズムは北大西洋からドンバスに至るまで普遍的なものとなった。ヨーロッパの勝利は西洋的グローバリズムをさらに先鋭化させ超グローバリズムとポスト資本主義の理想の元、思考盗聴や奴隷労働は平然のように行われている。
敗北したロシアでは政変が発生し、退廃的西洋主義の破壊、世界の価値観の普遍化を食い止め真の民族的多様性の確率を目指すユーラシア主義者が政権を握った。名をユーラシアに改めたロシアはユーラシアと民族多様性の保護を名目に急速に侵略を加速させていた。
アメリカではワシントン政府が敵対する全ての勢力を破壊するも、アメリカという名は消え永世共和国を名乗り、敬虔な民主主義者だったはずのバイデソは現実の肉体を捨て機械となり、彼は自身を現代のカリギュラ(カエサル)と名乗りバイデソ主義を用いて専制を行っている。そこではパノプティコンにより万物は監視され、階級制により奴隷が復活し、街が物理的に消滅することが日常となっている。
中東では、サウジアラビア内戦以降秩序が戻ることは無く、第五次中東戦争へと繋がった。アメリカの後ろ盾を無くしたイスラエルは周囲全てを敵に回し奮戦するもついに聖地が失陥すると、自身諸共、中東を
中国では、デジタル左派による絶対独裁が行われ、すべての国民の情報は管理され予想される。指導者となった人工知能である長征《Loji》は自身を偉大なる存在と定義し中華にいる14億人民を愛す感情無き指導者とし強烈に指導。彼らが求める対日復讐を目指し、前代未聞の軍拡が行われていた。
日本は、インド洋から太平洋に至るまでの覇権を急速に拡大、急激な円高は企業の省力化を後押しし、日本で機械が一から作った車が飛行機が半導体が勢力圏の国家に濁流のように流れ込んでいた。人件費という概念が消えつつある日本ではもはや途上国とのシェア争いなど眼中になく、一方的に他国のライバルを殴殺していった。日本の勢力圏の国々は不満はあってもアジアで唯一中国と張り合える日本に逆らうことは出来ず。東京から垂れ下がる糸は太平洋からインド洋までを囲った。憲法9条の重りを脱いだ日本は中国に対応するため勢力圏から効率よく資源と資本を搾取する機構を作り、無限に武器を製造し、
世界平和という言葉は誰も言わない、デモ隊も軍拡をうたい、機能を失った国連の事務総長ですら言うことは無い。
ヨーロッパの増長は止まること知らない。前世紀の栄光を目指し、今世紀の覇権獲得のため新秩序の構築を加速させていた。
ユーラシアは西欧の全ての破壊を目論んでいる。NATOとの国境線には略奪前提でそろえた数百万の軍隊が銃先をそろえ、侵攻の号令を待っていた。
永世共和国は全ての路を行かんとしている。カナダをメキシコを南米の全てを、そして世界を。彼が通り過ぎた路には二度と草が生えることは無い。
長征《Loji》は拡大を始めようとしている。無限のような軍隊はPDTOを、日本を破壊せんと全ての動員を開始していた。
日本の繁栄は終わらない。インド太平洋地域の平和と発展と自由のため、そして自身の繁栄のため、栄光の艦隊は出港準備を整えた。
The Fire Rises
この戦争は今までのあらゆる紛争を超えた規模となろうとしている。陸、海、空、さらにはサイバー空間にいたるまで全てを焼き尽くす。
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2030年1月19日
極東での緊張は修復不能な段階にまで拡大した。38度線に並んだ砲兵はソウルを火の海にせんと鼻息荒くしている。青島にいる艦隊は最終準備に取り掛かり、ロケット軍は日本の全ての都市に向け核ミサイルの照準を合わせている。
AIに率いられた人民解放軍の初撃に耐えるためあらゆる防衛力は列島に集い始めた。10年前の米海軍を彷彿とさせる海上自衛隊は横須賀に集結しJTF‐連合艦隊の編成を始めた。航空宇宙自衛隊はファーストストライクのダメージを軽減するためあらゆる戦線から一時的に列島へと舞い戻った。陸上自衛隊は機動防御のため港の近くに展開し輸送船への搭乗合図を待っている。全ての産業は戦時体制への移行の準備を開始し始めた。
世界の全ての人々が極東の赤い龍と銃を手に取った侍の衝突を確信していた。
大亜細亜戦争
そう呼ばれる予定であった戦争が開幕する直前、日本は列島ごと消滅した。
TFRから少し独自に改変してるところあるけどそれはゆるして