この世界、ほんの数年でAI搭載ロボが開発されるので、AI依存の独身で経済力のある人は買うことでしょう。
そうしたら子供も欲しくなるかもしれない。孤児か人工授精かはわかりませんが、そういう需要は生まれると思います。
社内での検証も済み、とうとうペットNPCの要素がアプデで実装された。
クエスト中の同行NPCよろしく戦闘にも参加可能で、プレイヤーのように成長もする。
とりあえずのところ上限一体まで、月額課金での運用になっている。
「スイッチ!」
大技をモンスターに叩き込み、打ち終わりの硬直の中、指示を飛ばす。
「任せて! たー!」
入れ替わるようにすっ飛んで行ったストレアが大剣を振り回して、ソードスキルを発動。そのままモンスターは砕け散る。
「やった! これでちょうど十体目、調子いいね」
「だな。まあまだもうちょっとレベリングは必要そうだが」
「あはは。ご指導ご鞭撻よろしくね」
パワーレベリングをするために、俺一人でもやれるくらいのとこでモンスターを削って、可能な範囲でストレアにとどめを任せてみていた。
もともと戦闘する人型NPCはいたから、戦闘力は十分。
待機モーション、というとシステマティックすぎる気もするが、楽しそうに大剣をクルクル回したりと、見た目にも華やかだ。人間というよりはアニメのキャラクターみたいな可愛げであるが。
苦笑交じりに、手癖で剣をクルクルと回してから納刀する。
あ、もしかしてストレアのこれ、固定行動じゃなくて俺の真似か?
「じゃあもうちょっとやるか?」
「うーん」
とうなって、ストレアはメニューを開く。
「そろそろお昼だし、一回落ちてご飯食べない? アタシもお腹すいたー」
「あー、うん。そうだな。そうするか」
茅場さん、マジでこのNPCのシステム、どっから持ってきたんだか。
まあ可愛いからいいか。無罪、閉廷。
■◆■
言われた通りメシを食ってから、再びナーヴギアを被る。
俺がログインするのに合わせて近くに光が集まり、ストレアが生成された。
「おかえり。早かったね」
「フレンドに呼ばれたからな。まだ時間はあるが、街に移動しないと」
マップを呼び出さなくても、さすがに道は覚えてきた。
モンスターが現れる開けた場所を抜ける。見かけ上はシームレスに見えるが、ほんのりと周囲の空間の作りが変わる。
平らな地面から、入り組んでデコボコした道へ。
見栄えと世界観を作りこんだ探索用のエリアに踏み入る。少し歩いていると、打ち捨てられた廃墟のようなものがあり、中には転移門があった。
門に触れて、転移先を唱える。
一瞬の後に、目的地にたどり着いた。
ログアウト中にリアルで明日奈からメッセージが来ていて、一緒に遊ぼう、とのことだったので、はじまりの街まで戻ってきたわけである。
待ち合わせにここよりわかりやすいところはなかなか無いしな。
フレンドリストを開いてみるが、どうやらまだログインしていないようだ。時間はまだあることだし、気長に待つとしよう。
「アッシュか?」
「よう、キリト」
「と。隣にいるのは……プレイヤーじゃないな。もしかしてアプデで追加されたサポートNPCか?」
ストレアの頭上に一瞬視線をやったキリトが言う。サポートNPCとは、この機能の実装にあたって、つけられた名称だ。ペットNPCのままでいいわけなかったので。
そんなサポートNPCである彼女の頭上には、プレイヤーのものとは異なるデザインで、彼女の名前が透けて浮かんでいる。
「そ。さすが情報通だな」
「そうでもない。あちこちで見かけるしな」
言ってキリトが辺りを見渡す。実際目に見えて、この機能実装前より人口密度が上がっていた。
「アッシュのお友達?」
「ああ」
「キリトだ。よろしくな」
「うん、よろしくねキリト。アタシはストレア! はい」
ストレアが手を差し伸べて、キリトは目を丸くして握り返す。
「へぇ。実際話したのはこれが初めてだけど、これはハマる人が多そうだ」
「可愛いだろう。うちのストレアは」
「わー」
わしわしと頭を撫でてやる。
「へー。そうね。可愛いよね」
「そうだろうそうだろう……ん」
おっと。
「めちゃくちゃ可愛いよな! おっぱいも大きいし!」
「はい。そこに正座して」
アスナに命じられるがままに、地面に正座する。
続けて俺の隣にストレアも正座して、アスナが間に手を突っ込んで引き剥がす。
「じゃあ、俺は用事あるから」
「ストレアについてはキリトも詳しいぞ」
「おい」
「そうなんだ。じゃあ一緒に説明してくれる?」
すっげーめんどくさそうにしながらも我らがキリトさんは、俺の代わりに説明してくれた。
「NPC? この人が?」
「ほら、ネームプレートも少しデザインが違うだろう」
「確かに違うけど、そういう装飾ができるとかじゃなくて?」
疑い深いな、まったく。仕方ないし、パパっと証明するか。正座をやめて立ち上がる。
「よいしょっと」
「あ、こら。まだ疑いは晴れてないんだから」
「戻れストレア」
「わっ」
メニューを操作して、サポートNPCをオフにする。
画面に吸い込まれるようにしてストレアの姿が消えた。
「だからNPCだって言ってるだろ」
「そうみたいね。ごめんなさい」
「……。最近出た課金要素なんだ」
と、いたずらでも思いついたようにキリトが伝える。
「ああ、なるほど。それで連れてたのね」
「む。意外だな。アスナは文句言いそうだなって思って言ったのに」
「残念だったな。俺の実家は石油王だから、金のことではケチをつけられないんだ」
「また適当なことを」
アスナが呆れたようにため息をつく。
「よし、じゃあ誤解も解けたところで、キリトも一緒に行く? クエスト回ろうかなって」
「構わないが、クラインにも呼ばれてるんだ」
「そうか? じゃ、ついてくわ。ノーとは言わないだろう」
案の定クラインはストレアに食いついたし、後日なんか仲間が増えていた。
でもそうしたらやっぱりサポートAIの見た目も、ある程度子供に引き継がれててほしいですよね。
そうなると遺伝子調整して、例えば髪は黒でいいけど、目はストレアみたいな赤がいいな、とか。
目の色が違うわ!