VRゲームツクールこと『ザ・シード』が無料配布された。
一応言っておくと、茅場さんが勝手になにか余計なことをしたわけでもなければ、抗いがたいトラブルがあったわけでもない。
むしろその逆に、きわめて珍しく茅場さんがちゃんと説明した上で許可取って実行したそう。
端的に言うなら、VR業界を牛耳る……もといVRを普及させるためである。
革新的なゲーム機であるナーヴギアに対応したゲームソフトを作る、ってのは非常に難易度が高い。
実際ソードアート・オンライン以前のゲームは、たいしたことのないものばかりだった。だがこのザ・シードを無料配布することで、VRゲームの作成は比較的容易になる。
どんないいゲーム機でも、遊ぶゲームがないなら売れない。
よりVRを広めるための損して得取れ精神、というわけである。
……あと、アーガス製のVR対応の製作ツールを無料配布することで、他社がVR機器を作りづらくする、というのもある。
まあそんなわけで、この愉快なオモチャ、ザ・シードで俺も遊んでみようとさっそく起動していた。
「で、なにがやりたいのかと言うと」
と、ヘッドセットのマイクに話しかけ、ザ・シードとはまた別に引っ張ってきたカーディナルに音声で指示を与えていた。
「せっかくの3Dプリンターぜんぜん有効活用してないからさ、これの設計図を作れるようなのを作りたい。これいけそう?」
VRを成立させるためにシミュレーションシステムも高精度だし、こういうのもいけるんじゃないだろうかと投げる。
動画見ながらカーディナルのプログラミングが終わるのを待ち、出来上がったものに何度か修整の指示を出して、まあそれなりのものができたように思う。
てなわけでナーヴギアを被って、ゲームというかシミュレーターを起動。
SF映画みたいな触れる立体映像をいじくり回す。
あ〜、これパソコンの画面上でやるよりずっと楽。
■◆■
自作したファングッズの数がまあまあ増えてきた頃。
ちょっと変わったこともやりたいなと、シミュレーターの改良や機能追加を続けていた。
いろいろとオモチャを作り始めたんだ。
ならこいつらを動かしたいよな、と。
「モーターとかは市販品を使うとして、これらを組み込んだ設計図を描かせる。ああ、形だけじゃなくて強度や耐熱性も必要か。となると」
材料の樹脂や、各種モーター類の情報、それから作りたいモノの情報を入れる。
「ちょっと一時間出かけてくるから、その間に設計図を用意しておいて」
と、そんな指示を与えてログアウト。
しばらくして戻ってきた時には、数千通りの設計図から、より精度のよいものが十通り選抜されていた。
で、もちろんこれをそのまま3Dプリンターで作るわけではない。
「全部出して」
そう言うと、VR内で設計図通りのものが形になる。
こうやって現実で作る前にテストができるわけだ。
物理演算は高精度だし、実際に物を作るよりもお手軽にテストできる。バラしたり、パーツを透視するのも簡単だしな。
……まあパーツや樹脂の個体差までは知らん。
ともあれそんなこんなで選定した設計図のもと、数日かけて組み立てを終えた。
「ようし、これで動くといいんだが」
組み立て中は問題なく動いていたが果たして。
「執行モード、リーサル、エリミネーター」
ボタンを押すと、ガチャガチャと自作ドミネーターが変形を始める。
「お、おおお! よっしゃー、カッコいいー!」
はー、最高か。
しばらくガチャ動かして遊んでから、茅場さんに面白いものを提供してくれた感謝の連絡を入れる。
翌日、俺の設計図シミュレーターは会社に持っていかれた。
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「彰くんはなにか知ってる?」
と、雑談中に明日奈に聞かれた。
「なにが?」
「この間、シードだったっけ。アーガスがゲームを作るためのツールを公開してたでしょう。それで、うちの方でもなにかやってるみたいなんだけれど」
「へえ。そうなんだ。当たり前だけど、知ってるわけないだろ」
「そりゃそうよね」
「なんだ? 楽しみなのか? 新作ゲームが。いい感じに染まってきたな」
「あんまり没頭するわけにはいかないけどね」
知らないってことは、あんま突っ込まない方がいいかな。
たぶん明日奈も噂かなんかってレベルだろうし。
まあレクトがゲーム開発してる、と言われても違和感はないし、実際なんか作ってるんだろうな。
どんなゲームになるんだろう。
「残念。でもまあMMORPGなんて、時間をめちゃくちゃ浪費する趣味だしなぁ。短時間で好きに遊ぶんならソロゲーの方がいいぞ」
「そうなのね。でも、一人で黙々とやるだけってのも面白くないし、やるならこういう方がいいかも」
「ふぅん……? じゃあまた一緒にやろうか」
「ええ、あ、でも迷惑じゃない? 彰くんの方がプレイ時間長いからレベル上だし、あんまりこっちに付き合わせ続けるのも」
「いいんだよ、そんなもん」
須郷「これ使うの微妙に嫌なんだが」