とうとう十層のボス『カガチ・ザ・サムライロード』が討伐された。
βテストの時はこいつを討伐できずに終わったのでなんだか感慨深い。
アスナは単純にステが足りずに、討伐レイドには加わっていなかったが、キリトはいたな。まあいつものようにお祭り騒ぎのようなレイドバトルだった。
で、いったんここでみんな足踏みすることになる。
なぜかと言えばそれはもう当たり前のように、十一層以降はまだ公開されていないからだ。
最初っから百層まで全部公開するだなんてとんでもない。
修正したり調整するような要素はいくらでもあるし、単純にガチ勢が爆速で百層まで攻略するのを防ぐ意味合いもある。
まあβ時は二ヶ月で十層までだったので、そうそう短期間で全クリはされないだろうが、あんまり突き抜けすぎて後ろが追いつけないのもよくないしな。
後続の人達が追いつける時間を稼ぐためにも、各層の公開は間を開けることになっていた。
さてと。
で、その修正や調整の一環としてアンケートを取っているのだが、現状一番たくさん来ている要望はと言うと。
『結婚システムを改修してほしい』『サポートNPCと結婚できるようにしてほしい』『システム的なメリットは無くてもいいからサポートNPCと結婚できるようにしてほしい』
というわけで、またしても会議にオンライン参加することとなった。
「実装しようか」
「なんでそんな乗り気なんですか茅場さん」
アンケートの希望の話になるや否や、全力で肯定する茅場さん。
「僕としては、だからもうちょい人間らしさは減らすべきだと言ったのに、って感じなんですけど」
「プレイヤー達にとってNPCが本物の人間と同じように思われている、ということだろう。なにか問題でもあるのかな」
「絶対そこまで前向きに、深く考えるような感情ではないと思いますが」
プレイヤーはそこまで考えてないと思うよ。
話しかけてくれた女の子にすぐ惚れる、ぐらいの衝動的なものじゃないか、これ。
「とはいえ、特別反対する気はないですね。ただ一応結婚システムのメリットでもあるストレージ共有みたいな機能はオミットしておくべきかなと。さすがにシステム的に有利になるような要素は、個人で完結できるようにはするべきでないと思います」
「有料の追加ストレージのように扱われるのは確かによろしくないな。そうしようか」
「後は……サポートNPC達って結婚を申し込まれて、ノーを言えるんですかね。つまり、プレイヤーが設定して、生成して、もうそのまますぐに結婚申請を出した時は、好感度が足りないからノーを突きつける、みたいな」
目に見えてわかるような好感度ゲージがないのは知っている。が、それ以外の部分がどうであるかまでは詳しくは知らない。
「できるだろう」
「なら……特に言うことはないですかね」
プレイヤーにはわからないだけで、好感度はちゃんと用意されてんのかな。
「ではNPCとの結婚はできるようにする、という方向性でいいかな」
「そうですね」
特に他からも異論は出なさそうだったが。
「そうだ、一つ。もちろん一般のNPCとはダメですよ。余計な火種になるだけですからね」
「……ああ」
なんか不満そうだな。
■◆■
しばらく俺が口を挟む必要のない話題が流れて、「後はなにか気になった部分はあるか」と、また振られたので、考えていたことを話す。
「βテストの時は、まあいいかなと思ってたんですけど、今後もこうしてトッププレイヤーがやることなくなる虚無期間が、時々発生することを考えると気になりまして」
「やることはいくらでもあると思うが」
「あってもできないんですよ。スキルが全部同じ枠なので」
そりゃあもう農業やら釣りみたいな素材を得られるスキルから、裁縫や鍛冶みたいなアイテムを作るスキルまで充実している。
本当にソードアート・オンライン内では出来ないことの方が少ないのではないか、というくらい豊富に用意されているのだが。
「現在のスキルシステムは、レベルアップで増えていくスキルスロットに使いたいスキルをセットして、セットしているスキルだけが使える仕様ですよね。低レベルなうちは、必要なスキルを全部付けることは出来なかったり、レベルが上がっても制限がある方がスキル構成に多様性が出ていいかな〜と思っていたんです」
「そうだろう。私も同意見だ」
「でも戦闘スキルだけじゃなくて、生産スキルまでスキルスロットの制約が付く必要ってないんじゃないかなと思い始めました。生産スキルを使おうとすると、どうしたって戦闘スキルを削りながらになってしまいますし、本気で戦おうと思うなら生産スキルは一切使われなくなってしまいます」
高レベルになったら、スキル枠が空くようになるのかもしれないが、そんな余裕が出来るまで待たされるのも癪だ。
「スキルを付け替えようとすると、一回外したスキルのスキルレベルはリセットされてしまいますし、こういう虚無期間に生産スキルで遊ぼうかな〜、と思っても気軽に触れられないですからね」
「む」
「だから外したスキルもレベルは維持されるか、そもそも生産スキルは好きに使える方がいいのかなと。遊び方の幅が増えますからね」
「確かにその通りだ。私の世界をより味わってもらうためにもその方がいいだろう」
まあ純粋に俺がいろいろと遊びたいというのもある。
せっかく楽しいんだから、もっと好きにいろいろとやりたい。
「あ、それとスキルで言うと、聞き耳スキルで盗聴できる仕様はオミットしてください。なに考えて用意したんですかこれ」
■◆■
会議が終わった後のこと。
「少し意見を貰えるかね」
「なんです?」
「NPCに老化や出産といった、より人間的な要素を追加したいと考えている」
「はあ。……リソース足りなくないですか?」
「その通りだ。NPCが基本的には不可壊であるかリスポーンする以上、増える方が圧倒的に速い。だがなにか回避する方法は思いつかないか」
「ううん……別に全部ソードアート・オンラインに詰め込む必要はないんじゃないですかね。例えばそういうリアリティを極限まで詰め込んだソロゲーとか、なんならジャンルも変えてシミュレーションゲームにして、もう別ゲーでやるってのはどうでしょう」
「なるほど。……考えてみるとしよう。ありがとう」
「どういたしまして」
なんでまたこう、こういう部分にめちゃくちゃ拘るのかな。
あっ。なるほど、そういうことか。
ロボ娘というか、AI娘というか。こういうのが性癖なんだな。
聞き耳ナーフ
若干ストーカー気質のヒロイン「(´・ω・`)」