生産スキルの制約が緩和されてから数日。
スロットから外したスキルもスキルレベルが維持されるようになった、というところで遊ぶための準備をしていた。
と言っても既にまあまあ持ってたから、ちょびっとだけだ。
「ようし。目標数達成」
ポリゴンになって砕ける蜘蛛のモンスターを尻目に、蜘蛛糸が予定通りに集まったことを確認する。
スキルレベル1から育てるための雑魚敵狩りだから、楽だったな。
「帰るぞ」
「うん!」
さっさと安全な街まで戻り、自前では用意が手間だったので、街中にある設備を利用することにする。
「裁縫スキルで遊ぶんだったっけ?」
「そうだな」
と、近くで座って足をぶらぶらさせていたストレアに返す。「そういえば」と気になっていたことを試してみる。
「裁縫の効率のいい上げ方はわかる?」
「え? う〜ん、数をこなすしかないんじゃないの」
特別なにかを言ったりはしないか。
まあ事前に調べてきたから素材集めなんてしてたんだ。
問題はないわけだが。
序盤素材で、手袋の作成を開始する。最初の方は失敗するだろうが、別に惜しくはないので使い切る勢いでいこう。
「そういえば、生産スキル以外のアプデもあったよね」
「うん? ああ、ゲーム内で確認できることは知ってるのか」
「ふふん。ちゃんとお知らせは読んでるからね」
ヘルプなりお知らせなりについては言及できる感じかな。
「それでね。アタシ達も結婚できるようになったよね」
「そうだな」
燃えるゴミと化した糸くずを整理する。そろそろスキルレベル上がりそうだな。
「アッシュ。アタシと結婚する?」
「あー?」
思わず手が止まる。
「あ、あはは。冗談だよ、冗談。ちょっと聞いてみただけ」
「そうか? まあ、あれだ。アスナに悪いから駄目だ」
「……うん」
妙におとなしい返事だった。
まあいいか。AIに実際に心があるわけではないし。
ただストレアが静かになってると、なんだか違和感あるな。
「なんか変なこと聞いてごめんね」
「別に謝るようなことでもない」
しょぼん、と、これ見よがしに椅子の上で体育座りになるストレア。
はー、まったく。
クイクイ、と指を振る。
「手、出せ」
「? はい」
差し出された腕に、色付きの紐を巻きつける。
「それで我慢な」
「えへへ、うん! やったぁ、ありがと!」
機嫌を戻したストレアを尻目に、スキル上げを再開した。
■◆■
「好きな色は?」
トラッキングでこっちに来たアスナに聞く。
「急にどうしたの」
「裁縫スキルのレベルが上がって、ようやく装備作製が形になりそうだからな」
「へえ、アッシュくんが裁縫? 意外」
「なんか文句あんのかおい」
今後も自分の装備は布系の軽装を続けるつもりだから、装備を弄くるスキルをなにか鍛えるなら、裁縫を選んだだけで他意はない。
「特にはないけど」
「そ」
「それで、色だっけ。……赤かな。それか緑」
「オーケー」
そういや赤系好んで身につけてたような気がしなくもない。
■◆■
素材を選んで、作製するアイテムの種類を選ぶ。種類は手袋。で、染色はと言えば、幸い赤は基本色の中に含まれているから、追加であれこれと用意しなくてもよさそうだ。
後は作製開始を選んで、縫製はほとんどシステムアシスト任せだ。
数十秒かけて、手袋の作成に成功する。
あー、ようやっとできたよ。
「よし、完成」
出来上がりを眺めて満足する。
これでよし、と。
出来上がったそれをインベントリにしまう。
「よいしょっと」と言いながら立ち上がる。
「あれ? どこか行くの?」
「ん? あ〜、そこの民家」
近くの建物を指さして、そっちに向かって歩いていく。
「あっ、ちょっと」
なぜかわざわざついてくるアスナ。
そのまま民家の中に入って、そこにいたNPCに話しかける。
「もしも〜し。納品アイテム持ってきたぞ〜」
話しかけて、クエストを進め、インベントリからさっき作った手袋を納品する。
よ〜し、クエストクリア。
キャラレベルと対応するスキルに大きく経験値が入る。
いい感じいい感じ。ひたすら数こなすよりはこっちの方が効率いいな。
「待たせて悪かったな。じゃ今日なにする?」
「え」
「ん」
「あれ。作ってた手袋は?」
「? 今納品したじゃん。ほら」
NPCの方を向くと、今渡した手袋を付けて喜んでいる。
うん。なにも問題はない。
ムスッとしたアスナにほっぺをつねられた。
「なんだよ」
「なんでもありませんっ」
「欲しかったんならそう言やぁいいのに。なんか作ってやるよ。なにがいい?」
この後、だいぶ裁縫スキルを上げさせられた。