お気に入り数10000が見えてきたぜ
「飛ぶのはあり?」
「いいけど、追いかけないからね」
「こっちの土俵には上がってくれないってことね」
観光案内の後、話していた通りに決闘を挑まれたので、決闘場に移動がてら軽く取り決めをしていた。
風魔法で上から撃てるが、そんな鍛えちゃいないし、アスナはアスナで回復魔法が使える。
回避されることも考えると、真っ当に斬り合う方がよさそうだ。
「ようし。やるか」
「望むところ」
到着したところで決闘申請を受諾し、カウントダウンが始まる。視界に表示された数字が減っていき、ゼロになった。
タンッと跳ねるようにアスナが距離を詰めてきて、高速の突きを放つ。
剣先なんて見えるようなもんじゃないから、体捌きから軌道を予測して身体を捻りながらこちらも斬撃を繰り出す。
通り過ぎていくレイピアが、すぐさま引き戻され、俺の剣を弾く。
キンキンキンキン!
その調子で数合打ち合って、鍔迫り合いに持ち込む。
ソードアート・オンラインでもよくやる得意技、この状態のまま身体をずらして肘打ちをしようとする。
と、アスナがレイピアから手を離す。
「うぉっ」
急に押し合いが無くなったことで若干バランスを崩す。アスナはその場で回転しながら反対の手で落下中のレイピアを取り、突き出す。
位置取りからして下段の突きを跳んで避ける。
空中にいるところへ追撃が来て──それを羽撃いて避けながら思い切り蹴りやすい位置にあった顔を蹴飛ばした。
「マジかこいつ」
みたいな観客の視線が集まる。
「ふぅ。DVに目覚めそうだ」
「リアルでやったら死人が出るからね」
「そりゃそうだ。気をつけないとな」
「痛い目に遭いたくはないでしょ」
「なにをする気!?」
その後、なんとか勝利を収めた。
悔しそうに「もう一回もう一回」と鳴いていたが、何度もやってたら負けそうだったので、申請は蹴っておいた。
これで俺の先駆者としての威厳は守られた。
■◆■
ソードアート・オンラインもアルヴヘイム・オンラインも時間かかるゲームなので、どっちもドップリというわけにはいかず、まあ普通に前者を優先していたわけだが。
どうもちょいと前に選挙があったらしい。
選挙というのはつまり選挙ということだ。各種族には領主と呼ばれる、まあつまりギルドマスターみたいなものがいる。
これを種族内の選挙で選ぶわけだ。
どうもスイルベーンでは選挙活動みたいなこともちょろっとやってたようで、シルフでも領主が決まっていたらしい。
この領主システムというのがまあ、ナーヴギア発売前のMMORPGにはありがちだった、大規模なギルドや陣営に戦争ごっこさせるためのシステムだ。
種族内で本当に政治家のようにあれこれとルールを決めたりできるし、他種族が領主をPKすると、その種族を占領。資金の三割を取得し、十日間限定だがルールをあれこれ好きにいじれる。
まあ、税率を上げて、追加で金を取るみたいなことくらいしかできないが。
んー。これ無理があるよなぁ。
陣営ごとに対立させて、みたいなのはまあいいとして、それが種族単位なのはいただけない。
種族差が見た目だけなんだとしたらいいんだが、性能差あるんだぞ。性能の違う種族ごとに戦争させようっていう仕組みだ。
これ、種族だからわかりづらくなってるが、性能差があるってことは他ゲーで言うところのジョブとイコールである。
つまり位置の関係でどつき合ってるサラマンダーとシルフ。
この関係を他ゲーで例えるなら、戦士ギルドと盗賊ギルドでやり合ってるようなもんだ。
ウンディーネは教会だし、ノームやレプラコーンは商屋。例えるのが難しい種族もあるが、これを対立させるって、無理がないか。
アルンの人口密度の高さが無理味を物語ってる気がする。
せめて種族選択と陣営選択が別ならいいんだけどな。
それはさておき。
選挙とやらをやった後に、お祭り騒ぎなのかなんなのか、シルフ内でプレイヤーが自主的にPVP大会を開催するらしいので、参加することにした。
■◆■
「っしゃおらー! 俺が最強じゃーい!」
ワンオンワンのトーナメントで全員ぶちのめして、見事に優勝を勝ち取った。
みんな強かったなぁ。なんかこう、今頭の中に浮かんでいるのは、やたらめったら強いヒーラーだが。
「お疲れちゃん」
「お疲れ様」
決勝でやり合った相手に声をかける。緑がかった金髪ポニテの少女だ。
「この辺で見ない顔だけど、君強いね!」
「だろ。俺は最強だからな」
こいつ名前なんだっけ。まあ呼ばなきゃいいか。
「そういうあんたもなかなか強かったぜ。ソードアート・オンラインもやってたりする?」
「てことはアッシュくんはそっちもやってるんだ。あたしはリアルの方でちょっとね」
「へえ」
戦っててわりと真っ直ぐな剣筋だったから、剣道とかそういう方面かな。
トーナメント後に報酬やらなにやらあるらしいので、それまでの間、適当におしゃべりしつつ時間を潰していると、俺を含む上位何人かが主催者兼参加者で、わりと上位の方にいた女性プレイヤーのところへ呼ばれる。
「うむ。よく集まってくれた」
主催者の──たしかこっちは、サクヤだったかな。
和装のシルフが話を始める。
どうやら彼女こそが領主だったみたいだが、まあなにはともあれ。
先日、先代の領主がサラマンダーに討たれて、勢力として強大になってしまったので対抗するためにこうして大会をやったのだとか。
「どうか協力してくれるとありがたい」
「あ、俺パス。普段はリアフレとアルンで遊んでるから、そういうのはやめとく」
「そうか。君が手を貸してくれればだいぶ楽になると思ったのだがな。そういうことであれば仕方ない」
意外と話のわかる人だったな。
まあ、あとのことは俺には関係ないみたいだし、もう帰るか。
「ふん。なんだ
「あー?」
去ろうとしたところで、こちらを馬鹿にするように強面の男が言う。
「誰だか知らんが俺を煽るには実力が足りないな。せめて決勝まで上がってから言えよ」
「貴様!」
「やめないか。喧嘩をするなら、話し合いのあとで決闘場でやるといい」
「おっと、失礼」
サクヤが止めに入ってくる。話し合いのあとで、と言われてしまったし、帰りづらくなっちまったな。
仕方ないので、話を最後まで聞くことにする。
で、あれこれと彼女らが話し合うのをぼーっと、なんか変なこと言ってんな、と聞き流す。
「なにか気になることでもあるの?」
決勝の娘に話を振られる。
「んー? いや大丈夫。どうぞ続けて」
「遠慮するな。どんな意見でもありがたいからな」
サクヤからも追加で促されてしまう。
「あー、まず、このゲームで一番権力持ってる陣営ってどこだと思ってる?」
「む。……サラマンダー……か?」
「ちげーよ。大したもんないだろ、サラマンダー。いいか、アルヴヘイム・オンラインで最も強いのはノームかレプラコーンだ。採取スキルと生産スキルはこいつらの専売特許なんだぞ。ここ二つを敵に回したら、まともにゲームを遊べなくなるだろ」
「あ」
「だからまず真っ先に同盟組むならここのどっちかだ。さっさと話通して、兵糧攻めなりなんなりすりゃあいいだろ」
「う、うむ。そうだな。そうしようか。距離があるからどう接触するかだな」
「アルンで会ったノームとかレプラコーンのフレ紹介しようか?」
「よろしく頼む」
後日、金の使い道を失ったサラマンダーと和解したらしい。
アルヴヘイムに合わせて、例えばアースガルズやミズガルズみたいに陣営を、種族とは別で選べれば良くなると思うんですよね
他種族でも陣営が同じなら一緒に遊べるみたいな