アルヴヘイム・オンラインのアンケートに思いつく限りの意見を記したり、普通に遊んだりしていたある日のこと。
「はあ、コンバート」
なにやらザ・シードに新しい機能が追加された、という話を聞いた。
どうもザ・シード製のゲーム間で、アカウントのやり取りが行えるようになったらしい。
ゲーム内資産は全て消滅する代わり、そのゲーム内で得たステータスをだいたい同じ比率で引き継ぐことができるとのこと。
例えばソードアート・オンラインで中級くらいのアカウントを、アルヴヘイム・オンラインにコンバートすれば、同じく中級くらいのアカウントとしてプレイできる。
「んーと。つまりは、ゲーム間でユーザーの奪い合いが出来るシステムってことか」
というのは冗談だ。
どうせ茅場さんの発案だし、そんなことは考えてないだろうから。
それにどうやら、運営側でこの機能はオンオフを切り替えられるらしい。
嫌ならオフにしとけばいいってことだ。
「ははは。そういう見方も出来るかもな」
時間潰しがてらに今の話をしてくれたキリトが笑う。
「んー。ただこれ、スタートダッシュ以降は強くないかもな。ステータス調整は自動なんだろ?」
「らしいな。……ああ、確かに。STR寄りのキャラを、AGI寄りが強いゲームにコンバートしても効果は薄そうだ」
「そうそう。下手に高レベルのキャラだと、ステータスの方向性を調整し直すってのも難しい。微調整したいならやっぱり一から作り直す方がいいだろうな」
最近使ってないキャラを他ゲーやる時に再利用、みたいな用途が主になるんじゃないかな。
ともあれ、そろそろ終わりそうなので雑談を切り上げて、作業に集中。
チクチクと布を縫い合わせて、最後まで綺麗に仕上げる。
「ようし。完成! んー、なかなかいいステータスになったんじゃないか?」
裁縫スキルで作製した黒色の布装備を持ち上げて、ステータス画面を開く。
「助かった」
「いいってことよ。素材も持ち込みだったし、友達料も合わせて安くしとくぜ」
メニューを操作して、バサッと装備を切り替えるキリト。
「毎度あり。今度はもっとオシャレなカラーリングや装飾も希望してくれ」
「あんまり派手なのはちょっとな。そうだ。肩慣らしがてら、一緒に狩りに行かないか?」
「いいぜ」
というわけで。
幾度のアプデを繰り返して、現在開放されている最高層、二十層の迷宮区に向かうことになった。
■◆■
そんなことがあってから数日。
ふと思いついたことがあった。
もしかして出来るんじゃないかな、と。
久々にザ・シードを起動して、ゲームの製作に取りかかる。そんなに難しいものを作るつもりはない。極めて最小限のマップと敵、ステータスシステムだ。
ザ・シード内蔵のプリセットをふんだんに使い回して、休日の大部分を使ってゲームを一つ、作り上げる。
コンバートを機能をオンにしようとしたが、残念ながら出来なかった。
どうやらキチンと商用として世に出ていないと、これは機能しないらしい。
仕方ないので、この適当に作ったゲームを、複数の販売サイトに申請を出してみる。
数日して一箇所だけ申請が通ったので、そこで公開。
購入されないよう適当に9を並べた値段を設定し、ゲームの概要にも購入されないようにと、適当なことを書いておく。
「んー。お、コンバート機能使えるようになったな」
というわけで早速この自作のゲームをプレイ。
学校の教室くらいのマップ内で、出てくるモンスターと一対一でやり合うだけのゲームだ。
武器は初めから持っている剣の一本だけ。
モンスターを倒すとレベルが上がって、ステータスポイントを割り振ることが出来るが、まあわざわざ割り振らなくても倒せる程度にモンスターは雑魚にしてある。
五体のモンスターを倒したところで、ゲームは全クリ、レベルもカンストした。
ステータス画面──流用なのでソードアート・オンラインのまったく同じ──を開くと、大量のステータスポイントが未振分のままで全て残っている。
あー、まったく。ここまで長い準備時間だった。
こんなことに何日かけてるんだか。
というわけで前から気になっていた海外製のゲーム、ガンゲイル・オンラインへと、この自作ゲームのキャラをコンバートしてみる。
あ、Ashが使えない。
くっそ。海外製だしな、仕方ないか。
代わりの名前を適当に付けて、と。
このゲームのアバターは、うちのと違って自動生成だ。
いい見た目になることを祈りながら、ゲームの世界に入り込む。
鉄と火薬の臭いに満ちた、ファンタジーとは程遠いゲーム。
ガンゲイル・オンラインの世界へと降り立った。
早速ステータス画面を開いてみる。
ふむ。
事前にこのゲームのトップ層については調べていたのだが、だいたいその辺と同じレベルと、一切割り振られていない大量のステータスポイントが表示される。
「後で茅場さんにクレーム入れとくか」
彰「というわけです」
茅場「(絶句)」