真面目にゲーム作ってもらえます?   作:誰かフルダイブ開発してくれ

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第2話

「浩一郎さんいるー?」

「いるわけないでしょう。兄さんはあなたと違って暇じゃないの」

 

 と、電話の相手が返す。

 

「なんだ残念。じゃあ連絡するのは辞めとくか」

「いちいち私を中継するのやめてよね、まったく」

「いやほら、忙しい時に電話したら迷惑じゃん?」

「まるで私に迷惑がかかるのは問題ない、みたいな言い草ね」

「どうせ退屈してただろ。たまには刺激がないとな」

 

 言ってる内容に反して、そこまで不機嫌さのない声音がスピーカーから流れる。

 

「それで。兄さんになんの用だったの?」

「ん? ソードアート・オンラインの話だけど。今ちょうどβテストやってるんだよな」

「はぁ〜。まったく、そんなことでいちいち電話してこないでよね」

「お前、実家がなんの会社か知ってる?」

 

 結城明日奈という名前の彼女は、同業他社の年の近いガキンチョってことで、ちっこい頃からよく交流のあった幼馴染だ。

 勉強はできるが、自分の親がゲームも開発してることを知らないおとぼけさんである。

 

「あなたのとこと違ってゲーム作ってるだけじゃないのよ」

 

 どうやらちゃんと知っていたらしい。

 

「でさ、聞いて聞いて。この間、ソードアート・オンラインやってた時のことなんだけど、特殊なスキル習得のためのサブクエやってたんだよね。あ、ここまで用語わかる? スキルとかサブクエとか」

「誰かさんのせいでね」

「素晴らしい人だな、拝んどけ。で、なにがあったかってーと、体術ってスキルを習得するクエストだったんだけどさ。クエスト受注するや否や、顔に落書きされて、バカ頑丈な岩を素手で叩き割る作業が始まったんだよな。落書きされた瞬間、はぁ〜! って声リアルに出たわ」

「へぇ。それじゃあ今、彰くんの顔はおかしなことになってるのね」

「ゲームの中の話だぞ。わかってる?」

 

 頭が良いはずなのに、意味不明な天然ボケをしょっちゅうかますから、いちいち確認しておかないと気が気でない。

 

「ステータスのせいってのもあるんだろうけど、数分叩いた時点で、これ何時間とか何十時間かかるなぁと悟ったんだけど」

「やったの? それ」

「やるわけないだろ。即ログアウトしてbot組んだわ。寝て、学校行って、帰ってきたらもう終わってたから、どんくらい叩いてたかは知らん」

 

 ログインしたらなにもないとこで拳ブンブンしてたしな。

 

「爆速でこれは茅場さんに難易度調整、というかそもそも習得のためのクエスト内容自体変更するようフィードバックしたんだけど、やり取りの最中にもっとやべー仕様が判明したんだよな」

「それは大変ね」

「ああ、すっごいぞ。落書きされたって言ったろう。クエスト放棄すると、落書きが消えなくなるらしい。──ゲームなんだよ、これ! 意味不明な苦行を強いたり、不可逆なペナルティを設定するんじゃない! 岩叩いてるより長い時間かけてアバター作ってるような人もいるんだぞ! 落書きが消えない仕様なんざ許されるわけないだろ! 誰だこれ通した奴!」

「茅場さんでしょ」

「そうだよ!」

 

 こんなクエスト、このまま世に出したら大炎上するのは間違いない。

 

「もうバランス調整は全部カーディナルにやらせて、技術面だけやっててくんないかな」

「ゲーム開発もいろいろと大変なのね」

「実質的に茅場さんのワンマンだからな」

 

 会社を一人でゲーム業界トップにまで持っていった天才エンジニアだからな。面白いゲームのアイデアではなく、革新的な技術をいくつも開発して導いた、という凄まじい人物である。面白いゲームのアイデアを出しているわけではなく。

 就職先間違えてんじゃねーかな。

 

 まあ、長い付き合いだからそれとなくひととなりはわかっているつもりだ。

 天才エンジニアだけど、やりたいことはゲーム開発とかそっち方面だったから、自分が好き放題するために最初から大きいゲーム会社だったわけじゃないアーガスに入社したってとこだろう。

 

「後これは、ううん、明日奈にどう説明したもんかな」

「なによ。私には理解できないって言いたいの」

「このゲーム、武器以外で攻撃できないんだよ。盾はあるけど、これも防御専用でリアルみたいに盾でぶん殴るシールドバッシュとかはできないんだよな。攻撃の判定がない」

「? それとこれとなにか関係があるの」

「大アリだ。武器でしか攻撃できない。より正確には、今スキルスロットに装備してる武器スキルに対応した装備でしか攻撃できない。裏を返せばスキルがあれば攻撃判定が生まれる。体術は名前の通りに徒手空拳するためのスキルだ。つまり」

「このスキルが無いと殴ったり蹴ったりしても攻撃にならない?」

「そう。武器で鍔迫り合いしてる最中に、相手を蹴っ飛ばしても体術スキルが無いと効果がないんだ。逆にスキルがあると、これができる。戦術の幅が大きく変わるんだ。その大きく変わるスキルの習得がこれ。明日奈もやろうぜ、ソードアート・オンライン」

「え、嫌なんだけど」

 

 翌日には体術スキルの習得クエストは、岩を叩き割ることから、徒手空拳で飛んでくる石を連続十回弾く、に変更された。




「体術スキルは習得できたかね」
「ええ、もちろん。botでやりましたが」
「(´・ω・`)」
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