何度目だったか、フロアボスが砕け散るのを見送り、表示されるドロップアイテムを確認する。
んー、こっちはまたドロップしてないか。残念。
「ん。ああ、こっち落ちたぞ。ほら」
「おっ、とと」
アンダースローで投げられた剣をキャッチする。
ちょいとステータスが足りてないから、なんとか落とさずに抱えた。
「サンキュー、キリト」
「いいさ。さてと、これで全部か?」
「ああ。そうだな」
二十五層のボスである巨人からドロップした剣のステータスを開く。
よしよし。ようやく目的達成だ。
リーファの分も合わせて、これが二本目。途中、ここに使い手のいないハンマーの二本目がドロップした時は絶望したが、なんとか終えることができた。
「ありがとね。先に譲ってくれて」
「気にすんな。どうせまだ装備できないしな」
二十五層。
アインクラッドでは五層ごとに、ひときわ強いボスが現れるのだが、このクォーターポイントのボスは、さらに強く作られていた。
その分、報酬も豪華になっていて、ドロップする装備品もかなり先まで持つような性能になっている。
ちなみにこの武器性能にはナーフが入っていて、当初は五十層辺りまで通用する性能と、四十層辺りまではまともに装備できないレベルデザインになっていたのだが、使えない装備なんて無いも同然ということで、ボスの推奨レベルよりは多少上くらいの要求ステータスに調整されている。
ともあれ、いったんこれで全員ボス武器を獲得し終えたことになる。
「キリもいいしこれで終わりにするか? まだやりたい人いるなら付き合うぞ」
「う〜ん、いや、悪いけどここらで落ちるよ」
珍しくキリトからそう言い出す。
「そうか? ならこれでお開きにするか」
「ワシはまだまだ戦えるぞ」
「さすがっすね覇王様」
ミトのことは軽く流す。キリトのリアルのことは知らないが、もう年の末だしな。いろいろあるんだろう。
人数も減ったことだし、ボス周回は切り上げ、しばらく他のことしてから解散した。
■◆■
後日、俺はまた神代さんのところを訪れていた。
「お邪魔しま〜す」
「いらっしゃい、どこでも好きに座って」
「了解です」
資料や荷物まみれの研究部屋を軽く片してスペースを開ける。
「持ってきたものはこの辺置いときますね」
「ええ、ありがとう」
作業も一区切りして、俺のやるようなこともあんま無くなったので資料等の返却に来ていたのである。
カバンから取り出した資料一式をわかりやすいとこへ置いた。
「相変わらず忙しそうですね」
「そうね、メディキュボイドを実際に動かし始めて、調整したり、収集したデータの分析もあるもの」
「それはまた、すみません」
「気にする必要はないわ。別に嫌なわけではないから」
勝手に据え置きの紙コップにお茶を淹れて、開けたスペースに座る。
「ならよかったです。分析の方は順調ですか?」
「ええ、とても。ともすればHIVの完治すら見込めるほどにね」
「それはすごい!」
いやはや、本当にSF映画染みてきたものだ。
そのうち不老不死の法を見つけた、なんて言い出してもおかしくない。
人類を作った神なんてもんがいるとしたら、どう思っているのか聞いてみたいところである。
「なんにせよ、よかったですね。確か被験者が……十二か三かそんくらいでしたっけ?」
「紺野さんなら十二ね」
「あらためて聞くとまあ、幼いですね」
そんなちっちゃな子がHIVだなんて、親もさぞ苦労したことだろう。
「病状の改善だけじゃないの。身体の状態をこれまでにない精度で把握できるようになったおかげで、治療そのものにもいろいろな可能性が見えてきた」
「へえ……」
「ただ、まだ一人の患者さんを見ただけだから、どこまで一般化できるかは分からないけれど」
「なるほどなるほど。そりゃそうですよね」
まだサンプル一人目だ。それだけで、何もかも分かるほど人間は単純な造りではないらしい。
「それでも、最初の一人としては十分すぎる成果よ」
「救われてくれるといいですね」
「……そうね」
神代さんは、少しだけ間を置いて答えた。
「本当に、そう思うわ」
「?」
なんでそう微妙そうな顔をするんだろうか。完治が見えてるってことは、テストはうまくいっているはず。間に合わなさそうとか?
先日見たメールを思い起こしてみるも、特別そう変なことは書いていなかったような。
あれ。
「十二の子供がHIV? ……母子感染?」
「そういえばあなたのところへ渡した資料には、本人以外のことは書いてなかったわね。母子感染ではないのだけれど、輸血時に感染して、そのまま気づかずに両親と姉妹を含めた一家全員に広がったそうよ」
「……あー」
表情の理由はそれかぁ。
メディキュボイドは、一台しかない。
つまるところ、この治療を受けているのは一人だけだ。
「なるほどぉ……もめん……さん? が被験者なのは、末っ子とかなんですかね」
「
「両親や本人は複雑でしょうね。聞いてるだけでも嫌に──あ」
ちょっとその、先に聞いてみるか。
「どうかしたの?」
「神代さん。ちなみに……その、両親さん方ってまだ存命ですか?」
「ええ」
生きてるんだ。双子の姉の希望、って言ってたから、死んでてくれれば、なにも気負うことなかったのに。
いやそりゃ両親は言えないよなぁ、双子の娘のどっちかを選んで助けて、とは。
マジで嫌だ。ほんと嫌だ。
絶対に俺からは提案したくない。
誰かが代わりに言い出してほしい。
でもそれで待ってる間に手遅れになる方が精神的に来るか?
「……。んー……、ぐぐぐ、……。双子、なんですよね」
「そうだけれど」
「なら……比較検証を根拠にすれば、もう一台分だけなら予算が通るかも。美談として飾れれば、今後の普及にも繋がりますし」
生まれて初めて、勉強してきたことを後悔してる。
木綿季→彰:姉「も」助けてくれた
彰→木綿季:両親「は」見捨てた
お前もソードアート・オンラインのオリ主だろ