それからしばらく。大量に集めた素材をふんだんに使って、数日かけてスキルレベルを上げ続けていたものの、まだ完璧に思い通りに作り替えるには至っていなかった。
とはいえもう少しレベルを上げれば事足りる。
仕方ない。ちょっと狩りに出かけてくるか。前回の戦いで、モンスターもソロでやれそうという実感があったので、一人で街を離れた。
いつもの軽装に、フォトンソードと替えのエネルギーパック。それからナチュラルの野蛮な銃を装備して、ダンジョンに向かう。
狩場に選んだ地下ダンジョンは、砂漠の地下に埋もれた神殿かなにか、といった様相の場所だ。
目についた端からモンスターを斬ってまわる。
ああ、なんて楽しいんだ。
でっかいサソリのモンスターのハサミや尻尾を斬り落とす。スパッと斬れるこの感じがたまらないな。
最近はもっとリアル路線のゲームも次々と、主に海外を中心に出てきているし、ぜひともリアル路線でキャラゲーを作ってもらいたいところだ。
そんなことを考えながら素材集めに勤しんでいると、離れたところに他のプレイヤーを見つけた。
どうやら一人で活動しているみたいだ。
よし、こいつも斬るか。
銃声みたいな派手な音を出していないからか、向こうはこちらに気づいていない様子。
アサルトライフルぶっ放して戦闘するプレイヤーにこそこそと近づき、なんとなくその姿に見覚えがあるような気がした。
「うん? あ、あー」
思い出した。先日のPK集団の中にいたスナイパーだ。
目立つ水色髪のおかげで、記憶がよみがえる。
その時と武器が違うのは狩りのためか、それとも、あの時斬ったスナイパーライフルはそのままロストしてたかだ。
若干の罪悪感もあってためらっていると、彼もこちらに気づいた様子で。
「あ、あんたは!」
と、銃を向けられる。近接装備主体の俺を警戒するようにバックステップして、そのまま姿が消えた。
消えた場所へ近づいてみると、どうやら足場が崩れたようで、ずいぶんと下まで落っこちていた。
「あーりゃまあ」
ガンガンと数発、こっちに向けて発砲してくるが、さすがに当たるわけはない。
それよりも落ちた先はなにやら闘技場のような場所で、ボスらしき大きなモンスターの姿もある。
どうしたものかな。ううん、まあ、ボスの方がおいしそうだ。
「おーい! 無事ですかー! ボスいるみたいだし、いったん停戦しませーん!?」
そう呼び掛けてみると、銃を下すのが見えた。
俺も穴に飛び込んで、石の柱にフォトンソードを突き立て、減速しながら降りる。
彼の近くに着地して、フォトンソードをオフにした。
「やあ、先日はどうも」
「どうも」
クールなハスキーボイスで、短く返答が来る。
「この前会った狙撃手の人ですよね。ん? いや、敵だったのに敬語も変な話か」
「別に、好きにすればいいけど。フォトンソード振り回してた人よね。今も持ってるし」
「そうそう。そっちこそスナイパーライフルは?」
「おかげさまで失ったわ。だからこうして稼ぎに来ていたのよ」
「ん?」
「なによ」
「ああいや、なんでも」
女性プレイヤーだったのか。確かガンゲイル・オンラインは、リアルの性別通りのアバターになるはずだから、ネカマでもないだろう。
まあ男の娘アバターだったから、ネカマみたいなことしてる可能性もあるが、さすがに疑いすぎか。
「俺は素材集めに来たんだが、ちょうどいいし、アレ一緒に倒さない? 生産用の素材だけこっちにくれれば、後は譲るからさ」
「……。ナイスアイデア。そうしましょう。勝てなさそうだった時のサブプランもついでに進められそうだしね」
「お、なんかまだいい手があるのか?」
「あなたを撃って帰るのよ」
「そりゃあいい。次の武器も考えとけよ」
同盟は組めた、ということで闘技場の外周から降りて、ボスと対峙する。
水色のガンナーは、上に残ったまま援護射撃を開始してくれたので、こちらも再度起動したライトセーバー片手に、斬りかかった。
■◆■
「タフな奴だな、まったく」
恐竜だかドラゴンだか、飛ばないタイプの巨大爬虫類型のボスの攻撃を走り回って回避しつつ、ライトセーバーの柄頭を開く。
柄の中に収納されていたエネルギーパックを廃棄して、腰にぶら下げていた新品と入れ替える。
部位ごとにきちんと肉質があるようなので、狙いやすい脚ではなく、跳躍して柔らかそうな腹を斬りつけた。
「攻撃頻度が落ちるし、脚をいっぱい斬る方がいいか?」
とはいえフォトンソードのエネルギー残量も無限じゃない。
道中も結構消費しているし、それをして、このまま倒し切れるかどうか。
「額に弱点が見える! そこまで届く!?」
と、上から声が届いた。
「ナイス! 任せろ!」
ボスがこちらに向かってスタンプする。
それを避け、振り下ろされた脚を伝って頭に向かう。ボスの肩を蹴って、大きく跳んだ。
見えた。これだな。
いかにもな特徴が額にあった。目のような部位、その近くに着地し、逆手に持ったセーバーを突き立てる。
──Guoooo!!
「うおっとと、おとなしくしやがれ!」
暴れるボスの頭にしがみつき、そのまま深くまで押し込んだ。
しばらくのたうち回った後、ボスの動きが止まり、ガシャンと砕け散る。
急に支えがなくなって、高所から落っこちた。
「……いったぁい」
くそう。なんか、妙にいきなり身体の動きが悪くなったぞ。
とりあえず回復アイテムを使用して、落下で減ったHPを回復する。
そうこうしている間に、ガンナーもこちらへ降りてきた。
「グッジョブ。助かったぜ」
「そっちも。思ったよりやるじゃない」
「だろう? さてと、じゃあドロップ品分けようぜ」
メニュー画面を開いて、アイテム欄を開く。まず目についたのは、重量オーバーの表記だ。
STRにはあまり振っていないとはいえ、レベル補正もあって、なかなかに所持上限はあるはずなのだが、それでもまともに動けなくなっていた。
なにが原因やらと取得順に並び変える。
いろいろと素材がドロップしているが、どうもそれが原因ではなく、やたらと重いアイテムが目についた。
表記を見るに分類はスナイパーライフルのようだ。
「よっと。うわなにこれ重た!」
その武器を取り出してみると、やたらと重厚な筒が現れる。
「それは」
「あ……いる? これ」
「……騙すような真似はしたくないから言うけど、とてもレアな武器よ、それ」
「そうなんだ。でも、俺使わないしなぁ」
重量制限的にも、俺がこれを持ち帰るとなると、その他多くの素材も置いていくことになってしまう。
「まあ、やるよ。ほら」
「いいの?」
「最初に素材だけくれって言ってるしな。……あ、そもそもそっちは持って帰れるか? これ」
そのゴツいライフル、へカートⅡを彼女に渡す。
受け取った彼女は眉をひそめた。
「なんとか、持っては帰れそう。……いろいろと諦めれば」
「俺が持とうか? 全部は無理だが」
「……。なら、お願いするわ」
こちらも上限までストレージにアイテムを詰め込む。
「そういえば、名前を聞いていなかったけど、あなたは?」
「ああ、俺はアッシュ……じゃなくて、ルークだ。よろしく」
「アッシュ?」
「別ゲーのプレイヤーネームだ」
「そう。シノンよ。よろしく」
というわけで、無事に素材集めも終わり。
重量過多でのろのろと歩くシノンを街まで送って、ダンジョン攻略は終了した。
途中で裏切られたら、後で撃ちにいこうと名前を聞いたけど、特に何事もなかったシノのんとルーク(Luku)
PS(本編とは何の関係もないレゴの話)
「私はルーク・スカイウォーカー」
「?」
「私の父はダース・ベイダー」
「?」
「嘘だろ!私はこれでも大物だぞ!」