真面目にゲーム作ってもらえます?   作:アウグスティン

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カデ子

 βテストが終わり、届いたアンケートや、俺から出した提案をもとに製品版の調整が始まった。

 時々茅場さんから連絡が来て、意見を求められたりするが、まあおおむね問題なく進んでいるようだ。

 

 それと同時に、こちらはソードアート・オンラインとは別口で、社内での検証が始まったらしい。

 

 なにがかと言えば、カーディナルのことだ。

 ソードアート・オンラインの細々とした部分を作ったり、維持管理を行っているAI、カーディナル。

 先日、体術スキル習得のためのbot作成にこいつを利用したのだが、それはもうめちゃくちゃ便利で、あっという間に作ってくれた。

 

 てことで茅場さんにも許可取ってから、父さんにカーディナルを他社に売り込んでみないかと持ちかけてみたわけだ。

 いい感じに売れるんじゃねーかなー、という思いつきだったのだが、なにやら茅場さんが妙に乗り気だったので、いったん商品化の前に社内の業務をカーディナルにやらせてみよう、というわけである。

 

 ペラペラと本のページをめくりながら時間を潰していると、帰ってきた父さんが部屋に入ってきた。

 

「彰!」

「おかえり。どうかした? テンション高いけど」

「すごいぞ! よくぞ提案してくれた!」

「なんの話?」

「カーディナルだ!」

 

 なにをそんなに興奮しているのかと思えば。

 

「その様子からして、うまくいきそうなのか?」

「いいや、違う。うまくいった、だ。もうすでに完遂したんだ!」

「あー? 具体的になにするのかは聞いてないんだけど」

「おお。そうだったな。詳しいことは省くが、業務を一つ、カーディナルに手伝わせたんだ。時間をかけて社内で検証するつもりでな、三人月分ほどで予定していた開発で利用させたんだ。どうなったと思う?」

 

 三人月ってことは一人でやるなら三カ月分くらいの仕事ってことだろう? 

 

「現実的に考えるなら、なんだろうな。一カ月で終わりそうとかか?」

 

 さすがに言い過ぎたかもしれないが。

 

「はっはっは。彰先生と言えどこれを予想するのは難しいか? 全然違う。いいか、もう終わったんだ。今日一日で、じゃないぞ。午前中にはバグ取りまで含めて完遂したんだ。恐るべき性能だ!」

「はあ? そんなわけ」

 

 背筋に冷たいものが走る。

 

「……冗談だろう?」

「私もそう思った。だが組まれたプログラムは人間の手で検証しても問題なく動いたし、なにより午後を使ってもう一つ、別の案件もやらせてみたが、そちらも同等のスピードでこなしたそうだ」

 

 ふと思い浮かべたのは、過去にカーディナルを利用して組んだプログラム。

 これらも特別問題なく動いていた。

 

「すごいぞ! 本当によく提案してくれた! 間違いなくこれは世界を変える! 産業革命のように決定的に変えるだろう! 茅場くんも人が悪い。これほどのものならそうと教えてくれればよかったのに!」

「そ、そうか」

「彰達の言うとおりだ。こんな素晴らしいものは『法整備が曖昧なうちに好き放題やるべき』だな! すぐにでも売り出すべきだ。発案者としてまた会議に顔を出せるか?」

「いや、うん、まあ、わかった」

 

 ひょっとしてやらかしたか? 

 

 ■◆■

 

「なに、この……なに」

 

 それから数日。またしてもWeb会議に出させられて、父さんと並んでPCの前に座りながら、事前に配られた資料を見ていた。

 検証ならびに茅場さんに聞き取り調査を行って判明した、カーディナルの性能に関する資料である。

 誰かが適当に書いたのかな? 

 もしもそうでないのなら、第一次産業革命に蒸気機関ではなく現代の工業製品を放り込むようなものだ。

 こんなものを今の世の中に普及させたら、ろくなことにならない。

 

 それからいざ始まった会議は紛糾した。

 ソードアート・オンラインの話をしている時は黙りがちな面々も、今回はいろいろと意見を交わしている。

 にぎやかだなぁ。これなら俺いらないんじゃないか。

 

「彰くん、君はどう思う?」

「なんで僕に振るんですか茅場さん」

「君の発案だろう」

 

 くそう。俺が始めた物語だったか。

 売り出した後の影響に引っ張られて、どう売るかみたいなのはあんま考えてないぞ。

 

「ええと。そうですね。キャラクターつけましょうか、カーディナルに」

「はあ?」

 

 誰のかはわからなかったが、困惑の声があがった。

 

「カーディナルにモチーフキャラクターを設定して、このキャラが仕事を手伝ってくれる、という建前を挟むんです。多少は反発が薄れるんじゃないでしょうかね」

 

 過去幾度かあった産業革命は、仕事を奪われることへの恐怖から大きな反発があった。

 

「仕事を奪うAI、ではなく、優秀な秘書、のような。受け入れやすいキャラクター性を持たせるんです。で、それが通じそうな日本を中心に始めるのがいいかな~と」

「ふむ。ユニークな発想だが、それに意味はあるのか?」

「見た目を取り繕うのは多少なり意味はあると思いますが、NPCをランダムに作成しているんですよね? ならカーディナル本人に自分の外見を作らせれば、ローコストで打てる手ですし、やるだけ得だとは思います」

 

 技術的なことに関しては、誰も口を挟まなくても茅場さんが喋るので、セキュリティーや悪用の危険性については一通り彼が言及。

 物は試しにとこの場でカーディナルに作らせたマスコットキャラクター、茶髪で鼻眼鏡をかけた女の子を携え、カーディナルの発売が決まった。

 頑張って軟着陸させてくれ、カデ子。




「こ……こんなものを世に出してええんか。まあいいか!よろしくな!」
「なんと……なんという非道な真似を!」
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