とうとう先日ソードアート・オンラインの追加分が発売された。
ソフト版と、もちろんダウンロード版とでだ。
てなところで初となるイベントも開催されて、それに参加していた。『マップ見て』という誰かさんの趣味も兼ねた宝探しイベントで、だだっ広い一層を舞台にあちこちに隠された宝物を探して回るみたいなイベントである。
「一応言っとくが、どこにあるとかは知らないからな。ていうか、知ってるとかあんま関係ないぞ。いっぱい見つけてポイント稼ぐタイプだし」
「へぇ、そうなんだ。でもその方がいいんじゃない? 全部知ってても楽しくないでしょう」
「そりゃあそうだ」
改めて自分用のナーヴギアとソフトを購入したアスナとともに、宝物を大捜索していた。
で、猪やら狼やらモンスターが出てくると。
「──シッ!」
と、レベルもあるが、十分に練度の高い単発のソードスキルで、率先して攻撃を仕掛けに行くアスナ。
強くなったなぁ。
というかほんと上手いな。
初心者用のアシスト機能を活用していたのも最初だけで、すぐに取り外したし。
「今日はどれくらいやる?」
「二時間くらいかな。あんまり夜更かしもできないし、さすがにずーっとやってたら母さんにも怒られるから」
「いやぁ、大変だね」
「これくらいなら普通……なんじゃない? 前はもっと厳しかったから。アッシュくんのことを評価してるから、とかなのかな?」
「さあ。知らないけど、もっと実利的な理由じゃないか?」
俺の知る結城母は、ゲームとかやらずに勉強してなさい、みたいな人だが、仕事は真面目にやってる人だから。
「実利的?」
「まあアスナはあんま言わないから関係ないことだけど、なんかを扱き下ろすのって立場があると危険だからな。『ソードアート・オンラインなんかやるな』なんてケチ付けて、こっちの耳に入ったら、カーディナルとか他の取引にも影響あるかもだろ」
「ああ、なるほど」
「だから俺も煽る相手と内容は考えてやってるし」
「煽らなきゃいいのに」
「まだまだネット初心者だな、アスナは」
やれやれ。
■◆■
「少しアイデアが欲しいんだが」
と、食卓で父さんが言った。
「なに?」
「ソードアート・オンラインは売れているんだが、このままサービスを続けていると赤字になるかもしれない」
「はあ。なんでまた」
めっちゃ売れ行きいいし、今後も継続的に売れ続けるだろうに。
「買い切り型のゲームだからな。サービスの維持を考えると、そのうち赤字に転じる可能性がある」
料金設定くらい、売る前に検討しろよ。
まあ確かに。ソードアート・オンラインで得られる利益はソフト代だけ。
それに対してサーバーの維持費や、動かし続けてるカーディナルも負担になる。
「まあ今から月額料金取るわけにもいかないしな」
「その通りだ。というわけで、実際遊んでいて、こういう課金要素があれば継続的に金を出す、というようなものはなにかないか?」
「まあ……強さに影響するようなのはやらない方がいいだろうな。ガチャ武器とか」
「ダメか?」
「武器強化に失敗の要素があるうちは。課金で100%成功できるアイテム、とかは集金感強いから、もうちょい気分よく課金できるものが欲しいな。武器や防具、アバターの見た目だけ変えられるスキンとか、後人気の要素だと……あー」
いや、これは、やって大丈夫か?
でもそんなにおかしなこと言ってるような要素でもないし、他のMMORPGにもあるような機能だしな。
「なんだ?」
「ええと。ネットの反応とか見ても、これ結構人気要素だからいけると思うんだけど。────って感じで。言っててあれだけど、継続率も上がりそうだし、ナイスアイデアじゃない? めちゃくちゃ依存性が高そうってことを除けばだけど」
「なるほどなるほど。確かにそれは良さそうだな。茅場くんにできるか聞いてみよう」
「それは良かった。ついでに儲かってんだし、俺の小遣いも上げといてくれ」
「はっはっは」
■◆■
なんでかわかんないけど、やたら乗り気だった茅場さんによって、次回アップデートに向けての準備が始まった。
とはいえ、元々あった機能を流用するだけだし、そこまで時間がかからず雛形が完成。
テストがてらに社内での検証が始まる。
おまけで俺もやらせてもらえることになった。
「さあてと。どうしようかな」
VR内の異世界ファンタジーの酒場だか冒険者ギルドだか、そういう感じの建物内で、ディスプレイとにらめっこしながら、設定を入力。
見た目は、趣味で指定するか。
中身は、暗いよりは明るい方がいいよな。楽しいに越したことはない。
設定を入力し終えて、確認ボタンを押す。
少しして、部屋の奥から淡い紫色の髪をした女の子が歩いてきた。
キョロキョロと少し辺りを見回して、こちらのことが視界に入ると、ぱぁっと笑顔になって駆け寄ってくる。
「あ! 見つけた! ねぇねぇ、君だよね。アタシと一緒に冒険してくれるアッシュって人。アタシはストレア! これからよろしくね」
ちょっと黙って、ストレアと名乗った彼女を見つめる。
「ん? どうかしたの? アタシの顔になにかついてる?」
「いや。大丈夫。……大丈夫かどうかはわからないけど、まあ大丈夫だろ。たぶん」
クエスト中のAI搭載の同行NPCが人気だから提案した、AI搭載のペットNPC要素。
若干不安を覚えて、もうちょい人間らしさを落としたほうがいいのでは、と提案したが、茅場さんに却下された。
Q.ストレアって誰?
A.ユイの妹(ゲーム版)