第一話《幻想入り:兄》
《第一話:幻想入り》
外の世界――どこかの山奥。
静かで冷たい山の中に怒号が響く
叶炊「はっ…はっ…はっ…」
剣士「待ちやがれェェッ!!」
少年の背後からは数人の刀を持った大人
叶炊「くっ…!」
少年は覚悟を決めて鞘から刀を抜く
剣士「覚悟ォォォォォ!!」
キィンッ!ガッ…ザッ…
叶炊「ハァッ!!」
1人、また1人とその少年に斬られていく。
全て斬り終えた少年はまた上へと走って行く。
気がつくと、鬱蒼としていた雑木林を抜けている。
広場では雪が、静かに降り積もっていた。
叶炊「追手は…」
木の後ろに隠れて刀に付いた血を拭き取る。
誰も居ない。気配も感じない。
叶炊「よし、撒けた。ゲホッ…ハァッ…過激派め…
僕が脱走したと聞きつけてからが早すぎる…!」
黒い隊服。青い首巻。腰には一本の刀。
少年の意匠はおおよそ外の世界のものとは思えない。
吐く息は白く、足跡だけが銀世界に刻まれていく。
叶炊「ふぅ……山頂だ……」
立ち止まり見渡す限り、雪と岩と静寂。
何もない。本当に、何も。
叶炊「結局……見つからなかったなぁ……幻想郷。
結局は噂…与太話だったか」
目を伏せる。ほんの少しだけ。
叶炊「……叶恵……」
その時。背後から“気配”。
叶炊「……?」
振り向く。
そこにいたのは――
紫色の服
日傘を差した、一人の女性。
八雲紫「ごきげんよう」
柔らかな声。
だが叶炊の勘が告げる。“この人は人ではない”
八雲紫「こんな山奥に、
あなたのような少年が何の用かしら?」
叶炊は帽子を深く被り直す。
叶炊「……子供扱いは嫌いです」
間、ほんのわずかな逡巡。
(剣士としての生活を捨ててまでここに来た…)
叶炊「僕は……妹を探しているだけです」
(こんなにも、見つからない。
過激派の追手も多くなってきている…
せめて死ぬ前に会いたい)
紫は目を細める。
興味を持ったように。
八雲紫「まあ、いいわ」
日傘をくるりと回す。
八雲紫「あなた、“幻想郷”に興味はない?」
叶炊「……?!」
顔を上げる。
一瞬で空気が変わる。
叶炊「今……なんて言ったんですか……!」
手が、刀にかかる。
叶炊「それにあなたからは……人の気配がしない……!」
叶炊(妖の類…!まずい、こんな満身創痍で…)
叶炊「答えてください。あなたは何者なんですか!!
それに、なぜ僕なんだ…!」
紫の顔色が変わる
八雲紫「質問を質問で返さないでくれるかしら?
私は“興味があるか”と聞いているの」
沈黙。風の音だけが響く。
叶炊(この威圧感……いや、
勝てる可能性を捨てちゃダメだ……
勝率はおそらく一割も満たないけど。)
ゆっくりと、刀から手を離す。
八雲紫「あなた、さっき“勝てなくもない”って
思ったでしょう?」
叶炊「……っ」
八雲紫「図星ね」
目が、わずかに鋭くなる。
八雲紫「愚かだこと。たかが十数年しか生きていない人間が
――私に勝てると思って?」
叶炊(前言撤回…誤算だ。
勝率一割だって…?!バカか!
たとえ全力を出して戦ったとしても…
目の前にいる女性の足元にも届かない…!
妖じゃない…もっと上位の存在…!妖怪…?!)
叶炊「……すみません」
素直に頭を下げ、そして顔を上げる。
叶炊「幻想郷……興味あります。
そこに妹がいるなら…どんな地獄でも。
連れてってくれるんですか?」
少しだけ睨む。
叶炊「……信用はしてません」
紫は、楽しそうに笑った。
八雲紫「あらあら……正直ね」
日傘がゆっくり回る。
八雲紫「いいわ。幻想郷は――全てを受け入れる」
一瞬。声色が変わる。
八雲紫「それはそれは、残酷な話だけれど……ね?」
“ナニカが開く”。
空間が裂ける。足元が消えた。
叶炊「……へふっ?」
八雲紫「それじゃあ――」
くすっと笑う。
八雲紫「いってらっしゃい♪」
足場が消えて、落ちる。
叶炊「…え?…は?」
どこまでも。
暗い、隙間の中へ。
叶炊「うぁぁぁぁぁぁ?!!!」
重力のまま抗うこともできず。
そのまま――
叶炊(死ぬ…?!落ちる…!
この場所は…?!何も掴めない…ッ!)
思考を巡らせ、助かる方法を模索しながら
幻想へと、堕ちていく。
紫は目の前にいた少年を幻想郷に落としてから、独白する
紫「…それは、あなたが旧友に似ているからよ。
もしかしたら…って。」
最後の会話。
『そんな顔をするな。いつかまた私達は会えるよ。紫。』
遠い昔
あの日の光景が眩しい。
幽々子と萃香達に振り回されながら
酒を飲む若かりし時の旧友。
その独り言は誰にも届かない。
外の世界の設定とかも本格的に固めたぁい
アリーヴェデルチッ!