《第七話:弾幕ごっこ》
霊夢「……まあ、まだ“弾幕ごっこ”自体は
幻想郷に広まってないんだけどね」
叶恵「え?広めるの?」
霊夢「当然よ」
迷いなく言い切る。
霊夢「妖怪と人間が、殺し合いしなくても決着をつけられる方法よ?
これさえあれば、間違いなく死ぬ人は少なくなるわ。
それに…あんなこと、二度とあっちゃいけないのよ。」
叶恵「……あんな…こと?」
霊夢「あなたは気にしなくていいのよ。前のことだし」
博麗神社に引き取られる前の記憶がよぎる。
牙。血。恐怖。
叶恵「……いいと思う」
小さく、でも強く頷く。
叶恵「……怖かったから……」
霊夢「でしょ」
一歩前へ出る。
霊夢「だからやるのよ。まずは あなたから」
叶恵「え?」
霊夢「弾幕ごっこよ。」
叶恵「……まさか」
霊夢「そう私と」
叶恵「やっぱりぃ!?」
霊夢「安心しなさい、ちゃんと手加減するから」
叶恵「信用できない……!」
霊夢「失礼ね」
くすっと笑う。
霊夢「ルールは簡単」
指を一本立てる。
霊夢「スペルカードを宣言して、その範囲で戦う」
叶恵「スペルカード……」
霊夢「さっきやってたやつ、あれに名前つけなさい」
叶恵「今!?」
霊夢「今よ。付けないと使わせないわよ。」
叶恵は枝を握り、深呼吸。
頭の中に浮かぶのは――“波”。
広がる青。幾重にも重なる斬撃。
叶恵「……」
ぽつりと呟く。
叶恵「単純でいいんだ……」
顔を上げる。
叶恵「三式【万波割り】……!」
その瞬間、空気が変わる。
霊夢「……いいじゃない」
少しだけ、楽しそうに笑う。
霊夢「じゃあ――始めるわよ」
■ 弾幕ごっこ 開始
霊夢「霊符【夢想封印】!」
宣言と同時に、光が展開される。
複数の光弾が、ゆっくりと――しかし確実に迫る。
叶恵「……っ」
“見える”
軌道が、全部
叶恵「――!」
回避。
一歩、半歩、身体をずらす。
紙一重で避け続ける。
霊夢「へえ……」
感心したような声。
霊夢「本当に避けるのね」
叶恵「こっちも……!」
構える。枝へ神力を流す。
叶恵「スペルカード――」
振る。
叶恵「一式【千斬万海峡】!」
――シュンッ
斬撃と同時に、光が弾ける。
無数の弾が“波”のように広がる。
霊夢「……!」
ほんの少しだけ、驚く。
霊夢「初めてでこれ?」
軽く跳び、弾幕の間をすり抜ける。
霊夢「いいじゃない」
余裕の笑み。
霊夢「でも、まだまだね」
指を振る。
霊夢の放った光弾が軌道を変える。
叶恵「え!?」
死角から迫る弾。
叶恵「…っ!」
反応が遅れる。
直撃――しかけた、その瞬間。
体が動く。“ギリギリ”で避けたのだ。
叶恵「……っ!」
霊夢「今の、見えてた?」
叶恵「……見えてない……でも……」
息を整える。
叶恵「避けないといけないって……思った」
霊夢「……」
一瞬だけ沈黙。
霊夢「それで避けるの反則気味ね」
弾幕が交差する。
光と光。
斬撃と結界。
その中で――叶恵は気づく。
叶恵「……これ……」
弾幕が、怖くない。
弾幕自体はエネルギーの塊のようなものだ。
当たったら痛いだろう。
だが先日までの“死”じゃない。
叶恵「……楽しい……?」
霊夢「でしょ」
霊夢は笑う。
霊夢「それが“弾幕ごっこ”よ」
叶恵「……!」
もう一度構える。
今度は、もっと意識して…
“見せる”ように。
叶恵「二式――」
霊夢「おっと、それはまだ危なそうね」
軽く手を上げると結界が展開される。
霊夢「今日はここまで」
弾幕が消え、静寂が訪れる。
叶恵「……はぁ……はぁ……」
その場に座り込む。
霊夢「初戦にしては上出来ね」
叶恵「ほんと……?」
霊夢「ええ」
少しだけ、優しく言う。
霊夢「ちゃんと“遊び”になってたわ」
叶恵「……!」
その言葉に、少しだけ笑う。
霊夢「で?」
叶恵「?」
霊夢「他の型もあるんでしょ?」
叶恵「あ、うん!」
指を折りながら数える。
叶恵「強力な技だと…
一式【千斬万海峡】
二式【天空海闊斬】
三式【万波割り】
四式【凪祓い】」
霊夢「結構あるわね」
叶恵「まだまだ一般技があるんだけどね…?
あと――」
少しだけ表情が変わる。
叶恵「兄さんが使ってたやつ」
霊夢「……」
叶恵「炎刀【蒼炎海神】
幻刀【海市蜃楼】
乱刀【狂斬乱舞】」
霊夢「……へえ」
興味深そうに呟く。
霊夢「全部使えるの?」
叶恵「ううん……多分まだ無理」
霊夢「でしょうね」
あっさり言う。
霊夢「でもまあ――」
空を見上げる。
霊夢「七枚以上もあれば万々歳ね」
風が吹く。
弾幕の名残が、ゆらりと消えていく。
その日。幻想郷に、新しい戦い方が生まれた。
そして――
一人の少女が、“幻想郷の住民”になった。
今回の流れでほぼ時系列が確定したにも等しいぞ。
スペルカードルールが体系化する前。そしてきっかけの異変。
外伝の時系列は吸血鬼異変後、紅霧異変前よ。