ソラの夢の中・真っ白な空間(2026年8月7日)
果てしない静寂と柔らかい光に包まれた空間の中、ソラはゆっくりと目を覚ました。
目の前に立っていたのは、これまで姿を見せることのなかった「あんな」だった。
あんな「ソラちゃん、ごめんね、急に来ちゃって」
現実の絶望と重圧に押し潰されそうになっていたソラは、あんなの温かい声を聞いた瞬間、溢れ出しそうになる感情を抑えながら静かに頷いた。
ソラ「私も……ずっと、会いたかったです……っ」
悲痛な面持ちのソラを見つめ、あんなは胸を痛めるように表情を曇らせ、静かに、しかし残酷な運命の真実を語り始めた。
あんな「心苦しいけど、災厄は止まらないものになっているらしいって言うことは、少なくとも私は知ってるよ」
ソラ「止まらない……。やっぱり、私たちの力じゃどうしようもないんですか……?」
ソラの問いに、あんなは首を静かに横に振り、予言のシステムに隠されたさらなる恐怖のルールを解き明かしていく。
あんな「予言の省略記号には、これまで知られていた『EE』の他にも、色々なパターンがあるみたいなの。『RP』……Random Person、無作為に選ばれたランダムな1人が命を落とす。そして『PFTS』……Person First To See、その災害や惨劇が起こる瞬間を一番最初に目撃してしまった人が命を落とす……他にも色々な条件が組み込まれているみたい」
ソラ「そんな……! 偶然その場に居合わせた人や、最初に目撃してしまった人まで巻き込まれるなんて……っ!」
あんなの口から明かされた、容赦のない予言の法則。
明日、8月8日に迫る「同窓会でのテロ」という予言。
そして、まなつを救いたいと願うソラの目の前に突きつけられた、更なるシステムの謎と絶望。
夢の中の白い光の中で、ソラはあんなの言葉を深く胸に刻み込みながら、来るべき「明日」に向かってどう立ち向かうべきなのか、自身の覚悟を試されることとなるのだった。
2026年8月7日、ソラの夢の中・真っ白な空間。
あんなの言葉は、世界の根幹を揺るがす恐ろしい真実を告げていた。
あんな「災害が止まれば、世界も止まってしまう。じゃあ、なぜ今のような地球があるのかと言うと、私が『地球滅亡』を免れ、滅亡しない方の地球に来たから。地球を滅亡させるはずだった予言のシステムは私が歪めたんだよ。過去にも何度か死亡事故とか事件、災厄とかが起こっているのは知っているよね?」
ソラ「システムを……歪めた……?」
息を呑むソラに向かって、あんなは静かにうなずく。
あんな「そう。本来なら地球そのものが終わりを迎えるはずだった。でも、私がその破滅の運命を歪めて、滅亡を回避した世界線を選び取ったの。だけど、その代償として……歪みのしわ寄せが、点在する事故や事件、巨大災害という形でこの世界に現れ続けているの」
ソラ「じゃあ、今まで起きてきた数々の惨劇は……世界そのものが滅んでしまわないために、支払われ続けてきた『代償』だったんですか……!?」
世界の存続と、引き換えに刻まれる数々の惨劇。
あまりにも巨大で残酷な世界の仕組みを突きつけられ、ソラは夢の中の静寂の中で言葉を失い、深く絶句するのだった。
2026年8月7日、ソラの夢の中・真っ白な空間。
真っ白な世界に、あんなの悲痛な声が静かに、しかし重く響き渡る。
あんな「ごめんね、でも結論から言うと、私たちは支払ってるんだよ…。」
ソラ「支払っている……?」
あんな「そう。地球が滅亡するという最悪の結末を回避するために、世界はその都度、犠牲という『代償』をシステムに支払い続けているの。首都直下型地震の16,445人も、北陸大震災の17,244人も……そして、これから起きようとしている事件も全て。世界という存在を繋ぎ止めるための、あまりにも残酷な支払いなの」
あんなの瞳から、透明なひとしずくの涙が零れ落ちる。
ソラはその言葉の意味を反芻し、全身の血が引いていくような感覚に襲われた。
世界そのものを守るために、誰かの命や平穏が奪われ続けている。
そのあまりにも巨大で冷酷な構造の前に、ソラは強い戦慄を覚えながらも、あんなの手をそっと握りしめた。
ソラ「そんな……そんな悲しい仕組み、納得できるわけがありません……! でも、あんなさんが一人でその重荷を背負ってきたことも、痛いほど伝わってきます……」
あんな「ソラちゃん……」
ソラ「私はヒーローになりたいんです。目の前の大切な人を、届く限りの手を伸ばして守りたいんです! たとえ世界がそういうシステムで動いていたとしても……明日、まなつさんたちが巻き込まれるかもしれない恐怖を、黙って見過ごすことなんてできません!」
白い光が少しずつ揺らぎ始め、夢の終わりが近づいてくる。
あんなは小さく微笑み、ソラを見つめた。
あんな「ありがとう、ソラちゃん。でもどうか忘れないで。システムに立ち向かう時は、自分自身の命も絶対に粗末にしちゃダメだよ」
ソラ「はい……! 私、諦めません!」
覚醒の瞬間が迫る中、ソラは激しい葛藤と覚悟を胸に抱き、明日——2026年8月8日という運命の日を迎えるために、ゆっくりと目を醒ますのだった。
2026年8月8日、あおぞら市・同窓会の会場近く。
強い夏の差し込みの中、運命の8月8日が訪れた。
会場へ向かう途中で菓彩あまねに電話をかけた夏海まなつは、先日ソラから切迫した様子で告げられた言葉を、ふと思い出したように口にした。
まなつ「あまねちゃん、実はね……一昨日ソラちゃんから『2校で同時多発テロが起きる』って言われたんだ。すごく必死な顔をしていて……」
あまね・電話越し『2校で同時多発テロ……?』
あまねは足を止め、少し呆れたような、けれどどこか心配そうな表情を浮かべてため息をついた。
あまね・電話越し『そんなのはただの偶然か、震災のショックによる疲労が見せた誤解だろう。根拠のない噂や不吉な予言に振り回される必要はない。今日はみんなで元気に再会を祝う日だ』
まなつ「そうだよね……! うん、ソラちゃんには後で『大丈夫だったよ』って伝えてあげなきゃね!」
あまねの冷静な言葉に納得したまなつは、いつもの明るい笑顔を取り戻し、会場の入り口へと向かって歩き出す。
しかし、その言葉を聞いていたソラの胸中には、冷たい予感とあんなから明かされた「RP」や「PFTS」といった残酷なルールの存在が、重くのしかかり続けていた。
2026年8月8日・午前10時、私立しんせん中学校・校門前。
真夏の強い日差しが照りつける中、校門の前には久々の再会を喜ぶ生徒たちの賑やかな声が響いていた。
しかし、その和やかな雰囲気を切り裂くように、星奈ひかるが息を切らし、必死の形相で駆け込んでくる。
ひかる「お願いです! 今すぐ同窓会を中止してください!! 今すぐにみんなを避難させて……! さもないと、ここにいるたくさんの生徒たちが命を落としてしまうんです!!」
喉を焼き切るようなひかるの絶叫に、受付に立っていた教員たちは驚き、不審と困惑の色を隠せない。首都直下型地震や北陸大震災の恐怖が冷めやらぬ中、このような物騒な騒ぎを起こされては困ると、教員の一人が厳しい表情で首を振った。
教員「君、何を言っているんだ! 震災でみんな不安な中、そんな不吉なデマを触れ回るのはやめなさい! ……警備員さん、申し訳ないが彼女を敷地外へ案内してくれ」
教員に促され、制服を着た警備員がひかると教員の間に割って入った。ひかるは絶望に目を見開き、警備員の腕を掴む勢いで訴えかける。
ひかる「デマじゃないんです! 100年前の予言は……全部本当だったんです! 首都直下も、北陸の震災も起きたんです! だから今日も……お願い、信じて……っ!」
教員がため息をつき、ひかるを追い払おうと手を伸ばしたその時だった。
警備員「——ダメです!」
強い声が校門に響き渡った。教員が驚いて振り返ると、警備員は真剣な眼差しで教員を見つめ返していた。
警備員「彼女の言葉を、デマだと一蹴して追い出すわけにはいきません! 私は……彼女の言っていることを信用します!」
教員「な、何を言っているんですか警備員さん!? 根拠もない都市伝説のような話で同窓会を中止にできるわけが——」
警備員「もし……もし彼女の言葉が本当だったらどうするんですか!? 連日の地震や災害の連続です。万が一にも生徒たちの命が危険に晒される可能性があるなら、警戒して困ることなど一つもありません! 私はこの目で、彼女の必死な瞳を見てそう確信しました!」
警備員は教員の制止を力強く押し切ると、校門の柵を押し開き、ひかるの肩を優しく、しかし確固たる力で抱き寄せた。
警備員「さあ、お嬢さん、中へ入りなさい! 校長や実施責任者のところへ案内する。君の知っていることを全て話してくれ!」
ひかる「警備員さん……! ありがとうございます……っ!」
予言の冷酷なシステムと、世間の冷ややかな無理解という厚い壁。その中で初めて差し込まれた、一筋の理解と信頼の光。
ひかるは涙を拭い、警備員に導かれながら、最悪の惨劇を未然に防ぐための最後の闘いへと敷地内へ足を踏み入れるのだった。
果たして、夏海まなつの運命は…!?
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