ここから先は「トロピカル〜ジュ!プリキュア」「デリシャスパーティ♡プリキュア」の、プリキュア9人が死亡したことを示す非常にショッキングな描写が含まれます。この描写が苦手な方は閲覧をお控えください!
2026年8月8日・午前10時15分、あおぞら中学校・体育館。
警備員の機転によって校内への立ち入りを果たした星奈ひかるは、同窓会に集まった生徒たちがひしめく体育館の中央へと、なりふり構わず駆け込んでいった。
ステージ前のマイクに向かい、喉が引き千切れるほどの声を張り上げる。
ひかる「みなさーん!! よく聞いてください!! 今日、この学校と私立しんせん中学校でテロが起きるんです!! 本当です!!! お願いです、今すぐここから離れて避難してください!!!」
体育館を満たしていた賑やかな話し声が、一瞬だけピタリと止まった。
ひかるの必死の形相と、体育館の天井に跳ね返る悲痛な叫び。しかし、次の瞬間に広がったのは、緊迫感ではなく、冷ややかな失笑と戸惑いの空気だった。
「え……何あの人?」「テロって、本気で言ってんの?」「映画の観すぎじゃない?(笑)」「また震災のショックでおかしくなった人が暴れてるの?」
クスクスという忍び笑いや、呆れたような目線がひかるに集まる。
100年前の予言の恐ろしさ、首都直下型地震や北陸大震災で刻まれた現実、そしてあんなから明かされた世界の残酷なシステム——それら全てを知るひかると、「日常」の平和を疑わない生徒たちとの間には、あまりにも深く絶望的な断層が横たわっていた。
ひかる「冗談じゃないんです! 本当なんです……! 信じて……お願いだから信じてよ……っ!」
嘲笑が渦巻く体育館の真ん中で、ひかるは震える拳を握りしめ、届かぬ叫びを繰り返し続けるのだった。
2026年8月8日・午前10時20分、あおぞら中学校・体育館。
ひかるの必死の叫びに対し、生徒たちの嘲笑と冷ややかな視線が体育館を満たしていたその瞬間、校内に設置された全校放送のスピーカーが突如として凄まじいハウリング音を立てた。
『キィィィィン——ッ!』
ざわめく生徒たちが思わず耳を塞ぐ中、スピーカーから溢れ出してきたのは、アナウンス担当の教員のなりふり構わぬ、狂気すら孕んだ切迫した声だった。
放送『全校の皆さん!! ただちに、ただちに耳を傾けてください!! ただいま、あおぞら中学校、および私立しんせん中学校の校舎内において、爆弾が合計8個発見されました!!』
「え……?」
「爆弾……?」
突然の異常事態を告げる放送に、体育館の空気が一瞬で凍りつく。しかし、放送の声は止まらない。
放送『現時点で構造や詳細な仕掛け場所までは特定できていません! いつ爆発してもおかしくない極めて危険な状態です!! 冗談でも訓練でもありません! 全員、荷物を置いて今すぐ運動場へ避難してください!! 繰り返します、今すぐ避難を——』
ブツッと唐突に放送が切れ、校舎全体に不気味な静寂が戻ってきた。
あまりにも突飛で、日常からかけ離れすぎたアナウンス。
先ほどひかるが叫んでいた「テロ」という言葉と重なる内容であったにもかかわらず、生徒たちの間に広がったのは恐怖や危機感ではなかった。
「は……? 爆弾ってなに?」
「何これ、先生たちまで巻き込んだドッキリ企画か何か?」
「さっきの変な人が乱入したから、学校側が合わされてパニックになってるだけじゃないの(笑)」
「マジで意味わかんないんだけど。早く同窓会の続きやろうよ」
あまりにも現実離れした状況に対し、人間の心が引き起こす正常性バイアスと、直前まで広がっていた「デマだ」という強い先入観。それらが重なり合った結果、生徒たちは避難行動を起こすどころか、苦笑いを浮かべてその場に留まり続けてしまう。
ひかる「なんで……どうして逃げてくれないの……!? 本当に爆弾があるんだよ!! このままじゃみんな死んじゃうんだよ!!」
校内放送という最大の警告すらも「信じない」という壁に弾き返される絶望的な光景。
あんなが語った「PFTS(最初の目撃者)」や「RP(ランダムな死)」という恐怖のシステム、そして8個の爆発物という牙をむいた現実。
タイムリミットが刻一刻と迫る中、ひかるは冷や汗を流しながら、動こうとしない生徒たちの渦の中で一人、激しい恐怖に身を震わせるのだった。
2026年8月8日・正午すぎ、あおぞら中学校 / 私立しんせん中学校・体育館。
「まあ、何事もなくてよかったよね」
「やっぱりただの悪質ないたずらだったんだよ」
同窓会のプログラムがすべて終了し、安堵の笑い声を上げながら生徒たちが立ち上がり始めた、まさにその瞬間だった。
——ドカァァァァァンッ!!!!
世界そのものが砕け散るような、凄まじい大爆破音が二つの学校を同時に揺るがした。
あおぞら中学校と私立しんせん中学校、それぞれの体育館内に仕掛けられていた計8つの爆弾が一斉に炸裂。目もくらむような真っ赤な火炎と衝撃波が、出口へ向かいかけていた生徒たちを容赦なく呑み込んでいく。
「きゃああああっ!!」
「うわああああっ!?」
悲鳴すらも瞬時に爆風の咆哮へと掻き消され、頑丈だった体育館の天井がメリメリと音を立てて崩落。ガラス窓が一瞬で粉々になって飛び散り、漆黒の煙が夏空を覆い尽くしていった。
あおぞら中学校・体育館外。
「危ない、伏せてっ!!」
直前まで生徒たちへ必死の避難指示を出し続け、間一髪のところでひかるをかばって屋外へ押し出した警備員。二人は地面に激しく叩きつけられながらも、間一髪で直接の爆風と倒壊から逃れることができた。
背後から押し寄せる熱風と、視界を塞ぐ灰色の土煙。
せき込みながらひかるが起き上がると、そこに広がっていたのは、言葉を失うほど凄惨な光景だった。
ひかる「そんな……うそ……うそでしょ……!?」
先ほどまで「ドッキリでしょ」「デマだよ」と笑い合っていた同級生たちの姿は、崩れた瓦礫と黒煙の彼方へと消えていた。
100年前の紙に刻まれていた予言。
あんなが語っていた、世界を繋ぎ止めるための冷酷なシステムと「PFTS(最初の目撃者)」「RP(ランダムな死)」という犠牲のルール。
信じてもらえなかったもどかしさと、防ぎきれなかった圧倒的な敗北感。
黒煙が立ち上る校庭の真ん中で、ひかるは膝を折り、震える手で顔を覆いながら悲痛な叫びを上げるのだった。
2026年8月8日・午後2時、ニューススタジオ。
報道特別番組のスタジオには、重苦しい緊張感とショックが広がっていた。画面には黒い枠で囲まれた緊急速報のテロップが映し出され、キャスターが痛恨の面持ちで原稿を読み上げる。
キャスター『……本日正午すぎ、私立しんせん中学校およびあおぞら中学校で同時に発生した大規模爆破テロ事件について、警察庁および消防庁から最終的な被害状況が発表されました』
画面には、黒煙が立ち上る両校の凄惨な映像と、犠牲者一覧のテロップが流れていく。
キャスター『両校の体育館で同時に炸裂した8つの爆薬により、同窓会に参加していた生徒および関係者が巻き込まれました。確認された死者は、和実ゆいさん、芙羽ここねさん、華満らんさん、菓彩あまねさん、夏海まなつさん、鈴村さんごさん、一ノ瀬みのりさん、滝沢あすかさん、ローラ・アポロドーロス・ヒュギーヌス・ラメールさんを含む、両校あわせて全生徒864人です。生存者は絶望視されており、我が国のテロ事件史上、最悪の犠牲者数となりました……』
あおぞら中学校・校庭。
サイレンの音が遠くで鳴り響く中、土埃と黒煙にまみれたひかるは、そのニュース音声を呆然と聞き続けていた。
「ゆいちゃん……ここねちゃん……らんちゃん……あまねちゃん……まなつちゃん……みんな……」
名前を呼ぶ声が、虚しく空に消えていく。
あんなが語っていた「世界の存続と引き換えに支払われる代償」。そして「PFTS」や「RP」という冷酷なシステムの数字。
100年前の紙に刻まれた予言は、首都直下型地震、北陸大震災に続き、864人というあまりにも尊く大きな命を奪い去る形で、再び寸分の狂いもなく成就してしまった。
警告が届かなかった無力感と、大切な仲間たちを一度に失った果てしない絶望。
瓦礫の山となった校庭で、ひかるは崩れ落ちたまま、ただ深く暗い悲しみの底へと沈んでいくのだった。
2026年8月8日・午後2時30分、虹ヶ丘邸・ソラの部屋。
テレビのスピーカーから流れる、冷たく無機質なアナウンス。
『……繰り返します。私立しんせん中学校、およびあおぞら中学校で発生した爆破事件により、和実ゆいさん、芙羽ここねさん、華満らんさん、菓彩あまねさん、夏海まなつさん、鈴村さんごさん、一ノ瀬みのりさん、滝沢あすかさん、ローラ・アポロドーロス・ヒュギーヌス・ラメールさんを含む、両校の全生徒864人の死亡が確認されました……』
画面に次々と映し出される、見慣れた大切な仲間たちの名前と、瓦礫と黒煙に覆われた悲惨な現場の映像。
ソラ「嘘……嘘ですよね……? まなつさん……みんな……っ!?」
膝から崩れ落ち、画面にしがみつくように伸ばしたソラの指先が、冷たい液晶の表面を虚しく滑る。
ほんの数日前、渋谷の街で胸ぐらを掴む勢いで「行かないでほしい」と必死に訴えかけた。
「デマなんかじゃない」「今際の際なんだ」と、喉を焼き切らんばかりに警告した。
それなのに——。
「大丈夫、私、トロピカってるから!」と笑っていたまなつの顔が。
「偶然だろう」と落ち着いた声で自分をなだめようとしていたあまねの声が。
かけがえのない笑顔で「日常」を信じていたみんなの姿が、脳裏を怒涛のように駆け巡る。
あんなが夢の中で語った、冷酷極まりない世界の真実。
『世界の滅亡を免れるために、私たちは代償を支払っている』
『PFTS』『RP』という、人間の命を単なる数値や記号として処理する絶望的なシステム。
どんなに強い敵が現れても、どんなに打ちのめされても、「ヒーロー」として諦めずに立ち上がり、みんなの笑顔を守ってきた。
だが、どれほど叫んでも届かない。どれだけ命を懸けて走っても、あらかじめ確定された「864人」という数字の前に、自分たちの叫びはあまりにも無力だった。
ソラ「あああ……ああああああああっ!!!!」
静まり返った部屋に、ソラの悲痛な絶叫が炸裂した。
ソラ「いやだ……嫌だ嫌だ嫌だああああっ!! まなつさん!! ゆいさん!! みんなぁぁぁぁっ!! どうして……どうして信じてくれなかったんですか……っ!! どうして私の手は、誰も救えないんですかあああああっ!!」
両手で頭を抱え、胸を掻きむしりながら、ソラは床に額を押し付けて泣き叫び続けた。
目からは留まることを知らない涙が溢れ出し、畳を冷たく濡らしていく。
「ヒーローになりたい」と願った少女の心は、確定した過去と冷酷な運命のシステムによって完璧に打ち砕かれ、ただ深く暗い悲痛の叫びだけが、夕暮れの部屋に虚しく響き渡るのだった…。
観星町壊滅まで、残る時間はわずかしかない。
この絶望を乗り越えて、ひかるたちは洪水を生き延びられるのか…?
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