N3x7 d15a5732   作:vic.

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第20話「観星町の壊滅への予兆」

2026年8月8日・夕刻、虹ヶ丘邸・ソラの部屋。

 

哭き叫ぶソラの傍らで、静かに灯る画面には、重々しい予言の記録が静かに浮かび上がっていた。

 

100年前の紙に刻まれた数々の災厄。

首都直下型地震、北陸大震災、そしてあおぞら中学校と私立しんせん中学校を襲った悲劇……。確定した運命の歯車は、容赦なく多くの尊い命を奪い去っていった。

 

そして、残された予言はあとわずか——。

 

特急ときあ脱線事故

スーパー台風による観星町の破滅

この2つだけ。

 

あんなが語っていた「世界の存続のために支払われる代償」、そして「RP」や「PFTS」といった絶望的なシステムの法則。

 

大切な仲間たちを失い、深い絶望の淵に沈みながらも、残された2つの未曽有の災厄が刻一刻と近づいてくる。

 

これ以上の犠牲を食い止める術はあるのか、それともシステムが定める惨劇のシナリオ通りにすべてが飲み込まれてしまうのか。残された運命の刻限を前に、重苦しい緊張感が世界を包み込んでいた。

 

2026年8月8日・夜、観星町・星ノ川はるかの部屋。

 

観星町に引っ越してきてから、まだわずか5ヶ月。

窓の外には、引っ越してきたばかりの春の日に見た美しい星空と変わらない街並みが広がっている。

 

しかし、はるかの胸の中には、冷たく重い疑念が黒く渦巻いていた。

 

はるか「4月8日の……開校100周年式典……」

 

あの日、新生活への期待に胸を膨らませて参加したあの記念式典。

100年前という数字。紙に刻まれていた数々の予言。そして、寸分の狂いもなく次々と現実になっていく惨劇の数々。

 

首都直下型地震、北陸大震災、そしてあおぞら中学校と私立しんせん中学校での爆発事故……。

 

これまで「自然災害」や「予測不能な事件」だと思い込もうとしていたものが、すべて100年前の式典、そしてあの紙の刻印と不可逆につながっているという現実。

 

はるか「偶然なんかじゃ……なかった……? 100年前から、この街も、私も……全部決められたシナリオの中にいたっていうの……?」

 

「たまたま起こった悲劇」であれば、いつかは終わる。

しかし、「最初から組み込まれていた必然」であるならば、逃れることなどできるのだろうか。

 

偶然であるはずの災害が、何者かの手によってあらかじめ仕組まれたシステムの一部であるというあまりにも残酷な可能性に、はるかは頭を抱え、静かな恐怖と苦悩の深みへと沈んでいくのだった。

 

2026年8月9日、気象庁・緊急記者会見場。

 

カメラのフラッシュが激しく焚かれる中、気象庁の報道官と数値予報課の責任者が、蒼白な顔でマイクの前に立った。壇上に掲げられたモニターには、日本列島を覆い尽くすほど巨大な台風の雲画像と、不自然なまでに一直線に観星町を目指す予想進路図が映し出されている。

 

報道官「……気象庁が所有する最新鋭のスーパーコンピュータを用い、初期条件やパラメーターを変えて数万パターンに及ぶアンサンブル予報シミュレーションを重ねました。……しかし、大変申し上げにくい事態となっております」

 

記者のひとりが前かがみになり、身を乗り出す。

 

記者「計算結果に偏りがあるということですか!? 台風の進路が逸れる可能性はどれくらい残されているのですか!」

 

報道官は重い口を開き、震える声を絞り出した。

 

数値予報課長「……ゼロです。どれほど計算条件を変更しても、台風は本州に接近後、まるで何かに誘導されているかのように観星町の上空で2週間ほど完全に停滞します。そして……最終的に観星町が壊滅的な被害を受けるという計算結果だけは、1度たりとも変わりませんでした」

 

会場にどよめきが広がる。しかし、真の恐怖はその後に続く言葉だった。

 

数値予報課長「さらに……台風の中心気圧についてです。通常、地球上の気象条件で観測される台風の限界値を遥かに超え、中心気圧は750hPaにまで発達するという予測が出続けています。既存の気象学の常識では説明がつかない、物理法則を無視した前代未聞の破滅的勢力です」

 

750hPa——それは地球の気象史上、聞いたこともない異次元の数値だった。猛烈な風圧は建造物を基礎ごと吹き飛ばし、観星町という土地そのものを地図上から消し去るに等しい暴威を意味している。

 

観星町・星ノ川はるかの部屋

 

テレビから流れる気象庁の絶望的な発表を、星ノ川はるかは部屋の隅で膝を抱えながら見つめていた。

 

はるか「スーパーコンピュータで何度計算しても……変わらない……?」

 

4月8日の開校100周年式典。100年前の紙に記された予言。

そして、あんなが語っていた「世界の存続のために支払われる代償」という残酷なシステム。

 

どんなに科学技術の枠を結集して未来を予測しようとも、タイムラインに刻まれた「観星町の破滅」という結末だけは、不可逆なプログラムのように固定されている。

 

はるか「750hPaなんて……そんなの、ただの台風じゃない……! 街を、この場所を消すために作られた災害なんだ……」

 

窓の外を見上げると、まだ嵐の前の静けさを保つ穏やかな空が広がっている。しかし、その上空には、確定した破滅へのカウントダウンと、科学の計算すら凌駕する冷酷なシステムの牙が静かに忍び寄っていた。

 

2026年8月9日・夜、観星町・星ノ川はるかの部屋。

 

750hPaという異次元のスーパー台風が迫り、スーパーコンピュータの計算すら「観星町の壊滅」という結末を覆せない現実。

 

あらかじめ組み込まれた冷酷なシステムの牙から逃れるため、はるかは震える手でスマートフォンを握りしめ、ひかるへ必死の提案を投げかけた。

 

はるか「ひかるちゃん……私、決めたの。8月31日までに、柏の実キャンパス駅周辺にあるもう一つの自宅に避難して、台風が過ぎ去るのをやり過ごそうと思う。……ひかるちゃんも一緒に来て! 観星町にいたら、絶対に巻き込まれちゃうよ……!」

 

確定した運命の前に、これ以上誰かを失いたくないという一心で紡がれた言葉。

 

しかし、電話の向こうから返ってきたひかるの声は、絶望に押し潰されそうな震えを孕みながらも、力強く拒絶の意を示していた。

 

ひかる「……ダメだよ、はるかちゃん……!」

 

はるか「どうして!? 750hPaなんて、街ごと吹き飛ばされる勢いなんだよ!? ここにいたら死んじゃうんだよ!?」

 

ひかる「分かってる……分かってるよ! でも……ダメなんだよ……! 観星町には、まだたくさんの人たちが生きている……! これまで予言通りの惨劇が起きて、たくさんの仲間や命が奪われていくのを、私たちは見ることしかできなかった……。だからって、今度は自分たちだけ逃げて、観星町の人たちを見捨てるなんて……私にはできないよ!!」

 

ひかるの瞳からは、溢れ出す涙が止まらなかった。

 

あおぞら中学校としんせん中学校で奪われた864人の命。自分たちの言葉が届かず、救えなかった無力感とトラウマがひかるの胸を激しく締め付ける。

 

ひかる「どうにかして助けたい……! どんなにシステムが残酷でも、予言が絶対だとしても……私は観星町の人々を、どうしても助けたいんだよ……っ!!」

 

逃げて生き延びることを選択しようとするはるかと、どれほど絶望的であっても目の前の命を諦められないひかる。

 

残りわずかなタイムリミットの中、二人の悲痛な叫びが、夜の観星町に虚しく交錯するのだった。

 

2026年8月9日・夜、SNS上のタイムライン。

 

気象庁の異例な緊急記者会見が終わった直後、SNSのトレンドワードは一瞬で埋め尽くされた。

 

『#観星町停滞』

『#750hPa』

『#気象庁会見』

『#前代未聞の台風』

 

画面をスクロールするたびに、膨大な数の投稿がリアルタイムで激しく流れていく。そこにあったのは、科学の常識すら軽々と超えてしまった数値に対する、底知れない恐怖と戦慄だった。

 

ユーザーA @user_a123

750hPaって何……? 見間違いかと思って二度見したんだけど。地球上の数値じゃないでしょこれ……冗談抜きで怖すぎる。

 

ユーザーB @weather_watch

過去最強と言われた台風ですら800hPa台前半なのに、750って……。スパコンの計算が何度やっても観星町で「停滞」になるのも意味が分からない。何が起きようとしてるの?

 

ユーザーC @manga_like

750hPaって、もう台風っていうか存在自体が兵器レベルでしょ……。建物のガラスが割れるとかの次元じゃなくて、街ごと消滅する勢いじゃん。観星町の人たち、マジで早く逃げてくれ!!

 

ユーザーD @night_sky_09

直近の震災といい、最近の災害おかしくない……? なんでこんなピンポイントで観星町に停滞するの? 偶然じゃないみたいで本当に不気味なんだけど……。

 

ユーザーE @star_star_00

観星町に友達がいるんだけど、避難勧告どころか街ごとヤバいって言われてて連絡取ったらパニックになってた……。お願いだから予報外れてくれ……頼むから……。

 

数万パターンに及ぶシミュレーションの末に出された「壊滅」という結末、そして物理法則すら無視するかのような750hPaという絶望的な数字。

 

画面越しに広がる巨大な波紋と恐怖は、タイムリミットが刻一刻と迫る観星町を、重く暗い絶望の空気で包み込んでいくのだった。

さらに、5人のユーザーからも返信が届いた。

 

ユーザーF @sky_blue_99

> 750hPaって……まずいぞこれ、本当に街がなくなっちゃうレベルじゃん……。

 

> ユーザーG @run_away_now

> え、マジでまずいぞ……。観星町に住んでる人、今すぐ荷物まとめて外に逃げた方がいいんじゃないの!?

 

> ユーザーH @tokyo_lover2026

> スパコンの予測が絶対に変わらないってのが一番恐ろしい。まずいぞ、どう考えても普通の自然災害じゃない……。

 

> ユーザーI @star_watcher_m

> 観星町で「停滞」って……逃げ場がないってこと!? これは本気でまずいぞ……頼むから夢であってくれ。

 

> ユーザーJ @save_our_town

> 750hPaなんて聞いたこともない……まずいぞ、本当に何かの終わりが近づいてるんじゃないの……。

 

観星町・星ノ川はるかの部屋。

 

タイムラインを埋め尽くす「まずいぞ」という悲鳴と激しい戦慄。

画面から発せられる人々の絶望とパニックは、刻一刻と迫る8月31日の刻限に向け、暗く重い陰りをさらに濃くしていくのだった。

果たして、観星町壊滅まで残り2つとなった予言は希望へと導くのか?それとも…

70 be c0n71nu3d…

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