本作品において、実在する災害名称のタグおよび表記を使用していたため、読者の方への配慮として架空の名称へと差し替え・修正を行いました。ご不快な思いをされた方に深くお詫び申し上げます。
【本編について】
今回の第4話より、『キボウノチカラ〜オトナプリキュア’23〜』より夢原のぞみが登場します!
引き続き、あらすじに記載の注意書きをご確認の上、作品をお楽しみいただけますと幸いです。
2026年4月29日・夜。
事故の余波が冷めやらぬ中、ネット上ではさらなる激震が走っていた。
星ノ川はるかが自身のSNSアカウント(@Haruka_star)に投稿した一言が、またたく間に拡散されていったのだ。
『——100年前の予言の紙と、その元となったノート。それを持っている可能性があるのは、元宇宙飛行士の星奈ひかるさんかもしれません』
その投稿は瞬く間に大炎上を巻き起こし、ネット掲示板やSNSのコメント欄には驚きと混乱の声が溢れかえった。
『え、あの宇宙飛行士のひかるが!?』
『マジかよ……なんでそんな重要書類を一般家庭が持ってるんだ?』
『もし本当なら、早く研究機関や警察に資料として提供してくれればいいのに……』
『真相を解明するためにも、ノートの全貌を公開してほしい!』
世間の関心は一気に「予言のノート」と「星奈ひかる」へと集中していく。
やがて、その過熱ぶりはテレビの報道番組でも大きく取り上げられることとなった。
キャスター「——続いてのニュースです。本日発生したスタージェット555便の墜落事故に関連し、SNS上では『事故を事前に予言していたとされる資料』を元宇宙飛行士の星奈ひかる氏が所有しているのではないかという指摘がなされ、大きな波紋を呼んでいます」
画面には、ひかるの顔写真と「予言のノート所有か?」という衝撃的な見出しが踊る。
ひとつの投稿から始まった小さな噂は、街全体、そして全国を巻き込む巨大なニュースへと発展していった。
世間の過熱する報道とネット上の喧騒が深まる中、ひかるはひとり覚悟を決めていた。
ひかる「……それでも、4ヶ月前に近所に引っ越してきた大切な人を……はるかちゃんを、これ以上巻き込んで危険な目に遭わせたくない」
その一心から、ひかるは警察と調査機関へ自ら出向き、大切に保管していた100年前の紙とノートを提出することを決意した。
さらにひかるは、手元に残されていた当時の貴重な記録写真も一緒に提出した。それは、かつての学校の壁に不気味に張り出されていた手書きの紙を映した一枚の写真だった。
そこには——
『201904192』
『354313943』
——2019年4月19日に発生した池袋暴走事故の日付と、その現場の緯度・経度を示す数字が、はっきりと刻み込まれていた。
過去の悲惨な事故すらも事前に示していた決定的な証拠資料の提出により、調査機関と世間はさらなる衝撃に包まれていくのだった。
緊迫した空気が漂う室内で、テレビの画面が緊急の報道特別番組へと切り替わった。
重々しいチャイム音とともに、画面中央に大きな赤文字のテロップが映し出される。
『【速報】警察および政府調査機関が発表 「星奈ひかる氏の証言・提出資料は『真実』と判定」』
画面の中に映るアナウンサーが、硬い表情で原稿を読み上げた。
アナウンサー「重大な速報です。本日未明、星奈ひかる氏から警察へ提出された100年前の予言の紙および解密資料について、政府の合同調査委員会は『記載内容と過去の惨事、および昨日発生したいちご坂での事故情報が完全一致しており、極めて信頼性の高い真実の情報である』と公式に認めました」
画面が切り替わり、警察庁の会見場で真剣な面持ちでマイクに向かう報道官の姿が映し出される。
アナウンサー「これにより、政府は国家レベルの大規模警戒態勢を敷く方針を固めました。ネットや街頭では大混乱が広がっており、国民からは残された予言の公開と防災対策を求める声が急増しています……」
リビングでテレビ画面を見つめるひかる、はるか、えれな、まどかの4人。誰もが息を呑み、言葉を失っていた。
えれな「ついに……政府まで動き出した……」
まどか「これで世界が予言を『現実』として認識しました。ですが、本当の闘いはこれからです……!」
ひかるは静かに手を握りしめた。
テレビ画面の向こうに広がる巨大な波紋と、手元のノートにぽつんと残された『EE』という謎の文字。
そのふたつを交互に見つめながら、ひかるの心には深くて重い決意が静かに満ちていくのだった。
その頃——
今や小学校教師として働いている夢原のぞみは蒼白な顔で唇をかみ締め、声を震わせた。
のぞみ「自分の母校で、たくさんの犠牲者が出るなんて……そんなの……!」
「誰も死なない」——そんな願いが込められた未来は、残酷なまでに遠のいていた。
今回の事故は、決して気まぐれに起きた突発的な災厄でも、ただの不運な偶然でもない。100年前に刻まれた数字の通りに、寸分違わず手繰り寄せられた「不可避の現実」だった。
変えようのない過去の記録のように、これから起きる出来事すらも確定した事実としてそこに存在している。あの日を境に、抗うことのできるはずだった「未来」は、決して覆すことのできない絶対的な「運命」へと、その姿を変質させていた。
テレビから流れる重々しい政府会見の声を背に、部屋の扉が勢いよく開いた。
駆け込んできたのは、荒い息を吐き、ショックで顔色を失った夢原のぞみだった。
のぞみ「ひかるちゃん……! ニュース見たよ……! 六つ目の予言って……本当なの……!?」
のぞみは震える手でスマートフォンを強く握りしめ、画面に表示された「あおぞら中学校」「私立しんせん中学校」という無機質な文字を視線でなぞる。
のぞみ「あおぞら中学校は……私の大切な母校なんだよ……!? そこにいる生徒たちや先生、後輩たちが……そんな、全員犠牲になるなんて……! 嘘でしょ……!?」
溢れ出す恐怖に耐えかね、膝から崩れ落ちそうになるのぞみ。その身体を、えれなとまどかが咄嗟に両脇から支えた。
のぞみ「嫌だよ……! なんとかして防がなきゃ! 警察やみんなで避難させれば、誰も死なない未来にできるはずでしょ……!?」
悲痛な叫びを上げるのぞみ。だが、ひかるは胸を締め付けられるような痛みに耐えながら、静かに首を横に振るしかなかった。
ひかる「のぞみちゃん……。私も、そう信じたかった……。今日まで、なんとかして災害を防ごうって必死だった……」
ひかるはいまだ遠くで煙を上げる事故現場の惨状と、手元のノートに刻まれた完璧な数列を交互に見つめた。
ひかる「でも……昨日の事故で分かったの。事故は突然起きたんじゃない……100年も前から、秒単位で決まっていたことだったんだよ。避けようとしても、まるで目に見えない大きな力に手繰り寄せられるみたいに……逃げられないの……」
100年前の「紙」に刻まれた予言は、単なる未来の予測などではなかった。
それは決して書き換えることのできない、絶対的な「世界の確定した決定事項」。
「誰も死なない」という希望に満ちた未来は、もはやどこにも存在しない。
どんなに抗おうと、運命という巨大な歯車は、絶対に覆せない冷酷な現実として、彼女たちの眼前にあまりにも重く立ちはだかっていた…。
2026年5月1日。
〇 かつての星奈家(旧宅)
静まり返った街の片隅に、時の流れに取り残されたように佇む一軒の空き家。
そこは、星奈りあるが最後の時を過ごし、静かに命を引き取ったとされるかつての星奈家の自宅だった。
ギィ……と不穏な音を立てて錆びついた扉が開き、ひかるたちは足を踏み入れる。
埃の匂いと湿った空気が漂う廊下を抜け、奥にあるりあるの部屋へと向かう。ノートにぽつんと記されていた最後の謎、『EE』という二文字の真意を確かめるために。
あかり「ここが……りあるさんの部屋……?」
恐る恐る足を踏み入れた少女たちの視線が、部屋の奥の壁へと注がれた。
次の瞬間、全員が言葉を失い、その場に凍りついた。
荒々しい手つきで塗られた黒いペンキ。そこには、壁一面を埋め尽くすように狂気的なまでの執念で同じ英文が繰り返し刻まれていた。
『EVERYONE ELSE IN MIHOSHI TOWN』
『EVERYONE ELSE IN MIHOSHI TOWN』
『EVERYONE ELSE IN MIHOSHI TOWN』
『EVERYONE ELSE IN MIHOSHI TOWN』
『EVERYONE ELSE IN MIHOSHI TOWN』……
ひかる「EEって……『EVERYONE ELSE(それ以外の全員)』……!?」
ひかるの声が恐ろしい真実に到達し、震えを帯びる。
あかり「それじゃあ……『EVERYONE ELSE IN MIHOSHI TOWN』って……『観星町にいる、残りすべての人々』ってこと……!?」
まどか「……そういうことですね。あの最後の予言が示していたのは、特定の誰かや場所ではない……」
まどかの言葉を引き継ぐように、ひかるが蒼白な顔で言葉を絞り出した。
ひかる「これから観星町を襲う大洪水……その過酷な試練を乗り越えられなかった……町にいる人間のすべて、なんだ……」
壁に刻まれた黒い文字が、まるでこれから訪れる終わりの日を予言するかのように、薄暗い部屋の中でどこまでも不気味に浮かび上がっていた。
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