N3x7 D15a5732   作:vic.

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第28話「さらに予言は続き…」

パラ宿・PRIPARA T-SITE(カフェ・ラウンジエリア)。

 

みれぃは震える指先で眼鏡のブリッジを押し上げ、デスクスタンドの光をB4判の用紙へとギリギリまで近づけた。一度「解読の法則」を見つけてしまえば、紙面に敷き詰められた不気味な数字の羅列は、冷酷な惨劇の目録となって次々と彼女の脳内に飛び込んでくる。

 

みれぃはマーカーを握り直し、ホワイトボードへ新たな数列を書き出していった。

 

『 2022 / 04 / 08 / 3 』

 

みれぃ「2022年4月8日……MRIの不慮の事故で、3人が死亡……」

 

山口県で起きたあの不条理な病院での事故。完璧な医療設備と厳重な管理下にあったはずの現場で発生した、確率論を超えた惨劇。それすらも、このシステムにとってはあらかじめ組み込まれた「予定通りのデータ」に過ぎなかったのだ。

 

続いて、みれぃの視線は数行下の数値へと注がれる。

 

『 2023 / 05 / 25 / 5 』

 

みれぃ「2023年5月25日……ホテルでの立てこもり事故。警察官2人、客2人を含む、合計5人の命が……」

 

事件現場の緊迫、現場に駆けつけた人々の必死の説得、絶望的な抵抗。人間たちが繰り広げたあらゆるドラマや感情の葛藤をあざ笑うかのように、システムはただ「5」という犠牲者の数字だけを淡々と出力していた。

 

そして——みれぃの指先が、最も新しく、そして最も近未来を指し示している不吉な数字の箇所でピタリと止まった。

 

そこには、ほんのわずか前に観星町の交差点で発生した、あの惨惨たる光景のデータが刻まれていた。

 

『 2026 / 11 / 03 / 2 』

 

みれぃ「2026年11月3日……プリパラアイドル2人が、不慮の爆発事故で死亡……」

 

みれぃ「……! これは……さっき起きた、あの事故のことぷり……!?」

 

呼吸が荒くなり、視界がすっと狭まる。

 

止まらない予言のシステムを破壊しようと企み、世界のルールに介入を試みた二人のプリパラアイドル。彼女たちが交差点の爆発に呑み込まれて命を落としたのは、不運でも偶然でもない。システムを壊そうとした瞬間に発動する、冷酷な「排除プログラム」そのものだったのだ。

 

みれぃ「壊そうとしたら……即座に削除される……。最初から、人間が介入することすら組み込み済みで処理されているぷり……!」

 

過去の災害、現在の悲劇、そしてこれから訪れる未曾有の災厄。

 

B4の紙にどこまでも続く不気味な数字の列は、人間がどんなに知性を磨こうと、どんなに未来を変えようと抗おうと、絶対に壊すことのできない「世界の冷酷なシステム」の存在を、あまりにも完璧に証明していた。

 

みれぃはホワイトボードのマーカーを握りしめたまま、底知れぬ恐怖と絶望に押し潰されそうになりながら、ただその数列を見つめ続けることしかできない。

 

息を詰めるような緊張感の中、みれぃは手にしたマーカーを持ち替え、ホワイトボードに向き直った。

 

B4判の紙にびっしりと敷き詰められた無機質な数字の羅列。そのひとつひとつを解読の法則に従い、慎重に、そして正確にホワイトボードへ書き写していく。

 

カツカツと静かなカフェに響くマーカーの音。

 

書き写しを終えたみれぃは、赤と青の2本のペンを取り出した。

 

『 1999/08/14 / 19 』

『 2022/04/08 / 3 』

『 2023/05/25 / 5 』

『 2026/11/03 / 2 』

 

彼女は震える手で、発生日時を示す「YYYY/MM/DD」の部分へ、次々と鮮やかな赤い丸*をつけていく。過去から現在へと繋がる、決して動かすことのできない悲劇のタイムライン。

 

そして、その末尾に記された犠牲者の数——「19」「3」「5」「2」、失われた命の数字へ、冷酷な現実を刻みつけるように青い丸を覆わせていった。

 

赤と青の丸で埋め尽くされていくホワイトボード。

 

それは単なるデータの整理ではなく、この世界を支配する「予言のシステム」が吐き出した、破滅の全貌を視覚化した悪夢の図表だった。

 

みれぃ「日時と……奪われた命の数……。完璧すぎるほど規則正しく、機械的に整理されているぷり……」

 

赤と青の円が整然と並ぶボードを見つめながら、みれぃは深く息を呑んだ。

 

そこに並んでいるのは、人間たちの悲しみや抵抗など一切考慮せず、ただプログラムとして淡々と実行されてきた「冷酷な実績」そのもの。そしてそのグラフの先には、まだ誰も目にしていない2026年以降の未来へと続く、赤と青の印がどこまでも伸びていた。

 

システムを壊そうと抗えば「死」で排除される。

しかし、このまま何もしなければ、ボードに刻まれた青い丸の数だけ、未来の命が奪われ続ける——。

 

整然と色分けされたホワイトボードを前に、みれぃは圧倒的な絶望感に包まれながら、静かに拳を握りしめることしかできない。

 

翌日、パラ宿・プリパラ 楽屋。

 

翌日。ホワイトボードに刻まれた赤と青の惨劇の記録を忘れることができないみれぃは、楽屋でくつろいでいるそふぃのもとへと向かっていた。

 

手には、昨日カフェで解読したB4の紙とノートを強く握りしめている。

 

みれぃ「そふぃ、冗談抜きで聞いてほしいぷり……。明日、地球のどこかで……21人の命が奪われるぷり」

 

いつになく引きつった表情で、真剣に言葉を投げかけるみれぃ。

 

しかし、ソファーの上でレッドフラッシュを口にし、ぼんやりとたたずんでいた北条そふぃは、どこか不思議そうに首をかしげるだけだった。

 

そふぃ「……21人? どうしたのみれぃ……急にそんな怖いこと言って。そんなの……ただの偶然じゃないの……?」

 

みれぃ「偶然なんかじゃないぷり! この数字の法則、過去の重大事故のデータと完全に一致しているぷり! 1999年の烏川の事故も、2022年のMRIの事故も、昨日起きたあの爆発事故だって全部……!」

 

必死に説明を重ね、紙に書かれた「YYYY/MM/DD/Casualty Count」の規則性を訴えかけるみれぃ。

 

だが、あまりにも現実離れした「未来の死の予告」という内容に、そふぃの心には危機感が届かない。これまで数々の困難をライブと計算で乗り越えてきたみれぃだからこそ、最近の事故のニュースやストレスで深く考えすぎてしまっているだけではないか——そふぃの瞳には、そんな心配と呑気さが混ざり合った色が浮かんでいた。

 

そふぃ「みれぃ、最近忙しかったから疲れちゃったんだよ……。数字なんて、探せばいくらでも偶然合っちゃうものだから……」

 

みれぃ「そふぃ……っ」

 

どれだけ明晰な頭脳で世界の裏側に潜む「システム」の存在を突き止めても、それを他人に信じてもらうことすら容易ではない。

 

明日、確実に実行される「21人の死」。

誰にも信じてもらえない焦燥感と、抗えば排除されるという冷酷なシステムの恐怖に挟まれ、みれぃは一人、途方もない孤立感に包まれていく。

 

そこへ、ドアを乱暴に開けてドロシーがひょっこりと部屋に入ってきた。

 

ドロシー「なになに〜? 朝からふたりで何難しい顔してんのさー?」

 

いつもの軽快な調子で足を踏み入れたドロシーだったが、鬼気迫る表情でノートとB4の紙を握りしめるみれぃの姿に目を丸くする。みれぃは弾かれたようにドロシーへ向き直り、必死の形相で事の重大さを訴えかけた。

 

だが、B4の紙に書かれた不気味な数字の列と、みれぃの切迫した説明を聞いたドロシーは、呆れたように肩をすくめて苦笑するだけだった。

 

ドロシー「はあ? 明日21人が死ぬ〜? みれぃ、頭でも打ったんじゃないの? そんなのニュースの数字と落書きがたまたま重なっただけの『ただの偶然な一致』だろ! テンション上がって変な計算しすぎなんだよ!」

 

そふぃに続き、ドロシーにまで不気味な悪戯や過労による錯覚として片付けられそうになり、みれぃの胸の中で抑え込んでいた焦燥感が限界を迎える。

 

みれぃ「……ちがうぷり!!」

 

静まり返る楽屋に、みれぃの悲痛な叫び声が響き渡った。

 

みれぃ「私が言いたいのは『明日21人が死ぬ』ということではないぷり。じゃあ何かというと……『これがなぜ21人が死ぬと言っているのか調べたい』ってことぷり!!」

 

怒りと恐怖で肩を激しく上下させながら、みれぃはホワイトボードに書かれた赤と青の丸印を強く指さした。

 

みれぃ「予言の当たり外れを当てっこしたいわけじゃないぷり! なぜこの無機質な数列が、過去の惨劇から未来の出来事まで寸分の狂いもなく一致してしまうのか……! なぜこんな冷酷なルールがこの世界に存在しているのか、その『構造』を解明したいと言っているのぷり!」

 

単なる不吉な予言への恐れではない。

世界の裏側で淡々と命を奪い続けるプログラムの正体と、介入しようとする者を容赦なく消去するシステムの正体——その異常な真相に迫らなければ、自分たちの未来すらもただの「数字」として処理されてしまう。

 

みれぃの叫びのこもった強い眼差しに押され、先ほどまで笑っていたドロシーも、隣にいたそふぃも、思わず言葉を失って息をのんだ。

その時。

緊迫した空気が流れる楽屋の隅で、それまで静かに話を聞いていた虹色にのが、ゆっくりとみれぃの隣へ歩み寄ってきた。

 

にのは、どこか慌ただしい雰囲気を和らげるようにみれぃの肩をぽんぽんと優しく叩く。

 

にの「よしよし、それはわかったッス、少なくともこれは『恐怖』どころの騒ぎではないことは少なくとも分かったッス。じゃあ、この丸のついていない数字は一体何を表しているッスか?なぜ人はここまで追及するのかと不思議に思うかもしれないけど、そのような丸のついていない無意味な数列は、ピタゴラス教団の人みたいな数字の意味を解明できる人しか数列の意味はわからないッスよ?」

 

いつものハキハキとしたスポーツ女子らしい明るさを保ちつつも、にのの瞳には真剣な色が宿っていた。

 

ホワイトボードに並ぶ数字の中には、みれぃが赤や青の丸で囲んだ「日付」や「犠牲者数」以外の、一見すると何の意味も持たない端数の数字や、法則から外れたように見える余白の数字がいくつも残されていたのだ。

 

にのの問いかけに、みれぃはハッと息をのんだ。

 

みれぃ「……丸のついていない数字……」

 

みれぃはホワイトボードに残された、未だ「意味」を与えられていない数字群を凝視する。

 

それは単なるノイズなのか。あるいは、惨劇が発生する正確な緯度経度、時間、それともシステムが「排除」を実行する際の何らかのパラメータなのか——。

 

にのが指摘した通り、単なる確率論や惨劇の記録を超えた、世界の理を数字ですべて解き明かそうとする万物カルト的な「異常なまでの精度」。人間がその領域に踏み込むこと自体が、システムの禁忌に触れる行為なのかもしれない。

 

ドロシーとそふぃも、にのの言葉によって事態が単なるオカルトや噂話の領域を遥かに超えていることを察し、息をのんでホワイトボードの「解読不能な余白の数字」を見つめ返す。

果たして、にのが言った余白の数字とは何を示しているのか?それは「緯度・経度」か、それとも…

70 b3 c0n71nu3d…

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