N3x7 D15a5732   作:vic.

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第31話「BBQセット大爆破」

プラズマ・アウトレットパークキラ宿・河川敷バーベキュー場

 

あんなの視線が注がれていた河川敷のエリアでは、秋晴れの下で肉を焼く香ばしい匂いと楽しげな歓声が響き渡っていた。あんなが「予知の目」で捕捉した21名のグループのすぐ近くへ、新たに12名の利用客たちが笑い合いながら足を踏み入れたその瞬間のことだった。

 

——ドガァァァァンッ!!!

 

空気を切り裂くような重苦しい衝撃音が、秋の河川敷に凄まじく響きわたった。

 

過熱したBBQコンロの脇に置かれていた予備の油脂燃料が、風にあおられて熱源へと一気に落ち込み、瞬時に気化・引火。高圧の爆発現象を引き起こしたのだ。

 

激しい炎と爆風が渦を巻き、コンロの周囲にいた21名のグループを容赦なく呑み込んでいく。

 

「きゃあぁぁぁぁぁっ!?」

「うわあぁぁぁっ!!」

 

一瞬前までの平和な歓声は、地獄のような悲鳴と硝煙の匂いへと一変した。爆風の直接的な打撃を辛うじて免れ、即死を逃れた周囲の12名の客たちは、あまりの衝撃に顔を蒼白にさせながらも、猛烈な勢いで広がる炎から逃れようと必死に声を張り上げた。

 

「早くBBQセットから離れろ!!」

「留まっていたら全員死ぬぞ!!」

 

黒煙が巻き上がる中、衣服に火が移るのを防ぎながら、互いの手を取って着衣の火を払い、必死に退避行動を開始する12人。

 

「早く走れッ!! これ以上誰も死なせるわけにはいかねえ!!」

 

あんなが目撃したその凄惨な光景。

 

事故現場での死者ゼロという一瞬の安堵の裏で、システムは狂いなく計算を完遂していた。みれぃが解読した『2026110321』の数字——2026年11月3日、21人の命。

 

火炎と黒煙が空を覆う中、生き残った12人の叫び声とサイレンの音が重なり合い、冷酷なシステムのプログラムが容赦なく実行されたことを静かに物語っていた。

 

轟音とともに黒煙が立ち上る光景を目の当たりにしたまつりは、血の気を失いながらも、ふらつく足で無我夢中にバーベキュー場へと駆け出していた。

 

まつり「嘘……そんな……っ!」

 

玉突き事故の現場からわずかに離れた河川敷。

先ほどまで響いていた平和な笑い声は、パニックと怒号、そして消火器の白い粉末が舞う凄惨な現場へと一変していた。

 

まつりが駆けつけた時、そこには凄まじい爆風と炎に巻き込まれた人々の姿があった。即死を免れた12人の人々が必死に叫びながら、服に火が燃え移ってしまった人へ消火器を向け、白い粉末を吹き付けながら必死の救助活動を行っていた。

 

「消火器だ! もっと持ってこい!!」

「大丈夫ですか! 今消しますから!!」

 

焦げた匂いと粉末が混ざり合う空気の中、まつりは立ちすくんだ。

彼女の視界に飛び込んできたのは、システムが冷酷に弾き出した「21」という数字の現実。

 

みれぃが解読した『2026110321』。

今日、21人の命が奪われるという暗黒の予言。

 

玉突き事故で死者がゼロだったのは、決して奇跡などではなかった。システムの計算式は、あの道路上の事故ではなく、最初からこのバーベキュー場での惨劇を完璧にスケジュールしていたのだ。

 

逃げ惑う人々、消火活動に奔走する人々、そしてすでに動かなくなってしまった人たち。

 

まつりは自身の長いライブヘアが風に揺れるのを感じながら、震える手で口元を覆った。世界の一部が壊れ、そこに流れ込んだ「冷酷なシステムのプログラム」は、人間の感情や安堵など一切無視して、ただ淡々と、あらかじめ決められた「数字」をこの現実に刻み込んでいく。

 

まつり「これが……システムのやり方……」

 

救急車のサイレンが遠くから近づいてくる中、まつりはただ圧倒的な絶望と恐怖に打ちのめされ、立ち尽くすしかなかった。

 

その頃…

プラズマ・アウトレットパークキラ宿・1階入口②「平面駐車場 ブルーゾーン」

 

凄惨な爆発音が響き渡り、河川敷から黒煙が空高く舞い上がるその瞬間。

 

アウトレットパークの1階入口②、青いラインが引かれた「平面駐車場 ブルーゾーン」のアスファルトの上に、3つの影が立ち尽くしていた。

今年2026年4月でグループ活動開始8周年という大きな節目を迎えた、Miracle☆Kiratts(ミラクルキラッツ)の桃山みらい、萌黄えも、青葉りんかの3人だった。

かつて14歳の中学生としてキラッと輝く配信を届けていた彼女たちも、今や全員が22歳の大人へと成長していた。成熟した眼差しには落ち着きが宿り、8年間の歩みと絆がその佇まいに確かな品格を与えている。

しかし、2年前の太陽フレア(エラー114)以降、彼女たちの日常にも歪みが生じていた。

 

えも「なに……いまの爆発……!?」

 

えもが息をのんで、ブルーゾーンのフェンス越しに河川敷の惨状を見つめる。

 

みらいやりんかも言葉を失い、煙が立ち込める方向を蒼白な顔で見つめていた。22歳になり、社会の現実や様々な経験を積んできた彼女たちにとっても、目の前で起きたあまりにも突発的で凄惨な出来事は、言葉を飲み込むのに十分すぎる衝撃だった。

 

「ブルーゾーン」の案内板が冷たく秋風に揺れる中、3人は見た。

 

駆けつけるまつりの姿、消火活動に必死になる人々、そして遠くでその光景を静かに見つめる29歳の明智あんなの姿を。

 

みらい「そんな……あんなちゃんまで……?」

 

りんか「みらいちゃん、えもちゃん……何か、おかしいです。あの玉突き事故といい、この爆発といい……まるで最初から『こうなることが仕組まれていた』かのような……」

 

りんかの優れた観察力と知性が、この惨劇の裏にある異常な「規則性」を鋭く察知していた。

 

活動開始から8年。トップアイドルとして数々のステージを経験し、成長してきたミラクルキラッツの3人。だが、22歳になった彼女たちが今突きつけられているのは、輝かしいライブの光ではなく、世界の裏側で淡々と命を処理していく「冷酷なシステム」の存在だった。

 

ブルーゾーンのアスファルトに長い影を落としながら、3人は迫りくる巨大な破滅の気配に、ただ息をのんで立ち尽くすことしかできない。

 

プラズマ・アウトレットパークキラ宿・1階フロア。

 

現場を包む激しい動揺と悲鳴を切り割るように、館内の天井に設置されたスピーカーから不機嫌なまでの警告音が響き渡った。

 

チャイム音『ピンボンパンポン……』

 

店舗内の照明が一斉に点滅し、非常用の赤い誘導灯が暗闇の中に浮かび上がる。直後に流れてきたのは、ノイズを交えた緊迫した女性アナウンサーの音声だった。

 

『緊急放送、緊急放送です。ただいま、当施設に隣接する河川敷エリアにて大規模な火災および爆発事故が発生いたしました。お客様の安全確保のため、警察および消防の指示に基づき、一部の出入り口を即時封鎖いたします』

 

スピーカーから吐き出される無機質なアナウンスが、館内に残された客たちの恐怖をさらに煽り立てる。

 

『封鎖対象となる出入り口は以下の3箇所です。

 

1階、①「レッドゾーン・河川敷方面」出入り口。

1階、②「スパークリングパーク(ステージあり)」出入り口。

1階、③「グリーンゾーン」出入り口。

 

繰り返します。①レッドゾーン、②スパークリングパーク、③グリーンゾーンの出入り口は、現在すべて完全に封鎖されております。安全な避難経路が確認されるまで、絶対に近寄らないでください』

 

「スパークリングパーク」——かつて多くのアイドルたちが輝かしいライブを行い、歓声に包まれていたあのステージのある広場までもが、今は重厚なシャッターによって遮断され、立ち入り禁止の危険地帯へと変貌していた。

 

「封鎖……!? 逃げられないの!?」

「出口はどこなのよ!!」

 

パニックに陥った客たちが右往左往し、シャッターの降りたガラス扉を叩く音が館内に空しく響く。

 

シャッターの向こう側、煙の充満する河川敷を見つめながら、22歳になったミラクルキラッツの3人と、駆けつけたあんな、そして悲しみに打ちひしがれるまつりは、完全に分断された現実を突きつけられていた。

 

事故の発生、正確な座標、そしてピンポイントで退路を絶つかのように実行された出入り口の封鎖。

 

あまりにも手際が良く、あまりにも無慈悲なその展開は、まるで誰かがシナリオを描き、施設全体の制御システムすらも手中に収めて惨劇を完遂させようとしているかのようだった。

 

暗いシャッターの前に落とされた影の中で、彼女たちは言葉を失ったまま、閉ざされた「レッド」「スパークリング」「グリーン」の文字をただ見つめ続けていた。

 

封鎖された「レッドゾーン」の重々しいシャッター前。立ち込める煙と非常ベルの不協和音が響く中、29歳になったあんなは、かつてと変わらない凛とした、だがどこか切なさを帯びた声で口を開いた。

 

あんな「やっぱり……飛行機事故と同じ嫌な気配を感じた。近くにいたら危ないところだったよ……」

 

あんなの脳裏をよぎるのは、かつて目撃した凄惨な記憶。

 

1999年の太陽フレアで予知能力を得て以来、彼女はこの「避けることのできない破滅」の気配を幾度となく感じ取ってきたのだ。

 

あんな「こういう予言は誰も止められないの……まるで誰かの超能力で手繰り寄せられるように……」

 

その言葉に、22歳になったえもが感情を爆発させるように踏み出した。

 

えも「そんなの納得いかないよ! 予言だってなんだって、あたしたちの手で変えてみせるんじゃないの!?」

 

まっすぐな瞳で詰め寄るえもに対し、あんなは静かに、しかしくっきりと首を振った。その瞳には、世界の理を知り尽くしてしまった者特有の深い諦念が宿っていた。

 

あんな「えも、落ち着いて!……止めようとしたら、かえって死ぬ……システムに冷淡に排除されるように……」

 

あんな「抗おうとすればするほど、システムは修正プログラムを発動させる。昨日の爆発事故みたいに、運命を無理に折り曲げようとした者から順番に、ただの『エラーデータ』として処理されて消されてしまうの……」

 

あんなの制止に、えもは悔しそうに拳を握りしめ、歯を食いしばる。

 

みらいやりんかも、息をのんでふたりのやり取りを見つめることしかできない。

 

プラズマ・アウトレットパークキラ宿の近く マンションの一室

 

プラズマ・アウトレットパークキラ宿の敷地内に建つ高層タワーマンション。

22歳になったみらい、えも、りんかの3人は、互いの事務所と保護者の正式な承諾を得た上で、この部屋で共同生活を送っていた。

 

騒然とする屋外の混乱から逃れるように部屋へ戻った3人は、電気もつけない薄暗いリビングで、吸い寄せられるようにテレビの電源を入れた。

 

画面には大きく「報道特別番組」の文字が躍り、騒然とした現場からの生中継が映し出される。

 

アナウンサー『続いてニュースをお伝えします。本日午後3時半ごろ、プラズマ・アウトレットパークキラ宿に隣接する河川敷のバーベキュー場にて、大規模な火災および爆発事故が発生いたしました』

 

ヘリコプターからの空撮映像には、先ほどまで自分たちがいた場所が黒々とした炎と煙に包まれている光景が映し出されていた。画面下部には「LIVE」の赤文字と凄惨なテロップが流れ続ける。

 

アナウンサー『警察および消防の発表によりますと、過熱したコンロへの油脂類の引火が原因とみられ、現場にいた利用客21名が巻き込まれました。速報によりますと、21名全員の死亡が確認されたとのことです……』

 

画面を見つめる3人の顔から、完全に血の気が引いていく。

 

みらい「21人……全員……」

 

えも「嘘でしょ……さっきまで、あんなに楽しそうに笑ってたのに……」

 

りんか「みれぃさんが解読した『2026110321』……2026年11月3日、21人……寸分の狂いもなく、完璧に一致しています……」

 

テレビの中のアナウンサーは、なおも淡々と事実だけを読み上げていく。

 

アナウンサー『なお、直前に近くの道路で発生した大型車を含む玉突き事故においては、奇跡的に死者はゼロでした。しかし、その目と鼻の先で起きたこの凄惨な爆発事故により、現場は一時激しいパニック状態に陥りました。施設側は即座にレッドゾーン、スパークリングパーク、グリーンゾーンの出入り口を封鎖し——』

 

画面の向こうで流れる無機質なニュース速報。

それは、昨夜まつりが目にした「死者ゼロの火災は記録されない」という冷酷なシステムの思想そのものだった。玉突き事故の命の無事は最初から計算に入っておらず、ただ「21人の死」というあらかじめ決められたデータだけが、寸分の狂いもなくこの現実に実行されたのだ。

 

あんなの言葉が、みらい達の脳裏をリフレインする。

『止めようとしたら、かえって死ぬ……システムに冷淡に排除されるように……』

 

8年間アイドルとして走り続け、大人になった3人。

だが今、目の前のモニターに映し出されているのは、自分たちの力では決して変えることのできない、世界を支配する「冷酷なシステム」の絶望的な絶対解だった。

 

静まり返ったリビングに、アナウンサーの声とヘリコプターのプロペラ音だけが虚しく響き続けている。

予言は、8つだけでは終わらなかった。システムは不老不死の身体で理不尽な災害を生み出していくことが、今明らかになったのだった。

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