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それでは、第6話をどうぞお楽しみください。
※注意!ここから先は災害シーンを含みます。キャラクターの死亡表現・ショッキングな表現が苦手な方は「閲覧」しないでください!
2026年5月5日・午前10時00分、はぐくみ市・市街地避難ルート。
避難を促す赤色の警告灯が点滅し、重苦しい警報音が街中に響き渡っていた。
市街地を脱出する避難車両の列の中、野乃はな(29)、輝木ほまれ(29)、愛崎えみる(26)の3人は、緊迫した表情で車を走らせていた。
えみる「10時を回りました……! 予言の時刻まで、もうほとんど時間がありません!」
運転席でハンドルを強く握りしめるほまれが、バックミラー越しに後方の市街地を一瞥する。
ほまれ「えれなたちや政府の呼びかけを聞いて、直前で避難を決めた人たちがまだ後ろから続いてる。でも……まだ街に残っている人がいるはずだわ」
はな「急いで……! みんな、お願いだから早く街の外へ逃げて……!」
祈るように両手を合わせるはなの視線の先で、指定避難区域の境界線を示す標識が通過していく。10時10分、彼女たちの乗った車は無事に安全圏へと滑り込み、いち早く避難を完了させた。
しかし、安堵の息を漏らす暇すら、世界は彼女たちに与えなかった。
——午前10時14分。
ズズズ……と地底から響くような不気味な地鳴りと共に、はぐくみ市を臨む山頂が激しく吹き飛んだ。
ドォォォォンッ!!!!!
天を突く壮大な爆発音とともに、黒煙と赤黒い火柱が空高く立ち上る。一瞬にして日光が遮られ、昼間だった街は暗闇へと飲み込まれていった。
「ひ、噴火だぁぁぁっ!?」
「逃げろ! 早く逃げろ!!」
「嘘だろ、本当に噴火した……!? 予言は本当だったんだ!!」
「最初は残るつもりだった」と高をくくり、直前になって慌てて荷物をまとめて逃げ惑う人々で、道路は一瞬にしてパニックと大混乱に陥った。乗り捨てられた車、激しい塞ぎ合い、突き飛ばされる人々。混乱は焦燥を生み、焦燥は悲劇を加速させる。
そして、山頂から発生した猛烈な熱風と黒煙の塊——時速数百キロに及ぶ火砕流が、なだらかな斜面を駆け下り、逃げ遅れた街の一部を容赦なく飲み込んでいった。
あまりの衝撃と圧倒的な破壊力を前に、人間の一筋の抵抗すらあざ笑うかのように、灼熱の濁流がすべてを押し流していく。
同時刻、避難所・緊急報道モニター
安全圏へ逃げ延びたはなたちの目の前で、街の惨状がドローンの中継映像を通じて避難所の大型モニターに映し出されていた。
画面下部には、恐れていた通りの数字が血のような赤字で刻まれていく。
『はぐくみ市・火山噴火発生 被害状況:死亡91名』
91名。
あの日、政府の警告を笑い飛ばし、あるいは避難を躊躇して街にとどまった人々の数と、寸分違わず一致していた。
ほまれ「そんな……直前に避難を変更した人たちだってたくさんいたのに……どうして……」
えみる「確率や統計の問題ではありません……。100年前の数字通りに、結果が寸分狂わず固定されているのです……!」
はなは言葉を失い、ただただ黒く染まっていく故郷の空を蒼白な顔で見つめていた。
4月29日の墜落事故、そして5月5日の噴火事故。
どんなに人間が抗おうと、国が動き、人々が逃げ惑おうと——100年前の紙に刻まれた冷酷な「確定した運命」は、何一つ変わることなく現実となって突きつけられていた…。
2026年5月5日・夜、星奈家・ひかるの部屋。
暗闇に包まれた部屋の中、テレビの液晶画面だけが青白くひかるの顔を照らしていた。
画面には、昼間に起きたはぐくみ市の火山噴火の惨状が繰り返し映し出されている。煙を上げる黒焦げの街並み。混乱する避難所の映像。そして、画面右上に固定された無機質で凄惨なテロップ——『死亡者数:91名(確定)』。
国が動き、早期避難指示が出され、大勢の人々が街を脱出したはずだった。それでも、最終的な犠牲者の数は、100年前の紙に記されていた数字と「91」という極限の精度で寸分違わず一致してしまった。
ひかる「なんで……どうしてなの……っ!?」
ひかるは両手で頭を抱え込み、必死に伸ばした爪で己の髪を激しくかきむしった。
ひかる「国も動いてくれた……! みんな必死で呼びかけたのに……! なんで一人も……一人も救えないの……っ!? 一人も減らせないなんて……そんなの……そんなのあんまりだよぉぉっ!!」
喉を焼き切るような悲痛な叫びが、静まり返った部屋に虚しく響き渡る。
手元に置かれた古いノート。そこには、過去の悲劇から今日のはぐくみ市の噴火に至るまで、何一つ狂うことなく実現してしまった冷酷な予言の記録が並んでいる。
「誰も死なない未来にする」——そう誓って警察へ駆け込み、証拠を提出し、必死に抗ってきた。しかし、人間がどんなに知恵を絞り、国規模で対策を打とうとも、100年前に定められた『確定した決定事項』という巨大な世界の歯車の前には、残念なことにすべての努力が塵のように押し潰されてしまう…。
ひかる「うあぁぁぁぁっ……! ああぁぁっ……!」
ボロボロと溢れ出す涙が、ノートの紙面にポタリと落ちて黒いインクを滲ませていく。
抗うことすら許されない絶対的な運命の前に、ひかるの心は深い絶望へと完全に打ち砕かれていた。
同時刻、星奈家・玄関先
暗い部屋の中に響き渡るひかるの泣き叫ぶ声と、テレビから流れる凄惨なニュース。その圧倒的な絶望感に耐えきれなくなったあかりは、震える手でドアノブを回した。
あかり「嘘でしょ……。」
あかりは小さく呟くと、外の空気を吸って少しでも気持ちをリフレッシュしようと、静かに家を抜け出した。
夜の冷たい風が頬を撫でる。しかし、胸のつかえが下りることはなかった。
その時だった。
しんと静まり返った夜の路上に、エンジン音も立てずに一晴の「謎の車」がゆっくりと滑り込んできた。ヘッドライトの光が、あかりの足元を白く照らし出す。
車が停止した瞬間、あかりの頭の中に直接、あの不気味な声が響き始めた。
かつてりあるが体験し、苦しめられたというあの音波のような囁き声——。
『20261203261200101103819……』
あかり「な、なに……!? 頭の中に……数字が……!?」
頭を抱えてしゃがみ込みそうになったあかりの前に、すっと人影が降り立つ。
それは、2026年4月の開校100周年記念式典の日、混乱の中で確かに目撃したレインボー星人のような謎の女性だった。
謎の女性は、感情の読み取れない静かな瞳であかりを見下ろすと、頭の中に直接響くような通る声で静かに語りかけた。
謎の女性「今、あなたが聞いているのは災害の予言と記録。1年先、10年先、100年先、200年先、500年先、1000年先までずっと、この予言は続くの」
あかり「え……? 1000年先まで……!?」
絶句するあかりに向かって、女性はそっと手を差し出した。その手のひらには、小さく鈍い光を放つ、一つの小石のような物体が乗せられていた。
女性はそれをあかりの手の上に滑らせると、吸い込まれるように闇の中へと消えていった。
手のひらに残された小石の冷たさと、頭の中に鳴り止まない遥かな未来の数字の列。あかりは息を呑んだまま、夜の闇の中に佇んでいた。
2026年5月5日・深夜、ひかるの部屋。
暗く静まり返った部屋。ベッドの上で身体を丸め、深い絶望の淵に沈んでいたひかるの元へ、あかりがゆっくりと歩み寄る。
先ほど手渡された冷たい小石の感触と、耳の奥に残る終わりのない数字の囁き。あかりは小さく震える声で、横たわる母の背中に言葉をかけた。
あかり「お母さん……この予言に終わりってないのかな……?」
ひかるはピクリと肩を揺らしたが、顔を上げることができない。あかりは絶望に押し潰されそうな胸を押さえながら、重く暗い疑念を言葉にした。
あかり「もし……この無限に続く予言の中に……『EE』が何個もあったとしたら……私たち、どうなっちゃうの……?」
その問いかけは、夜の闇の中に虚しく吸い込まれていく。
1000年先まで続くという惨劇の記録、そして町ひとつを呑み込む『EVERYONE ELSE』の絶望。止まることのない運命のカウントダウンを前に、二人はただ沈黙する夜の中に取り残されていた。
〇 星奈家・リビング(2026年5月6日・朝)
朝の光が差し込むリビング。しかし、部屋の中を満たす空気はどこまでも冷たく、重苦しかった。
昨日のはぐくみ市での凄惨な火山噴火の余波が日本中を揺らし続ける中、壁にかけられたカレンダーの数字が虚しく「5月6日」を示している。
ひかるは蒼白な顔のまま、テーブルの上に広げられたノートのページを食い入るように見つめていた。
そこに刻まれているのは、冷酷な次なるカウントダウン。
『20260521……』
5月21日——あと二週間余りに迫ったその日付の横には、線路の座標とともにあまりにも凄惨な記述が残されていた。
「新幹線衝突事故」
4月29日の航空機墜落事故、そして5月5日の火山噴火。100年前の紙に記された予言は、寸分の狂いもなく現実となり、尊い命を奪い続けてきた。
えれな「あと……二週間しかないなんて……」
まどか「政府も警察も警戒を強めていますが……あの運命の精度を考えると、ただ運行を止めれば済むという単純な問題ではないのかもしれません……」
まどかの声には、隠しきれない焦燥と恐怖が滲んでいた。
あかりは自分のポケットの中でひんやりと冷たい「小石のような物体」をそっと握りしめる。昨夜、謎の女性から囁かれた「1000年先まで続く」という言葉が、呪いのように脳裏に焼き付いて離れない。
どんなに逃げようとしても、どんなに防ごうとしても、日付が満ちれば惨劇は訪れてしまう。
止まることのない運命の歯車が、次なる悲劇の日——5月21日に向けて、静かに、そして着実に刻まれていた。
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