N3x7 D15a5732   作:vic.

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【注意!!】
ここから先は残酷な記事の内容が描写されます。あまりにも残虐な死亡シーンはR-15指定になるきっかけになるため描写するつもりはありませんが、内容がショッキングであるため、このような描写が苦手な方は閲覧をご遠慮ください!


第-2話「P235um3d D34d」(残酷な記事の内容注意!)

シンガポール・高級ホテル 自室(事故発生から3時間後)。

 

大惨事となった爆発現場から警察の誘導と手配により無事に保護され、アリスたちが宿泊先のホテルに帰り着いた時には、事故からすでに3時間が経過していた。

 

ホテルの自室の重いドアを閉めると、激しいスコールと煙の匂いが混ざり合う外の喧騒が瞬時に遮断され、静寂が部屋を満たした。

 

アリスは静かな手つきで、雨と煙に濡れたレインコートのジッパーを下ろし、ゆっくりと脱ぎ捨てる。

 

——ふわり。

 

レインコートのフードに押し込められていた鮮やかなホットピンクのロングヘアが、縛りから解放された瞬間に解け、彼女の腰元へと優しくこぼれ落ちた。

 

湿り気を帯びたピンクの髪が、室内の照明を浴びてしっとりとした神秘的な光を放つ。

 

アリスは深く息を吐き出すと、点けっぱなしになっていた壁掛けの大型テレビへ視線を向けた。画面には、先ほどアリスが目の当たりにしたあの爆発現場の映像が、痛々しく映し出されていた。

 

画面下部には、英語で速報のテロップが流れている。

 

『SPF presumed dead at 95 by explosion of ESCAPE studio 312, reasons would be gas failure』

 

(和訳:ESCAPEスタジオ312の爆発により、シンガポール警察部隊[SPF]の死者は95人に上ると推定。原因はガス漏れとみられる)

 

暗く重い報道スタジオから、ニュースキャスターの緊張した真迫の声が響き渡る。

 

ニュースキャスター(英語音声)

『……We have breaking news on the explosion at ESCAPE studio 312. Officials now report that the toll for Singapore Police Force personnel is presumed dead at 95. Preliminary investigations suggest the cause may have been a catastrophic gas failure. Rescue operations are still underway……』

 

(ニュースキャスター和訳:……ESCAPEスタジオ312での爆発事故についてニュース速報をお伝えします。当局の発表によると、現場で巻き込まれたシンガポール警察部隊の推定死亡者数は95人に達しました。初期の調査では、大規模なガス漏れが原因の可能性があるとされています。現在も救助活動が続けられており……)

 

「95人……」

 

アリスは自室の鏡に映る自分を見つめた。

雨に濡れ、腰まで垂れ落ちたホットピンクの髪と、深い悲しみと怒りを宿した同じ色の瞳。

 

さっきまで目の前で話し、アリスを危険から遠ざけようとしてくれたあの警察官たち。

「軽傷だ」と言っていた直後、95人の命が一瞬にしてガス爆発という理不尽な惨劇に呑み込まれてしまった。

 

(また……目の前で命が消えた。私がどんなに知識を蓄えても、世界のシステムが刻む死のカウントダウンは……こんなにも唐突で、冷酷に命を奪っていく……)

 

アリスは固く拳を握りしめた。

 

2021年の自分の死。

dreamの中で見せつけられた『20210522EE』。

そして、この異国の地で起きた95人の死。

 

アリス「(だけど……私は折れない。こんな理不尽な死が当たり前に繰り返される世界なんて、絶対に認めない。私は高専で圧倒的な知識と技術を手に入れて……必ず、この惨劇の連鎖を断ち切ってみせる……!)」

 

冷たく濡れた髪を手ぐしでかきあげながら、花寺アリスは遠い異国の空の下、消えていった95の命と自らの魂に、より一層深く静かな誓いを立てるのだった。

2022年、すこやか市 カフェ。

 

高専に入学してから3年の月日が流れ、アリスは5年生となった。

 

高度な医療知識と生体工学の知識を身につけ、今や校内でも異彩を放つ存在となったアリス。そんな彼女の前に、ついにその時が訪れる。

 

かつて一緒に戦った大切な仲間たち——沢泉ちゆ、平光ひなた、風風鈴アスミ、そして、この時代を生きる「花寺のどか」。

 

5人が一堂に会した静かなリビングで、アリスは腰まで届く美しいホットピンクのロングヘアを揺らし、真実を静かに打ち明けた。自身が「2021年に命を落とし、2003年に記憶を持って転生した『花寺のどか』の生まれ変わり」であるという、あまりにも壮大な真実を。

 

ひなた「ええぇぇ!? のどかっちが……!? 転生……!? ってことは、目の前にのどかっちがふたりいるってことぉ!?」

 

目を丸くして大声を上げるひなた。ちゆも絶句し、アスミも深く息を呑んでアリスと現在のどかを交互に見つめている。

 

のどか「うん……本当なんだよ、ひなたちゃん。アリスちゃんはね、私たちが知らない未来や世界の悲劇を……全部知ってて、ずっとひとりで戦ってくれてたの」

 

ちゆ「そんな……2021年にあなたが……」

 

静まり返るリビング。しかし、その重苦しい空気を切り裂くように、点いていたテレビから速報のチャイム音が響き渡った。

 

『速報です。本日未明、山口県の総合病院でショッキングな重大事故が発生しました——』

 

画面に映し出されたのは、警察の規制線が張られた病院の痛々しい映像と、衝撃的なニュースのテロップだった。

 

ネットのニュース記事を見つめていたひなたが、スマートフォンの画面を握りしめたままガタガタと震え出す。

 

ひなた「な、なにこれ……嘘でしょ……!?」

 

画面には、戦慄すべき事故の詳細が刻まれていた。

 

【山口県の病院のMRIで男性1人が圧死し、2人の男性が自動販売機のバネで頭部を貫かれ、計3人が死亡した。山口県警察はバネで頭を貫かれた事故はMRI装置の誤作動に関係しているとみている】

 

ニュースのキャスターが、重く切迫した声で原稿を読み上げる。

 

ニュースキャスター

『……現場の捜査関係者によりますと、MRI室にて強力な磁力等による影響とみられる重大な機器トラブルが発生。検査を受けていた男性1人が機器に挟まれ圧死したほか、近くに設置されていた自動販売機の内部パーツである金属製バネが跳ね飛び、男性2人の頭部を貫通。計3人が死亡した模様です。警察は事故と誤作動の因果関係を詳しく調べています……』

 

ちゆ「MRIの磁力で……自動販売機のバネが……!? そんなことって……!」

 

アスミ「なんという理不尽な……命が、こんなにも凄惨な形で奪われるなんて……」

 

あり得ないような奇怪で悲惨な事故の報道に、4人は言葉を失い、恐怖で顔を蒼白にさせた。

 

だが、アリスだけは冷や汗を流しながらも、そのホットピンクの瞳を鋭く光らせていた。

 

アリス「(MRIの強力な磁力事故……そして、予測不能な形で引き起こされた凄惨な連鎖死……。これもまた、あの冷酷なシステムが引き起こした『死のプログラム』の一部……!?)」

 

知識を積み重ね、どれほど医学の真理に近づこうとも、世界のあちこちで唐突に牙をむく不条理な破滅のシナリオ。

 

アリスは震えるのどかの手を力強く握りしめると、画面を見つめたまま静かに、しかし決意に満ちた声で呟いた。

 

アリス「みんな、怯えないで。世界がどんなに奇怪で理不尽な悲劇を突きつけてこようと……私はこの知識と命をかけて、これ以上の惨劇を絶対に止めさせてみせるから」

 

高専5年生となった花寺アリス。

世界の理不尽な構造そのものと戦う彼女の決意は、迫りくる絶望の影を前に、より一層強く、気高く燃え上がるのだった。

 

騒然とするカフェの店内。大型テレビの画面には「専門家による事故原因の初期解析」というテロップが表示され、分析を担当した工学・医療機器の専門家が厳しい表情で解説を始めていた。

 

アナウンサー「今回の山口県の病院で起きた未曾有の事故について、現場の状況証拠から衝撃的な要因が浮かび上がってきました。専門家の解説です」

 

画面がスタジオの専門家へと切り替わる。専門家は手元のフリップや精密な3Dグラフィックを指し示しながら、淡々と、しかし恐ろしい事実を語り始めた。

 

専門家「まず、事故の起点となったのは極めて偶発的かつ不可解な物理現象です。7階のMRI室において、室内のドアが閉まった際の強烈な振動と衝撃により、机の上に置かれていた筆箱が倒れ、あいにくキーボードの上に落下しました。その弾みで『Enter』キーが押され、システムの緊急照射・磁場固定プログラムが誤作動を起こしてしまったと考えられます」

 

ちゆ「筆箱が落ちて『Enter』キーが……!? そんな偶然の重なりで、医療機器の安全装置が解除されるなんて……!」

 

ちゆが息をのむ中、専門家の解説はさらに熱を帯びていく。

 

専門家「そしてキーが押されてからおよそ10分後、装置は通常ではあり得ない『8.5テスラ』という超高強度の磁力を発生させました。この凄まじい磁場によって、7階の廊下にいた車椅子の男性が強烈な磁力で吸い寄せられる形となり、その結果として車椅子のフレーム構造に挟まれる圧迫事故が発生したとみられます」

 

ひなたは顔を覆い、言葉を失っていた。病院という最も安全であるはずの場所で起きた、悪夢のような連鎖。

 

専門家「さらに異常だったのは、磁場がMRI室内にとどまらず、8.5テスラという破格の出力によって『7階フロア全体』にまで伝播・行き渡ってしまった点です。これにより、同じフロアの廊下に設置されていた自動販売機内部の金属製大型バネが磁界の急激な変動を受けて異常な反発を起こし、弾き出されたバネが近くにいた男性2人を巻き込む致死事故に繋がった……これが現時点で考えられる最も有力なメカニズムです」

 

画面に映し出される、複雑な磁界のシミュレーション映像。

本来ならば厳重な遮蔽(シールド)によって制御されているはずの磁力が、まるで意志を持った暴走のようにフロア全体を壊滅させたというのだ。

 

のどか「そんな……確率的にもあり得ないような事故が、どうして……」

 

アスミ「はい……。まるで、何者かがその時間にその場所で惨劇が起きるよう、物理法則そのものを無理やり歪めたかのようです」

 

4人がその異常すぎる事故原因に絶句し、背筋を凍らせる中、アリスだけは鋭い眼光をテレビ画面から逸らさなかった。

 

(ドアの衝撃……筆箱の落下……8.5テスラの磁力伝播……)

 

アリスの頭脳の中で、高度な物理学と生体工学の知識が目まぐるしく回転する。

 

(単なる機器の故障や偶然の事故じゃない。世界のシステムが『3人の死』という結果を導き出すために、あまりにも強引な『運命のピタゴラスイッチ』を成立させたんだ……!)

 

ロンドンのタワー火災、シンガポールの爆発、そしてこのMRI室での惨劇。

全てはあらかじめ組み込まれた破滅のプログラムであり、システムは人間には到底予測できない不自然な連鎖を使ってまで、命を奪いに来ている。

 

「……でも」

 

アリスは静かに立ち上がると、ホットピンクのロングヘアを揺らし、深く澄んだ瞳で仲間たちを見つめた。

 

アリス「どんなに冷酷で、どんなに巧妙な破滅のロジックだろうと……解き明かせない構造(システム)なんて絶対に存在しない。私が高専で学んできたのは、まさにこの理不尽な計算を上回るための知性なの」

 

19歳となり、高専の最上級生として圧倒的な知識を備えたアリス。

彼女の胸に宿る「命を救う」という意志は、世界の歪んだシステムが突きつけてくるどんな恐怖をも凌駕し、より一層苛烈に燃え上がっていく。

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