大型バスが排気音を低く響かせ、静まり返ったスーパーの広大な駐車場へ滑り込んでいく。
それを山の中腹で、鬱蒼と茂る木々の隙間に身を潜めた数人の人影が気配を消して見ていた。
そこは枝葉で丁寧に偽装された、急造の簡易監視所だった。
地面には視線を低く保つため、腹ばいになれるだけの窪みが執念深く掘られており、迷彩色に汚れた厚手の布が周囲へ被せられている。遠目から見れば、そこに生身の人間が潜んでいるとは到底分からないほど徹底して隠蔽されていた。
女性は泥のついた肘を地面へつき、使い古された双眼鏡をゆっくりと構えた。
その隣では、かつて水族館で関口たちと対峙したあの男も、同じように目を血走らせてレンズを覗き込んでいる。
誰も声を出し合わない。鳥の声すら途絶えた山中で、ただじっとりと湿った視線だけが眼下の町へと一方的に注がれていた。
やがて、遠くで大型バスの扉がプシューと開く。
最初にそこから降りてきたのは、あの日水族館で自分たちの暮らしへの誘いを一切迷わず冷淡に断った男だった。
そのすぐ後ろ。もう一人の青年が眩しそうに朝の光を浴びながら、軽く伸びをして地面へ降り立つ。
「あいつら……」
男が歯の隙間から、思わず呪詛のように呟いた。特に男を憎々しげに凝視する。
女性はそれに返事をしないが、双眼鏡を握る細い指先にだけ僅かに強く力がこもる。
さらに、青年に続いてバスの暗闇から現れたのは衣服を端正に整えたゾンビたちだった。
執事。
メイド。
アロハシャツを着た老人。
そして、あの犬。
男は狂暴な目のまま、眉をひそめる。
「……なんで襲われないんだ」
水族館で遭遇した時も、一匹のゾンビ犬を連れているその光景は十分に異常だった。
だがあの時はまだ、飢えた獣を何らかの方法で飼い慣らすことが出来た生存者の奇策として無理矢理にでも脳内で処理できた。
しかし、今回は明らかに決定的な何かが違っていた。
執事の格好をしたゾンビが、ごく自然に青年と男の後ろへと付き従う。メイド服を着たゾンビたちは手際よく大きな収納ケースを運び始め、老人ゾンビは腕にワインを抱えたまま、静かに人間に歩調を合わせていた。
その奇妙な従者たちの誰一人として、目の前の生身の人間へ牙を向けようとはしない。
女性は黙ったまま、双眼鏡の倍率をリングを回して少しだけ上げた。
店舗の狭い入口。
色褪せたエプロンを着た店員ゾンビが、青年の姿を見つけてぎこちなく近付いていく。
その瞬間だけ、山肌に伏せる男の身体へ強烈な緊張が走った。
(来る。今度こそ食い殺される)
だが男の予想は外れ、店員ゾンビは青年たちへ襲い掛かるどころか、錆びついたレールの重そうな引き戸に身体全体を預け彼らの進路を開けるようにガシャリと押し開けた。そして用が済むと、何事もなかったかのように自分の持ち場である缶詰の棚へと戻っていく。
男は、双眼鏡に押し付けた目を見開いた。
「っ……」
あまりの理解不能な光景に、喉が引き攣って言葉が出ない。
思わず真横の女性の様子を確認した。
彼女は微動だにしない。
二人がそのまま、吸い込まれるように店内へ消えていく。
女性はなおも、双眼鏡を顔から下ろさなかった。
店舗の大きなガラス越しに見る青年は、高い棚の間をまるでただの観光客のように歩く。その後ろを、周囲の死角をカバーするように自然な歩調で歩くあの男。
さらにその後方には、いつでも物資を受け取れるよう、執事ゾンビが大きなカゴを抱えて控えている。
しばらくすると、大きな買い物カートが文字通り商品で埋まり始め、山を成していった。
缶詰。
乾麺。
箱単位の物資。
業務用の巨大な調味料。
:
:
そして、潤沢な生活用品。
積まれる。
積まれる。
まだ、限界を知らないかのように積まれていく。
男が嫉妬と羨望の混じった顔で、乾いた唇を小さく舐めた。
「あれ全部……」
女性はそれでも答えない。
大型バス一台という、圧倒的な積載量。自分たちがこの一年近く飢えに震えながら町中を血眼になって探し回っても、決して集められなかった量の物資が、レンズの向こうでは当然の権利であるかのようにみるみるうちに集まっていくのだ。さも簡単そうに。
無意識に食いしばった唇が切れたのか、血の味がした。
やがて、作業台のある入口付近。
通路の陰から、さらに数体の店員ゾンビたちがふらふらと集まり始めた。
別の男の喉が、引き攣ったように小さく鳴る。
「今度は何だ。今度こそ襲うのか……」
だが、集まった店員ゾンビたちは机の上の大きな買い物袋をガサガサと広げると、生前と全く変わらない迷いのない手つきで手際よく袋詰めを始めた。
青年が、それに対して自然に頭を下げる。
男達は、完全に息を呑んだ。
「あり得ない……」
「……嘘だろ」
ゾンビが。
人間に。
襲い掛かるどころか、むしろその行動を自発的に手助けしているなんて。
その横では、あの男までが自然に袋詰めの作業へ加わっていた。
誰一人として命令しているようには見えない。それなのに、あの空間にいる全員が、そうするのが世界の法則であるかのように当然のように動いている。
女性は、しばらくして双眼鏡をゆっくりと顔から下ろした。
「……思っていた以上」
血の気の失せた唇から、それだけを静かに呟く。
男も、もう彼女の言葉を否定することはできなかった。
大型バスへの積み込みが始まる。
執事ゾンビが重い袋を軽々と抱え、メイドゾンビたちが手際よく荷台へ並べていく。その傍らで、青年は時折笑いながら何かを話し、隣の男は短く返事をする。その距離は近すぎず、遠すぎず、互いに気を遣わない自然さがあった。
女性は双眼鏡を構え直した。今度は山のような物資やゾンビたちではなく、人間二人だけを注意深くレンズに収める。
青年が重そうな荷物を持とうとすると、男が何も言わず横からそれを受け取る。青年は拒むことなく素直に手を離し、そのまま何事もなかったように次の袋へ向かう。少しして青年が立ち止まり何かを話しかけると、男は一度だけ振り返り短く返事をする。
青年は笑うが、男は笑わない。それでも、その場から決して離れようとはしなかった。
女性は小さく、乾いた息を吐いた。
(近い)
男女でもない。友人とも少し違う。かと言って命令で縛られた上下関係でもない。それなのに、互いが互いをあまりにも自然に補い合っている。その不可思議な距離感だけは、一時間近く見続けても寸分の狂いもなく変わらなかった。
(相棒…。いえ、違う……、)
やがて、袋詰めされたすべての物資が収まった。
青年が大型バスの乗降口へと乗り込む。男は最後まで周囲を警戒していた。
その鋭い視線が、一瞬だけこちらの山へと向けられる。
女性は反射的に身体を低く伏せた。
隣の男も同時に泥だらけの地面へ張り付く。
数秒、風だけが木々を揺らし擦れる葉の音だけが周囲を満たす。
女性は息を殺したまま、ゆっくりと再び双眼鏡を持ち上げた。
男はまだ山の方を見ている。
(……気付いた?)
いや、違う。女性はその男の視線の先を慎重に追った。
男の目は山肌そのものではなく、自分の足元を捉えている。
そこにいたのは、ゾンビ犬だった。黒ずんだ毛並みのゾンビ犬が、こちらを真っ直ぐ見上げていた。
耳を立て、身体を低くし、喉を低く鳴らして唸っている。
「……っ」
女性は思わず息を止めた。これだけの距離がある。風向きも、こちらが完全に有利なはずだ。それでも、あの犬だけは、最初からこちらの存在をすべて知っていたかのようだった。
その直後、荷台の前にいた執事ゾンビ。運転席のゾンビ。そして、ワインを抱えたまま佇んでいたアロハシャツの老人ゾンビ。三体ともが、ほんの一瞬だけ、明確に動きを止めた。
男と犬以外は誰も山を見ない。ゾンビたちの誰一人として、こちらへ視線すら向けない。けれど、レンズの向こうのゾンビたちは、確かにその山にいる私たちの存在を一瞬で完全に共有していたように見えた。
男も犬の異変から何かを感じ取ったらしい。山を見上げたまま、小さく口を動かした。
女性の距離からは、その唇の動きからなんと言ったのかまではわからない。だが、確実にこちらに気づいている。
女性は、自らの内に生じたその不気味な直感を信じた。
「……共有してる」
(……でも、どうやって)
双眼鏡を強く握り締める。
口を動かしてない。
合図もない。
視線すら交わしてない。
だが駐車場を満たす空気だけが、ぴんと、肌が痛むほどに張り詰めていることが伺えた。
膠着状態に陥り、別の男が声を出そうとするその直前だった。
青年が大型バスのステップからひょっこりと顔を出す。何かを尋ねているようで、男は短く答えた。青年は素直に頷き再び車内へ戻る。その様子を見届けると、張り詰めた空気を霧散させた男もバスへ乗り込んだ。
重々しい扉が閉まり、低いエンジン音が山間に響く。
大型バスはゆっくりと発進し、その後ろを黒いヴィンテージカーが静かに続いた。
二台は町を離れ、やがて木々の向こうへ完全に消えていった。
……誰も口を開かなかった。
完全にエンジン音が聞こえなくなってから、女性はようやく双眼鏡を下ろした。
「戻ろう」
短い一言。それだけで、背後に潜んでいた全員が音もなく動き始める。
落ち葉を乱さぬよう足跡を消し、監視場所を元の自然な茂みへと戻しながら彼らは山中の簡易キャンプへ向かって歩き出した。
女性は静かに歩みを進めながら、頭の中だけで先ほどの事実を並べていた。
推測や感情は、すべて排除する。ただ、見た事実と直感だけを、脳のノートへ箇条書きにするように整理していく。
生き残っている奇妙な二人組。
機能している大型バス。
山のように積まれた大量の物資。
野生を失わないゾンビ犬。
そして――世界を滅ぼした怪物であるはずのゾンビまでもがあの二人に従っていた。
推測は、まだしない。まずは、この圧倒的な事実だけを拠点へ持ち帰る。そこからすべてを組み立てればいい。
*
山を下る途中、誰も口を開かなかった。
足音は意図的に殺され、湿った落ち葉が踏まれるかすかな音だけが断続的に響く。
簡易テントのある臨時拠点へ戻ると、内部はすでに静かな緊張で満たされていた。
ここでは、炊事でも一切火は焚かれない。火を焚けば煙が出る。煙の存在は自分たちの位置を周囲に“知らせる”リスクにしかならない。それを避けるため、監視要員に選ばれた彼らは冬でもいつもこの冷え切った空気の中にいる。
女性がテントに入ると、中に残っていた数人が即座にその鋭い視線を向けた。だが、彼らはただの状況の報告を待っているのではない。この過酷な世界を生き抜くための、次なる“結論”を待っているのだ。
このグループのリーダーたる女性は置かれた椅子に座ろうともせず、地面に広げられた地図の上へ泥を気にせず膝をついた。そして、感情を交えない平坦な声音で淡々と口を開く。
「水族館で接触した二人」
それだけで、周囲の重苦しい空気がわずかに動く。
「新たな追加人員なし」
その瞬間、静まり返っていたテントの中に明確なざわめきが走った。
「……ゾンビ犬は?」
「間違いないのか」
「本当に二人だけなのか」
矢継ぎ早に質問が重なる。だが女性はそれを片手で静かに制した。
「確認した」
「人間は二人だけ」
また口を開こうとした誰かを制して、女性は報告を続けた。
「大型バス」
男の一人が、何かを耐えるように小さく息を吐いた。
「大量の物資、積載あり」
別の誰かが、小さく喉を鳴らして短く反応する。
女性は視線を地図に落としたまま、さらに言葉を続けた。
「ゾンビ犬」
一瞬だけ、テント内の空気が完全に凝固する。
「ゾンビも従っていた」
「…いえ、違う。従属じゃない」
そこに至ってようやく、耐えかねたように誰かが小さく声を漏らした。
「……それは、何らかの方法で従えさせることが出来るということか」
女性は静かに首を横に振る。
「違う」
「命令でも、恐怖による統率でもない」
少し間を置いてから、その異様な光景を脳内で咀嚼し、言葉を選ぶようにして続ける。
「……自然だった」
その場にいる誰もが、すぐにはその意味を理解できない。だが、その“理解できなさ”自体が、自分たちの生存を脅かす最大の危険であることだけは、全員が本能で分かっていた。
ここでようやく、全員の曇った瞳が、明確な“意味”を持ち始める。
彼らは“すでに一度接触し、そして自分たちの誘いを拒絶した存在”だということ。
女性はさらに言葉を重ねる。
「そして重要なのは、そこじゃない」
地図の上にぽつんと置かれた彼女の指が、あの廃水族館の位置から今自分たちがいる現在地へと、這うようにして直線を引いた。
「彼らは移動している」
「しかも……そのルートは規則的ではない」
「物資の補給を最優先にしながら、自らの生活圏を完全に維持している」
信じられないといった様子で、一人の男が呟く。
「……生存者たちの旅団か」
「違う」
女性は、その推測を即座に否定した。
「旅団なら、生き残るために互いが必要となって“群れ”になる。でも、あれは……」
言いかけて、一度だけ言葉を止める。そして、迷いのない目で確信を口にした。
「“中心”がある」
テントの中が、再び水を打ったように静まり返る。誰もその“中心”が何を意味するのか、恐ろしくて言葉にできない。
すると、一番後方の暗がりにいた若い男が口を開いた。
「リーダーはどちらだと?」
女性は少しだけ目を細めた。そして、ゆっくりと答える。
「まだ分からない」
「でも、どちらか一方だけが力を持っているわけではない」
その一言で、その場にいる者たちの認識が、また一段階大きくずれる。
「二人とも……ということか」
誰かがようやく、その信じがたい可能性を掠れた声で口にした。女性は頷かない。だが、否定もしない。それが、彼女の持ち帰った今現在の答えだった。
しばらく重苦しい沈黙が続いた後、最初に声を上げた男が再び口を開く。
「もう一度接触はするのか」
女性は即答する。
「必要」
「ただし、方法を間違えないように」
彼女の視線が、刃のように鋭くなる。
「物資は渡さない、こちらと交渉もしない男だ」
「しかもこちらは追跡してる」
「まずは“観察”」
その一切の妥協のない言葉に、全員がようやく納得の表情を浮かべる。極限状態のコミュニティを率いるリーダーとして、これ以上ないほどに合理的かつ仲間を守るための正しい判断だった。
だがその直後、女性は小さく、誰に言うでもなく言葉を付け加えた。
「ただし」
一瞬だけ、静かな間を置く。
「もし可能なら」
その声が、わずかに熱を帯びる。
「二人とも確保する」
テントの中の全員の動きが、一瞬だけ完全に静止した。
それは、飢えに狂った略奪者のような欲望でも、利己的な命令でもない。この世界で二十数人の仲間を死なせずに生かすために導き出された、もっと単純で、もっと切実な結論だった。
“そうした方が、私たちは確実に生き残れる”という、指導者としての絶対的な確信。
女性は静かに立ち上がる。
「追跡は継続」
「彼らの次の補給地点を予測して先回りする」
もう、誰も彼女の方針に反対する者はいなかった。この有能な女性リーダーの判断に従い、役割を全うすることこそが、今日まで自分たちが生き延びてこられた唯一の正解だからだ。
そして最後に、近くにいる者にも聞こえないほどの小さな声で、女性はぽつりと呟いた。
「……あれは人じゃない」
「でも、ゾンビでもない」
少しだけ、自嘲するように笑う。
「厄介ね」
テントの外では、冷たい山風が吹き抜けていた。
緑の木々の向こうへ、すでに去ってしまったあの大型バスの、消えかけたかすかな残響を必死に探すかのように。
しばらく、山風がテントの布をわずかに揺らし、その音だけが響くだけだった。
誰もすぐには動かなかった。
あの二人組を、今はまだ誰も正確には飲み込めていない。だが、理解できないという不気味な事実だけが、確かに全員の胸の奥深くへと冷たく沈んでいた。
やがて、最初にその沈黙を破って口を開いたのは、後方の暗がりにいた若い男だった。
「……拠点で待ってる人達、どうするんですか」
女性はすぐには答えなかった。テントの入口に視線を向けたまま、ほんの数秒だけ、深く思考を巡らせるように沈黙する。
外では、偽装用の枝葉が風に擦れ、カサカサと乾いた音を立てていた。
「まだ待機」
短く、それだけを告げた。
それだけで、この極限状態の集団にとっては十分すぎる命令だった。
テントの中の重苦しい空気が、再び“追跡続行”の意志へと一瞬で切り替わる。仮拠点の誰も異論を挟む者はいない。この二十数人のグループにおいて、彼女の言葉は理不尽な命令ではなく、生き残るために最も信じられる“確定した未来”そのものだった。
女性はゆっくりと地面から立ち上がり、泥のついた手で広げていた地図を丸める。
「次の補給地点をすべて洗い出して」
「あの二台の移動速度から見て、このまま都市部へ向かっている可能性が極めて高い」
「ルートは固定じゃない。だが……」
一瞬だけ、彼女の言葉が切れる。
「物資の補給を最優先している以上、彼らが必ず“選ぶ場所”があるはずよ」
彼女の無駄のない状況整理に、一人の男が小さく頷いた。
「スーパーか、それとも大型の倉庫か……」
「都市部の手前にある、大型の流通拠点ですね」
別の男が言葉を重ねるが、女性はそれに頷きも否定もしなかった。
ただ、静かに前を見据えて言う。
「どこでもいい」
「次も見る」
「三度見れば、癖が分かる」
そのギョロついた瞳は、もう恐怖や驚きといった感情ではなく、生存の確率を引き上げるための“確信の手前”だけを見つめていた。
理解できない異常な存在は、決して放置しない。必ず先回りし、何度も繰り返し観測して、その生態のすべてを暴き出す。それこそが、何の後ろ盾もないこの生身の人間たちが、今日まで死なずに生き残ってきた唯一の方法だった。
テントの外へと、一人、見張りの男が持ち場へ戻っていく。
生い茂る枝の隙間から遠くの幹線道路を見下ろしても、もうあの大型バスの影はどこにも残っていない。
だが、男は西日に染まる山並みを見つめたまま、無意識に欲望のまま呟いていた。
「……あれを持ってる集団が、生きる」
誰に向けたわけでもない、乾いた言葉。
それはすぐに、吹き抜ける冷たい山風に溶けて消えていった。
薄暗いテントの中では、女性が仲間たちを率いるために、静かに次の地図を広げていた。
栄養が足らずふらつきながらも、目まぐるしく頭を回転させる。
口元はやがて口角を上げてゆき、目は爛々と輝いていた。
(第32話・おわり)
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