絢爛!エルフィンドールズEXtension 【エルフの女王だった私がプロレスラーになるまで】 作:えびたこ
オルクセンがあればエルフィンドもある。
絢爛!エルフィンドールズの延長戦は、最終話に登場した二代目エルフィンドールズのストーリー。
なぜ、どうやって『彼女』がプロレスラーになったのか。なぜ『彼女』の横に彼女がいるのか。
そのために今回は『WEB版読了後推奨』とさせていただき、やりたい放題やらせて頂きます。
今回はイントロダクションとして前作最終回の続きをお贈り致します。
ここはファルマリア体育センター別館。
ファルマリアに新たに作られた新しい体育施設は大手食品会社の援助もあり、別館という言葉が似合わぬ程に立派で綺麗な建物であった。2階建てで、全ての照明がまばゆい最新型の電灯照明となっている。それに照らされているのは中央に置かれた白いマットのリング。その周りに並べられた簡易ベンチも、階段状になって全周を囲む2階席も超満員の客入りである。ついにオルクセン王国のプロレスはここまで来たのだ。
ファルマリア新国家記念祭のトリとなるイベントとして例年行われている『オルクセン女子プロレスVSエルフィンド国際プロレス』の対抗戦、今年は第4試合までで2対2の勝敗となっており、メインエベントであるレッドマスク&リア・エフィルディス組対エルフィンドールズの試合で決着をつける状態となっていた。
先にリングに登った海松(みる)色の半袖シャツに軍服ズボンと黒い編上げブーツ、紅い色眼鏡をかけ赤いハンカチで顔を覆った覆面レスラーのレッドマスクと、やや布面積が少ない赤い上下セパレートの衣装に赤い編上げブーツを履いたリア・エフィルディス大尉は西側控室の出口を見つめていた。今はエルフィンド国際プロレスの所属となったマリン・ファングとニコファングのふたりは元々オルクセン女子プロレスのメインエベンター。プロレスの強さ上手さはレッドマスクもリアも良く知っている。だがしかし……
「それでは西側より二代目エルフィンドールズの入場です」
リングアナウンサーを務める人間種の男、白い長袖シャツと黒いサスペンダーに黒ズボン、裸足に黒いローファーを履いて鉄製のメガホンを持ったジャン・ベルナールが叫んだ。
「二代目?」
「なにかな、二代目……」
観客たちも、リングの上にいるレッドマスクとリア大尉も二代目という言葉に首をひねった。
そして西側控室のドアに付けられた幕が開いた。現れたのは……
「少将、子供ですよ、子供!マリンとニコったらわたしの実力に怯えて子供と入れ替わったんですよ!」
「……まさか」
レッドマスクは全身に鳥肌が立ち、体が震え出した。
「タイショー!がんばえ~!!」
子供の歓声が響き渡った。その声の主はファルマリア孤児院の子供たち。横には司祭衣装のフードで顔を隠していた白エルフ、マリンとニコが座っていた。第二試合を盛り上げた麺社長ことゾフィー・スコヴァも黒い麺社長シャツを着てその横に座っていた。
「タイショーですって、子供のあだ名かしら、居酒屋の子かな?可愛いけど、怪我されたらどうしましょう」
「タイショー……違う、大将だ。大尉は知らないのか、あれはエルフィンド陸軍ダリエンド・マルリアン大将だ、あれはたしかにロザリンド渓谷会戦より遥か以前の生き物だ!!」
「そんな馬鹿なことが!どうみても子供ですよ、マルリアン大将が若く見える方とは聞いたコトがありますが、あれは三百歳を超えた美魔女とかそういう生き物ではなくただの子供ですよ!」
レッドマスクとリア大尉が話をしている間に件の二代目エルフィンドールズはリングの上に立っていた。
「エルフィンド国際プロレスからの新たなる刺客、二代目エルフィンドールズことダリエンド・マルリアン、そして覆面レスラー、エルフィンドXです!」
マリンとニコとの関係が深いジャンは今日ふたりが出ず、二代目エルフィンドールズが出るコトを知っていたようだ。名を呼ばれた二代目エルフィンドールズのふたりは観客に手を振ってアピールしている。
腰丈まである綺麗な金髪と、その後ろについている大きな白いリボン、そして澄んだ碧眼。まるで十二歳程にしか見えない……しかし、その姿はエルフィンド陸軍の野戦指揮官教程の最終日、山みっつを超えたゴールの後に、悪天候による疲労と飢えで50kgを越えた背嚢の重さに地に崩れたディネルースの頭を踏み、泥水を啜らせたダリエンド・マルリアン大将そのものなのである。そのマルリアンが白いセパレートにフリルのついた衣装と白い編上げブーツを着けて立っていたのだ。
そしてその後ろには、白地に金色のステッチが入った、口元が開き、エルフ特有の長い耳が出た綺麗な仕立てのマスクを被った覆面レスラーがいた。こちらは白のワンピース衣装に白い編上げブーツを着けている。マルリアンと同じように腰近くまである金髪と澄んだ碧眼で、体はかなり鍛えられているがレッドマスクには若干の幼さも感じられた。いや、なんとなくどこかで……そうレッドマスクが思った瞬間、館内にマルリアンの叫びが轟いた!
「お前、ディネルース少将だろう!ファンもそう思ってるぞ!!マスクを取れ!!!」
マルリアンがレッドマスクを指さして叫んだ!オルクセン国王グスタフ・ファルケンハインが記名入りの箝口令を掲げさせてから幾歳月、レッドマスクの正体がアンファングリア旅団とオルクセン女子プロレスを率いるディネルース・アンダリエル少将なのは公然の秘密ではあり、面と向かって言う人間はいなかった。いや、プロレス的にもブック破り以上のご法度のハズなのだ。
なにより北側二階の貴賓席にいた我が王グスタフその人が、顎がテーブルに着くほどに驚いていた。
だが、次にディネルースがとった行動は誰もが思わぬものであった。
「何故わたしが、貴方に言われるままにマスクを脱がなくちゃいけないんだ」
と言いながらもレッドマスクはいつもの紅い色眼鏡を外し、赤いマスクを口元から外した。
「そ、その顔は!」
マルリアンが驚く。いやリア大尉すら驚いていた。
マスクを剥いだディネルースの顔にはダークエルフ特有の白い戦化粧が施されていたのである!
「わたしの正体はディネルースなどではない。グレート・ディネとでも呼んでもらおう!」
館内の客が大いに沸いた。皆、レッドマスクの正体がディネルースなのは知っていたが、ここで一段、素肌にマスク(戦化粧)を描いていたとは!まさかの二段変身である!
「うおお、さすが少将、そこにシビれる!あこがれるぅ~!」
観客のボルテージも上がりまくる。皆が笑顔で叫んだり、腕を挙げたりしていた。
そしてその様子をリングの上で見ていたエルフィンドXはマスクの穴から覗く碧眼から、一筋の涙を流してこう思っていた。
「やはりプロレスの世界に入って良かった。皆が笑顔でいられる『世界で一番平和な瞬間』の場所……あの日、ここに立とうと思って頑張って来て良かった。アルマ、ありがとう、私は、私のしたいコトを今、存分に楽しんでいる……」
リング下で写真機を構えていたキャメロット連合王国のスポーツ新聞記者、アリーナ・アトキンスはその涙の笑顔を写真に収めたが、その写真を新聞に載せるコトも社の誰に見せるコトも無かった。それは彼女の親友の涙だったのだから。
ここから始まる物語は過去にエレンミア・アグラレスを名乗りエルフィンド王国の女王をしていた、今は市井の女性『クララ・フリース』がエルフィンド国際プロレスの覆面レスラーであるエルフィンドXに、女子プロレスラーになるまでの物語である……
~ つ づ く ~
こんな感じで始まりましたが、本編は多分しばらくプロレスの試合は出ません。
今後は可愛い女子たちの日常系ほのぼのストーリーが続くハズだと思います。
前作をお読みでない方も楽しめるように書きたいとは思いますが
お暇があれば「絢爛!エルフィンドールズ」もよろしくお願いします。
それでは次回「私のクーデター」何卒よろしくお願い申し上げます!