Side ハジメ
(ここは…?生きてる?それとももう死んだかな…僕。何で僕がこんな目に合わなきゃいけないんだ…!帰りたい!故郷に…家に帰りたい…!)
「う⋯ん…?ここは…?」
ハジメは洞窟のような場所で目を覚ます。
「気が付いたようだね。我が魔王」
「…ウォズ⋯さん?」
気が付くと目の前にはウォズがいた。
「もしかしてウォズさんが助けてくれたんですか?」
「ああ。爪熊は私が追い払った」
「ありがとうございます…」
「なに、我が魔王のために尽くすのは当然のことさ。それに…いや何でもない」
「そう言えばツカサは?ノイントを倒したの?」
「ああ。彼は無事だ」
「良かった…」
「あと、彼からこれを預かっている」
「これって…!」
ハジメはウォズから『あるもの』を受け取る。
「そしてこれも。奈落の底で落ちているのを見つけたんだ」
ウォズはジクウドライバーとジオウライドウォッチをハジメに渡す。ちなみにガンナーは弾切れで使えなかった。
すると突然ウォズが頭を下げる。
「…申し訳ありませんでした。我が魔王」
「ちょっ!ウォズさん⁉急に改まってどうしたんですか⁉」
「私が君を見つけるのが遅れたせいで…」
ハジメは彼女が何のことを言っているか理解し、左腕を…いや、左腕が『あった場所』を見る。
ハジメは数分前に奈落の底で目覚め、辺りを散策していたら、数多くの強力な力を持った魔物と相対し、最終的に爪熊と呼ばれる魔物に左腕を切り裂かれ、食われた。
「ウォズさんが気にすることはないですよ。確かに恨んでいないと言えば嘘になります。僕だっお人好しじゃありませんから。でも命の恩人を責めるなんて馬鹿なことは僕にはできません」
「しかし…」
「それよりも教えてください。僕はどうやったら生き延びられるんですか?」
ハジメの目つきが変わった。
「…君は⋯変わらないね」
ウォズはどこか悲しそうな笑みを浮かべる。
「え⋯?」
「いや、なんでもない。この本によれば、君は魔物の肉を喰らって生き延びたと書いてある」
「なっ…そんなことしたら…!」
「そう。体が崩壊する。しかし君にはそれを克服する術があった」
「それって何なんですか?」
「答えはこの洞窟の奥にある」
「奥に?」
ハジメたちは洞窟の奥に進んできた。
「これって確か…!」
すると光る結晶があり、そこから綺麗な水が垂れていた。
「ああ。どんな怪我や状態異常でも直し、魔力枯渇も回復する奇跡の水、『神水』だ」
「これを飲みながら魔物の肉を喰らえば…生き延びられるんですね?」
「ああ。この本にはそう記されている」
ウォズは『逢魔降臨暦』を見せて言う。
「…ならやります。僕は…いや、俺は必ず生きて故郷に帰ってやる!それを邪魔するものは誰であろうと…殺す…!」
それを見てウォズは少々寂しそうな表情をする。
「それより、ウォズはどうしてこんなに俺を気にかけてくれるんだ?」
「…私は未来で君に救われたんだ、我が魔王」
「救われた?」
するとウォズはフードを脱ぐ。
「ッ!その顔…!」
ウォズの顔はノイントと全く同じ顔をしていた。
「お前、女だったのか⋯!」
「私はノイントと同じく真の神の使徒と呼ばれる存在の一人だった。神のお遊びのために地上で多くの人を殺してきた。しかし…私は次第に人間を愛するようになってきた。一生懸命に生きる彼らの生き様に心を撃たれたんだ。だが…神はそんな私を不良品と言い、神の使徒たちに命令を出して私を処分しようとした」
「そんな…」
「だがそのときに、君が救ってくれたんだ」
ウォズはハジメに向かってほほえんだ。
「俺が?」
「ああ。神の使徒たちを一掃し、私には自分を守ってくださったあのときのあなたは、神をも殺す魔の王に見えたんだ。それからはあなたから頂戴したウォズの名を名乗り、家臣として、あなたを良き覇道へと導くべく、あなたに仕えた。しかし…私は君に最良の未来を選択させるどころか、考えられる最悪の道を選ばせてしまった…だから未来のツカサ君、ツカサ殿に与えられた仮面ライダーウォズの力の一つ、タイムマジーンに乗ってこの時代にやってきたんだ」
「そういうことだったのか…ウォズそれなら俺を導いてくれ。俺が⋯故郷に帰るために」
「⋯おまかせを、我が魔王」
ウォズはひざまずいてハジメの手を取る。
「手始めに⋯オルクス大迷宮を出るまでに、最悪の未来を選ぶかもしれない別れ道があか?」
「いえ。まだそんな未来を選ぶ可能性はありません。あなたの性格上⋯ね」
「そうか…ならそれで十分だ。ウォズ、これからは俺一人で何とかしてみる」
「…本気なんだね。我が魔王」
「ああ。お前がいるからこそ、導かれてばかりじゃダメだと思うんだ。もっと大事な場面でお前に導いてもらわないといけないからな」
「さすが我が魔王だ。ああそうだ。ツカサ君が『五日後に合流しよう』と。場所は分かるからどんどん進んでくれて構わないと」
「ハハッ…!ツカサの奴…分かった」
「ああそうだ、最後に一つ」
「何だ?」
「ツカサ君は君が奈落に落ちた時にあるカードを使って君を助けようとしていた」
「それがどうかしたか?」
「そのときにも、君が奈落に落ちたとき同様にクラスメイトの一人が魔力弾を放ち、彼を妨害したんだ」
「…!」
「犯人が誰なのかは君には大方予想がついているだろう?」
「…檜山か」
「その通り」
「…分かった。覚えておくよ。復讐するかどうかはこの先決める」
「ではまたお会いしましょう。我が魔王」
「別行動なのか?」
「ええ、私にはまだやるべきことがあるのでね」
「そうか⋯気をつけろよ」
「ああ」
そう言ってウォズは消える。
「さぁて、いつまでものんびりしてるわけにはいかねえよな。まずは…魔物を仕留めるための罠を…」