side ツカサ
「うん?」
俺は目を覚ますと見知らぬ部屋にいた。
「ここは…」
「起きた」
声が聞こえた方を見ると、ユエがいた。
「ユエか」
「ん。おはよう」
「おう、おはよう」
「ここ、反逆者の住処。怪物を倒したら扉が開いてここを見つけたから、二人を連れて入ってきた」
「そうか。二人も担がせて悪かったな…。重かっただろ?」
「ん。少し」
「それで…」
俺はユエの方を見て言った。
「お前は一体何をする気だ?」
「ハジメと一緒に寝る」
だよねー。完全にベッドに入る準備してるもーん。
「ハジメが起きたら呼んでくれ」
「ん。分かった」
そして3日後
「おっ、起きたか。…ってなんかあったか?」
ハジメがついに目を覚まし、ユエとともにやってくる。だが何故かユエの髪がぼさぼさだ。そう、まるで雷にでも撃たれたかのように。
「なに、ちょっとした目覚ましだ」
「?」
「それよりこの辺りを調べたい」
「分かった、着替えたら呼んでくれ」
「ああ」
外に出ると、そこはまるで大迷宮などではなく、外の世界のような景色が広がっていた。
「太陽⋯なわけねぇよな」
とハジメはつぶやくが無理もない。
「夜になると星みたいになるんだ」
少し歩くと大きな家があった。
「ずいぶんとでかい家だな」
「私だけで少し調べたけど入れない部屋も多かった」
とユエは言う。
「なるほどな⋯ユエ、ツカサ、油断せずに行くぞ」
「ん」
「ああ」
入って少ししたところには温泉のような風呂があった。
ハジメは湯の中に手を入れると
「こりゃあいいな。何か月ぶりの風呂だろうな⋯」
「一緒に入る?」
ユエはそうハジメに聞く。リア充が。
「一人でのんびり入るさ」
「ぷぅ⋯」
ユエは頬を膨らませる。リア充が!
建物の中に入って、俺たちは2階へ登る。
ハジメが一つの扉に手をかざすと魔法陣が浮かび上がるが、開いた様子はない。
「2階の書斎や工房は封印されてて入れない、か…」
「3階に期待だな」
「ああ」
そして俺たちは3階に行く。
すると大きな部屋が一つだけあった。
「3階はこの部屋だけみたいだな」
「そうらしいな」
俺たちは中に入る。
すると壁についたランプに明かりが灯る。
「ッ!」
「こいつは…」
奥には一つの椅子と、白骨化した遺体があった。その近くにはその人物のものであろう黒い傘もあった。
「…誰かを待っているみたいだな」
ハジメはそう言う。
すると
「どうした?ツカサ」
「え?」
気付けば俺は泣いていた。
「何で…こんな…」
俺は必死に涙を止める。
「大丈夫か?」
「ああ…」
「地上への道を調べるには、この部屋が鍵かもな。俺の錬成も受け付けない書斎と工房の封印…ユエ、何かあったら頼む。行くぞ、ツカサ」
「ああ」
「気を付けて」
俺たちはユエにサムズアップする。
俺たちは魔法陣の中に足を踏み入れる。
すると魔法陣が赤く光り、俺たちの脳内に無数の情報が流れ込んでくる。
「くっ…何だ…!何かが⋯頭に刷り込まれていくみたいだ…!」
「うっ…」
「「!」」
すると白骨死体から幽体離脱するかのように、一人の青年が現れる。
その青年は眼鏡をかけ、長い髪を後ろで束ねている、整った顔立ちの好青年というような印象を受ける人物だった。
ハジメも最初は警戒してドンナーを構えていたが、青年の様子を見て警戒を解く。
『私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。数々の試練を乗り越え、よくたどり着いた』
「オスカー…オルクス…」
どこかで聞いたことが…
『『反逆者』と言えばわかるかな?』
「お前が…!」
ハジメはそう言うが、俺は頭の中で何かが引っかかっていた。
『ああ、質問は許してほしい。これはただの記録映像のようなものでね。残念ながら君の質問には答えられないんだ。だけど、この場所にたどり着いた者に、世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか、メッセージを残したくてね』
オスカーはその後、このようなことを語った。
神エヒトは狂っている。神代の時代の少し後に、神は異なる種族同士を争わせた。自分の思い通りに動く『駒』として、教会を操り、『戦争遊戯』を始めたのだ。
狂った神を止め、争いを終わらせるために立ち上がったのがオスカー達『解放者』だ。
彼らは全員が神代の力を持つ強力な魔法『神代魔法』を扱うことができた。
解放者のリーダーであるミレディ・ライセンは、神の真の目的を知り、志を共にする仲間を集め、神を討とうとした。
『だが…神はその計画を見抜き、教会を通して『解放者こそが神敵』と言う情報を流した。そのせいで、人々から追われ、守ろうとしていた人々に力をふるうことができず、仲間は次々と死んでいった…』
オスカーは悔しそうに拳を握りしめる。
『そこで私たち中心メンバー『8人』は、後世に自らの神代魔法を残し、いつか神を滅ぼすものが現れるまで隠しておくことにした。だが…』
「⋯ん?待て、8人⁉七大迷宮だから7人じゃないのか⁉」
『中心メンバーの一人であり、僕の親友は神の卑劣な罠にかかり、最後は神に挑むことを余儀なく強いられて…命を落とした…!』
彼の言葉には行き場のない怒り、そして親友を失った深い悲しみが込められていた。
『彼は極めて特殊な神代魔法使いだった。神代魔法にはそれぞれ生まれた順番があり、彼の扱う神代魔法は0番目に生まれた、いわば始まりの神代魔法。全ての神代魔法はそこから枝分かれしていき、全てが彼の神代魔法を前提として作られている。そして、私たちに『平和を作る』力、『仮面ライダー』の力を渡したのも彼だ』
俺がふと目をやるとオスカーと白骨遺体の腰にはガッチャードライバーのデイブレイクバージョンがつけられていた。
「まさか⋯本当にライダーの力を持っているなんてな…!」
『私はこれを使うことで暁の錬金術師・仮面ライダーガッチャードデイブレイクに変身する。他にも中心メンバーは皆、それぞれライダーの力を持っている。この力も始めにこの迷宮を攻略した君に授ける』
すると白骨遺体のガッチャードライバーが輝き、ライドウォッチとなってハジメのもとに飛んでくる。
「これは…」
『そして『彼ら』のことも頼みたい。私の大切な友達だ』
オスカーが指を指した先にはカードの束があり、一番上のカードには『HOPPER1』と書かれていた。
「デイブレイクバージョンのケミーカード…!」
『彼らは錬金術によって生まれた生命体、ケミーだ。彼らは特殊な力を持っていて、外の太陽もケミーの一体、ザ・サンを研究し、彼の力を借りることで再現したものだ』
「あの太陽を作る過程にそんな背景が…」
『頼んでばかりですまない。話が逸れてしまったね。だけど少しでも多くの人に覚えていて欲しいんだ。彼のことを』
「…」
『君が何者で、何の目的でここにたどり着いたのかは分からない。ただ知っておいて欲しかった。私たちが何のために戦ったのか、そして彼のことを。君に私の力を授けよう。どのように使うかは君の自由だ。だが願わくは、悪しき心を満たすためには振るわないでほしい』
「力?」
『話は以上さ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが、自由な意思の元にあらんことを⋯』
そう言ってオスカーは消えた。
あれ…何だか…意識⋯が…
Side ハジメ
「…マジか。狂った神と『反逆者』ではなく、『解放者』か…」
俺がそう呟くと
「…フッ」
ツカサが笑ったように見えた。
「どうした?ツカ…サ…誰だ…⁉お前…」
俺が目をやると、そこにはマゼンタの髪をした男が立っていた。いや、顔は間違いなくツカサだった。
「ハハッ…『私』なんて柄じゃねぇだろ…そうか…お前はここで生涯を終えたのか…」
「お前…もしかしてあのときの…!」
「すまない。人間と吸血鬼の姫さん、こいつと二人きりにしてくれないか?」
男は白骨遺体を見て言う。
「⋯分かった」
「いいの?ハジメ」
「ああ。多分だが…きっとこいつは悪い奴じゃない」
Side ???
「…ったく参ったなぁ。こんなの見ちまったら…嫌でもお前がもうこの世にいないって分からされるじゃねぇか。なぁ…………オスカー」
彼は目の前の白骨に親しげに話しかける。そして一筋の涙が頬を伝い、地面にこぼれる。
「お前は何でこんなところで死んだんだ?どうしたかった?最後に何を思って死んでいったんだ?教えてくれよ…オスカー…!」
すると
「⁉」
『これは先ほどのメッセージとは違って完全に『僕の私情だ。言うなれば『遺言』かな』
「オスカー…!」
目の前に先ほどの男、オスカー・オルクスが現れる。
『このメッセージが開示される条件は『魔法陣の上に涙が落ちること』。前置きはいいとして………これを見ているのは君なんだろ?ライヴ。僕の死体を見て涙を流す人間なんて、君くらいだからね』
「…ハハッ、相変わらず鋭い奴だな」
彼はそう言って涙を流す。
『……すまなかった。あのとき君を置いて行ってしまって』
「何言ってんだ…!」
『「俺はお前たちを行かせるために…」』
「っ⋯⁉」
『とでも言うんだろうね、君は。だけどね、君に生きることの素晴らしさを、人とのつながりの大切さを教えたのは僕たちだ。それなのに君をみすみす死なせるようなことをして……本当にすまなかった。言い訳のようだが、僕たちもできることなら君と最後まで肩を並べて戦いたかった。君とこの先の未来を見たかった。でも神代魔法を後世に残す必要があった。弱い僕たちに代わって、いずれ神を殺すものが現れると信じていたからだ』
「オスカー…そんなことちゃんと分かってるに決まってんだろ…!それに⋯お前たちは弱くなんかない⋯!俺がお前たちを恨んだりなんかする訳ねぇよ…!」
『こんなことで君への詫びになるとは思っていないが、僕たち中心メンバーは、神代魔法を君に託すつもりだ。どうせ君のことだから墓参りのつもりで大迷宮を回るだろうから、そのついでにね。僕たち仲間の力を上手く使ってくれ』
『最後に一つ。僕たちにとって君と過ごした時間は生涯の宝物になったよ。僕たちから言わせれば君は頼れる親友であり、同時にかわいい弟のような存在だった。…今までたくさんの思い出をありがとう。君の生涯の親友、オスカー・オルクスより』
そう言って映像は消える。
「………………ハハッ。ズルいじゃねぇか…!こんなこと言い残して先に逝っちまうなんてよ…!本当に………バカな奴らだよ…!詫びなんていらねぇよ…!お前たちは俺一人じゃ一生手に入らなかったものをくれたじゃないか…!オスカー…!皆…!ううっ…!ああっ…!お前は…俺を待っていてくれたんだよな…!あのときの言葉を信じて…!命尽きるその瞬間も…俺を待って…!ううっ……!うわぁぁぁ!うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
すると
『ホパ?』
「ううっ…!ううっ…!」
カードから一体のバッタのようなものが飛び出してくる。ケミーの一体であるホッパー1だ。
「お前は…ホパ助か…」
『ホパ!ホッパホッパ!』
「ハハッ…慰めてくれてるのか?フッ…ううっ…うあぁぁぁ!」
そしてまた彼は泣き出す。
Side ハジメ
俺はドアにもたれかかりながらツカサ?の泣き声を聞いていた。
「……………ユエ、オスカーの死体は丁重に葬ってやろう」
「ん。畑の肥料にしたかったけど…」
「今回は俺の顔に免じて勘弁してやってくれ」
「ん。しょうがない。ハジメは優しい」
「フッ、そいつはどうも」
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