Side ツカサ
「あれ…何で俺泣いてんだ?しかもホッパー1⁉」
『ホパ?』
俺は立ち上がって、白骨遺体の側にあった黒いボロボロの傘を取る。
「これって…」
すると俺の背後から声がする。
「おいツカサ」
俺が振り向くと、ハジメがこちらを見ていた。
「どうした?」
「そいつを埋葬するから手伝え」
「⋯!いいのか?てっきり畑の肥料にでもしようとすると…」
「いいんだよ。こいつの死体は丁重に葬ってやる」
「⋯ありがとう。実のところ、どうしても他人だと思えなくてな…行こう」
「ああ」
そして俺たちは簡易的な墓を作って、手を合わせた。
「お疲れ様。オスカー。どうか安らかに眠ってくれ」
俺はそう言ってその場を去る。
「さて、これからどうする?」
俺はそうハジメにたずねる。ちなみに今ユエは神代魔法習得中だ。
「とりあえずしばらくはここにとどまるつもりだ。神代魔法とやらも試したいし、学べるものも多そうだからな」
「そう言えば俺たちが手に入れた神代魔法ってどんな能力なんだ?」
「『生成魔法』って言って鉱物に魔法やスキルを付加して、特殊な性質を持った鉱石を作り出すことができるらしい」
「ってことは天職錬成師のお前が上手く扱えば…」
「ああ。アーティファクト級の武器も作れるな」
「大分反則級だな…」
「そりゃあ神代の時代の魔法だからな」
「書斎と工房はどうなった?」
「ああ。こいつがあれば大丈夫そうだ」
ハジメは一つの指輪を取り出す。
「それって確かオスカーがつけてた…!」
「ああ。埋める前に必要なものは拝借しておいた」
「抜け目ないなお前」
俺たちがオスカーの住処に戻ると、ちょうどユエが部屋から出てきた。
「どうやら取得したらしいな」
俺の言葉にユエは頷く。
「うん、した。でもアーティファクトは難しいみたい」
「そうか。やっぱり神代魔法も相性とか適性とかがあるのかもな。ツカサはどうだ?」
「俺もアーティファクトは難しそうだ。やっぱり生成魔法は錬成師が使ってこそ真価を発揮するんだろう。そうだ、二人に共有しておきたいことがある」
俺はジャマタノオロチとの戦いのときに、誰かと対話したことを二人に話す。
「なるほどな。見知らぬ人物…だけど妙な懐かしさがある人物に技能をもらったと…。…実は今まで隠していたが、お前はどうやら最近、別の人格に変わることがある」
「………………はぁ?」
「俺とユエが確認したのはジャマタノオロチと戦ったとき、そしてさっきの2回だ」
「噓だろ…確かにどちらもところどころ記憶が抜けているところがあるけど…まさか…」
「ツカサ…」
「まさかそんな厨二病みたいなことになってたなんて…一生の黒歴史だ…」
「「………………え?」」
俺たちはとりあえず、オスカーの指輪を使って書斎と工房の封印を解除した。
「ハジメ」
俺はハジメに声をかける。
「どうしたツカサ?」
「これ…直せないか?」
俺はオスカーの遺体の側にあった黒い傘をハジメに渡す。
「どうだろうな…完璧な修復には時間がかかるぞ?それでもいいならやってみる。設計図ぐらいは書斎と工房のどちらかにあるだろうからな」
「ああ。構わない。よろしく頼む」
「おう、ハジメさんに任しとけ」
「二人に話がある」
急にハジメが俺たちを集めて言う。
「いきなりどうした?」
「俺は大迷宮をすべて攻略しようと思う」
「⋯その心は?」
「神代魔法の中には、他の世界に干渉できるようなものもあるかもしれない」
「確かに⋯それにオスカーの話もあるからな…」
俺はエヒトの話を思い出す。
「正直今それは割とどうでもいいんだ」
「なに?」
「神だか何だか知らねぇが、向こう側が我関せずならこっちからやりあうつもりはない。けど…」
「立ちふさがるなら例え神だろうと容赦しない、そういうことか」
「ああ」
「フッ、最近のお前らしいよ」
「二人はそれでいいか?」
「私はもとより。ハジメとずっと一緒だから」
「あんな話聞かされちゃ協会連中も信用できないからな。それにその旅の向こうで見つけ
られる気がするんだ。自分が何者で、何を成すのか。俺の人生っていう旅の答えを、な」
「そうか…よし。そうと決まればまずはオスカーの書斎で大迷宮の手がかりを探すか」
「その前にさっきの部屋の魔法陣、あれが脱出の鍵になるんじゃないか?」
「確かに…それ含めて探ってみるか」
俺たちはオスカーの書斎に行く。
「あったぞ!二人とも」
ハジメは設計図のようなものを机に広げる。
「ビンゴだ。さっきの魔法陣が地上と繋がっているみたいだぞ」
「地上と繋ぐにはオルクスの指輪が必要らしいけど…問題ないな」
「ああ。工房にはオスカーが作ったアーティファクトや素材が保管されてるのか…これも譲ってもらわないとな」
ハジメは悪い笑みをこぼして言う。
オスカー…なんか可哀想で涙出てきた。
「ハジメ…これ」
するとユエが一冊の本を持ってくる。
俺たちはその本を開く。
「⋯つまり、大迷宮を攻略すると創設者の神代魔法が手に入るということか。大方予想通りだな」
「ああ。これで俺たちの目的は決まった。改めて大迷宮を目指そう」
俺の言葉にハジメとユエは頷く。
「「ああ/うん」」
俺たちは工房に行く。
「ここにもたくさんある」
「ユエ。言うのを忘れていたが少しの間ここに留まろう。さっさと地上に出たいが、ここには学べるものも多い。これから先の迷宮攻略のことを考えてみても、可能な限り準備はしておきたいんだ」
「ハジメと一緒ならどこでもいい」
「…そうか」
「そうだ。ユエに渡すものがある」
「ん?どうしたツカサ」
俺はユエにキバライドウォッチを渡す。
「なにこれ…ッ!」
『キバ!』
ユエがライドウォッチを起動した瞬間、彼女の脳内に情報が溢れる。
『僕は生きてみたいんだ。僕は…僕として』
『渡、人に流れる音楽を守れ』
『僕は自分の心の声で戦ってきたんだ!これまでも、そしてこれからも!大切なものを守るために!』
『行くよ、キバット!』
『よっしゃー!キバって行くぜ!』
「…ッ!ハァ、ハァ」
「大丈夫か⁉ユエ」
ハジメはユエを心配する。
するとライドウォッチが黄色いコウモリに変化し、コウモリは周りを飛び始める。
「ヤッホーイ!久しぶりの自由だ!」
「お前…キバットか!」
ハジメはそう驚く。
そう、それは仮面ライダーキバの変身アイテムにして、相棒であるキバットバット3世だった。
「俺様はキバットバットⅢ世!今日から俺とお前は共に戦う相棒だ!」
「…」
ゆえは突然の出来事にあっけにとられる。
「ユエ、そいつはお前と同じように人の血を吸う生き物、コウモリだ。そしてお前の力になってくれる。名前はキバットって言って悪い奴じゃないから、どうか仲良くしてやってくれ」
ユエは少し考えて頷く。
「ん、分かった。よろしくキバット」
「おうよ!」
Side 愛子
「どういうことですか⁉嫌がる生徒に戦いを無理強いするなんて!仲間の死を目の当たりにしたばかりなんですよ!悲しみや恐怖から立ち直るには時間がかかるんです!」
ハジメたちの担任である畑山愛子は、イシュタル教皇を問いただしていた。
「確かにあれは不幸な出来事でした」
「本当にそう思っているのなら今すぐやめさせてください!でなければもう農地には行きません!」
その言葉にイシュタルは考え込む。
「それではこうしましょう。否という方には無理強いせぬことをお約束します」
「…お願いしますね」
「愛子様の天職は大変貴重な作農師、その能力を活かして、引き続き農地開拓にお力添えをいただきたい」
「…失礼します」
愛子が去ると、イシュタルは口を開く。
「全く…困ったものだ。例の件を進めろ」
「はっ!」
イシュタルは配下に命じ、一つの資料に目を通す。
【矢門ツカサの異端者認定について】
「奴は異常だ。どこにいるかも分からぬ以上、この結論は仕方あるまい。それに…」
イシュタルは神エヒトを描いた絵画を眺める。
「忌々しい『あやつ』と、何か関係があるかもしれぬからな」
Side 勇者組一行
ハジメとツカサがジャマタノオロチと戦っていたころ、メルド率いる光輝ら勇者一行の面々は、再びオルクス大迷宮の探索に訪れていた。
クラスメイトの南雲の死、そしてツカサの失踪なども重なり、引きこもる生徒なども現れ、今回オルクス大迷宮に訪れたのは騎士団に加え、光輝パーティー、檜山、遠藤のみだった。
南雲を失ったことでほぼ放心状態の香織に雫が話しかける。
「香織」
「あっ、雫ちゃん。私は大丈夫だよ」
「あんまり無理しないでね」
「ありがとう雫ちゃん。雫ちゃんこそ…矢門君のこと大丈夫なの?」
「うん…少なくとも、何も言わずに出ていったわけじゃないから…私にだけでもメッセージを残してくれたのは嬉しかった。それはそれとして、戻ってきたら一発ぶつけどね」
「フフッ、雫ちゃんらしいね」
ここで空気を読まないのが、勇者(笑)が勇者(笑)たるゆえん。
「香織!君の優しいところ、俺は好きだ!だけどクラスメイトの死に、いつまでも囚われていちゃいけない!」
「ちょっと光輝!空気を読みなさい!」
「雫は黙っていてくれ!香織、過去のことは忘れて前へ進むんだ!きっと南雲もそれを望んで…」
すると、
「香織ちゃん。私応援してるから、できることがあったら言ってね」
「そうだよ!鈴はいつでもカオリンの味方だからね!」
クラスメイトの中村恵理と谷口鈴が口を挟む。
「うん。恵理ちゃん、鈴ちゃん、ありがとう」
そのとき
「休憩は終わりだ!先へ進むぞ!」
というメルドの声が聞こえ、光輝たちは気を引き締める。
Side ???
「彼らは順調に迷宮攻略を進めているみたいだね。だけど…『あいつ』がじっとしているとは思えないし、いざとなったら僕が出るとしようかな」
『スチーム!』
『ホッパー!』
「君たちも乗り気みたいで良かったよ。ホッパー1、スチームライナー」
どこかで汽笛が響いていた。
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