side 勇者一行
「この先が65階層ね」
雫がそう呟くと光輝も頷く。
「ああ。やっと歴代最高到達点までたどり着いたぞ」
「そうね。トータスに召喚されたときはどうなることかと思ったけど…皆強くなっていって、本当に驚いたわ」
そう言って雫は笑みをこぼす。
「そういう雫だって、ずいぶんとレベルアップしただろう?」
光輝の言葉に、雫は視線を落とす。
「…でも、私は彼のようにはなれないわ」
そう絞り出すように告げた雫に、光輝は持ち前の無神経さを発揮する。
「ツカサのこと、まだ引きずっているのか?奴は自分の意志で王国を離れたんだ!そんな奴を気にかける必要はない!もしかしたらもうどこかで⋯!」
「…そうね」
雫はこの男に何を言っても無駄だということを理解している。ゆえに何も反論しないのだ。
すると
「お前たち気を引き締めろ!ここのマップは不完全だ、それ故に何が起こるか分からんぞ!」
メルドの言葉に攻略組は意思を1つにする。
「「「「はい!」」」」
そして、ついにあのときの橋に戻ってくる。
「…!止まれ!」
メルドが何かに気付く。
すると、あのときと同じように橋の真ん中ほどに、巨大な魔法陣が現れる。
「ま、まさか…」
「あいつなのか…!」
「死んだんじゃなかったのかよ!」
龍太郎や檜山たちは思わずそうこぼし、怯む。
「…ベヒモス…!」
そう、あのときツカサとハジメによって倒されたベヒモスが、今目の前にいた。
「迷宮の魔物の発生原因はいまだ解明されていない。一度倒した魔物と遭遇することなどこの先は当たり前にある。来るぞ!退路の確保を忘れるな!」
トラウムソルジャーたちも現れ、攻略者たちの覚悟は決まる。
「メルドさん、私たちは⋯もうあのときの私たちじゃありません!」
「あのときよりも何倍も強くなったんだ!絶対に負けはしない!必ず勝って見せる!」
「二人の言う通りだぜ!いつまでも負けっぱなしなんて性に合わねぇ!ここらでリベンジだ!」
「「「「うん!」」」」
他のクラスメイトもうなずく。
「お前たち…」
グォォォォォォ!
「くっ…!」
ベヒモスが咆哮をあげ、周囲に風が吹き荒れる。
香織は自身の杖をベヒモスに向けて言う。
「もう絶対に誰も奪わせない!あなたを踏み越えて、私『たち』はこの先へ行く!」
自分だけでなく、親友の思いも込めて香織は宣言する。
先陣を切ったのは光輝だった。
「万翔羽ばたき、天へと至れ!『天翔閃』!」
持ち技である天翔閃を繰り出し、ベヒモスを牽制する。
「これなら行ける!雫は左側、檜山たちは背後、メルドさんは右側から攻撃してください!後方の護衛は魔法準備を!上級のものを頼む!」
「ほう…!迷いがないな⋯!いい指示だ!」
するとベヒモスが駆け出してくる。
「させるか!」
龍太郎が駆け出し、詠唱をする。
「猛り地を割る力をここに!『剛力』!」
そして突進してくるベヒモスを受け止める。
「くっ…!」
「私もっ⋯!」
雫が龍太郎の助太刀に向かおうとしたそのとき
「雫~」
「キバーラ⁉何でここに⁉」
雫の部屋で居候をしているコウモリ・キバーラが現れた。
「フフッ、そんなことどうだっていいじゃない」
「今は下がってて!ここは私が⋯!」
雫が駆け出そうとすると、キバーラの雰囲気が変わる。
「雫、あなたに2つ、選択肢をあげる」
「えっ⋯?」
「一つは、このまま人として歩み、人として戦い続けること。もう一つは⋯人ならざる力を手に入れ、世界から忌み嫌われるかもしれなくても、自分として生きられること」
雫はその言葉に脳を揺さぶられる。
「自分と⋯して⋯?」
「ええ。あなたが望む、自分として」
雫は今まで、他人を優先してばかりだった。
自分を押し通すことがなかった。
そう、あの夜、ツカサと語らったとき以外は⋯
「その力があれば⋯ツカサと肩を並べられるの?ツカサと対等でいられるの?」
「そんなこと私には分からないわよ〜」
キバーラは飛び回りながら言う。
「ひょっとしたら⋯ずっと前からそうかもね⋯」
キバーラは動きを止めてそうつぶやく。
「え⋯?」
キバーラのつぶやきが聞こえなかった雫は首を傾げる。
「なんでもないわ。それで⋯どうしたいの?あなたは」
雫は一瞬だけ口をつぐむが、すぐに口を開く。
「…お願い。どうすればいいの」
「⋯手順なら、私に触れたら分かるはずよ」
キバーラは少し悲しそうにそう言う。
「分かったわ」
雫はキバーラに触れる。
「…ッ!」
すると彼女の脳内に仮面ライダーキバーラに関する情報が流れ込んでくる。
『士くん!』
『光家秘伝・笑いのツボ!』
『どうして⋯かわしてくれなかったんですか』
『私たちは、そのことを旅で学んだんです』
「…!⋯大体分かったわ。行きましょう、キバーラ」
「ええ、キバっていくわよ~!」
雫はキバーラをつかんで前に突き出す。
「「変身」」
キバーラと雫が同時に言うと、花びらが舞い、キバーラからハート型の波動が出る。
「くっ…今だ!急げ!」
龍太郎はベヒモスを受け止めている。
メルドは跳び、
「粉砕せよ、破砕せよ、爆砕せよ!『豪撃』!」
ベヒモスの角に斬りかかるが完全には折れない。
「くっ…相変わらず硬いなっ⋯!」
すると
「任せてください!」
「⁉あれは⋯!?」
見たこともない戦士が現れ、ベヒモスに向かっていく。
その戦士は赤い目に、紫色の胸部、白い体に、肩と胸部には銀の鎧が付いていた。
腰には赤いベルト帯に、白いコウモリのようなものが、止まり木に止まるかのように逆さに止まっていた。
「全てを切り裂く至上の一閃!『絶断』!」
するとその一閃は簡単にベヒモスの角を折り、余波でもう一方の角も折れた。
キバーラは着地して、自分の手に目を下ろす。
「すごい…!これがあなたの力なのね…!」
『ふふん♪もっと褒めていいんだから♪』
その声にメルドは反応する。
「…!お前⋯まさか雫か⁉」
「はい!」
「⋯なんだかよくわからんが、今は頼りにするぞ!」
「任せてください!」
「『光爆』!」
光輝は聖剣にエネルギーをためてベヒモスを貫く。
「グォォォォォォ!」
「ぐわぁぁ!」
光輝はベヒモスに吹き飛ばされる。
しかし
「天恵よ、彼の者に今一度力を!『焦天』!」
香織の魔法により、光輝に今一度力が戻る。
トラウムソルジャーたちも続々と討伐されていく中、ベヒモスが力を貯め始める。
「角が折れてもできるみたいね…!皆!ベヒモスの攻撃に備えて!」
するとベヒモスがジャンプし、踏みつぶそうとする。
「ここは聖域なりて神敵を通さず!『聖絶』!」
鈴は聖絶でベヒモスの攻撃を防ぐが、限界が近い。
「うっ…」
結界が段々と解けていく。
「くぅっ…ぜっっったい⋯!負けるもんか⋯!!」
香織は詠唱を始める。
「天恵よ、神秘をここに!『譲天』!」
すると力がみなぎり、結界も元に戻っていく。
「ありがとカオリン!愛してるよ!」
そしてついにベヒモスが結界にはじかれ、ひっくり返る。
「『炎天』!」
恵理が炎を出し、ベヒモスを攻撃し、
「『限界突破』!」
光輝が渾身の一撃でベヒモスを切り裂く。
「グォォォォォォ!」
ベヒモスは限界を迎え、消滅する。
トラウムソルジャーたちもただの骨と化し、地面に落ちる。
「か、勝ったのか?」
雫は変身を解く。
「そうよ⋯!勝ったのよ!」
「そうだ!俺たちの勝利だ!」
「やった!」
「わーい!」
兵士たちは肩を組んでお互いを称えあう。
誰もがこれで終わりだと、そう思っていた。
「…!何か来るぞ!」
「⁉」
カツ、カツと誰かの足音がきこえてくる。
「お前は…!」
「新たなイレギュラー⋯死になさい」
その存在の名は仮面ライダーダークドライブ。かつてドライブの世界において未来から現れ、ロイミュードに利用された仮面ライダーだ。
「その口ぶり⋯…まさか貴様はあのときの!」
そう。メルドの読み通り、その存在は神の使徒だったものだ。
その残留思念に何者かが細工をすることで誕生した、偽物の仮面ライダー・それが敵の全貌である。
「雫!もう一度無理か?」
「力の扱い方に慣れていなかったから…今はもう⋯!」
「くっ…皆もう限界だ…!どうすれば…!」
すると
『スッチーーーーーム!』
「「「「⁉」」」」
一本のSL機関車のようなものがダークドライブと光輝たちの間に通り、SLが通った後には、一人の青年が立っていたその青年は眼鏡をかけ、長い髪を後ろで束ねている、顔立ちの整った青年だった。
「なぜ…あなたが⋯!」
神の使徒は仮面の下で苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
「こんなこともあろうかと、最期に僕のライダーとしての力をスチームライナーに残しておいて良かったよ。まぁこれはいわば残留思念、そして一回きりの大迷宮の防衛システムだから、これで本当に僕という人間は死ぬんだけどね」
「あ、あなたは誰なんですか?」
雫がそうたずねる。
「うん?僕かい?名乗るほどの者でもないよ。僕はただの錬成師さ。それに僕は…」
青年は一つのドライバーを取り出し、腰に巻く。
『ガッチャードライバー!』
「『反逆者』、だからね」
「!まさか…!」
メルドは何かに気付いたかのように目を見開く。
「行くよ!ホッパー1!スチームライナー!」
『ホパー!』
『スチーム!』
青年は2枚のカードを取り出し、ドライバーにセットする。
『HOPPER1!STEAMLINER!』
そして彼は何かの点火機のようなものを起動し、ドライバーにセットする。
『ガッチャーイグナイター!』
『ターボオン!』
するとドライバーから待機音が流れ、彼はズレた眼鏡をかけ直すような仕草をし、右手を天にかかげる。そして親指と人差し指と小指を立てて顔の前に下ろして指を鳴らし、右手と左手の指を立てて、三角形のような形を作る。
「変身!」
『ガッチャーンコ!ファイヤー!スチームホッパー!アチー!《』
すると彼はオレンジ色の体、水色の目、炎を思わせるマントを付けた暁の錬金術師・仮面ライダーファイヤーガッチャードデイブレイクに変身した。
「なっ!」
「まさか…あなたもライダー⁉」
光輝と雫は驚きの声を上げる。
「さて、君の選択肢は二つだけだ。とっとと引き上げて二度とここに立ち入らないか、この場で僕に倒されるか」
ダークドライブはその問いに対して、ブレイドガンナーをガッチャードデイブレイクの方に突き出して答える。
「当然、あなたをこの場から抹消します」
「交渉決裂だね。なら…」
ガッチャードデイブレイクはガッチャトルネードとガッチャージガンを取り出して構える。
「倒させてもらうよ」
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