Side ツカサ
あれから二ヶ月、いろんなことがあった。
まずはハジメが義手と義眼を作り、それに慣れるための訓練を行ったりした。
そして移動手段として車を作ったり、壊れたシュラ―ゲンの代わりの武器やそれ以外にも多くの武器を作って、俺はライダーの力を試してみたりした。
ケミーたちと打ち解けるためにいろいろ遊んだら、彼らも俺になついてくれた。
そんなことをしている間も、俺とハジメは日々魔物の肉を食べ続け、ステータスも大幅に上昇した。
「さて…問題はこいつだ」
俺はケータッチの起動カードを取り出す。
「ケミーカードの中に紛れていたってことは⋯オスカーが持っていたってことなんだよな」
俺はステータスプレートを確認する。
「そしてこの技能⋯『空間破壊』。最初からあったものだけど、何故か未だにこの技能だけが使えない。これは一体⋯」
そのとき
『お前がそれを使えないのは、お前の一番欠けちゃいけないところが欠けているからだ』
「ッ⁉」
気付けば俺はいつかの暗い空間にいた。
「…あんたか」
「よう。久しぶり…でもないか」
「エボルトかよ。…っていうか欠けてはいけないところってなんだよ?」
「そいつは自分で見出さなければ意味がないんでな。俺から言えることは一つだけだ」
「なんだよ」
「答えは恐らく『ライセン大迷宮』で見つかるはずだ」
「『ライセン大迷宮』…ライセンって確かオスカーを解放者に引き込んだ…!」
「俺から言えるのはこれだけだと言ったはずだ」
「…チッ。融通が利かない奴だ」
「(自虐だぞ、それ)」
「…なんだよ」
「いや別に」
「それにしても『ライセン大迷宮』か…ライセンって、オスカーから聞いたときも思った
けどどこかで聞き覚えがあるんだよな…」
「もう用は済んだ。じゃあな」
「は?ちょっ待っ…!」
そして俺はその空間から追い出される。
Side ???
ツカサを追い出した彼は一人の空間で呟く。
「さて…何の用だ?」
彼が視線を向けた先には白い狐のようなライダーが立っていた。
「久しぶりですね、『デストロイ』」
「…その呼び名はよせ。昔のことだ」
「そうでしたね」
「それで?何の用だ」
「まずは警告を。あなたの存在は⋯消えかかっています」
「…みたいだな」
彼は自分の消えかかっている手を見る。
「原因は恐らく…」
「…あのときの短剣か」
彼は苦々しい表情でつぶやく。
「はい。あの短剣に込められた奴の力が今もあなたの魂魄をむしばんでいます」
「俺が完全に消えるのは早めに見積もってもこの1年以内か…時間は十分ある。あいつらの墓参りも終わってないからな。…それに今のあいつなら俺がいなくても問題ない。直に必要なものは手に入れるさ」
「あいつ…矢門ツカサのことですか」
「あいつは予想を大きく上回る速度で成長していっている。『今の』俺を超えるのも時間の問題だ」
その言葉に白狐のライダーは考え込む。
「私にはどうしても彼が『かつての』あなたを超えられるようには思えないのですが…」
「いつかお前にも分かるさ」
「そうでしょうか」
「ああ。それに…俺はそんなに強い男じゃない。きっと俺の本質はずっと…あのときの何も守れない子供のままだ」
彼は懐から押し花のようなものを出して言う。
「…しかし、あなたに助けられた人間が大勢いるのを忘れないでください。私もその一人です」
「⋯そうだな」
彼はすこし安心したような笑みをこぼす。
「それと⋯お前この花の花言葉とか分かるか?」
彼は取り出した押し花を見せる。
「そうですね…確か『愛』や『希望』だったと思いますが」
「…フッ。あいつにふさわしい言葉だな。そうだ。こいつ、もしかして…」
彼はネオディケイドライバーを取り出して言う。
「ええ。私があのとき回収していたものです。ですのでそれはあなたにとって、ちゃんと彼女の形見ですよ」
「そうか…良かった⋯!⋯ありがとう」
彼はネオディケイドライバーを握りしめて言う。
「どういたしまして。それと…やはりあのとき門上ツカサが死ぬ原因を作ったのは『奴』でした」
「チッ、あいつは相当俺のことが好きらしいな。次元を超えて干渉してくるとは…しかも
子供を人質にするとは…あのクソ野郎が考えそうなことだ」
彼は皮肉を込めて言う。
「ええ。本当に吐き気をもよおします」
「分かった。時が来ればあいつにも伝えよう」
「よろしいのですか?」
「ああ」
「それと…これは完全に別件ですが、オスカー氏からの伝言です」
「オスカーから…⁉」
「『ミレディが首を長くして待ってるぞ』とのことです」
その言葉に彼は額に青筋を浮かべて言う。
「あのメイド好きメガネが…!人がどれだけてめぇに言いたいことがあると思ってやがる…!…だけど」
しかし
「⋯確かにさっさと顔を見せてやらないとな。つっても、もうあいつも死んでいるんだろうけどな…。あいつの墓も作らねぇといけねぇし、あいつらさっさとライセン大迷宮に行ってくれねぇかな…」
「それに関してですが…」
「おい。そろそろ時間みたいだぞ」
彼は不安定になっている会話相手の姿を見て言う。
「…そうですね。それではまた」
「あっ!ちょっと待った」
「なんでしょうか」
「あいつは…スミレはそっちで元気にやってるか?」
「…それはお答えできかねます」
「…そうか。すまないな」
「いえ。こちらこそ」
「それじゃあな。『創世の女神』サマ」
「それこそ、昔の名ですよ」
「ハハッ!そうだったな」
Side ツカサ
「全く…何なんだあいつは」
そんなことは置いといて、いよいよ今日はオルクス大迷宮から旅立つ日だ。
「準備は万端、もはや魔物の肉から得られるものはない。装備も整った。二ヶ月も経っちまったがな」
ハジメは今、黒いコートのようなものを着て、眼帯と義手を付けた、厨二病チックな格好をしている。
「うん」
ユエはその言葉にうなずく。ユエは白い服を着て、頭には黒いリボンのようなものを付けている。その指には、ハジメが送った神結晶を削ったものがついた指輪が付いている。
「二人とも、ハジメの武器や俺たちの力は地上では異端だ。聖教教会や各国が黙ってはいないだろう。そいつらだけならまだしも、もしかしたら、神を自称するような輩とも戦うことになるかもしれない」
かく言う俺は、灰色のコートを着てその下にはマゼンタのシャツを来ていた。そして首にはいつものカメラを下げている。
「世界を敵に回すような、ヤバい旅だ。覚悟はできてるか?」
俺が問うとハジメは鼻で笑う。
「当たり前だ。立ちふさがる敵は誰であろうと…殺す。そして故郷に帰るんだ」
「ん。それに今さら問われるまでもない」
するとハジメがユエの頭に手を置き、俺の手を掴む。
「俺がユエを、ユエが俺を、俺たちがツカサを、ツカサが俺たちを守る。それで俺たちは最強だ」
「違いない」
「うん」
「そして、全てをなぎ倒して、三人で世界を超えよう」
俺達は頷く。
「脱出する前に一枚、撮っていかないか?」
「そいつはいいな!」
ハジメとユエが写真について話している間に、俺はカメラの準備をした。
「撮るぞ~」
そして俺が二人を撮った。
「…いい顔だ」
俺は技能『
俺が写真をしまうと床の魔法陣が光る。
「じゃあなオスカー。いろいろ世話になった」
俺はオスカーの亡骸があった椅子に声をかけてから行く。
すると
『行ってらっしゃい』
「⁉」
俺が振り向くとガッチャードデイブレイクがこちらを見ていた。俺の目には彼の姿にオスカーの姿が重なったように見えた。
そしてガッチャードデイブレイクが消える。
「…フッ。ああ!行ってくる!」
ここから先、何が起こるかは分からない。
初めは確かに、ライダーごっこをするために手に入れた力だった。
だけど、今の俺は違う。目に見えない大きなものとの戦いを見据え始めていた。
このとき二つの世界と時代を巻き込んだ運命の歯車は、着々と回り続けていた。
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