俺はあの後、数日間神の使徒と、ライセン大迷宮の手がかりを探して辺りを走り回っていたのだが…何の成果も得られませんでした!
「ハジメたちはどうやらフェアベルゲンってところに向かったらしいし…ゴルドダッシュ、俺たちも行くか」
『ダ~ッシュ!』
「よしよし、それじゃあフェアベルゲンにレッツゴー!」
「と出発したところまでは良かったんだけどな…」
『ダ~ッシュ…』
俺は森の中でゴルドダッシュの隣に座り込んでいた。
「ここ…」
「『どこだ~!!!/ダッシュ~!!!』」
「完全に道に迷った…かれこれもうハジメたちと別れてから二週間は立ったぞ…どうすりゃいいんだ…オーロラカーテンも行ったことがない場所だと使えないし…」
俺は一応樹海の中には入れているがそこから先の道が分からない。そう、遭難した。
「全く⋯旅人が道を見失うのは洒落にならんぞ⋯」
そのとき、俺は人の気配を感じ取る。
「!ゴルドダッシュ、戻れ」
『ダッシュ?』
俺はゴルドダッシュをカードに戻す。
俺は気配の方へ進む。
すると
「こいつは…」
無数の魔物が惨殺されていた。
「強い魔物に襲われたのか…?いや、それはないな」
俺は魔物の体に刺さっている鋭利な刃物を引き抜いて言う。
「確かこの辺を少し行ったところにヘルシャー帝国ってのがあったな。そこの兵隊の仕業か?」
そのとき、俺は背後から気配を感じ取る。
「何者だ?相手してやってもいいが、命の保証はないぞ?」
すると出てきたのは頭にウサ耳が付いた亜人族だった。
「兎人族?比較的温厚な種族だと聞いているが…あの残念ウサギが言ってたことと何か関係があるのか?」
「貴様…我々ハウリア族のことを知っているようだな。まさか帝国兵か?」
リーダーらしきバンダナを巻いた男が問いかける。
「ハウリア?」
どっかで聞いたような…しかもつい最近。
「帝国兵ならば容赦はしない。だが…油断は禁物のようだな」
「ああ。俺は破壊者だからな」
その言葉に男は怪訝な表情を浮かべる。
「破壊者だと?」
「ああ。敵対するなら容赦はしない」
俺たちはしばらくにらみ合う。
俺がライドブッカーを取ろうとしたそのとき
「おいカム、終わったなら早く戻ってこい」
「「⁉」」
急にハジメの声が聞こえる。
「「ハジメ⁉/ボス!」」
その言葉に俺達は顔を見合わせる。
「「…へ?」」
俺はハジメから説明を受け納得する。
「なるほどなぁ。そういうことか」
先ほどの男、あの残念ウサギの父親であるカムがひざまずいて言う。
「へい!知らないとは言え、ボスのご友人に無礼を働いたこと、深くお詫びいたします!道理でお強く見えるはずだ。ああは言ったものの、内心ではひやひやしていましたよ」
そう言って他のハウリアたちも土下座をする。
「ハハッ…それほどじゃないさ。そんなことより…」
「…なんだよ」
俺はハジメの方を見て言う。
「お前は一体こいつらに何を教えたんだ?」
俺は「さっきの魔物いい声で鳴いたわね…!」とか「生意気にも殺意を向けてきやがったのが運のつきだったな…!」とか物騒なことを言っているハウリア族を見て言う。
「戦闘技術とか武器の扱いとか…生存競争で生き残る術をいろいろとな」
「それで温厚な兎人族がこんな風に魔改造されたのか…」
どうやら俺がいない間にいろいろあったらしく、ハジメはシアの家族のハウリア族を助けることになったらしい。その際に帝国兵と戦ったり、亜人族の国フェアベルゲンの長たちとひと悶着あったりしたらしいが…。
「で、見返りは何なんだ?」
「フェアベルゲンの奥にあるハルツィナ樹海の大迷宮攻略だ。深い霧に覆われているからハルツィナ樹海にたどり着くには、亜人族の助けがないとたどり着けないようになってるらしい。そこまでの案内だな」
ハルツィナという単語に聞き覚えを感じながら俺は頷く。
「なるほど、じゃあ今から行くのか?ハルツィナ樹海に」
「ああ。そのつもりだ」
「これがハルツィナ樹海の大樹⋯でかいな」
俺は枯れた大樹を見上げてそう言う。
「フェアベルゲン建国前から枯れているそうで、しかし朽ちることはなく、枯れたまま変わらずにこの姿を保っているようです」
すると俺たちは大樹の根本付近にある、石碑のようなものに目をつける。
「これってオスカーの…!」
俺はオルクス大迷宮を思い出して言う。
「ん。同じ紋様みたい」
「どうやら⋯ここが大迷宮の入口みたいだな」
俺たちは石碑に、何かの差し込み口のようなものを見つける。
「これは…!」
ハジメはそこにオルクスの指輪をはめる。
すると文字が浮かび上がる。
「『四つの証、再生の力、紡がれた絆の道しるべ、全てを有する者に道は開かれるだろう』」
「どういう意味でしょう?」
シアがハジメに尋ねる。
「恐らく『四つの証』は大迷宮の攻略の証だろう。ここに挑むには最低でも他四つの大迷宮の攻略が必要ってことだ」
「『紡がれた絆の道しるべ』っていうのは亜人族の案内人を得られるかどうかってことですかね?」
その言葉にハジメは頷く。
「多分な」
「後は『再生の力』…」
「どうしたユエ?」
「もしかして⋯」
ユエは自分の『自動再生』を思い出し、石碑に手をかざす。
しかし
「⋯何も起こらない」
「どうやら違うみたいですね」
「もしかしたら、四つ以上の大迷宮を攻略した上で、再生に関する神代魔法を手に入れろ、ってことかも…」
「なるほど」
そのとき、ある言葉が俺の口からこぼれる。
「『再生魔法』…!」
「ツカサ⋯?」
ハジメが俺に聞き返す。
「いや、俺じゃない。俺の中の『あいつ』が何か知っているのか…?」
それを加味して、ハジメは頷く。
「それにしても、めんどくさいが、他の迷宮から当たるしかなさそうだな」
ハジメはハウリアたちに向き直る。
「お前たち、今聞いた通りだ。俺たちは他の大迷宮を目指す。つまり、ここまでだ。安心しろ、お前たちはこの樹海でもう十分生きていける」
その言葉にカムは頭を下げる。
「ボス!この先も我々をお供に!」
「却下だ」
ハジメを真っ向から否定する。
「…勝手についていきます!」
「ダメだ。来たるべき時が来るまで、ここで鍛えてろ。次に来た時使えるようなら⋯考えたやらなくもない」
カムは頷き、ハウリアに声をかける。
「…!聞いたか!ボスのお眼鏡にかなうよう、早速鍛錬開始だ!」
「「「オオーッ!!!」」」
そして次の日の朝
「ハジメ、ツカサ、しょうがないから残念ウサギも連れて行こう」
とユエがいいだした。
「ユエ?急にどうしたんだ?」
俺が聞くと代わりにハジメは納得したように言う。
「なるほど、勝負ってそういうことだったか」
「勝負?」
「ああ。ここ数日、ユエが残念ウサギと、勝負と称した戦闘訓練をやっててな。何でも残念ウサギがユエに傷をつけられたら勝ちらしい」
「なるほど⋯大体分かった」
「無念⋯」
「お願いします!」
ハジメは静かに言う。
「お前がついてきたって、俺は何も応えてなんてやれないぞ?」
「知らないんですか?未来に絶対なんてないんですよ!自分が一生懸命頑張れば、変えられると私は信じています!…今まででいつも後になって思っていました。変えたいと思った未来が変えられなかったとき、もっともっと頑張れば良かったって…」
シアは目を伏せる。
「…」
「だから、もう後悔なんてしたくないんです!」
ハジメは口を開く。
「危険な旅だ」
「化け物で良かったです!皆さんについていけますから!」
「俺たちの故郷はお前にはきっと住みにくい」
「『それでも』です!」
「…フッ」
その言葉にハジメは笑みをこぼす。
「もう終わりですか?なら私の勝ちですね!」
「勝ち?」
「私の気持ちが勝ったということです!」
「…好きにしろ。物好きめ」
そうして、俺たちの仲間に残念ウサギことシア・ハウリアが加わった。
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