「ううっ…!そんなことがあったなんて…!」
「ツカサ…辛い…!」
俺の話を聞き終えたユエとシアが泣きながらそう言う。
「ツカサ…お前はそんなことを経験してたのか…」
重くなってしまった空気を晴らすために俺はわざと明るく言う。
「つっても、さっきまで忘れてしまってたんだけどな!」
「ひどいよラヴ君~!」
「悪かったって。それに今は矢門ツカサなんだ。ライヴ・デトロイであってライヴ・デトロイじゃないんだぞ?」
「ラヴ君はどんなときでもラヴ君だよ!」
「…ありがとな」
俺はハジメに向き直って言う。
「ハジメ。いつか俺が変な夢を見たって言った日があったよな?」
ハジメは記憶を引っ張り出して頷く。
「ああ…やばい敵と戦って結果的に…死ぬ夢だろ?」
「ああ。それは俺の記憶だったようだ」
「は?」
「あのとき戦っていたのは他でもない、エヒトだったんだ」
「…マジか」
「ああ。俺は深手をいくつも負わされながらも、あのクソ野郎を戦闘不能にまで追い込んだ。そして…満足して逝った」
「ラヴ君…」
ハジメは珍しくしんみりとして言う。
「…辛かったな。俺なんかが安易に想像できることじゃないほどに…」
「…ラヴ君!ラヴ君は本当に強いよ…!死ぬって分かってるのにそれでも仲間の…私たちのために戦ってくれて…!ラヴ君が時間を稼いでくれたおかげで私たちは逃げ切れた!」
俺の右半分の髪がマゼンタになり、俺とライヴの意識は半分半分で現れる。
「…ミレディ。お前にまた会えて良かったよ。だけど…お前を長い間一人にしてしまって…本当にすまない」
「ラヴ君…」
「ハジメたちも、俺の長い話に付き合ってくれてありがとな」
「…ああ」
「あ!そうだ!大事なこと忘れてた!」
するとミレディが突然そう言う。
「どうした?」
「これ!受け取って!」
「これって…!」
ミレディが差し出したのはクウガ~ガッチャードまでの、ディケイドとジオウを除いた全てのライダーのウォッチだった。
「なんでライドウォッチがここに…⁉」
「ラヴ君が死んじゃってから、数百年が経った頃、一人のライダーがこの世界に誕生した。それが…」
「まさか⋯クウガか?」
「そう。ディケイドが介入した影響で、この世界にもごくまれにライダーが生まれるようになったの」
「…マジか」
「うん。だけどあのクソ野郎は、その力がもし強い意志を持っていたり、力を扱える器を
もったりしている人間へと渡ったら、自分の立場が危ういと考えて、力が渡るべき人物へと渡らないように密かに干渉した。そのせいで力を手にしたのは、その力を扱えないような者ばかりだった」
するとハジメはハッとして言う。
「⋯待て。まさか俺がライダーになったことは⋯!」
「うん。君もクソ神によって選ばれて、なるべくしてライダーになった存在だったってこと」
ハジメは考え込んで語りだす。
「⋯これはウォズから聞いた話だが、ウォズはあり得た未来から来た存在らしいんだ。そしてその世界でも俺はジオウだった⋯」
その言葉の意味を俺は理解する。
「なるほど⋯ウォズがブランクウォッチを渡す渡さないに関わらず、お前はジオウになる運命だったってことか」
「そしてクソ野郎は、自分を滅ぼすと思われる芽を完全に絶つために、急に力を与えられて戸惑っているものたちを、神の使徒に命じて殺してまわって、力を奪っていった」
「あのときの神の使徒も、それが目的だったのか⋯!」
「ってことはあのアナザーオーズも⋯元は本来のオーズの力を持ったものがこの世界にいたのか⋯」
「私は召喚したライダーを外に偵察させて、ライダーの力の継承者たちのドライバーから、ライドウォッチに力を分けてもらった。だけど私が力を受け取った後には皆例外なく…」
ミレディは目を伏せる。
「…あいつのクソ加減は相変わらずのようだな」
「うん」
「…分かった。ミレディ。これは責任を持って俺たちが預かる」
「その方がいいよ。あと君、これ」
ミレディはハジメに何かを投げ渡す。
「俺か?うわっ!こいつは…」
それはレジェンドのライドウォッチだった。
「感謝していいんだよ♪なにせ私の力の一部を凝縮したものだからね!大事に使ってね。ああ!これも渡しておくよ」
ミレディは俺に攻略の証の指輪を渡した。
そしてその後、俺たちはミレディの神代魔法、『重力魔法』を習得した。
「上手く使ってよね。あれ?でも君とウサギちゃんは適性ないね。もうビックリするくらいないねぇ」
「うるせぇ!想定内だ!」
ハジメはそう怒鳴る。
「金髪ちゃんとラヴ君は適性バッチリだね!訓練すれば上手く扱えるようになるよ!」
「確かに俺は昔から大体の魔法は扱えたからな。まぁ全てが極まってるレベルじゃないが」
するとハジメはミレディに顔を近づけて言う。
「っていうか、他にもあるだろ」
「え?何が?」
「攻略の報酬だ!便利そうなアーティファクトとか珍しい鉱物類も渡せ~!」
ハジメはそう言ってミレディを持ち上げて金貨を振り落としはじめた。
「お前やってることとセリフが強盗だぞ…」
「そうだよ!自覚ある⁉」
そしてハジメはミレディが渡した宝箱から必要なものを取り始めた。
「はぁ…まさか最初の攻略者がこんなキワモノだなんて…」
「まぁ最近のこいつはこうなんだ。大目に見てやってくれ」
俺はそう言う。
すると
「…ラヴ君、魂魄は大丈夫なの?」
ミレディは、いつの間にかすべての髪色がマゼンタになっていた俺、いや、ライヴ・デトロイに話しかける。
「…どうやらもう長くはもたなそうだ。近いうちに俺の人格は消える」
「…あのときの短剣が原因?」
「ああ。どうやら俺の魂魄を今でもむしばんでいるらしい」
「そんな…!やっと会えたのに⋯!」
ミレディは目を伏せる。
ライヴはミレディの頭に手を乗せる。
「そう言うな、ミレディ。俺はあのクソ野郎をぶち殺すまでは消えない。それに俺がお前を残して逝くことなんてない。約束だ」
その言葉にミレディは顔を上げる。
「…フフッ。そうだね。ラヴ君はいつも約束を守ってくれたもんね。それに…今度こそ、逝くときは一緒だよ…!」
「ああ⋯そのときは…一緒に逝こう」
「そうだ。これ、受け取って」
「これは…」
ミレディがライヴに渡したのは一枚の写真だった。
「あのとき皆で撮った写真だよ。ラヴ君に渡しそびれちゃったから」
「…ありがとな、ミレディ。悪いな、またしばらく一人にしちまう」
「大丈夫だよ!あ!そうだ!」
するとミレディとライヴが小声で会話しだして俺には聞こえなくなる。
「(小声)もしあの子のことを彼が思いだしても抜け駆けはなしだからね!」
「(小声)分かってるさ。責任取って両方娶るぞ」
「(小声)もう!そういう問題じゃないんだからね…!」
「すまんすまん」
そして再び会話が聞こえるようになる。
「多分今の会話はもう一人の子にも伝わってるんだよね?」
「ああ。それがどうかしたか?」
「ならラヴ君の中の君に言うね。私たちの事は気にしないでいいんだよ。ラヴ君の転生者だからって、いつまでも私やラヴ君に囚われないで、自分の人生を生きてね」
「ああ。分かってる」
俺はライヴに代わってもらって、ミレディに答える。
「またね…!」
「ああ」
俺はこの後の展開がなんとなく読めたので写真とカメラを防水用のジップロックにつめる。ちなみにジップロックはこの世界にくるとき、俺のポケットに入っていたものだ。便利だからな。
するとミレディは上から伸びているひもを引き、どこからか大量の水が入って来て俺たちは床に空いた穴から強制的に外に出される。
「ゴッ!ゴボボッ!(てっ!てめぇ…!)」
「じゃあね~!残りの大迷宮攻略頑張ってね~!」
ハジメはいきなり自分たちを流したミレディにキレながら流されていった。
「ぷはっ…!あの野郎…!いつか絶対破壊してやる…!」
「まぁそう言うなって」
「はぁ…それにしてもユエ、シア、ツカサ無事か?」
「けほっ…!なんとか」
「ああ。…ってシアは?」
周りを見ればシアだけいなかった。
「おい…あれ…」
「あ」
ハジメが指差した方には、川に浮かんでいるシアがいた。
Side イシュタル
イシュタルは誰もいない大広間で神エヒトを描いた絵を見つめて考え事をしていた。
(奴に…矢門ツカサに本当にライヴ・デトロイとの関係があったとしたら…いささか面倒だな)
そんな事を考えていると
「どうかしたかね。イシュタル教皇」
通りかかったハイリヒ王国国王がイシュタルに声をかける。
「これはこれは国王。いえね、かつてのことを思い出しておりまして…」
「というと?」
かつて、彼の先祖は反逆者の一人、ライヴ・デトロイを追い詰め、神があの悪魔を倒すための手助けをしたとされ、一族には未来永劫、教皇の地位を約束されたのだ。
その先祖の名前はタルシュ・ランゴバルド。彼は神エヒトが直々に考えられた策に参加し、見事、かつて最強と呼ばれていたライヴに深手を負わせたのだ。
「しかし…いまいましい奴は死にかけの体でなお、エヒト様をひどく害し、そこから数百年間、エヒト様からの神託は下りませんでした」
「かつてそのようなことが…」
「ええ。…先日異端者認定が下りた矢門ツカサの天職は史実ではこれまで一人しか当てはまらない天職、破壊者です。しかもその破壊者の天職は、エヒト様でさえも干渉できない超自然的な影響によって生まれるもの」
「まさか…かつて存在した天職が破壊者だった者とは…」
国王はハッとして言葉をこぼす。
「お察しの通り、ライヴ・デトロイです。そして奴もまた奇怪な戦士…『仮面ライダー』と申しましたかな?それに変身する力を持っていたのです」
国王は考え込む。
「…無関係とは思えませんな」
「ええ。しかも彼がハイリヒ王国から脱走し、行方不明ともなれば…」
「放置しておくのは危険と考えたわけですな」
「その通り。今後もしまた奴が現れたときは…どうなるやら」
「警戒しなければなりませんな」
「そういうことでございます」
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