Side ツカサ
あれから何週間か経ち、俺たちはある依頼を受けて、湖畔の町・ウルへと向かっていた。俺たちに依頼が来た理由としては、『ライセン大峡谷を余裕で探索できる四人組の実力者がいる』とブルックの町で俺たちのことが噂になったかららしい。
これまでのことをざっと説明すると、ライセン大迷宮から出た後、俺たちは近くの町・ブルックから『グリューエン大火山』を目指してそこに向かう途中、食料補充を兼ねて、中立商業都市・フューレンに立ち寄っていた。
そこで冒険者ギルド支部長であるイルワ・チャングによって呼び出され、今後ギルド関連でもめ事があった際に後ろ盾になる、という条件でその依頼を受けたのだ。依頼内容は、行方不明になった北の山脈地帯調査へ向かった冒険者一行の一人、クデタ伯爵家の三男ウィル・クデタを救出すること。
俺はゴルドダッシュに、ハジメたちは自分で作ったバイクに乗っている。
「…なぁツカサ、そっちにユエかシアを乗せれば俺がこんなに狭い思いをすることはないんだぞ?」
「仕方ないだろ。本人たちたっての希望だし……そもそも二人が好いているのは俺でなくお前だ。自覚してるのか?」
「そいつはそうなんだが…」
「ハジメは私と乗るの嫌?」
「そういうことじゃないさ。ただ少し…狭いなと」
「ならシアを落とせばいい」
ユエはハジメの背中で寝ているシアを横目に言う。
「そういうわけにもいかないだろ?」
「そういやウルって稲作が盛んなんだろ?ってことは…」
「ああ!米がある!」
「とりあえず到着だな。時間もちょうどいいし、この辺で飯にするか」
「そうだな」
俺たちはウルに付き、ちょうどいい場所でにバイクを止める。
「さて…飯食った後は早速捜索開始か?」
「だな」
「偵察なら得意な奴らがいるぜ」
「得意な奴ら?」
「こいつらさ」
俺はメモリガジェットを始めとした、ライダーのサポートアイテムを呼び出す。
「なるほど。人手が多いに越したことはないからな」
「ああ。名案だろ?」
俺達は宿に入り、食卓に座る。
すると突然俺たちが座った席に見覚えのある顔が入ってくる。
「南雲君に矢門君⁉」
「先生?」
「おいおい…こいつはまた…にぎやかになりそうだな」
「やっぱり南雲君と矢門君なんですね…!」
「いえ人違いです」
「ワタシはアナタのことシリマセンネ~」
ハジメはごまかし、俺は外国人風にしゃべる。まぁ言ってみれば悪あがきだ。
「いやいや南雲君と矢門君ですよね⁉先生のこと先生って言ったじゃないですか」
「あ~ちょっと俺大事なこと思い出したわ~そんじゃあな~」
「は⁉」
俺はハジメを見捨てて逃げようとする。
「待ちなさい!どうしてごまかすんですか⁉答えてください!」
「…はぁ~しょうがない。諦めるかハジメ」
「それはそうとお前…後で大事な話があるからな…!」
「ア、ハイ」
俺は殺気を抑えきれてないハジメを見て最期を察する。
それから俺たちは先生になんとなくの説明をした。食事をしながら。
「それにしても、二人とも無事でよかったです。あの後何があったんですか?」
「「超〜〜〜がんばった」」
「南雲君と矢門君は何故髪を染めたんですか?」
ハジメは魔物を食ったせいで髪が白く、俺は前世の記憶を取り戻すことで前世の力を一部手に入れ、その影響で一部の髪色がマゼンタになってメッシュみたいになっている。
「「超〜〜〜がんばったら自然にこうなった」」
「南雲君の右目の眼帯と左腕はどうしたのですか?」
「「奈落の底で超〜〜〜がんばった結果」」
「何より、どうして皆の元に戻らなかったのですか…?」
先生は若干キレながら聞く。
「他にやることができた」
「あそこに戻る理由がない」
俺とハジメはそう答える。一応噓はついてない。
「真面目に答えてください!」
ついに先生の怒りが爆発した。
すると先生の近くにいた金髪の男がこちらに来て机の上に拳を叩きつける。
「おいおい。食事中のマナーも分からないのか?」
俺は飯を食いながら言う。
「マナーだと?その言葉、そっくりそのまま返してやる!お前たちは目上に対する礼儀がなってない!」
「目上?さてはお前の方が俺たちよりも強いと?」
俺は横目でそいつを見る。
「戯れ言を…!極めつけは薄汚い獣ふぜいと人間を同じテーブルにつかせるな!その醜い耳を切り落としてやろうか?そしたら少しは人間らしくなるだろ?」
男はシアをにらみつけて言う。
「やれやれ…人種差別はいつでもどこでも変わらないのか。こういうバカは本当にどこでもいるな」
俺はそう呟く。
「なんだと?無礼だぞ!神の使徒でもないものが、神殿騎士である私に逆らうのか!」
「無礼もなにもねぇよ。そもそも神をその目で見たこともねぇくせによくそこまで誇れるな」
「なんだと…?異教徒め!」
すると男が剣を抜く。
「俺とやろうってのか?相手になってやってもいいが…お前に俺の相手が務まるかな?」
「何を…!…ッ!」
俺は男の首にライドブッカーソードモードを突き付ける。
「で?終わりか?」
「この…!」
俺はライドブッカーをガンモードにして奴の肩を撃つ。
「…ッ!」
心配しなくても実弾ではない。言うなれば空気砲だ。威力高めのな。
「次はその程度じゃ済まさないからな」
「…」
男は黙って先生に治療されている。
「…うまいな、これ」
俺がそう呟くと、ハジメが先生たちに言う。
「俺はあんたらに興味がない。関わりたいとも、関わってほしいとも思わない。これからのことを報告するつもりもない」
「そうだな。あいつらがどこで何をしてようと知ったこっちゃないが、俺たちの邪魔だけはしないでくれ」
「さっきみたく敵意なんて持たれちゃ、つい殺しそうになる」
俺はハジメのその言葉に付け足す。
「そして仲間を侮辱することも許さない。さっきそこの馬鹿がシアに言ったみたいにな。互いに無干渉が俺たちにとっては一番いい」
「…ッ!」
先ほどの騎士がまたキレかけているが、さすがに敵わないと悟ったのか、必死に我慢をしている。
「ってことで、じゃあな先生」
俺たちはその場を後にする。
俺たちは先生たちが泊まっている宿まで来ていた。
「なぁツカサ。お前のことまで本当に話していいのか?」
「構わない。いずれは知る必要があることだ。時期なんて誤差さ」
「お前がいいならいいが…」
そして俺たちは気配感知で先生が泊まっている部屋を理解し、ドアをノックする。
「はい…何でしょう…って南雲君に矢門君⁉」
「静かに。俺たちは話があって来たんだ。他の連中には聞かれたくないから中に入れてくれないか?」
「…分かりました。どうぞ入ってください」
俺たちは先生の部屋に入り、椅子に座って向かい合う。
「話ってなんですか?」
「今から話すことは、先生が一番冷静に聞いてくれると判断したから話す」
「俺たちが戻らない理由の足しにでもしてくれ」
「…分かりました」
俺たちはそれから、この世界の神が人間を争わせる戦争遊戯をしていること、その争いを止めるために立ち上がった集団がいたことなどを話した。
「それが当時『解放者』と呼ばれていた集団だ」
「で、その解放者の中心メンバーの一人が俺」
「……………え?」
「ん?なんかおかしなことを言ったか?」
「さすがにとっぴょうしなさすぎるだろ…
」
「ちょっ…ちょっと待ってください!それって大昔の、しかもこの世界の歴史の話でしたよね⁉なんで矢門君が出てくるんですか⁉」
「…これから話すことはこの話の中でも群を抜いて信じられないような話だ。それでも俺の言葉を信じるか?」
「…もちろん!生徒が真剣な眼差しで言うことを信じないで何が教師ですか!」
「…ありがとう。さっきも言ったように俺は解放者の一人だった。前世でな」
「前世?」
「ああ。俺の前世はこの世界の住人、ライヴ・デトロイだったんだ。だけど神との決戦の前に、あのクソ野郎は協会を通じて噓の情報を世界中に流した。『解放者こそが世界を滅ぼそうとする悪である』ってな。守るべき人間に力を振るうことができず、仲間は次々と死んでいった。そして俺も守ろうとした奴に裏切られて…」
「そんな…」
「俺はあのとき満足して死ねた。あのクソ野郎に一泡吹かせて逝けたんだからな。仲間に何も残さないような死に方をすることだけは避けられた。それで結果オーライだ!」
「矢門君…」
「今ツカサが言ったように、解放者たちは『反逆者』のレッテルを貼られて、次々に討たれていった。最後に残ったのは中心メンバーの7人だけ」
「オスカーにミレディ、ナイズにメイル、ラウスのおっさんにリューティリス、後はあのマフラー…じゃなくてヴァンドゥルだろうな」
「彼らは自分たちではもう神には勝てないと思い、バラバラに大陸の果てに迷宮を作って、潜伏することにした。試練を用意し、それを突破したものに自分たちの力を譲り、いつの日か狂った神のバカげた遊戯を終わらせるものが現れることを願って…。これが奈落の底で知った話だ。もっとも、ツカサはずっと昔から知ってたみたいだけどな」
「俺だって思い出せたのはつい最近だって。…後は先生に任せるさ。戯れ言と切って捨てても、真実だと思って行動してくれても構わない。好きにしてくれ」
「南雲君と矢門君はその狂った神をどうにかしようと旅をしているのですか?」
その質問をハジメは鼻で笑う。
「まさか。ツカサはともかく、俺はこの世界がどうなろうがどうでもいい。俺は帰る方法を探しているだけだからな」
「俺もしばらくはハジメと行動を共にするつもりだ。…仲間の墓参りもしないといけないからな。それが終わったら…あのクソ野郎をぶっ殺しに行くかもな」
「どちらにせよ、鍵は大迷宮だ。探索してみればいいさ。もっとも、今のままじゃすぐに死ぬだろうけどな」
「それに…仲間の墓を荒らすことだけはやめてくれ。もしも誰かがそんなことをしたら、俺は自分自身の殺意を抑えられる自信がない」
俺たちはそう言って立ち去ろうとする。
「白崎さんと八重樫さんは諦めていませんでした」
その言葉に俺たちは歩みを止める。
「自分の目で確かめるまでは南雲君の生存を、矢門君の無事を信じると」
「「香織/雫は無事か?」」
俺達は同時に質問する。
「実力をつけて、皆と大迷宮攻略を頑張っているようです」
「それなら二人に伝えておいてくれ。あいつらが本当に注意すべきなのは魔物じゃない。仲間、そして教会連中だ」
「え?」
「園部たちの様子を見るに、俺の死とツカサの失踪は事故と心の病って感じにでもなってるんだろ?」
「南雲君の件は一部の魔法が誤って矢門君に当たった、矢門君の件は親友を失って心が壊れたからということに…」
「ハッ!ずいぶんと好き勝手言われてるみたいだな」
「事実はそんなんじゃない。あれはツカサが俺を助けようとすることを意図的に妨害した
攻撃と、ツカサが邪魔になった教会連中の嘘だ」
「ああ。しかもあいつら俺に異端者認定までしやがった。どうやら前世の俺のことは教会連中に悪魔みたいに語られてるんだろ。それと特徴がほとんど一致するような俺のことは始末したいだろうしな」
俺はフューレンに行く途中で聞いた俺の異端者認定のことを話す。
「そんな…!」
「白崎たちに後ろから攻撃されないようにって伝えておけばいい」
そして俺たちはその場を去った。
感想や評価、お待ちしています。お気に入り登録してくださると嬉しいです。