夜が明け、俺たちの訓練が幕を開けた。
訓練担当は騎士団長のメルド・ロギンスさんだ。メルド団長は集まった俺たちに、縦十二センチ、横七センチぐらいの銀色の薄い鉄の塊を渡した。
「全員に配り終わったようだな?このプレートはステータスプレートと呼ばれている。その名の通り、自分のステータスを客観的に見ることができて、この世界で最も信頼されている身分証明書でもあるから、迷子になっても平気だ。絶対になくすなよ?」
気さくに話しかけてくる理由は、彼なりの思いやりのようだ。この人はいい人だと、俺の中でインプットされた。
「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう?そこに一緒に渡した針で指を刺して血を一滴のせてくれ。それで所持者が登録され、ステータスが閲覧可能になる。『ステータスオープン』と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ?そんなもん知らんからな。神代のアーティファクトの類だ」
「アーティファクト?」
天之河が聞きなれない単語に反応する。
「アーティファクトっていうのは、今じゃとても再現できない強力な力を持った魔道具のことだ。まだ神やその眷属が地上にいた時代、『神代』に作られたと言われている。そのステータスプレートもアーティファクトの一種で、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては現存する唯一のアーティファクトだ。本来ならアーティファクトと言えば国宝級のものなんだが、これだけは一般市民にも流通している。何かと便利だからな」
その説明を聞き、クラスメイトたちはステータスプレートに血をたらす。
だが…
「矢門君?何をしているの?」
雫が俺に問いかける。
「あ…ああああ…ああ!今に刺すさ…そう!今に…!」
俺は冷や汗をかき、腕をけいれんさせながら答える。
「さっさと刺しなさいよ」
「ああっ!」
雫に軽く押されて、俺の指が針に刺さる。
「うおぉぉっ!」
「別に大量出血してるわけでもないのに叫ばないの!」
「だってしょうがないだろ!俺は昔から体に何かを刺すことに抵抗があるんだから!」
そう、俺は重度の注射嫌いだ。
「そう言えば小学生のときの血液検査のときも直前までふるえてたわね…」
「別に戦いとかでけがをするのはそんなに怖くない!だがこういうのはダメだ!昔から魂が拒絶している!」
「あなた前世でめった刺しにされて死んだの?」
「知らねぇよ!っていうか何で事あるごとに俺の前世を特定しようとするんだよ!」
「全員見れたか?では説明していくぞ。まず最初に『レベル』があるだろう?それは各ステータスの上昇とともに上がるものだ。上限は100で、それがその人間の限界を示す。すなわちレベルはその人間が到達できる強さの指標だと思ってくれ。そして数字は今自分がその領域のどれくらいに到達できているかを示していて、レベル100は人間としての潜在能力を全て発揮した極地というわけだな。そんな奴はそうそういないな」
なるほど。ドラ○エみたいなRPGゲームとは違ってレベルアップでステータスが上昇するわけではないらしい。
「ステータスは日々の鍛錬で上昇するし、魔法や魔道具で上昇させることもできる。また、魔力の高いものは自然と他のステータスも高くなる。それと後でお前ら用に装備を選んでもらうから楽しみに待っておくといい!」
装備か、特に欲しいものとかないな。
「次に『天職』っていうのがあるだろう?それはいうとすれば『才能』だな。最後にある『技能』と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮することができる。天職持ちは少ないし、天職は戦闘系天職と非戦闘系天職の二つに分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合ってやつもあるな。非戦闘系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人が持っているという珍しくないものも結構な数存在している。特に生産職は持っている奴が多い」
天職ねぇ。戦闘系だと良いなぁ
「後は、各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだが…お前たちならその数倍や数十倍は高いだろうがな!全く羨ましい限りだ!」
そう言ってメルド団長は豪快に笑う。
「ああ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」
そして俺はハッと我に返り、
「そういやステータスを見なきゃな。ステータスオープンっと」
するとステータスプレートに文字が浮かび上がる。
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矢門ツカサ 17歳 男 レベル:1
天職:破壊者
筋力:160
体力:150
耐性:120
敏捷:110
魔力:100
魔耐:120
技能:全属性耐性・物理耐性・胃酸強化・剣術・剛力・縮地・先読・気配感知 高速魔力回復・言語理解・空間破壊・変身・形態変化・ライダー召喚
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「………なにこれ」
俺はとりあえずハジメのもとに行く。
「ハジメ、お前はどうだった?」
「ああ…あんまり期待しない方がいいと思うよ…」
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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1
天職:錬成師
筋力:10
体力:10
耐性:10
敏捷:10
魔力:10
魔耐:10
技能:錬成・言語理解
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「なんていうか…うん。平均的だな…お前なら大丈夫だよ!スタートが出遅れただけさ!」
「ううっ…ツカサ…!」
すると天之河がメルド団長にステータスを報告しにいった。
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天之河光輝 17歳 男 レベル:1
天職:勇者
筋力:100
体力:100
耐性:100
敏捷:100
魔力:100
魔耐:100
技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・
高速魔力回復・気配感知・限界突破・言語理解
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チートかよ。
天之河のステータスは思わずそう言いたくなるようなものだった。何だよ、全属性適性って。明らかに強いやつじゃん。
「ほお、さすが勇者様だな。レベル1で既に三桁か。技能も普通なら二つや三つなんだがな。規格外な奴め!頼もしい限りだ!」
「いや~はは…」
天之河は照れているのか、ニヤニヤしながら頭をかいている。
そんな感じでクラスメイトたちは続々とメルド団長にステータスを見せに行く。
ちなみにメルド団長本人のレベルは62で、ステータスは平均300と、この世界ではトップクラスの実力者らしい。
ハジメの番が回ってきたため、ハジメはメルド団長にステータスプレートを見せる。
ハジメのステータスプレートを見た途端、メルド団長はフリーズした。
それはもう見事なまでのフリーズだった。先ほどまでのご満悦そうな顔がサッと、それはサッと消え、ハジメのステータスプレートを何度も見返す。
「うん、まぁその…なんだ。錬成師というのはいわゆる鍛冶職だ。鍛冶をするときに便利だとか…」
するとそれを聞きつけたクラスメイトの一人、檜山大介がこちらに来て
「おいおい。南雲、もしかして非戦闘系か?鍛冶職でどうやって戦うんだよ?メルドさん、その錬成師ってのは珍しいんですか?」
「いや、鍛冶職の十人に一人は持っている」
「おいおい。南雲~お前そんなので戦えんのか?」
こいつは一言で言い表せば『不快』だ。檜山は白崎に惚れているため、彼女に気にかけてもらっているハジメをいつも目の敵にしていて、事あるごとにハジメにちょっかいをかけてくるのだ。まぁ今さらハジメをいじったところでって感じだけどな。
「ぷっははは~!お前ステータスも雑魚いし、肉壁にすらならねぇよ!」
「こら~!何を笑っているんですか~!クラスメイトを馬鹿にするなんて先生許しませんよ!早くプレートを南雲君に返しなさい!南雲君、私も非戦闘系?ですから気にすることはありませんよ!」
そう言って先生が自分のステータスプレートを見せる。
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畑山愛子 25歳 女 レベル:1
天職:作農師
筋力:5
体力:10
耐性:10
敏捷:5
魔力:100
魔耐:10
技能:土壌管理・土壌回復・範囲耕作・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・
混在育成・自動収穫・発酵操作・範囲温度調整・農場結界・豊穣天雨・言語理解
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すごいな。魔力だけなら勇者級とは。
それを見たハジメは意気消沈してその場に倒れ込む。
「ハジメ君大丈夫⁉」
「こりゃあとどめ刺したな」
するとメルド団長がこちらに来た。
「ツカサはどうだ?どれ見せてみろ」
そして俺のステータスプレートをまじまじと見る。
「な、ななな何だ!このステータスは!」
メルド団長が俺のステータスプレートを見て思わずそう叫ぶ。
「どうしたんですか?メルドさん…ッ!」
天之河も俺のステータスプレートを見て息を吞む。
「おいおい。二人そろってどうしたんだよ~……な、何だこれ!」
檜山も思わずそう言う。
「有り得ない…!全てのステータスが勇者と同等かそれ以上!しかも見たことのない技能
まであるときた…!」
こうして俺の異世界生活が本格的に始まった。
変身