ふと気付くと俺は見知らぬ場所に膝をついていた。
(どこだ…?ここは…?少なくとも元居た世界ではないな………………ぐっ!)
すると俺の体に激痛が走る。
(急に何だ…!いや、もともと体に傷があるような感覚はあった。痛みを意識するのが遅れた…それで一気に激痛が走ったように思えたのか)
「我の力によって衰弱し、内臓が傷つき、肋骨が折れ、ボロボロになったその体で尚、闘志を燃やすことをやめず、我にこれほどの傷を負わせるとはな」
すると急に荘厳な声が聞こえてきた。俺が声の主の方を見ると、それはとても巨大な、神を顕現したような姿の老いた男がいた。
(誰だ…?)
俺のその疑問とは裏腹に、口から出たのは
「はっ!てめぇみたいなクソ野郎に褒められたところで、みじんも嬉しくねぇな」
という言葉だった。
(どういうことだ…!俺はそんなことを言おうとはしてない!)
「フン…!もう終わる生涯に称賛を与えてやったものを」
「ハハッ…!それはてめぇも同じさ。…殺す」
今気付いたが俺の手にはケータッチ21が握られていた。
俺はネオディケイドライバーのバックル部を取り外し、中央にケータッチ21をはめる。
『MUGEN!PUTOTYRA!INFINITY!TRIDORON!COSMIC!KIWAMI!GENIUS! EXTREME!MUTEKI!GRANDZI-O!ZERO−TWO!FAINALKAMENRIDE DECADE!COMPLETE21!』
すると俺の姿がディケイドの最強フォーム、コンプリートフォーム21になる。
それとともに、老いた男の周りにダブル~ジオウまでの各ライダーの最強フォームが召喚され、一気に男に斬りかかる。ちなみに召喚されたライダーたちは戦闘データのようなもので本人ではないようだ(言ってる場合かよ)。
しかし
「無駄なことを」
その男が不気味な波動のようなものを周囲に放つと、一瞬で召喚されたライダーたちが消える。
「ハァァァ!」
俺はその男目掛けてキックを叩き込む。
「血迷ったか」
「ガハッ…!」
俺の心臓を奴が出現させた刃が貫く。
だが
「⁉」
コンプリートフォーム21の姿が段々とゼロツーに変わり、そのままゼロツーは消える。
「引っかかったな!クソ野郎!」
「ッ!『認識阻害』か!」
『FAINALATTACKRIDE DE・DE・DE・DECADE!』
俺は右腕に己の全ての力を込め、その男の巨大な胸部に突撃する。
「ハァァァ!!!」
「グゥゥゥ!」
その男は咄嗟にバリアのようなものを出して、俺の攻撃を防ぐ。
「オリャァァァァ!」
俺の右腕のパンチの威力はとどまらず、バリアにひびが入り始める。
焦った男は刃を十本ほど出現させ、俺の体を貫かせる。
「ゲホッ!ガハッ!」
その全てが俺の体を、腕、足、腹、心臓…と貫いていく。
「⁉何故だ!何故これほどの傷を負いながら即死しない⁉」
だが俺のパンチの威力は上がり続ける。
「いいからとっととくたばれ!こんのクソ野郎がぁぁぁぁ!」
ついにバリアが割れ、奴の心臓を俺の拳が貫く。
「何だ!何なんだ!貴様はぁぁぁぁ!グワァァァ!!!」
男は爆発しながら、どこかへ落ちていく。
俺は近くに着地し、変身を解除する。
「はぁ…はぁ…はぁ…ゲホッ!ゲホッ!カハッ!ゴボッ!」
俺は血を吐き、その場に仰向けに倒れる。
「はぁ…はぁ…これで当分、あいつもうかつには動けないはず…。悪いな…皆…やっぱり俺一人じゃあいつを完全には殺せなかった………………はぁ……はぁ………………
………カー、………ディ、……皆………しっかり逃げ切れよ……後は頼んだ…………」
「■■■………………やっとお前のところに逝けるよ………………」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!はぁ!はぁ!こ、ここは…?部屋?何だ…夢か…」
俺は額の汗をぬぐう。
窓の景色に目をやると、外は真っ暗だった。どうやら俺は昼寝していたようだ。それにしても今の夢は…。すさまじい戦いだったな…。
あれはこれから起こり得る未来を予見した予知夢なのか?それとも……いや、今考えてもしょうがない。ひとまずこのことは考えないようにしよう。
「ツカサ?起きたの?さっきものすごい叫びが聞こえたけど…」
「その声はハジメか」
そう言えば昼ごろにオルクス大迷宮への挑戦者のための宿波町・ホルアドについて宿波に泊ったんだったな。ハジメと相部屋で。で、疲れてたから宿の部屋に入ってそのまま眠りに落ちたのか。
「で、さっきの叫びは何だったの?」
「……変な夢を見てな。俺が強大な敵と戦って、相手に大きなダメージを与えるけど死んでしまうっていう…」
「ええ⁉何そんな縁起でもない話⁉」
「俺も何が何だかさっぱりなんだ。まぁ所詮ただの夢だから大して気にもしてないけどな」
「そんなのんきで大丈夫?」
「どうとでもなるさ」
「適当だね…」
「それよりハジメこそ大丈夫か?オルクス大迷宮ってとこには強い魔物も大勢いるみたいだし」
「僕は僕のできることをやるだけだよ」
「…そうだな」
すると部屋のドアをノックする音がする。
「ハジメ君、ちょっといいかな?」
「白崎さん!?どうぞ入って!」
ハジメが白崎を招き入れる。
どうやらこのまま部屋にいたれお邪魔になりそうだから、俺はハジメに目配せをして、白崎に見つからないうちにこっそりと出ていく。
「はぁー。あの様子だと時間がかかりそうだな…どうやって時間をつぶすか…って、あれってもしかして……」
俺は月明かりの下、鍛錬をしている人物に声をかける。
「雫」
「あら、矢門君?こんな時間に何してるの?」
「それはこっちのセリフだ。雫こそ何してるんだ?」
「…少し付き合ってくれる?」
「ああ良いぞ。どうせ暇だしな」
俺たちは地面に座り込んで話す。
「そう言えば矢門君はどうしてここに?」
「部屋に白崎が来てな。二人の時間を邪魔しちゃマズイだろ」
「香織…」
雫は軽く頭を抱える。
「で、本題だ。雫、お前の話って何だ?」
「あ~…それは…いや!やっぱいいわ!ごめんなさいね」
「…雫、お前無理してるだろ」
「ッ!べ、別に私は無理なんて…」
「分かるんだよ。昔からお前は余裕がないときはいつも貼り付けたような笑顔をしてる。…何を怖がってるんだ?」
「…さすが矢門君ね…」
「俺でよければ話をいくらでも聞いてやる。お前の全部を受け止めてやる。だから…一人で抱え込むな…!お前が俺に言ってくれたんだろ…!」
そう言って俺は思い切って彼女を抱きしめる。
「……!ううっ!ぐすっ…!私、人を殺すのが怖い…!一人でも殺してしまったら…もう本当の意味で元の世界には戻ることが出来なくなりそうで…!怖いの…!」
雫は泣きながらそうカミングアウトする。
「…そうだったのか。つらかったな。怖かったな。誰にも相談できずに、一人で苦しんで…お前の罪は俺が全部背負ってやる。だからお前は、誰を殺してでも生きてくれ。例え…例え自分が死んだとしても…生きていて欲しい人がいる。俺にとっての雫はそういう人なんだ。泣きたいならいくらでも泣いていい。泣きたくなったら俺の胸を貸してやるさ。だから…」
俺はその後、雫が泣き止むまで30分ほど胸を貸していた。
俺はハンカチを雫に差し出す。
「ありがとう。『ツカサ』」
「フッ、やっと呼び捨てで呼んでくれたな。雫」
「!確かに…この方が呼びやすいわね。ツカサ」
「改めて…これからもよろしくな。雫」
「ええ。ツカサ…!」
すると何かが雫に共鳴するのを感じた。
俺はそれを出す。
「キャハハ~!やっほ~!」
それは手のひらサイズくらいの小さな白いコウモリだった。そのコウモリは目が赤く、額に黄色いハートがついていた。
「なっ!何このコウモリ!……でもちょっとかわいい…!」
「あら~ありがとう♪私はキバーラ。突然だけどあなたのことが気に入ったからついていくわ!」
「おいおい。急だな」
「いいじゃない!もともとあなたがそういうふうに作ったんでしょ?ライダーの力の継承
のかたちを」
「はぁ~しょうがない。雫。悪いがこいつの世話をたのめるか?」
「うん。この子かわいいし、癒してくれる動物がいるのはいいことよ」
「そうか。…悪いな。あんなこと言った矢先にこいつの世話を押し付けちまって」
「いいのよ」
「…ありがとな」
「こちらこそありがとう。おやすみ、ツカサ」
「ああ。おやすみ。…明日は頑張れよ」
「…うん!」
俺が部屋に戻り、ドアを開けようとすると
「ううっ…!ハジメ君…!」
どうやらこっちと同じような状況らしい声が聞こえてきた。
「……今日どこで寝よう」
ちなみに最強フォームの召喚順はディケイドの冬映画の最強コンプリートフォームのときの召喚順を平成2期で再現しました。