僕のヒーローアカデミア -DBLEGENDS-   作:熱いおゆ

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第5話

ゲートが開き、模擬市街地へと足を踏み入れた瞬間、アキトは思わず息を呑んだ。

高層ビルを模した建造物、入り組んだ道路、あちこちに配置されたセンサー。前世の記憶にある「あの試験」の光景が、圧倒的なスケールで目の前に広がっていた。

「――試験、開始!」

アナウンスと同時に、アキトは地を蹴った。

(個性は使わない。この二か月半、ベジータとシャロットに叩き込まれた体だけで――!)

一体のロボットが行く手を塞ぐ。アキトは低く姿勢を落とし、教わった通りのステップで死角に回り込んだ。装甲の継ぎ目――そこを狙って、渾身の蹴りを叩き込む。

ガシャン!と鈍い音を立てて、ロボットが機能を停止した。

「悪くねえ動きだ。だが、まだ力んでるぞ」

頭の中に、シャロットの声が届く。

「分かってる!」

その後もアキトは着実にロボットを撃破していった。派手な個性でロボを粉砕する周囲の受験生と比べれば地味だが、確かに自分の体でポイントを積み重ねている手応えがあった。

視界の端、路地を挟んだ向こう側に、緑谷出久の姿が見えた。

彼はロボットに向かって踏み込みかけては、直前で足が止まる――その繰り返しだった。拳を握りしめる手が、小刻みに震えている。

(……原作通り、焦りまくって一点も取れてないな)

周囲の受験生たちが次々と得点を重ねる中、出久だけが完全に取り残されていた。その顔に浮かぶ焦燥と絶望の色は、前世の記憶にあった「あのシーン」そのものだったが、生で見るその痛々しさは想像以上だった。

だが、感傷に浸る時間はなかった。突如として地面が大きく揺れた。

「な――!?」

道の向こうから現れたのは、これまでとは比較にならないほど巨大な、超大型の模擬ロボット。ゼロポイントロボだ。周囲の受験生たちが悲鳴を上げ、我先にと逃げ出していく。

その時、瓦礫の下敷きになった受験生――お茶子の姿が目に入った。

巨大ロボットの鋼鉄の足が、無慈悲に彼女の方へと迫る。

(――来る!)

アキトがそう確信した瞬間、出久が弾かれたように走り出した。

「――ぐああああああああ!!」

轟く雄叫び。出久は地を蹴った。次の瞬間、その体は信じられない高さまで跳躍し、巨大ロボットの顔面に振りかぶった拳を叩き込んだ。

ドォォォォォォォン!!!

鼓膜を裂くような轟音。鋼鉄の頭部が陥没し、巨体がゆっくりと後方へ崩れ落ちていく。

知識として知っていたはずだった。だが、目の前で繰り広げられたその光景は、アキトの想像を絶する熱量と、狂気じみた威圧感を放っていた。

落下した出久の体は、地面に叩きつけられ、ぴくりとも動かない。右腕はあり得ない方向に折れ曲がり、両脚も力なくねじれている。

凄惨という言葉すら生温いその有様に、アキトは本能的な戦慄を覚えた。

「う、うそ……出久くん……!?」

瓦礫に挟まれたお茶子が悲鳴を上げる。しかも、崩れ落ちた巨大ロボットの残骸が、二人を押し潰さんばかりに頭上から降り注ごうとしていた。

「嘘だろ……!? 間に合わない……!」

全力で駆け出しても、絶対に間に合わない。

(――正体がバレる? 雄英に説明がつかなくなる?)

そんな躊躇いは、次の瞬間、頭上を覆う巨大な影によって吹き飛ばされた。

ここで頼らなきゃ、俺は一生後悔する!

「シャロット!! 力を貸してくれ!!」

半ばパニックになりながら、アキトは心の中でUIを叩いた。

ゴオッ!

眩い閃光が模擬市街地を包み込んだ。

「――ッ!?」

光の中から現れたのは、超サイヤ人ブルーの静謐な闘気を纏ったベジータだった。

ベジータは召喚された瞬間に状況を理解し、頭上に迫る瓦礫へ鋭い眼光を向けた。

「フン、派手にやってくれるじゃねえか。……俺の出番、ってわけだな」

ベジータは地を蹴り、瞬時に瓦礫の落下地点へと割り込んだ。掌に集束した蒼いエネルギーが、凄まじい熱量で放たれる。

轟ッ!!

降り注いでいた残骸が跡形もなく粉々に砕け散り、霧散していった。

「何突っ立ってやがる! 今のうちに二人を助けろ!」

頭の中に響くシャロットの怒鳴り声に、アキトは弾かれたように走り出した。出久とお茶子を瓦礫の圏外へと救い出す。

だが、救い出した出久のコンディションは最悪だった。焦点の合わない目、荒い呼吸。折れた骨の痛みでショック死しかけている。

(このままじゃ不味い……!)

アキトはすぐさま次の一枚を切った。

「ピッコロさん、お願いします!」

再び走る光の粒子。現れたのは、鋭い眼光のナメック星人、HEROピッコロだった。

ピッコロは出久の惨状を見るなり、無言でその胸元へ手をかざした。

「――ふん、これしきの怪我で死にそうな顔をするな」

ピッコロの手の平から眩い緑色の気が溢れ出し、出久を包み込んでいく。

激痛で白目を剥きかけていた出久の表情から、すっと苦悶が消えていく。完治とまではいかないまでも、折れた骨の痛みを劇的に和らげ、容態を安定させるナメック星の癒やしの力。

「な……痛みが……引いて……っ……」

「……怪我まで治したのか!?」

唖然とする出久とお茶子。そして周囲の受験生たちは、ベジータの「破壊」とピッコロの「治癒」という、あまりにも規格外な光景に言葉を失っていた。

「な、なんだよあの個性……二人も実体化させて……」

「あんな凄まじいパワーと回復能力……一人の個性なのか……?」

戦慄と驚嘆が混ざり合ったざわめきが市街地に広がる。

試験終了のアナウンスが響く中、ベジータとピッコロは静かに光の粒子となって消えていった。

ベジータは消え際、アキトにだけ聞こえる声で短く告げた。

「――よくやったな、小僧」




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