紅蓮の騎士と神狼の銀閃   作:うしえもん

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思考と推理

 

 

 

合流を果たしたグレンとヴァイスは、広げた地図に向かい合い座り、互いの近況について話し合っていた。

 

 

 

少し離れた位置ではラビが、グレンから渡された保存食を両手で持ち、慎ましく齧りながら座っている。その姿はまさに可愛らしい小動物と言ったところだ。

 

 

 

「────しかしまあ、期待通りに動いてくれて良かったぜ────結構待たされちまったけどな!」

 

 

 

「お前の存在に勘づいたのが昨日だったからな、それも偶々門番から聞いただけだ。運が良かった」

 

 

 

「ここには初めて来たって訳か、転移してからずっと獣人族の隠れ里にいたのか?」

 

 

 

「そうだ────やはり噂は流れていたか」

 

 

 

「大っぴらにって訳じゃないけどな────ま、中身を聞けばそりゃ、人間様からしたらあまり広めたくない話だろうよ」

 

 

 

「結果的にそれもお前が暴れたことで上書きされたようなものだな、いい仕事をした」

 

 

 

「へっへ、もっと感謝してくれていいんだぜ?」

 

「調子に乗るな」

 

「へいへい」

 

 

 

 

二人は軽口を叩きながらも次第に真剣な面持ちとなる────未来を見据える同志として。

 

 

 

「それで────これからどう動く?」

 

 

 

ヴァイスが核心を突く。

 

 

 

「────この街には、軍の動向を探るのと、村を守るための中核となる仲間を探しに来た」

 

 

 

グレンはそこで一旦話を止め、ヴァイスの眼を見る。

 

 

 

「仲間の方の目的は達されたと思っていいな?」

 

 

 

「愚問ってやつだな────そうじゃなきゃこんなに無駄に暴れてないさ。魔装もタダじゃねえんだ」

 

 

 

ヴァイスは不敵に口角を上げた。

 

 

 

「感謝する」

 

 

 

グレンがそう言うとすかさず

 

 

 

「言うな。今更そんな畏まる間柄じゃないだろ」

 

 

 

ヴァイスが止める。彼の眼差しは春の日差しのような温かさを放っていた。

 

 

 

「そうだな────ヴァイス、他に何か得た情報はあるか。」

 

 

 

「いや……俺もあまり顔が割れたくなかったからな……お前が欲しがりそうなものはないな、多分」

 

 

 

恐らく、魔装で立ち回る時以外はあまり出歩いていなかったのだろう。転移してきた直後はヴァイスの傷も浅くはなかったはず、仕方のないことだ。

 

 

 

「いや、いい。────積もる話は後々として、俺はもう少しここで情報を集めようと思う。ヴァイス、頼めるか」

 

 

 

「おうよ、任せとけ。しっかり守るさ」

 

 

 

まさに阿吽の呼吸。グレンの要求を瞬時に察し、ヴァイスはラビに向き直り、ニコリと笑う。

 

 

 

「ってことでラビちゃん、しばらくは俺と二人で留守番してような!」

 

 

 

「……えっ、は、はい!よろしくお願いします!ヴィー様!」

 

 

 

話を邪魔しないようにと努めていたラビだが、唐突に己に向けられたヴァイスの言葉に頬を染めながらコクコクと頷く。

 

 

 

「では、俺は行く。何かあった時は魔装を放て。すぐに戻る」

 

 

 

「了解────しっかりやってこいよ、相棒」

 

 

 

「行ってらっしゃいませ、グレン様!」

 

 

 

懸念となっていたラビの守護がこれ以上ない形で解決し、グレンは朝焼けに背中を押されながら、悪意渦巻く街の中へと駆けていった。

 

 

 

 

 

 

潜入初日はほとんど歩くことのなかった街路を、朝の喧騒に紛れてグレンは歩く。

 

 

 

左右には、肉、野菜、魚────また故郷では見た事の無い形状の食材が詰め込まれた籠が並ぶ店舗が所狭しと建っており、その入口では店主と思われる者が声を張り上げ、呼び込みを行っている。

 

 

 

いわゆる「市場」もしくは「商店街」といった場所で、グレンは籠に付いた札や店舗の看板の文字などを注視していた。

 

 

 

無論、品定めしているわけではない────彼には、異世界に転移したと気づいた時、亜人の存在の他に気にかかっていた点があった。

 

 

 

 

────やはり読める。

 

 

 

 

そう、それは言語に関するものであった。

 

 

 

今視界に入ってくる文字は、当然”故郷とは全く違う形”の物。しかし、読めるのだ。

 

 

 

最初にマリエルと言葉が通じた時点で違和感を感じた。そして初めて文字を見たのは、長に準備してもらった通行証に書かれたものを見た時だった。

 

 

 

全く違う星同士の言語が同一であるはずはない。それなのにグレンがそれらを理解出来る理由に、彼は思い当たる節があった。

 

 

 

 

”故郷とは全く違う形”ではあるが、”見た事の無い”文字ではなかったのだ。

 

 

 

 

自身が転移現象に巻き込まれた際、目から脳裏へと飛び込んできた膨大な量の記号の羅列。その中に今見ている物と同じ形がいくつもあった。

 

 

 

グレンはこれを確認しながら、とある推測を立てる。

 

 

 

────あれは無意味なものでは無く、転移した者をその先の世界の理に適応させたり、その者の星の理を一部、先の世界へと展開する力だったのではないだろうか。

 

 

 

そうであれば、言語は勿論の事、魔法で成り立っているこの世界で闘気を使い、更には魔装召喚という別世界の概念を行使していること────それら全てに説明がつく。

 

 

 

この推測が正しいという前提ではあるが、更なる恩恵がもたらされる可能性をグレンは感じていた。

 

 

 

────村に戻ったら試してみなくてはな……

 

 

 

グレンはそこで一旦思考を切り、別の情報収集へと足を進めていった。

 

 




毎週月、水、金の19:00に投稿してます。次回もよろしくお願いします!
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